深夜、直宅


菫(つい直ちゃんの押しに負けて直ちゃん家に泊まっちゃった)

菫(でも来て良かった。直ちゃんのことやお家のことをいっぱい聞けた。直ちゃんの弟君たち、かわいかった~)

菫(……だけど)

菫(せっかく二人っきりになったんだから、ドラムのこと相談すればよかったのに!)

菫(すぐそばに作曲者いるのに私のドジー!)

布団「バサン、バサバサ、バサッ」

菫(はぁ~…まだ起きてたりしないかな)

菫「直ちゃん…?」

直「      」Zzz

菫「寝てる、か。そりゃそうだよね…」

菫(うぅむむ……ドラムのこと考えてたら身体が疼いてきた…)

菫(静かに布団叩く真似してよ)

菫「……」パフッ

菫「……」パサッ パサパサ ファサッ

菫「……」パササ パササン パササササッササッ

菫(ココだよねー…どうしても腕が譜面に追い付かない)

菫(いつまでも同じとこでセッション中断させるわけにも…)

菫(むっずかしいー)


ドア「キィィ……」


菫(ヒッ! ドアがひとりでに開いた!?)


 「ん~……んん?」

 「すみれねーちゃん…なんでいるの…?」


菫(直ちゃんの弟君だー! 寝る部屋ちがうのにどうして? もしかして寝ぼけて此処に来ちゃった? 可愛い~~!)

菫「ねえねえ♪ こっち来て。良かったら一緒に寝ない? 私ちょっと体が冷えちゃっt」

直「部屋ちがうよ。ここはお姉ちゃんたちの寝るとこ。あんたはアッチ」

菫「わああああ! 直ちゃん起きてたー!!///」



直「起きたのはついさっき。弟が起きると私も目が覚めちゃって」← 弟を寝かしつけてきた

菫「そ、そっかー大変だね……」

直「もう慣れてるから平気だよ」

直「それより菫。さっきは一体どうしたの…?」ジトッ

菫(わああああああしまった聞かれてた! 思いっきりヒかれてるぅぅぅぅぅぅ)

菫「あ~アハハ、あれは~、その…、」

菫「ほら! 弟君寝ぼけてるみたいだったから、ね? 優しく注意しようとしただけ!」

直「いや布団の中でもぞもぞしてたことを聞きたかったんだけど。さっきのキモい声はあえて触れなかったのに」

菫「しまった自爆したーッ!!///」

直「ドラムの打ち真似?」

菫「うん……セッションでいつもミスする箇所」

直「ふぅん」

菫「どーしても次叩くとこに腕が伸びきらなくてね。速さが足りない…」

直「なら、そこ少し編集しようか? 簡単にできるよ」

菫「それはなんか負けた気がするなあ……」

直「何に?」

菫「なに、て…そんなの…えーっと…」

菫「~~~~~~~」

菫「…わかんない」

直「まじめに考えるとは思わなかった」

菫「えっ!」

菫「打てないところがハッキリしてるから、そこを練習すればいいはずなんだけど…」

直「うん。ひたすら素早く腕運びする練習。わたしも付き合うよ」

菫「ありがとう……うわー先輩たちの足引っ張ってるー」

菫「腕がもう一本あったら楽チンに打てそうだけどなぁ、なんてね」

直「なら、オデコで叩くとか」ドヤァ

菫「冗談だってば。セッションするたびに頭痛くなるよ、首も」

直「ベタでベターなギャグだと思ったのに」ブンブンブン ←ヘドバン

菫「はいはいおもしろいねおかげで眠くなった。おやすみっ」

直「なっ」

菫「つーん」

直「……」

菫(でもありがと。直ちゃんにいっぱい話せたおかげで少し楽になったよ)

直「ねえねえ」

菫「つーん♪」

直「すみれおね~ちゃ~ん~いっしょに寝よ~よ~」

菫「いやあああああああ 弱み握られてるうううううううううううう」


菫「あーッそういえば!」 ←話題反らし

直「ば~ぶぅ?」

菫「それもういらないから」

菫「なにか先輩方にお世話になったお礼したいんだけど、どう?」

直「お礼?」

菫「先輩方は今年で引退でしょ?」

菫「それに、私たちを音楽の道に進ませてくれたのは先輩方のおかげだし」

直「そうだね。いいかも」

菫「ほんと? ありがとう直ちゃん」

直「でお礼って何をあげるの?」

菫「それは……決まってない」

直「そうなの。じゃおやすみ」

菫「直ちゃんも一緒に考えてー」

直「わかったから今夜はもう寝かせて……」

菫「やった♪」

菫「あ、もちろん先輩方には内緒だよ? おやすみなさい」

直「んん…おやちゅみ菫まま~」


菫「は~い良い子だから一発殴らせてね~」ビキビキ

直「グォォ重い…お腹にまたがるの勘弁…」



べつのひ!


