律「ああ、愛しの秋山先輩、こんなお手紙で気持ちをお伝えするのも気が引けますが、それでもっ」

澪「うーん……」

律「実際、中学でも同姓からモテたし」

澪「何それ?」

律「ほら、いっこ下に可愛くて有名なのいたじゃん。あれ名前なんだっけ……」


紬「まず具を焼き」

  ジュウウウウ……

紬「汁を」

  ジュワワワワワー……

紬「できたー」

澪「梓もやってみなよ、べビスタ」

梓「にゃ」

律「面倒見がいいなー。案外、お似合いかもよー」

澪「まだ言うか」

紬「……」

律「ほら、ムギも熱い目で見てるぞ~。そのうち、あずにゃん、タイが曲がっていてよ、てな」

澪「はいはい」

紬「もういちまい~♪」

律「えーもっと焼いてせんべいにしてくれよう」

紬「ゲル状がいいの~♪」

唯「次、お好み焼きにしよー」

澪「……」

梓「あむあむ」

澪「(律がバカ言うから、変に意識しちゃうじゃないか)」

澪「あー、梓」

梓「はい」

澪「ど、どう? もんじゃ焼き」

梓「はぁ。なかなかいいんじゃないでしょうか」

澪「そう、なかなか……」

澪「(うわー今少しどもったよなんだよやめろよもー)」

唯「お好み焼きだー!」

律「マヨを、かけるんだ!」

紬「ぺったんぺったん♪」


澪「……あのさ、これ話したっけ」

梓「はい?」

澪「そのうちさ、外でライブやりたいなって。あ、外っていうのは路上って意味じゃなくて」

梓「はぁ、ライブハウスですか」

澪「うん。そうだな、年明けあたりに出来れば」

梓「いいんじゃないですか? ライブは疲れますけど」

澪「そっか」

梓「照明が熱いとこもあるし」


律「いやぁ、食った食った」

唯「さすがにご飯はいらないかも」

紬「楽しかったー」

律「そうだ、クリスマスはどうする? また唯の家に集まる?」

唯「私はいいよー」

梓「あのー……私、クリスマスには予定が……」

律「彼氏ですよ奥さん」

唯「若い子はいいわねぇ」

梓「彼氏ではありません」

梓「クラスの人の猫を預かることになっていて」

律「クリスマスの日に?」

梓「はぁ。それで外出は出来ないんです」

紬「その日は梓ちゃんのお家では用事はないの?」

梓「その日は両親共に出かけるんです」

律「なんだ、じゃあ、梓んちでパーティーやればいいじゃん」

梓「え」


唯「あずにゃん、いい?」

梓「はぁ……いいですけど」

律「よーし、決まり! あ、プレゼント買わなきゃな」

唯「りっちゃん、交換じゃなくて景品にするっていうのどうする?」

紬「ウチにビンゴがあるから。それ持っていくね」

梓「……」

澪「みんな、梓と遊びたいんだよ」

梓「はぁ」

澪「わたしだって、梓と遊びたいしね」




中野梓 小学4年生のころ


  ビュウウウウウウウウウウウウウ
  ゴオオオオオオオオオオオオオオ
  キイイーーーーーーーーーーンン

「逃げる奴はベトコンだ!逃げない奴は訓練されたベトコンだ!」
「ガキの頃から俺の後ろばっかチョロチョロついてきやがって!」
「ワーグナーだ!」「これがジャンボジェット」「ユング少佐は?」

梓「…………ブツブツ」


―梓はテレビばっかり見てるけど、なんだあれは?

