あっという間に───
私の目の前で────
二人の人生は幕を下ろした─────

人間はこんなにも簡単に死ぬということと、人間はこんなにも簡単に人間を殺せるんだと知った。

そして、次は

ウェスカー「次は君の番だ、秋山澪

私がああなるのだ。

澪「イヤだ……イヤだ」

ウェスカーから後退る
怖い、怖い、怖い、

奥歯がガチガチ鳴る、体がバカみたいに震える。

死にたくない、死にたくないと
体が訴えている。

ウェスカー「諦めが悪い……。君まで醜い姿を晒すのか?仲間との結束、命の尊さはどこへ行った?」

逃げなくちゃ、逃げなくちゃ殺される。
それは駄目だ……死んだら終わりなのだから。もう律にも会えない、それが一番怖い。

澪「助け……」

助けて、と言おうとして踏み留まった。ここで彼に助けを乞うことは負けを認めることだ。
即ちそれは人間の命は人間により奪ってよい、等と言う彼のふざけた持論に負けることになる。
なら私達は何のためにお互いを助け合って来たのか。

震えた声で言う

澪「……家族を返してください」

ウェスカー「なら私を殺せ」

澪「それは出来ません」

ウェスカー「……話にならん」


─────────

聡「全く!銃で壊すなんて無理があるよ姉ちゃんは!」

律「上手くいったんだからいいだろ~?それに私が可愛い弟を殺す様な真似するわけないだろ♪」ニコッ

聡「ったく……」

そう、あの時律はコルトM19で聡の胸にある宝石を狙い撃った。
普通の357マグナム弾ではまず貫通する、そこで律は殺傷力の低い鉛の弾を使ったのだ。
この弾は昔レオンと銃を撃つ練習の際マグナムの弾代もバカにならないと安い鉛弾を買い込んだ残りだった。

鉛は銅より熱に弱く、また硬度も低い。

宝石の硬度もそれを助けた結果だった。

律「しかしデカくなったな~聡。180くらいあるんじゃね?」

聡「そうかな?」

律「私が154cmだから……」

聡「な、何だよ引っ付くなよ!」

律「やっぱりデカい!16の癖に生意気だ!」

聡「身長に歳は関係ないだろ…」ドキドキ

何意識してるんだろう。でも姉ちゃん綺麗になったな…って何を言ってんだ俺は。

律「まあ聡が無事で良かった!後はここが開くのを待つだけだけど…。ちょっと聡外に様子を見に行ってくれない?私がボタン押しとくからさ」

聡「バカ言え。それなら俺が押すよ。」

律「えっへへ~嘘だよ嘘♪」


聡「嘘かよ!」

何だよ……嬉しそうに笑いやがる。俺が死ななくてそんなに嬉しかったのかな……だとしたら嬉しいな…けど…父さんや母さんは…。

聡「姉ちゃん……その…父さんと母さんは……」

律「いいんだ、聡が責任を感じることない。」

聡「でも……」

律「聡……」ギュッ

聡「なっ///」

律「私はあんただけでも生きてくれてて嬉しい。確かに父さん母さんが死んだのは悲しいけど…それでも、二人で、姉弟で頑張って生きていこう。」

聡「姉ちゃん……うん……うんっ……」

思わず涙が溢れてしまった。
辛く何かないのに


でも俺はわかっていた。このまま姉ちゃんに甘えていては駄目だと。
少しは成長したところを見せないと田井中家の長男として恥だ。

だから、言った。

聡「姉ちゃん、行ってくれ。澪さんのこと心配なんだろ?」

律「えっ…」

的を得ている意見に律の表情が少し曇る。

その顔はさっきから明るく振る舞っているが時折見せる顔と同じだった。

聡「俺が行っても足手まといになるだけだ…けどこうして姉ちゃんを助けることで役に立つことは出来るから」

律「聡……」

聡「だから、行ってあげてくれ。」

いつの間にか男の顔になりやがって……。
私はその顔にレオンを見た、聡も彼の様に立派な男になったんだなと歓心した。

律「聡、立派になったな。姉ちゃん嬉しいよ」

聡「まあな!」

律「ちょっとは謙遜しろよ!」

聡「へへっ//」

律「それじゃ行って来る。私達が来るまで開けちゃ駄目だからな!必ず迎えに来るから」

聡「わかった!」

そう言ってボタンを押す聡、

必ずみんなで帰ろう、そう胸に誓い私は外に出た。

聡「姉ちゃ~ん大好きだぞ~」

律「おいっ///」

全く……私も大好きだぞ、聡
勿論弟的な意味で、だ



─────────

「んン……ここは?」

クリス「調子はどうだ?ジル」

ジル「クリス……。」

ふと甦る記憶、そうだ…私は。

ジル「また…迷惑をかけたわね、クリス」

クリス「気にするな。俺達はチームだからな」

ジル「クリス……」

本当にありがとう。

クリス「それより上に上がったバリー達が心配だ。扉がまだ開かないところを見ると交渉は難航しているみたいだな。ウェスカーが大人しく交渉に応じるとは元々思ってはいないが」