直「PA、ですか?」

さわ子「そっPA、Public Address。直ちゃんだけ学園祭ライブ中なにもしないのはつまんないでしょう?」

直「あ…ありがとうございます。 たまに先生らしいことしますね」

さわ子「直ちゃんには結構助けてあげた覚えがあるのにナー」

直「忘れてませんよ? 楽器できなくて入部やめようとした私にプロデューサーを勧めてくれました。あの時はありがとうございました」

さわ子「よろしい」フフンッ

菫「あのー、PAって何をするんですか?」

直「ミキシング」

菫「みきしんぐ?」マゼマゼ グリグリ


直 < 弾いた音を大きさの調整して複数のスピーカーに送る

菫 < へー、そんなのあるんだ


さわ子「で今日はPAの機材を菫ちゃんを通して例の楽器屋に借りに来たわけよ」

菫「そっかー直ちゃんのための機械だったんだ。頑張ってね直ちゃん!」

直「ガンバるっ」キランッ

菫(直ちゃんの眼鏡が光った!)

さわ子「そしてその機材が、店員さんに持って来てもらってるコレよ!」

直「おぉっ」


紬「お待ちしてました~。件のものでございま~す」


菫「うそ!? おねえちゃん!?」

紬「はーい菫、お久しぶり~♪」

菫「夏休みに帰省してきたばっかじゃん!」

紬「そうだったかしら、うふふふふ」

菫「あ~ビックリした。これもさわ子先生のサプライズですか?」

さわ子「ムギちゃんなんでここにいるの!? 店の制服似合ってるし」

紬「今日はフリーなので遊びに来ちゃいましたっ」

菫「先生も知らなかったんですか…」



店員 < おい誰だ! よりによってお嬢様に運ばせたの?!

店員 < 旦那様にバレたらまずいのでは…

アルバイト < す、すいません! 代わりにやってくれると言うのでつい…

店員 < おまえかアルバイトー!!クビだクビ!

アルバイト < もうしわけございませえええええん



菫「あー、コホンッ」

菫「お嬢様? いくら大学生になられましても琴吹の人間なんですから、あまり大胆な行動は控えてください。家の者に何も言わずにもう…」

紬「菫。今はプライベート」ニコニコ

菫「うっ」

菫「でも…」

菫(誰かの前で呼び合うの恥ずかしい……)チラッ

直「?」

菫「~~~~~~~~」


紬「あなたが直ちゃん?」

直「あ、はい。奥田直です…」

紬「直ちゃんのことは菫によく聞いてるわ~。はじめまして琴吹紬です。菫のおねえちゃんやってまーす♪」

菫「ちょっと!///」

紬「うちの菫のお世話焼いてくれてありがとね」

紬「この子ったらちょっとドジだし、ミスをいつまでも引きずったり、今だって直ちゃんの前で堅苦しい話持ち出したり、それからそれから」

直「そ…そうですね」

菫「ストーップ! そんな紹介はあんまりだよお姉ちゃん!! 直ちゃんも同意しないで!」

菫(しかも…)

直『イメージしてたお嬢様と違う』

菫(↑って言いたそうな顔してるー! ほんとだよモー!! 高校で何があったのおねえちゃんッ!!)

