ほんの数秒の出来事だった、レオンが銃を撃ち、その弾がウェスカーに当たる直前、彼は……消えた。

比喩ではない。本当に消えたのだ。

レオンは辺りを見渡すも姿はない。
目の前には綺麗に両手を上げている純と言う女の子のみ

ウェスカー「私はここだ、レオン・S・ケネディ」

レオン「!?」

不意に後ろから声が聞こえた後、レオンの体が横へと弾け飛んだ。

レオン「がっ……」

何をされた……?

脇腹に走る痛みが殴られたのだと教えてくれるまで数秒の時間を要した。

レオンは床に転がりながら壁に激突し、止まった。
それ程の威力、たかが拳の一撃がまるで巨大なハンマーにでも殴られた様な鈍痛。

レオンは痛みを堪えながら立ち上がる。

レオン「はあ…はあ………貴様…何をした」

ウェスカー「何をした?ハッハッハ、面白いことを言うな君は」

歪に黒光るサングラスがレオンを見据える。

ウェスカー「ただ銃弾を避け、君の後ろに回り込み、殴った……それだけのことではないか」

確かに簡単に言えばそうだった。だが我々人間にとってそれは簡単ではない。
まず銃弾の速度は人間が避けられるモノではない。発射口の角度、引き金を引くタイミングを見て事前にある程度予期し、動き回っていれば話は別だ
だが彼はただ座ったままの体勢で銃弾を避け、更にはレオンが気づかぬ速度で後ろに回り込み、殴った

そしてその威力は最早人間の威力ではない

つまり──────


レオン「貴様自らにウイルスを……」

ウェスカー「ククク…このウロボロスはもうウイルス等と言うレベルのモノではないのだよレオン」

レオン「……」

レオンは答えない。ここまで力の差が歴然では一人では太刀打ち出来ないと既に考えは脱出することへ向けられている。

ウェスカー「逃げ場などない。君にはここで退場してもらおうか」

レオン「ちっ……化物め!」

レオンはまた数発ウェスカーに向けて発砲、だがやはりウェスカーはそれを避ける。
まるで蜃気楼、そこに元からいないかの様


ウェスカー「君も諦めが悪いな。ジュン、下がってなさい」

純「はい」

ウェスカーが一歩一歩レオンに近づいてくる。

レオン「くっ……」

今まで様々なBOW(バイオオーガニックウェポン)と戦って来たレオンだがここまで尻込みしたことはなかった。

レオン「(これが恐怖か……情けないな俺は)」

覚悟を決める……。
相討ちでも奴をここで仕留めておかなくてはいずれ律とぶつかる。そうなれば彼女は間違いなくこいつに殺されるだろう

それだけはあってはならない

妹を守るのは、兄貴の役目だろう


皆そのやり取りに夢中で気づいていなかった。エレベーターが動いていることに

そしてそのドアが開き、一人の女性が声を発するまで

「そこまでよ!ウェスカー!」

ウェスカー「!?」

ウェスカーは咄嗟に振り向くとグレネードランチャーを構えた顔見知りの彼女が立っていた。

ウェスカー「ジル!久しいな!」

そんな言葉を無視し彼女はグレネードランチャーをぶっぱなす

ウェスカーはそれをまた残像を残す程の早さでかわす。

ジル「なっ……」

レオン「(今だ!)」

レオンはショルダーホルスターから抜き出したナイフを手に一気にウェスカーに駆け寄る。

レオン「(近接戦闘なら!)」

更にウェスカーは今ジルと言う人に気を取られ完璧に俺のことなど見ていない

もらった!

が、その言葉と同時に吹っ飛んだのは自分の体だった。

ウェスカー「君にもう興味はない。」

そんな声が聞こえた気がした。

レオンはウェスカーの後ろ蹴りの勢いで吹っ飛び壁に、いや、今度はただの壁ではない。
ガラス張りの壁、辺りを一望する為に造られたであろうそれにレオンは激突したのだ。


バリィィィンと言うガラスが割れる轟音がし、レオンはそのまま……

夜の闇に消えて行った

ラクーンシティタワーの高さは300m程、ここはその最上階なのだ。まず命はないだろう

ウェスカー「彼はもう少し賢明な男だと思ってたのだがね。まあ所詮役不足だった……と言うところか」

ジル「あなたって人は……!」

ジルはグレネードランチャーの弾を装填、さっきのとは違う冷凍弾にスイッチ。

ジル「(足を凍りつかせる……)」

さっき落ちて行った人は確かレオンって言う最近バイオハザード専門に救助活動を行なってる人だったか
気になるがこの高さでは助からないだろう。今は目の前の敵に集中することにした。

私達の探していた元凶、それがこのアルバート・ウェスカーだ



────────。
はあ…はあ…はあ…。
息が荒い、無我夢中だったが何とか助かったみたいだ。

バックパックに仕込んであった超低空使用膨張落下傘の改良型。
この300mと短い間でもパラシュートが開いたのはそう言う理由だった。

レオン「シット!」

ガンッと拳をアスファルトに叩きつける

レオン「(情けない……俺がこの様とは)」

だが、圧倒的だった。
あのままあそこに居続けても恐らく殺されるだけだろう。
あのジルと言う女性は確かBSAAのメンバーだったか
しかし彼女とて結果は変わらないだろう……

レオン「(だがやはり見逃しては……)」

助けに行く?行ってどうなる?勝てるのか?あの化物に

銃弾は当たらない、動きは肉眼で捉えられない程、攻撃の威力はタイラント以上……
あんな奴に勝てるわけない……

ただ絶望するしかないのだろうか。このままでは律も奴に殺される

自分を本当の兄の様に慕ってくれた彼女を見殺しには出来ない……!