ジル「ウェスカー……彼は化物よクリス…急がないとバリー達が危ない!」


クリス「どう言うことだ?」

ジル「私は救助者を見つける為にここからラクーンシティに放送をしようと思って最上階へ上がったのだけれど…そこにウェスカーがいたの。それに…確かレオン、彼もいたわ」

クリス「律と組んでいるレオンがいることは予想していたが、では彼はまだ最上階に?」

ジル「いえ……ウェスカーの一撃を食らって最上階から……落ちたわ」

クリス「…そんなバカな」

レオン程の屈強な者がそう簡単に……

ジル「そして私もウェスカーに捕まり……P30と言う薬物で体の自由を奪われて……」

クリス「そうか…」


ジル「これからどうするのクリス?」

クリス「俺がボタンを押すから君は最上階へ向かってくれ。」

ジル「クリス、それを言うなら私がボタンを押すから、でしょう?まだ体の自由が完璧には効かない私が行ったって足手まといになるだけよ」

クリス「すまない……必ず帰ってくる」

ジル「えぇ。それまで休ませてもらうわ」

ジルはボタンを押しクリスを見送る。

ジル「みんなをお願いね、クリス」

クリス「あぁ、任せろ」

彼らの信頼関係はより強固なモノとなっていた、この部屋のおかげで


─────────

久しぶりに戻って来たホールには先着がいた。

律「クリス!無事だったんだな!」

クリス「律か。そっちもな。これから上へ上がる、一緒に来てくれるか?」

律「勿論。そのつもりで出てきたんだ。」

クリス「梓と唯にも声をかけたが応答はなかった。心配だろうがまずは上に行ってここの扉を開ける。バリー達も戻って来ないから心配だがな。」

律「…うん!(待ってろよ…澪)」

そうして上に上がる二人。上で何が起きているかなど想像出来ぬまま……。

─────────

ウェスカー「いきなり腕を撃ち抜くとは思い切りがいいな」

律「目の前で仲間が首絞められてたらそれはね……それにあんたに遠慮はいらないだろ…アルバート・ウェスカー!」

ウェスカー「ククク……ようやく楽しめそうだ。そこに転がっている奴らでは前座にもならなかったからな」

クリス「!!?まさか貴様!!!」

ウェスカー「安心したまえクリス。君の大事な妹さんは殺していない。もっとも他の二人は……」

クリス「バカな……!」

クリスは横目に二人を見るもそれはもう機能していないモノだった。

クリス「貴様ァ!」

渇いた銃声が何度も耳を衝く、銃弾は虚しくも空を切りウェスカーは不適に微笑んでいる。

ウェスカー「その程度かクリス?仲間を殺された恨みを持ってしても当てることも叶わないか……これでは律に期待するしかないようだな」

律「消えた…?!いや…まさか」

クリス「ジルの言っていたことは本当のようだな。化物め!」

ウェスカー「君達はその化物を倒さねばならないのだよ!私を倒さない限り家族も助からない、まあもう逃がすつもりもないがな!」

クリス「律、殺すつもりでやらなければこっちが殺られる」

律「……わかってる」

クリス「奴の手品はわからないが同時に仕掛ければ何とかなるかもしれない、俺が狙い撃ち消えて奴が出てきた瞬間を狙い撃て、いいな?」

律「わかった」

ウェスカー「作戦会議は済んだか?」

クリス「行くぞ!」

まずクリスが走りながらウェスカーに発砲する。ウェスカーは相変わらずそれを避ける、まるで先程のリプレイを見ているようだった。

律「……そこだ!」

しかし避け終わりを狙い律がマグナムで脚を狙い撃つ。
直接急所を狙わないのはやはり彼女の甘さ故だろう。


ウェスカー「おっと、惜しいな!」

間一髪でそれをかわすウェスカー、直ぐ様走り込んで来たクリスを蹴り込む。

クリス「なっ……」

咄嗟に防御するもあまりの威力に体ごと宙に浮き2mほど飛ばされるクリス。

クリス「バカな……あれをかわすとは…そしてこの威力」

クリスの額に汗が滲む。

律「クリス!挟み撃ちだ!」

律はウェスカーの後ろに回り込むと奥にいるクリスには当たらない様少しズレた位置でウェスカーを狙う。

クリス「OK!」

クリスもそれに応じてウェスカーをほぼ同時に狙い撃った。


ウェスカー「狙いは悪くない……が」

律「消え……」

クリス「消えただ……ゴアッ…」

完璧にその場から消えた瞬間いきなりクリスの目の前に現れ顎を跳ね上げる。
ゴスッと鈍い音が聞こえクリスは血を吐きながら倒れ込んだ。

律「クリス!!!」

