私には幼馴染がいる。

田井中律

仲良くなったのは、小学四年生の頃。
内気で人と話すことが苦手だった私に彼女は何度も話しかけてきた。
作文の発表会をきっかけに仲良くなった彼女は、私の手を引いて色んな世界を見せてくれた。
そんな彼女に惹かれたのはある意味必然だったのかも知れない。
小学校を卒業する前に彼女に告白された。
私の初恋が叶った瞬間、本当に幸せだった。

中学生になると私たちの周りでも恋の話が増えてきた。
クラスの誰が誰の事を好きだとか誰と誰が付き合っているとか。
当然異性の間での話。同性である自分達の恋が普通では無いと気づいた。
いや、本当は気づいて無い振りをしていただけなのだろう。
現に私達は自分達の関係を他の人達に話そうとした事は一度も無かった。
それは高校に入ってからも同じだった。

高校に入ると半ば強引に軽音部に入らされた。
新しい友人や後輩も出来た。
練習よりティータイムのほうが多かったけれど幸せな時間だった。
突然律に避けられるようになるまでは…

高校も三年生になると進学や就職といった進路の話が嫌でも耳に入ってきた。
自分自身、将来について考える時間が増えた。
私は大学の推薦を断り軽音部の皆と同じ大学を受ける事を決めた。
せっかく仲良くなった皆と別れるのが嫌だったし、何より律と離ればなれになるのが嫌だったから。

律が私の事を避けだしたのはそんな時だった。
最初は気のせいだと思ったが休み時間も話しかけてこない、部室でもちょっかいをかけてこない。
避けられているのは明らかだった。
そんな状況に耐えられず落ち込んでいる私を唯が励ましてくれた。ムギや梓が心配してくれた。

その日私は、自分と律が付き合っている事を皆に打ち明けた。


不思議な事に皆驚かなかった。
絶対引かれると思ったのに。
というか「何をいまさら」とか「皆知ってるよ」と言われた。
皆知っているというのは部内ではなく、クラス公認どころか学校公認レベルだと。
その後なんやかんやあって律と話す場を設けられた。

私が部室へ行くと律が一人で待っていた。
私が律になぜ避けるのか問いただそうとすると、律は泣きながら語り始めた。
「別れよう」
頭が真っ白になる私に
「女の私じゃ澪を幸せに出来ないから」
とか、いかにも同性愛にありがちな苦悩みたいな事を言って来たので私も
「私の幸せを勝手に決めるな!!」
と、どこかで見たような返しをしておいた。
その後なんかいい感じになって、隠れて見ていた皆が出て来てなんかうまくいった。

そして冒頭


唯「え?」

澪「いや、だから私もう我慢しなくても良いんだよな?///」

唯(今日のおやつの事考えてて初めのほう聞いてなかった…)

唯(でも我慢とか言ってるからおトイレの事…だよね…?)

唯「うん、澪ちゃん、我慢はダメだよ。体に悪いよ」

澪「そ、そうか、そうだよな!!唯もいつもしてるもんな!!」

唯「私もっていうか皆してるよ?(テンション高いな~、そんなにおトイレいきたいのかな)」

澪「そ、そうだな…町でもたまに見かけるし」

唯「ええっ!?ま、町じゃ見た事ないよっ!!///」ガタッ

澪「そうか?公園とかでも見かけるけど」

唯「み、澪ちゃん!?」

澪「はぁ、早く律こないかなぁ」ソワソワ

唯「りっちゃんとおトイレ行くの?」

澪「え?なんでトイレ?」

唯「あれ?だって我慢できないって…」

澪「ち、違う私は律に甘えたいって言ったんだ!!///」

唯「ほえ?」

澪「ほ、ほら、今までは皆に隠してたけど、恥ずかしいけど私たちが付き合ってた事、なぜかみんな知ってたんだろ?///」

唯「うん、まあ」


・・・一年前

紬『あ、ちょっと』チョイチョイ

モブ子『…私達かな』

モブ美『なんですか?』

紬『あのね、噂なんだけどりっt…ゲフンゲフン、軽音部の田井中さんと秋山さんって付き合ってるらしいわよ』

モブ子『えー!!』
モブ美『本当ですか!?』

紬『あくまで噂なんだけど間違いないと思うわ。本当にお似合いよね~』

モブ子『そうですね(すごいこと聞いちゃった!!)』

モブ美『確かにいつも一緒にいますもんね(これはファンクラブの会報に載せないと!!)』

紬『それじゃあ私はこれで…あ、そこのあなたここだけの話なんだけど……』


唯(あの時のムギちゃん楽しそうだったなー。でも澪ちゃんには言わないほうが良いよね)

