宇宙、それは最後のフロンティア

これは宇宙船「ワカバガールズ号」が、任務を続行し未知なる世界を探索し

新たなる生命と文明を求め

人跡未踏の宇宙に勇敢に航海した物語である!



宇宙軽音大作戦『地球滅亡!?異星からの歌声!』



ジャージャジャジャーン

ワカバガールズ号 ブリッジ

ピーピー

通信士・菫「た、大変です!地球の艦隊本部から緊急通信!」

船長・梓「本部から!?すぐに繋いで!」

航海士・憂「本部から緊急通信なんて初めてだよね……どうしたのかな」

操舵手・直「少なくとも良い連絡ではなさそうですね」カタカタ

菫「……繋がりました!モニターに表示します!」

パッ

和『こちら本部司令室……』

憂「あ!和ちゃん!じゃなくて和さん!」

梓「和先輩、お久しぶりです」

菫「船長たちはあの方とお知り合いなんですか?」

機関士・純「あの人は憂のお姉ちゃんの同期で、本部勤務の和先輩だよ」

直「確か士官学校を首席で卒業したエリートでしたよね」カタカタ

菫「直ちゃん詳しいね……っていうか純先輩いつの間に?」

純「緊急事態の匂いがしたから機関室から駆け付けたよ!」

和『良かった、長距離通信がなんとか繋がったみたいね。ワカバガールズ号へ緊急指令よ』

梓「一体何があったんですか?」

和『謎の巨大宇宙船が1隻、太陽系内に侵入したの。おそらく異星人の船』

梓「太陽系内に!?防衛艦隊はどうしたんですか!」

和『全滅したわ……交信を試みても一方的に謎のメッセージを送ってくるだけで。
  仕方なく威嚇攻撃を行ったら武器をすべて破壊されて戦闘不能になったらしい』

憂「そんな……」

和『異星人船はゆっくりと地球に向かっている。ワカバガールズ号にも地球の防衛に加わってもらうわ』

梓「ワカバガールズ号は探査船です!防衛艦隊を全滅させるような船を相手にできるわけ……」

和『探査船だからこそよ。戦力が無くなった今、もはや我々に残された道は彼らとの”対話”しかない。
  宇宙を探索し、未知の世界に触れてきた探査船なら彼らと意思疎通する方法を見つけることが出来るかもしれない。
  あなた達は、地球最後の希望なの。すでに太陽系近くの船は集まり始めてるわ』

梓「……わかりました。ワカバガールズ号もすぐに地球に向かいます」

和『まずは火星基地に向かって。さわ子提督が旗艦『デスデビル』に乗り込んで直接船団の指揮を執るから、あなた達も合流すること。
  健闘を祈ります。通信終了』

プチッ

梓「よし、みんな!気合い入れていくよ!」

憂「火星基地までの針路、設定完了」ピピッ

直「針路確認、ワープ準備に入ります」

純『こちら機関室。ワープエンジン調整OK!』

梓「ワカバガールズ号、発進!!」

ヒョオオオ バシュンッ!!