レオン「お前はこんな無様な男じゃないだろう!レオン・S・ケネディ!」

己の名前を呼び奮い立たせる。

レオン「悪いなジルさんとやら…援護には行けない」

そう、他に行くべき所がある

レオン「(奴がウイルスを自らに投与してるのは間違いない。そして奴はそのウイルスをウロボロスと言っていた。)」

レオンはタワーの駐輪場から適当なバイクを選ぶとエンジンをかけ走り出す。

目的地は律も向かったラクーンシティ警察署の地下研究所。

レオン「(Gウイルス等の情報もあるあそこならウロボロスについても何かしら情報がある筈……)」

急がなくては、律達が奴らとぶつかる前に何としても奴の弱点を見つけ出す

バイクは軽快なエンジン音を刻みながらラクーンシティを走って行く。



同時刻、BSAA───────。

クリス「やはり生存者はいないか……」

病院や学校、人が集まりそうな所は調べて見たが…病院に至っては何者かによって爆発されていた。

クリス「一体この街で何が起きてる…」

ピィピ、電子音が鳴る。BSAAが導入しているメモリーの通信音だ

『こちらレベッカ。クリス、応答して』

クリス「こちらクリス。どうした?」

『ここのSTARSの人を見つけたわ。彼が何人かトラックで救助してくれたみたい』

クリス「それは朗報だな。さすがSTARSと言っておこうか」

『怪我をした人もいるから今から治療するわ。それと…』

クリス「ん?まだ何かあるのか?」

『ジルと連絡が取れないの。クリス、何か知らない?』

クリス「ジルと…?メモリーでのジルの位置は?」

『ラクーンシティタワー内部で止まってるわ。さっきからずっと呼びかけても応答してくれないの。メモリーを落とす様なことジルはしないだろうし…』

クリス「何かあったと見た方がいいな…。レベッカ、治療が終わり次第タワーに来てくれ。救助者はそのSTARSの彼に任せよう。他のメンバーには俺が伝えておく」

『ラージャ』

クリス「嫌な予感がするぜ…」


────────。

バンはとうとうラクーンシティタワーに到着した。

各々装備の確認をする。話し合い…で済むならそれに越したことはないが誰もがそうはならないだろうと予期していた。

唯も梓も起きており少し緊張した面ごちを覗かせている。

律「行くか」

律の言葉を皮切りに車から降りる4人。外には少量のゾンビがいたが律のコルトと澪のイーグルで難なく撃退出来た。

梓は唯をべったりガードし、誰も近づけさせないといった感じだ。

梓「(もう絶対唯先輩をあんな目に逢わせたりするもんか…!)」

唯「ごめんねあずにゃん……私足手まといだよね……」

梓「そんなことないです。先輩。先輩はみんなに元気をくれます」

唯「元気……?」

梓「唯先輩がいるだけで幸せな気持ちになれるんです。少なくとも私は…」

唯「あずにゃん…」

律「唯の歌のおかげで私は戻って来られたんだよ。」ニカッ

それを聞いていた律も唯に微笑む

澪「唯には唯の出来ることがあると思う。きっと。」

澪もそう言って唯の肩を抱く

唯「みんな……不束者ですがよろしくお願いします!」

律「お嫁にでも行くつもりか!(ありがとう、唯)」

澪「唯らしいな(ありがとう唯)」

梓「唯先輩……(大好きです)」

律「さ~て場も和んだことだしいっちょやったろかい!軽音部~」

唯澪梓「ファイオー!」

「随分と賑やかだな。相変わらず緊張感ってものの欠片もないな」

「何よクリス、唯や澪の姿見て一番喜んでたのは貴方じゃない」

「ハッハ!全くだな!」

「梓も、元気そうで何よりだわ」

軽音部の4人は声のした方へ顔を向けると、そこには嘗て自分達を助けてくれた

戦友達の姿があった




ラクーンシティ沖───────。

斎藤「わざわざすみませんこんな空母まで出させてしまって」

提督「気にしないでくれ。たくわん出されちゃ拒否は出来んからな。それにお前の親父には内戦時色々と世話になった」

斎藤「さすが親父……海千山千だな……」

紬「斎藤、首尾の方は?」

斎藤「お嬢様!無理しないでください!二年も眠ってたのですから」

紬「そうは言ってられないの。今から例の物を運び次第ヘリでラクーンシティへ向かうわ」

斎藤「はっ!かしこまりました」

提督「君が今の琴吹財閥の」

紬「琴吹紬と申します。この度はお力添え感謝しますわ提督」

紬はスカートの裾を少し持ち上げると育ちの良さそうな挨拶をした。

提督「ふ……斎藤の倅(せがれ)が惚れるわけだ。」

斎藤「ちょ、やめてくださいよ提督!」