唯「本当なんでバレたんだろうね~(棒)」

澪「と、とにかく、みんな知ってるなら隠す必要もないし…」

澪「最近、律に避けられてたから私からも話しかけるのずっと我慢してたんだ…」

唯「うんうん」

澪「だ、だから唯が梓にしてるみたいに抱き着いたりしたいなって///」モジモジ

唯「そうだったんだー。うん、りっちゃんもきっと喜ぶよ!!」

澪「そ、そうかな!」

澪「はあ、律、早く会いたいよう…こんな事なら掃除当番まっとくんだった…」ソワソワ

唯「まあまあ、そろそろりっちゃんも来るころだよ」

澪「りつぅ~早く来てぇ~」

唯(澪ちゃんセリフがえっちぃよ///)

澪「あああ、りつぅ~…」

澪「……来る!!」バッ

唯「えっ?」

ガチャ

律「おまたせ~」
澪「りつぅ~りつぅ~」ダキッ
律「うわっ!?」

律「な、なんだ?どうした澪!?」

澪「律が来るのずっと待ってたんだ!!」ギュー

律「ど、どういう事だ?」

唯「あのねりっちゃん、澪ちゃんはりっちゃんに甘えたいんだって」

律「は!?ていうか唯、見てないで起こすの手伝ってくれ」

紬「ダメよ!!澪ちゃんもっと抱き着いて!!」

唯「ムギちゃんいつのまに!?」ビクッ

紬「そこに百合があれば私はあらわれるわ」

唯「さすがムギちゃん!!」

律「いや、ムギも掃除当番だったから私と一緒に来ただけだろ」

澪「なに!一緒だったってまさか浮気じゃないだろうな!!」

律「そ、そんなわけないだろ!!私には…澪だけ…なんだからさ」

澪「律…うん、私も…律だけだよ///」

紬「ああ!嫉妬澪ちゃん良い!それを優しくなだめるりっちゃんもいいわ!」

唯「二人とも良いな~。あずにゃんも早くこないかなぁ」

律「それよりほら、一回起きよう。澪の制服汚れちゃうだろ?」ナデナデ

澪「…うん」

紬「もっとみたかったのに~」

ガチャ

梓「すみません、遅くなりまし…た?」

唯「あ、あずにゃーん!」

梓「先輩方どうされたんですか!?」

律「いや~澪が離してくれないんだよ」テレテレ

澪「りつぅ~りつぅ~」ギュッ

紬「うふふふふふ」ウットリ

唯「あのね、澪ちゃんはりっちゃんに甘えたいんだよ」ダキッ

梓「ま、まあ昨日あんな事があったんで少しは分かりますけど」

梓「って」

梓「唯先輩離してください///」

唯「やだ~りっちゃん達ばっかりズルいもん」ギュー

梓「う…///」

梓「で、でも恥ずかしがり屋の澪先輩があんなに甘えるなんて…」

紬「ふふふ、最近りっちゃんに避けられてたから、甘えたい>恥ずかしさになってるのね」

澪「そうだそうだ!!だいたい律が、訳の分からない事を言って二日も私にかまってくれなかったのが悪いんだ!!」

唯「そうだそうだー!!りっちゃんが二日も、え、二日?たった二日で澪ちゃんこの世の終わりみたいな顔してたの!?」

澪「あああ、今思い出してだけでも二日も律と話さないなんて…

澪「りつりつりつりつりつりつりつりつ…」ガタガタ

律「澪、もう二度と澪を悲しませる様な事はしないよ」ギュッ

澪「律///」ギュウ

梓「で、でも学園祭も近いので練習はしてもらいますよ」

澪「やだ!もっと律に甘える!!」

唯「そうだよ!!まだお茶もしてないしりっちゃんもっと言ってやって!!」

律「あ~、でもさすがに練習しないとそろそろまずいかも」

梓「そうです、澪先輩の言うとおりです!!」

律澪「え?」

唯梓「あれ?」

紬「あらあらまあまあ」

澪「な、なんだよ律!!そんなに私から離れたいのか!!」

律「そんなわけないだろ。ただカッコ良くベースを弾くみおしゃんがみたいなーって」

澪「!?バカ///」

澪「そういう事なら私も律がドラム叩く所見たいし///」

紬「うふふ、私いま凄くリアルが充実してるわ!」

梓「と、とにかく練習してくれるんですね」

澪「まあ、律がそう言うなら仕方ないな///」

唯「え~、ケ~キ~」

律「まあまあ、とりあえず一回合わせとこうぜ」