火星周回軌道 

ビュアアア シュンッ

直「火星軌道上に到着」カタカタ

憂「複数の船影を確認。合流地点はここで間違いないよ」ピピッ

梓「菫、デスデビル号に連絡を。さわ子提督に合流の報告をしないとね」

菫「はい。デスデビル号に交信……繋がりました。表示します」

さわ子『ワカバガールズ号、よく来てくれたわ』

梓「状況はどうなんですか?」

さわ子『異星人船はもう木星付近を通過。間もなく火星軌道にやって来る。ここで食い止めなきゃ地球がどうなるかわからないわ』

梓「……そうですか」

さわ子『何暗い顔してるのよ!これはむしろ我々調査船団の名を宇宙に轟かせるチャンスだと思いなさい!』

梓「ふふ、相変わらずですね、提督は」

さわ子『梓ちゃんも相変わらず可愛いわよ。この件が終わったらまた特製の宇宙服作ってあげるわね』

梓「結構です!」

直「特製の宇宙服、とは?」キラリ

梓「聞かなかったことにして!」

さわ子『さて、そろそろ時間的に出発しないとね。これ以上の合流は待てないわ』

梓「集まった船はどのくらいですか?」

さわ子『デスデビルも含めて9隻よ。これだけいれば上等!』

梓「根拠はあるんですか……」

さわ子『無い!でもみんな信頼してるからよろしくね♪通信終了!』

ピッ

菫「すごい方ですね、提督」

ピー

菫「他の船から通信が……ホウカゴティータイム号からです!」

梓「やっぱり先輩たちも来てるよね。繋いで」

ピピッ

唯『エーゴホンゴホン、こちらホウカゴティータイム号の唯です!』

憂「お姉ちゃん!」

唯『あ、ういー♪あずにゃんも純ちゃんも元気ー?』

梓「元気ですけど、なんの用ですか?」

唯『うー、せっかくみんなの顔が見たくて通信したのに!』

梓「そんな私用で通信しないでください!」

唯『ほら、澪ちゃん、可愛い後輩に挨拶しないと!りっちゃん!』

律『よーし、いい子だからこっちおいでー』ズルズル

澪『馬鹿!引きずるな!……あ、梓』

梓「澪先輩!大丈夫ですか!先輩たちにいじめられてませんか!?」

澪『は、ははは!大丈夫だよ!梓、みんな、今回は一緒に頑張ろうな!』

梓「はい!」

純「頑張ります!」

梓「純あんたいつの間に」

唯『まあそんな感じで、頑張ろうねー!バイバーイ!』

プチッ

憂「ホウカゴティータイムのみなさんも、相変わらずだね」

梓「全く。この緊急事態にお気楽なんだから」

純「緊急事態だからこそ、そういうのが大切なんじゃないの?」

ピピープ

菫「デスデビル号より船団に発進命令です!」

梓「……発進!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

梓「直、もっとスピードでないの?」

直「ワープを終えたばかりですから、エンジンへのエネルギー供給がまだ不十分なんです」

純「最高速度までもうちょっとかかるねー」

憂「わあ、他の船はみんな早いなあ」

菫「本船が最後尾ですね……」

純「というかほとんどこの船だけ取り残される形になってるけど」

梓「ううー、せっかく気合い入れて発進!って言ったのに」

菫「船団との通信チャンネルをオープン。これでリアルタイムに全船団の通信が入ってきます」

憂「そろそろ先頭の船団が異星人船と接触するね」

ザザッザザー

『こちらラブクライシス号!これより異星人船に接近を試みます!』

『了解。くれぐれも気を付けてね』

直「さすが調査船団最速と言われるラブクライシス号ですね。我々と違ってかなりのスピードです」

梓「一言多いよ?」

『異星人船より通信!例の謎のメッセージです!』

『~~~♪~~~♪~~~♪』

梓「これ、歌声?」

菫「不思議なリズムですね……」

『異星人船へ!こちらはラブクライシス号!その歌の意図はわかりませんが、貴船は地球の領域に侵入しています!
 一旦停止してください!』

『~~♪~~~♪~~~♪』

憂「和さんが言ってた通り、反応が無いね」

『~~♪~~♪ ピーガガガガーザザザザザー』

菫「うわっ!歌声が突然ノイズみたいに……』

『ラブクライシス号より提督へ!やはり通信に効果が無いようです!さらに接近して彼らの”歌”の音波解析をザザアザアザアー』

梓「!?どうしたの?」

