菫(おはようございます。ドラム初心者の斉藤菫です)


菫(夏休みが終わって新学期が始まりました。だけど夏の暑さは終わってくれません……先日も庭でカブトムシを見かけました)


菫(今年は去年までより充実した長期休みでした。イタズラに増えるお仕事を夜に回したりして、ドラムの自主練を精一杯楽しめました)


菫(これは直ちゃんが練習に付き合ってくれたおかげです)


菫(その直ちゃんは まだお家でおやすみでしょう)


菫(なにせ今は早朝。登校の許されたギリギリの時間帯)


菫(つまり わたし一人で登校してきたわけです)


菫(同時にチャンスですっ)


菫(たまたま見かけて以来も、貴女はほぼ毎日部室に通い続けておられますね。だから今日も、いつものアレを期待して来ました)


菫(ぬき足 さし足 しのび足)


菫(音を立てず階段を上るなんてメイドなら基本中の基本ですっ)


菫(決して貴女のジャマはしません。わたしはただ眺めて…いえ、見守っていたいだけ)


菫(部室の扉に窓があってよかった。おかげで室内の様子をしっかり確認できるから)



梓「~.~・"~."~・"~」


梓「…………」首プルプルプル


梓「~.~・~.~・"~♪」



菫「はぁ~ 梓センパイの発生練習 カワイイなぁ~♪」ハゥ


菫「あいかわらずみなさんに隠して練習してるんですね こんな早い時間に」

菫「フフ、ドア越しでもよく聞こえますよ先輩の声」


梓「~.~・~.~・~♪」


梓「…」ガッツポーズ!


菫「うまくいったみたい。仕草がいちいちカワイイな」


梓「ゴクン ゴクン」


菫「あぁ のど渇いて持参の水筒飲んでる…。こういうときお茶を入れてあげたいのに 私は見てるしかできない……」


梓「……」トテトテ トテトテ


ラジカセ「 」


菫「音合わせ用のテープ巻き戻し中。始めからもう一回発声するっぽい」

菫「クスクス、梓センパイが動くとツインテがぴょんぴょこ跳ねて まるで生きてるみたい」

菫「あっ! 片足で立ってバランスとりはじめた。ひろげた両腕が可愛いらしい…これはレアなセンパイ!」

菫「なのにラジカセの方を向いてて顔が見れない! こっち振り向いてくださいセンパイ! お顔を見せてください!」


ラジカセ「~・~・~・~――」


梓「~・~・"~」


梓「…!」


梓「……コホンッ」


梓「~・~・"~・"……」


梓「~・! ~・!」


梓「……~・~・"…」


梓「~~~~~~!!」


菫「あぁ… またうまく発声できなくていらだってる……カワイイけど。全体的に」

菫「がんばってください先輩!」

菫「えっと… いつもならあと15分で自主練終える」

菫「そしたら先輩はラジカセとか片付け始めるから、わたしはここを離れる。先輩が戸締まり終えて部室の鍵を返したら、」

菫「こんどは私が部室でくつろいで、朝の先輩を思い出しながら癒される!! 完璧!!」

菫「フフフフフフフフフフ」


梓「うぅ寒い……冷房入ってるのこの部屋?」


梓「~・~・~・~゚"~♪」


菫「こうして見てると合宿を思い出すなぁ」

菫「誰もボーカルに乗り気じゃないから、梓センパイがむりやり持ち上げられて、なりゆきでピアノの音に声を合わせるレッスンしたんだよね」

菫「はぁ… ちょっと音痴で苦労してるセンパイいじらしくて~♪」

菫「それにきれいに焼けたお肌に、肩紐で日焼けてない線が目立ってチャームポイント♪ あんなにこんがり焼けた子 近場では見ないな~」

菫「あっ…」

菫「あぅぅ………」

菫「……日焼けの話から合宿のおふろの梓先輩を思い出したらドキドキしてきた…///」

菫「見た目どおりなんだもん…わたしと違って、いろんなところがつるつる……お肌とか…うん…///」

菫「露を転がすような肌ってあんな感じだろうな…。お肌だけでなくて、髪の一本一本もつるつるさらさらしてた。髪下ろすと梓先輩ストレートでくせっ毛ないしで驚いちゃった」