紬「残念ながら私異性に興味はないんです。」

斎藤「……え?」

提督「ハッハ!百合好みとは恐れいった!斎藤よ!己の戦いは太平洋戦争より過酷よのぉ!」

斎藤「……え?」

紬「待っててみんな…今行くから」

海風に靡く髪を抑えながらラクーンシティ方面を見る。



ラクーンシティタワー前───────。

唯「クーちゃんにバーちゃん!レベにゃんも!」

クリス「おいおいその呼び方はやめてくれと二年前に言ったろう」

レベッカ「案外気に入ってたじゃないクーちゃん」

バリー「ハッハッハ!バーちゃん何て俺のこと呼ぶのは唯だけだぞ!今度またウサギ鍋食わせてやろう!」

澪「うさ……ウサギ……鍋……」ガクガク

クリス「澪も相変わらずだな。しかし二人とも綺麗になった」

レベッカ「ジルに言いつけますよ?」

クリス「社交事例だ……」

唯「あー!酷い!」

バリー「ハッハッハ!」

律「クレア!久しぶりだな」

クレア「最近連絡くれないから心配したわよ律。レオンからも律が最近変だって色々相談されてたんだから」

律「え~と…話すと長くなるんだけど…まあなんと言うか…」

クレア「見ればわかるわ。変わったわね、いい方に」

律「えへへ//」

クレア「ならレオンにちゃんと謝っておくのよ?彼はあなたのこととなるとすぐむちゃするんだから」

律「レオンが…?私の為に?」

クレア「ふふ…本当の兄妹みたいね…私と兄さんみたい」

律「??」

梓「クレアさん、お久しぶりです」

クレア「梓…そう…それがあなたの選んだ道なのね」

梓「はい……守りたい人がいるんです。どうしても……だからじっとしていられませんでした」

クレア「強くなったわね……梓」

梓「俺さんや……皆さんのおかげです。あの時助けてもらったこと、忘れてないです」

クレア「梓みたいな妹がいたら最高なのに」ナデナデ

梓「からかわないでください//」


クリス「さ~てそろそろお互いの自己紹介と行くか。中には顔見知りもいるようだが初対面も多いだろう。何でここにいるか、って話はその後にしようか」


クリス「まずは俺から。BSAAのリーダーでそこにいるクレアの兄でもある、クリス・レッドフィールドだ。唯や澪とは二年前の脱出の時に知り合ってな。」

律「なるほど、あの時むぎの家で電話してたSTARSの人ってわけか。ん?でもBSAAって?」

クリス「名は聞き及んでいるよシューティングスターリツ。BSAAは対アンブレラに俺が作った私有部隊だ。今は隊員は少ないがな」

律「それ何かこそばゆいなぁ//」

クレア「じゃあ次は私ね。さっき兄が言ったと思うけどクリスの妹、クレア・レッドフィールドよ。」

クレア「兄とはロックフォードで合流して今はBSAAにいるの。よろしくね」

唯「よろしくクレにゃん♪」パチパチパチ

澪「何か学校みたいな流れだなぁ」

律「唯がいると私達二十歳になったんだ~なんて思えないよな」ニコッ

澪「ふふ、そうだな」

律……本当に良かった。こうしてまた笑い合えて

バリー「次は俺だ!バーちゃんことバリー・バートン!マグナムに関してはちとうるさいぜ?」

律「なにをぉっ!?私のこのコルトと張り合うっての!?」

バリー「コルトM19……しかも廃盤仕様じゃないか!売ってくれ!」

律「やだよ!にしても……うぉ……おっちゃんの44口径か…やるな」

バリー「ガッハッハ!お前さんとは気が合いそうだな嬢ちゃん」

律「だな♪」

澪「私だけ一人取り残されていくこの感じは……」

レベッカ「次は私ね。BSAAでの医療関係は全て私の担当よ。薬の調合、具合が悪くなったりゾンビに噛まれたりしたらすぐに言ってね」

唯「レベにゃんは保険の先生みたいだね~」

レベッカ「唯、アイス食べ過ぎてない?いくら太らないと言っても糖類のとりすぎは~(ry」

唯「始まっちゃった……」

澪「レベッカさん講座が」

唯「はいじゃあ次は軽音部のターンです!まずは私平沢唯!歌が得意です!好物はアイスと可愛い物です!嫌いなものはリッカーちゃんです!」

梓「唯先輩それじゃ本当にただの自己紹介ですよ……もっと今の自分の所属とか話した方が」

唯「あっ、そうだね!え~と……一応ラクーンシティ警察署に配属されたけどぉ……一日も行かずにこうなっちゃって……何と言うか…今はニートです!」

一同「…………」


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最終更新:2010年02月02日 00:03