菫「通信チャンネルに問題はありません!ラブクライシス号からの電波が途絶えて……いや、再びラブクライシス号から通信です!」

『こ、こちらラブクライシス、突然攻撃を受けっ……きゃあっ!ザザザザザー』

『ラブクライシス号!どうなってるの!?
ザザー……本船は航続不能……脱出……ザザ
マキちゃん!こちらホウカゴティータイム号、ラブクライシス号の船員救助に向かう!
待ちなさい!近づ……ザザザ……あなた達も危険よ!
何言ってるんだ!そんなこと言ってる場合じゃ……ザザザ
こちら恩那丸!!異星人船に接近!攻撃してラブクライシス号から注意を引く!
恩那丸!ザザ……勝手な行動は……ザザー
ホウカゴティータイム号から各船、ザザッザー……救助に回れる船は……ザザー
こちら恩納丸、攻撃開始……ザザザー……
戻りなさい!!……ザザザー
ダメだ……ビクともしな……ザザザ
ブラックフリル号からホウカゴティータイム号へ……救助の……ザザ
ザザ…こちらホウカゴティータイ……通信が乱れ……
……ザザザ…ギターアレルギー号、デスバンバンジー号、交戦開始……ザザザ
各船へ!!独自行動はやめ……ザザザザ……
ザザー……ブラックフリル号、被弾……ザザ
……ザザ、恩那丸へ、被害甚大につき戦線離脱……
こち……ナマハ・ゲ号、各船の現在地を……ザザ
ザザザ……撤退……
ホウカゴ……ザザザザ』

梓「っ……!菫!通信を切って!!」

菫「は、はい!」プチッ

直「もう通信網はまともに機能してないみたいですね」

憂「お姉ちゃん……」

純「大混乱みたいだけど……どうする?梓」

梓「もちろん、向かうよ。先輩達や船団のみんなを助けないと。だけど、安易に近づいたらラブクライシス号の二の舞になる。
  まずは通信を分析して策を考えるの。今船団でまともに動けるのはこの船だけだからね」

純「成長したねえ梓」ウンウン

梓「めんどくさいから純はスルーで……菫、さっきの通信データ残ってるよね?例の歌を解析してみて」

菫「はい!」カチャカチャ

梓「このメッセージさえ解読すれば……」

純「メッセージを送ってきてるってことは、何かを伝えようとしてるのは確かなんだろうけどね」

憂「歌を送って来るのはやっぱり友好の印なのかな?」

直「だとしたら、近づいただけで攻撃をするのが意味不明になりますね」

菫「歌をデータベースに照らし合わせたんですが、確認されているどの文化の歌にも合致しません……」

純「しっかし、こっちが会話しようとしてるのに歌ばっかり歌って、失礼だとは思わないのかねえ?」

梓「異星人なんだからこちらの礼儀とは違った礼儀を持ってることだってあるでしょ」

菫「最初は歌を送るのがあちらの礼儀なんでしょうか?」

純「じゃあ私達も歌を歌ってみる?」

梓「……!そうか、もしかして……彼らも、今の私たちと同じことを考えてたとしたら?」」

憂「どういうこと?」

梓「異星人たちはあれだけの高度な宇宙船を持つほどの文明なんだから、異星人同士で文化や礼儀の違いがあることだって当然わかってるはず」

梓「だから、今純が言ったように、私たちの礼儀に合わせてきてくれたんだよ、ちゃんと」

純「どこが?ずっと歌ってて近づいたら攻撃してきたじゃん」

梓「いや、ラブクライシス号が接近する直前、歌声がノイズに変わったでしょ?」

菫「そういえば、そうでした」

梓「彼らは、私達の礼儀が、最初に歌を送ることじゃないとわかった。だから彼らも歌うことをやめて私たちに話しかけてきたんだよ」

憂「そっか!じゃああのノイズが!」

梓「きっと異星人の言語。だけど歌声からいきなり変わって、みんなノイズだと思ってそのまま近づいたり攻撃したから……」

純「報復攻撃されたと」

菫「すぐにノイズを言語分析にかけます!ですがサンプルがかなり少ないので、翻訳は難しいかもしれません……」ピピピピ

梓「大丈夫、今度は適度な距離を保ちながら相手と交信すれば、攻撃されずに言語分析を進めることができるはず」

直「では速度を上げて異星人船に向かいます」

憂「みんな、無事でいて……」

純「大丈夫だよ。あの先輩達やさわ子先生がそう簡単にあきらめたりしないって!」

憂「ありがとう、純ちゃん」


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最終更新:2012年09月28日 21:26