菫「…あの綺麗な髪を毎日お世話してみたい」

菫「あぁぅ またさわってみたい……櫛でとかしたい…お嬢様の髪とどんな風にとかし心地ちがうかな……匂いも堂々と嗅ぎたい…お世話したあとにうれしそうな顔で振り向いてお礼言ってほしい…ハァハァ…///」

憂「へぇ このところ梓ちゃんが朝早いのは こういうことだったんだ♪」

菫「うひゃーーっ!?///」

憂「おはよースミーレちゃん」

菫「憂センパイ!? なんでここに!」

憂「奥田さんもいるよ」

直「……」ホクホク

菫「お、おはよう直ちゃん…なんで嬉しそうなの?」

菫「ってそうじゃなくて! いまのひとり言聞いてました?!」

憂「ううん? ブツブツとしか」

菫「ホッ よかった……(バレたら軽音部に居られない…)」

憂「やけに楽しそうなのは伝わってきたけど♪ なに考えてたの?」

菫「うああ……ぜったいに言いません!///」

菫「あ゛っ声潜めないと! 梓センパイのジャマしちゃいます!」

憂「さわいでるのスミーレちゃんだけだよ…?」

菫「あうっ いけない…」

菫「とにかく、静かにしましょう。梓センパイに気づかれちゃいますから!」

梓「ええ おかげさまでッ!!///」

菫「ヒャーーーーーーーッ!!」

梓「いつから見てたー!!」

菫「ヒィッ! 四十分くらい前ですぅ…」

梓「ほとんど最初っからじゃん!! ウガァーーーーッ///」

菫「ごめんなさーい!!」

憂「スミーレちゃんを怒っちゃダメだよ梓ちゃん!」

梓「ちがう! 自己嫌悪!」

梓「アーーもうッ!! 一人きりだと思って油断してた! 発声練習ミスってばっかだし! 恥ずかしいとこ見られまくりじゃん!」

憂「恥ずかしくなんてないよ!」

梓「なっ」

憂「ほらスミーレちゃんの腕、抱いたらこんなに震えてる」ギュッ

菫「あ…その……」ブルブル

憂「梓ちゃんがおかしくなったらスミーレちゃんは自分を責めるよ? 部長の梓ちゃんが頑張ってるとこ見て、自分を奮い起こしたかっただけなのに!」

梓「ぐっ…部長の……」

憂(効いてる効いてる)

憂「ね? スミーレちゃん」ニコッ

菫「は…はい……」

菫(すいません、やましい気持ちでいっぱいでした)

梓「…コホンッ」

梓「ま、まぁそーゆーことなら? 楽器経験者のわたしだって菫みたいに地道な努力を重ねてきたんだし? 今日見たことは……そうだ! 今はヘタでもいつか努力は実る、て信じるキッカケになればいいんじゃないかなあ?」

菫「は…はい! これからも頑張ります先輩!」

直「でも覗いてたの今日だけじゃないでしょ菫」ホクホク

梓「いつから見てたーーーーッ!!///」

菫「せっかく治まりかけてたのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

梓「うわあ……もうダメだ。一人になるのがこわい…無防備なわたしを誰かに見られてるかもと思うと……ぁぁ…」

憂「おおげさだなぁ」

菫「ごめんなさい…」

梓「もう自主練なんてしないッ!!」

菫「えぇー!?」

唯「梓ちゃんこっち向いて!」

梓「こんどは何! …ってまた唯センパイの真似かーッ!!」

唯(憂)「ほらほらだいすきな唯センパイだよー!」

梓「こっちくんな! 抱きつき禁止!」

憂「ひどいよぉ 一人はイヤだっていうからお姉ちゃんになってすぐ傍で見守ろうと思ったのに(はあと」

梓「背後霊かッ……」ゾゾゾッ

憂「わがままだなぁ」

憂「じゃ 梓ちゃんの自主練にスミーレちゃんが付き添ってあげて? これなら一人じゃないよ」

菫「へっ…?」

直「あ それなら私もお手伝いします」

梓「えっ えぇ!? いいよしなくて! 菫たちは菫たちで頑張ってよ! わたしが自主練やめるってだけだし!」

憂「ほんとうにやめちゃうの…?」

憂「あずさちゃん見てると心配になっちゃう…」

梓「なにがよ…」

憂「去年のお姉ちゃんたちも今のあずさちゃんみたいにすぐ挫折してたのかなって……」グスン

梓「ッ!!」

梓「先輩たちはそんなことしないッ…!」

梓「あーもう! わかったよ! 自主練! やればいいんでしょ やれば!」

菫「せんぱぁい……!」

直「全力でサポートしますよ」

梓「待って それは一旦保留で…」

菫直「……」ショボン

梓「も、もうすこしだけ一人でやらせて……自分が納得できるところまで出来るようになったら、ね?」

菫「はい、いつでも言ってください」

梓「あと覗き禁止っ!」

菫「は…はいっ(ギクッ)」

梓「よーっし! ごたごたしたけど 放課後はしっかり練習しよう!!」

菫直「おーっ!」

憂「おー!」


梓 < 自主練中に見てきたことは内緒にしてネ?