ウェスカー「瞬道歩足、瞬歩、瞬動など呼び方は多彩だが昔から伝わる業でね。極めればある程度は誰でも使える。もっとも私ほど早く動ける者はいないだろうが」

律「……つ、強すぎる」

思わずそんな言葉が出てしまう程にその強さは圧巻だった。


ウェスカー「さて、残るは君一人だ。降参するかね?」

律「誰が!それにまだ私一人ってわけじゃない。こっちには梓や和、そして切り札(ジョーカー)の唯がいる。私が死んだって彼女達があんたを絶対……」

ウェスカー「真鍋和か、残念だな。彼女なら今頃蛇の餌だ」

律「…………」

ウェスカー「彼女様に作りあげられたB.O.W.、ヨーン。彼女の攻撃や行動パターンは二年前にコンプリート済みだからな。彼女が生きてここへ来る確率は……」

律「ククッ……ハッハッハ」

高らかに笑いあげる律

ウェスカー「……何が可笑しい?」


訝しげに見るウェスカーに笑いながら答える律。

律「これが可笑しくないわけないだろ?二年前にコンプリート済み?ハハハ!和があれから変わってないとでも?」

ウェスカー「人間そう簡単には変わらん。行動パターンや動向が知れていれば容易い」

律「あんたは私を過大評価してるみたいだけど逆に和を過小評価し過ぎた。和は私なんかよりもずっとず~っと強いよ」

ウェスカー「ほぅ……」

律「いや、過小評価じゃないか。あんたは恐れたんだ。和を。だからそんな回りくどいやり方をした、違う?」

ウェスカー「………」


律「よ~んだからヨン様だか知らないけどそんなチンケなB.O.W.……和はものともしないよ」

ウェスカー「ふふふ、そうか。念のため彼女にあれを要請しといて正解だった。」

律「用意周到だねウェスカー。そんなに和が怖い?」

ウェスカー「減らず口を。私に怖いものなどない」

律「いや、無意識下での恐怖心があんたにそんなことをさせてるんだ」

ウェスカー「ふふ、わかったぞ。そんな減らず口を叩いて少しでも援軍が来るのを待ってるんだな?可愛い真似をする…」

律「…来た」

律の目には上がってくるエレベーターが見えていた

ウェスカー「あれに真鍋和が乗っていると?」

律「あぁ、私にはわかる。友達だから」

ウェスカー「以心伝心と言うやつかな?私にはそんなもの無縁だが。ならいいだろう……少しだけ待ってやるとしよう」

律「(和……)」

二人は静かにエレベーターを見据える。

そしてエレベーターは遂に到着し、その扉が開いた──────。



数時間前─────────

単独行動は得意中の得意だった。この二年間何度も一人でこの死地に一人で下ろされたものだ。
アルファチーム唯一の生き残りである私への上層部の風当たりはやはり強かった。

元々クリスはかなり無茶をしていた為アルファチームはS.T.A.R.S.の目の上のたん瘤だったのだ。
それなのに一人ノコノコ帰ってきた私をこうして居座らせてるのはやはり私の父親のおかげだった。
それから私は信頼を得る為にどんな無茶な任務にも従い完遂し、生き残って来たのだ。

だから、単独行動は得意だった。

和「それに今は一人じゃないから…ね」

唯や律、澪に梓、みんなの信頼を胸に私はラクーンシティ警察署の電力を上げるため電力所に来ていた。

中は簡単な作りでアネット言われた数字の羅列の前に到着した。

和「k6e2i4o3n……これね……」

そのレバーを上げる。これで警察署にかなりの電力が行った筈だ。

さて、早く合流しないと……。

そうしてそこから出ようとした時だった。

「シャアアアアァァァ」

和「何……」

奥から何かが来る、

和「大きい……」

そこには全長10mはあろうかと言う蛇がいた。

和「今は構ってる暇ないのよね……悪いけど逃げさせてもらうわ」

そう言って素早く踵を返し元来た道を帰る和。しかし少し走った所でまた立ち止まった。

和「罠……か」

電力が足りない時点で予想はしていたけどね。ウェスカー、よっぽど私には会いたくないのかしら。

和「そんな歓迎されたらもっと会いたくなるじゃない」ギリッ

数m前のスーパータイラントT103型、後ろからは蛇のB.O.W.、その二体を相手にしても尚彼女は笑っていた。

和「迷いはない、やっと全力でやれる」

行こう、愛刀。

和「柳生新陰流、参る」


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最終更新:2010年02月02日 00:11