梓「そうと決まればさっそく…」

梓「あと唯先輩いいかげん離して下さい」

唯「ぶーぶー」スッ

律「よーし、それじゃあ準備も出来たし何から行っとく?」

梓「そうですね、取りあえずふわふわで良いんじゃないでしょうか」

唯「あ、私歌いたい!」

澪「…」ピクッ

律「じゃあいくぞ、1234,123」

ジャカジャカジャン~♪

唯「君を見t…」

澪「律を見てるといつもハートドキドキ~♪」ジー

律「」

梓「…」

紬「♪」


澪「おきにいりーのりっちゃんだいて~♪」ジー
澪「ふわふわターイム♪」ジー

ジャジャッジャーン~♪

紬「すばらしい!すばらしいわ!澪ちゃん!!」パチパチ

澪「ありがとうムギ」

澪「今までで一番気持ちのこもった歌になったよ///」

律「いやいやいや、いきなり歌詞間違ってたし…」

紬「何を言ってるのりっちゃん!あの歌詞は全国の律澪ファンの九割が一度は考え」

紬「さらにその内七割が実際口ずさんだ伝説の歌詞よ!!(琴吹調べ)」

律「り、りつみお?何言ってんだムギ?」

紬「こっちの話しだから気にしないで」ニッコリ

唯「それに澪ちゃん演奏中ずっとりっちゃんの事見てたよね…」

律「うん、見てたっていうか体ごとこっち向いてたな」

澪「だって律が見たいって言ってたし、私もみたかったし///」ゴニョゴニョ

唯「う~ん。今は、練習だから良いけど本番中はさすがに駄目だよ?」

澪「いや、良いんだ唯…」

澪「私の歌がたとえ皆に届かなかったとしても…ただ一人、律に届きさえすれば…」

唯「澪ちゃん…」

律「いやいや、良い話っぽく言ってるけどそれじゃダメだろ…」

梓「…です」

律「ん?」

梓「こんなの澪先輩じゃないです!!」バン

澪「な!?どうしたんだ梓!?」


梓「私の知ってる澪先輩は、優しくてカッコ良くて頼りになる先輩です!!」

律「私の知ってる澪は、恥ずかしがりの怖がりですぐゲンコツするぞ」

律(まあ私しか知らない可愛い澪も知ってるけど)

紬「りっちゃん!!りっちゃんしか知らない可愛い澪ちゃんってどんなの?」

律「心を読むなよ」

梓「と、とにかくこんなんじゃ練習にならないです!!」

唯「まあまあ、あずにゃん落ち着いて」ナデナデ

梓「うう…一体どうしたら…」


紬「…」

紬「…!」ピーン

紬「梓ちゃん、梓ちゃんは早く練習がしたいのね?」

梓「はい…」

紬「澪ちゃん、澪ちゃんはりっちゃんに甘えたいのよね?」

澪「うん///」

紬「分かったわ!」

紬「りっちゃん!!」

律「お、おう?」

紬「澪ちゃん!!」

澪「な、何だ!?」

紬「今すぐここを自分の部屋だと思っていちゃいちゃするのよ!!」

律「」

澪「///」

梓「む、ムギ先輩、何を言ってるんですか!?」

律「そ、そうだよ、どういうことだムギ!?///」

澪(律といちゃいちゃ…///)

紬「あのねりっちゃん、そもそも今の澪ちゃんはりっちゃんがかまってあげなかったからその反動でこうなっちゃたの」

紬「だから逆に二人がいちゃいちゃすれば、バランスが取れて元に戻ると思うの」

唯(ムギちゃん、目が本気だ…)

梓「いくらなんでもそんな理屈…」

紬「梓ちゃん!もうこれはりくつじゃないの!(私が見たいの!!!)」

紬「今はこれしか方法がないの、梓ちゃんも早く練習したいでしょ」

梓「…はい」

紬「そういうことだから、りっちゃん、澪ちゃん」

律「う…おう(まあ澪といちゃいちゃ出来るのは嬉しいけど)」

澪(律といちゃいちゃ///)

唯(凄いムギちゃん、強引にみんなを納得させたよ)

律「えーっと、じゃあ…」ドキドキ

澪「うん///」ドキドキ

律「(とりあえずソファーに座ろう)よっと」ストッ

律「みーお、こっちおいで」チョイチョイ

澪「ん///」スッ


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最終更新:2012年10月02日 13:42