紬「ところで菫、ちょっと耳貸してくれる」

菫「はぁ…はぁ…! 今度はなに!」


紬「直ちゃんってどんな娘なのか気になってたけど、普通の娘なのね? どうしたの? 写メだけじゃはっきりしなかったから驚いちゃった。てっきり背の小さくてイノセントな雰囲気な娘だと」

菫「普通の友達もいるから!!!///」

直「!?」フツウ…


紬「ごめんなさいね、見苦しいとこ見せちゃって」

菫「~~~~~~!!」

直「あ、いえ……」

直「あの…琴吹さんは作曲してたんですよね? 去年までの軽音部で」

紬「ええ、そうね。今も担当してるから4年くらい? あと紬でいいよ、わたしも既に直ちゃんって呼んでるし」

直「凄い…」

菫(わあ…直ちゃんが珍しくマジメな顔に)

直「あの…紬さん。どうやったら…」

直「どうやったらあんなに甘々な歌詞を書けるのでしょうか?! あれだけはどんな本を読んでも真似できなくて!」

紬「作詞までは私じゃないからわからない…」

直「あ、そうでした…」

菫(もしかして直ちゃん緊張してる)

紬「直ちゃんも作曲してるのよね?」

直「はい…」

直「…よかったらアドバイスしてもらえませんか? 書いた曲は今持ってます」

紬「もちろん。かわいい後輩のバンドメンバーだもの、できる限りのお手伝いをさせていただくね」

紬「ハッ! これっていわゆる、OBから現役生へ送るメッセージ?!」

紬「やるわ! わたし前からOBの立場に憧れてたの~~~」

直「は…はあ…………」

菫(あぁあぁぁあぁ直ちゃんの顔がいっきに不安一色に! もっと普通にしてよおねえちゃーん!)

紬「んー聴き終えてまず思ったのは」

紬「リズムギターが一箇所だけ人には弾けないところがある、わね。注意深く聴けばもしかしたら他にも見つかるかも」

直「え゛っ」マタ…

菫(直ちゃんの当面の課題だねソコが…)

紬「でも全体としてとても纏まってるように思えるから落胆しなくていいわ。良い感じよ直ちゃん」

直「ホッ。どうもです」

紬「…ただ、そうねえ」

直「はい…?」

紬「今から言うのはあくまで私のやり方。だから軽く聞き流してくれていいわ」

直「…」ゴクリ

菫(直ちゃん息を飲む)

紬「わたしは頭に浮かんだイメージをそのまま曲にしているの。最初から最後まで。情景だけでなくて、情景に合うメロディまでね」

紬「それは直感に等しい。仮に技術的により優れてたメロディがあったとしても、わたしは直感を選ぶ」

紬「だってそのほうが愛着持てそうじゃない? 機械的な選択をするより面白いわ、きっと。いや絶対に」

紬「あっもちろんバンドメンバーの意見も取り入れるよ? 要するにわたしが大切にしたいのは人の感性なの」

直「……」

菫(直ちゃんは軽音部に入るときに、即興で音楽の本から学んでたっけ)

菫(だから理論はわかるけどそれだけじゃ不十分で……ってこと…かな? 私には作曲はよくわからないけど)

紬「ふぅ…」

紬「こんな感じでどう? なにか直ちゃんの知りたいことのヒントになれば幸いだけど」

直「…はい! わかった気がします。紬さんありがとうございます」

紬「まあホントに!」

菫(良かったね)

さわ子「何してるの二人とも! 荷物は車に積んだから部室戻るわよ!」

菫「はーいッ!」

紬「わたしも行きたいです!」

菫「なんでっ」

紬「どう部室が変わったのか見てみたいの~」

直「大きな変化はないかと」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ」



菫 < おねえちゃんどこ座る?

紬 < わたしはもっと直ちゃんとお話したいな

菫 < なら助手席は私、おねえちゃん達は後部座席で

紬 < そうね

直 < メール送りました

紬 < 来た来た。ありがと~


菫「あっ信号青になりました」

さわ子「なっチョーッ! 今後ろにいた車、追い越してったわよね?」

菫「はい。でも気にすることではないですよ」

さわ子「わたしに喧嘩売るとはイイ度胸じゃねーノあの野郎? 売られた喧嘩っつーのは」

菫「安全運転してくださいッ!!」

さわ子「や~ねジョークよジョーク。すぐ泣きそうな顔するんだから」

菫「わりと悪い口調が様になってたので本職の方だとてっきり…」

さわ子「あ゛あ゛ん?」

菫「ヒィアアァアアァァアア――」ガクブル

さわ子「ウェッヒヒヒヒ」


2
最終更新:2012年09月04日 21:12