菫 < 目がマジですぅーっ!!


憂(お姉ちゃんたちの影響力すごいなぁ)

憂(すこし引き合いに出すだけで梓ちゃんが立ち直った。なんだかお姉ちゃんに妬いちゃいそう、なんてね♪)

憂(だけど…。んー……スミーレちゃんたちと距離をひらいてるように見えるなあ…。自主練に付き合ってもらえばいいのに)

憂(梓ちゃんは自覚なさそう)



昼休みの教室


菫「あぁー また食事中に本読もうとする」

直「……・・・」ジッ

菫「目で抗議しないで。ごはん落として本汚したらどうするの」

直「・・・・・・」イソイソ…

菫「本しまう最中までこっち見続けないで…」

直「…今日も私とお昼食べるの?」

菫「えー! さっきの注意でそこまで傷つく!?」

直「いや そうじゃなくて…」

直「なんでもない」ホクホク

菫「ちょっとなにその悪そうな顔ー! 言ってよぅ!」



クラスメイト一同(奥田さんの表情よく読めるなあ菫ちゃん……悪そうな顔…?)



菫「ねっねっ 直ちゃんのきんぴらと私のおかず交換しよ」

直「肉」

菫「やった♪ いただきっ」

直「それはそうと菫さ、実際いつから中野先輩の朝練見てたの」

菫「ゴフォオッ!」

直「いい噴きっぷり」ホクホク

菫「な、なんで蒸し返すのその話題!」

直「気になる」

直「ただ自主練してるだけなら、菫に見られてたからって普通あんなに荒まないでしょ」

菫「不良みたいに言わないであげてよぅ」

菫(話すな、て梓センパイに念押されてるしごまかさないと……)

菫「直ちゃんが聞いてもつまんないよ? うん、きっとそう! まちがいなし! もしかしたら私たちにはなんでもないことでも、梓センパイにとっては恥ずかしいことなのかも?」

直「そのなんでもないことの詳細を聞かせて。なんでもないんだし」ゴソゴソ

菫「おもむろにパソコン取り出そうとしなーいっ。なにする気」

菫「とにかく! 誰にだってプライベートがあるんだよ直ちゃん!」

直「…なのに菫は中野センパイのプライベートの練習を覗き見てたと」

菫「うっ…」

直「多分たまたま練習してるとこを目撃して手伝いたかったけど、ジャマにならないか心配で今日まで声かけられなかったんだろうけど」

菫(半分合ってる…)

直「見方を変えれば ストーカー」ホクホク

菫「ストー…人聞きわるいこと言わないでよぅ!」

菫「私そんなんじゃ…………ハッ」

菫(アレ そうだよね? 物陰から気づかれないように女の子をこっそり覗いて 楽しんだり興奮したり…… これってストーカー以外のなにものでもないんじゃ!? でもわたしも女の娘だから… 待って 男のひとと女の人で差別しちゃいけないって言うし、やっぱり犯罪!? でもでも わたし やましい気持ちはあっても お姉ちゃんの好きなソッチの気はないから犯罪にならないよ!! そりゃ ながめたり抱きしめたりしたいけどそこまでだし!! アッ わたしが女の子にそういうことするとお姉ちゃん眼が怪しくなってた!! ソッチ系ってキ、キスとかタイが曲がっるのを直すやつで ながめたり抱きしめたり程度は ってだからそれがストーカーだって直ちゃん言ったじゃん!! じゃ わたし ストーカーなの!? ううん そんなはずはないよ ないよね ないない お姉ちゃんに賭けて言える ってそのお姉ちゃんが信用できな」


直「ごめん言い過ぎt」

菫「ちがうも゛ーーーーーーーーーんッッ!!///」

直「おぉっ!?」

クラス「!?」


2
最終更新:2012年10月04日 21:07