―それがね、教育番組とか映画とかアニメとかで写る飛行機のシーンだけ録画して、
 ずうっっと、そればっかり見てるんですよ。





現在
クリスマスの中野家


猫「ニャーン」

梓「……」

猫「ニャッ」

梓「……にあー」

猫「……」

梓「にあー」

猫「……」

梓「にあーにゃにゃにゃ」

猫「……」

梓「にあーにあーにあーにあー」

猫「ニャー」

梓「にあー」

猫「ニャーッ!」

梓「にゃ……」

猫「……」

梓「あ、いっちゃった……」




中野梓
小学4年生
工事現場にて


カーンカーンカーンカーン
ガガガガガガガガガガガガガガガ

梓「……」つテレコ

梓「へへっ、ここはいい工事だ」

梓「わあ、セミみたいな音だ」

梓「ぐっふっふっふっ」





現在
中野家

梓「あわぁずぶらぁ~いん、なぁきゃんすぃ~♪」

猫「……」

梓「……なんだ、どっかいったんじゃないのか」

猫「ニヤーウ」

梓「サラミ食べる? ペットショップガールズで買ったやつ」

猫「ナゥ……」ガツガツ

梓「猫語は通じなくて、日本語は通じるのか」

カッチコッチカッチコッチ……


猫「……」

梓「メトロノームに釣られて首を振っているな」

梓「ダンス、ダンス、ダンス♪」カチャカチャ


Pet Shop Boys - Go West
(http://www.youtube.com/watch?v=UNFwQmZvnuw)


梓「かもかもかも……」ユラユラ

梓「ジタバタして疲れた……ねむい」

猫「ニャー」ピョン

梓「……膝に乗られた」

猫「……」

梓「ま、いいや。おやすみ、あずにゃん84号……」





中野梓
小学4年生

―梓、なんの本を読んでるんだい?

梓「さんてぐじゅぺり」

―ほー、星の王子様か。

梓「ううん、夜間飛行」

―それじゃあ、梓は飛行機が好きなんだねー。

梓「飛行機の飛んでる音が好きなの。でも、これは本だから音がしない。あと、爆発の音も好き」

―ほー。

梓「パパのギターの音も好き」

―ほほー。

―梓、これは梓のギターだよ。今度からは梓の好きなときに弾いていいぞー。

梓「わーい」

 ジャラアアアアアアアン
 …ィィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!

―おっと、いきなり大きな音が出てビックリしたねー。

梓「きゃっきゃっ」





現在
中野家

キンコーーン……

梓「む……誰か、きた」

梓「澪先輩かな」

猫「……」

梓「あれ、あずにゃん94号がゲロ吐いてる」

梓「とりあえず、先に玄関に……」

ガチャ……

梓「はい」

さわ子「ういーす」

梓「……」

さわ子「……」

梓「……」

さわ子「あ、あれ? 今日はここでクリスマス会じゃないの?」

さわ子「なーにー、まだ誰も来てないの」

梓「はぁ」

さわ子「もう、しょうがないわねー。あ、猫……ってなんか吐いてる!」

梓「さっきから出してるんですが、具合が悪いんでしょうか?」

さわ子「ずいぶん冷静ね……あ、なんだ毛玉出してるだけだ」

梓「けだま?」

さわ子「猫は体の毛を舐めてるでしょう? それが胃にいっちゃって時々吐き出すのよ」

梓「ふーん。まあ、あずにゃん107号は無事ということですね」

さわ子「107?」

さわ子「へー。梓ちゃんのお家ってこんな感じだったのー。いいソファーねぇ、コレ」

梓「……」

さわ子「CD レコードもたくさん。うわぁ、ずいぶんまた懐かしいのが」

梓「……」

猫「……」

さわ子「みんなまだかしら……」

梓「猫じゃらし、やる?」

猫「ニャァー」

さわ子「(無理! 私ひとりじゃこの子の相手無理! 誰かはやく来て!)」

さわ子「あ、あーメタリカなんて聴くのー。今の子はもっとメロメロなのが好きだと思ってたけどー」


梓「……」つ猫じゃらし

猫「フガフガ」

さわ子「(スルーされますた)」

 キンコーーン……

紬「こんにちはー」

さわ子「ありがとう! よくきてくれたわねえ、はやくあがって!」


紬「え? 先生泣いて……」

紬「先生が出てくるからビックリしちゃった」

さわ子「私じゃ間が持たなかった、持たなかったのよ~」


紬「それが預かった猫?」

梓「そうです」つ猫じゃらし

猫「フガフガ」

紬「かわいい。私もやってみていい?」

梓「ドウゾ」

紬「そーっと」

猫「フガ……」

紬「わあー」

さわ子「飼い猫だから人馴れしてるのかしら」


紬「こっちも、こちょこちょ」

梓「なんです?」

紬「ウフフ、梓ちゃんもあずにゃんだから」

梓「にあー」

紬「ほぅ……こういうのも、いいわ」

さわ子「私は無視されたのに……まさに借りてきた猫」


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最終更新:2010年02月20日 00:11