>放課後

梓(今日の部活はお休み)

梓(だけれど私は部室に向かっています)

梓(ムギ先輩に呼び出されてしまったから)

梓(なんの話でしょうか?)

梓(そんなことを考えながら階段を登り、扉を開くと、ムギ先輩と目が合いました)

梓(ムギ先輩は少し顔を赤らめ、緊張した面持ちです)


紬「来てくれたんだ」

梓「はい」

紬「あのね! あずしゃちゃん」

梓「……プッ」

紬「///」


梓「落ち着いてください、よしよし」ナデナデ

紬「ご、ごめん」シュン

梓「くすっ。でもムギ先輩が噛むなんて珍しいですね」

紬「……うん」

梓「それで、なんの用事だったんですか?」

紬「あのねっ、好きなの」

梓「えっ」

紬「私、梓ちゃんのことが好きなの!」

梓「私のことが……好き?」

紬「うんっ!」

梓「えっと……」

紬「……」

梓「す、すいません。あまりに突然だったので面食らってしまって」

紬「ご、ごめんね」

梓「あ、謝らないでください……。ムギ先輩が私のこと好きだなんて……」

紬「ずっといいなって思ってたの」

梓「ずっと前から……」

紬「うん」

梓「あの、3日だけ考えさせてもらえますか?」

紬「うん。何日でも待つから」

梓「……すぐに返事できなくてすいません」

紬「ううん。いいの。考えてもらえるだけでも、幸せだから」ニコ

梓「ムギ先輩……」

紬「それじゃあ私、もう帰るね。バイバイ」


>中野宅

梓(ムギ先輩に告白されてしまった)

梓(ムギ先輩……)

梓(ティータイムを否定した私を笑顔で迎え入れてくれた優しい人)

梓(世話焼きで気遣いができて、いつもにこにこ私達にお茶をいれてくれる人)

梓(でも実はちょっとおっちょこちょいで食いしん坊で……かわいい人なんだ)

梓(……いいにおいもするし、おっぱいも大きいし)

梓(今まで恋愛対象として見たことはなかったけど……)

梓(……)

梓(……)

梓(……)

ターン♪タタタタタターン♪

梓(あれ、メール。澪先輩からだ)

梓(今から公園に来て欲しいって書いてある)

梓(何の用だろう?)


>公園

澪「……梓、ちゃんと来てくれたんだ」ホッ

梓「澪先輩?」

梓(今日のムギ先輩に負けないぐらい真っ赤だ)

澪「梓。これを受け取って欲しい」

梓「封筒ですか?」

澪「あぁ」

梓(封の部分にハートのシールが貼られたピンクの封筒。これって……)

梓(なかには便箋が一枚)

梓(【好きです】)

澪「読んでくれた?」

梓「はい」

澪「わかると思うけど、梓のことが好きなんだ。私と付き合って欲しい」

梓「…」ポカーン

澪「梓?」

梓「…ハッ! あまりのことに一瞬意識が飛んでしまいました」

澪「そんなに意外だったかな?」

梓「はい……まぁ」

梓(まさか一日に二回も告白されるなんて……それも澪先輩とムギ先輩に)

澪「それで……どうだろう?」

梓「えーっと……」

澪「返事だよ、返事」

梓「……それは」

澪「いいんだ。振るならスッパリ振ってくれ! 嫌だけど我慢するから……」

梓「……3日だけ」

澪「えっ」

梓「3日だけ、考える時間を頂いてもいいですか?」

澪「あっ……うん」

梓「ごめんなさい澪先輩。いきなり告白されて頭の中がまとまらないんです」

澪「いや、いいんだ。私が突然過ぎたのもあると思うから」

梓「だけど……」

澪「もう暗くなっちゃうから帰るよ。返事待ってるから」

梓「……はい。おやすみなさい」


>梓宅

梓(澪先輩に告白されてしまった……)

梓(うん)

梓(モテ期到来?)

梓(……どうしよう)

梓(澪先輩は憧れの先輩で)

梓(とっても綺麗でおっぱいも大きくて)

梓(軽音部の中でで一番私に優しくしてくれて)

梓(お姉ちゃんみたい、って思ってたけど)

梓(その澪先輩が私のこと好きだったなんて……)

梓(……)

梓(……)

梓(ムギ先輩と澪先輩)

梓(どちらか選ばなきゃ駄目だよね)

梓(……純に相談してみよ)


>一時間後

梓(駄目だ。純と話をしても埒が明かない)

梓(……あたりまえだよね。私の気持ちの問題だもん)

梓(私、どっちが好きなんだろ……)

梓(……)

梓(……)

梓(……)

梓(ああぁ、わかんない)

梓(……もう寝よ)


>翌日
梓(授業中なんて全く頭に入ってこなかった)

梓(ずっと先輩たちのことを考えていたから)

梓(お昼休みが始まると同時に一通のメールがきた)

梓(差出人は澪先輩)

梓(用件はわからないけど、部室に来て欲しいって書いてある)

梓(……行こう)


>部室

澪「あっ、梓」

梓「こんにちは澪先輩……昨日は」

澪「あぁ、昨日のことなんだけど」

梓「すいません、もうちょっとだけ待ってもらえますか」

澪「そうじゃないんだ。そうじゃなくて……」

梓「はぁ」

澪「昨日のこと、忘れて欲しい」

梓「えっ」

澪「ごめん。本当にごめん。こんなの良くないってわかってるけど、忘れて欲しいんだ」

梓「もしかして、好きじゃなくなってしまいましたか?」

澪「梓には……」

梓「私には?」

澪「梓にはもっとふさわしい人がいるから」

梓「もしかして、ムギ先輩のことですか?」

澪「……うん」

梓「どうして?」

澪「ムギはさ、とってもいい奴なんだ」

梓「いい奴?」

澪「うん。梓だって知ってるだろ。ムギが友達のためならどんなことでもする奴だって」

梓「だけど、それと澪先輩の告白がどう関係するんですか?」

澪「まずは、私の話を聞いてくれ」

梓「……はい」

澪「さっきも言ったけど、ムギはとってもいい奴なんだ」

澪「私さ、すぐ落ち込んじゃうんだけど、そんな私のことをムギはいつも慰めてくれる」

澪「困ったことの相談にも沢山乗ってもらった」

澪「ムギと話してると、なんだか安心して、なんでも話せちゃうんだ」

澪「実は今回の告白だって話そうか迷ったんだ。思いとどまったけど……」

澪「私さ、ムギにだけは頭が上がらないんだ。弱い部分沢山見せちゃってるから」

澪「あっ、別にそれが理由で引き下がるわけじゃないぞ」

澪「私よりムギのほうが梓のことを幸せにできる。そう信じてるから、身を引こうと思うんだ」

澪「……わかってもらえたかな」

梓「言ってることはわかります。だけど!」

澪「そうか。わかってくれたか。じゃあ私はもう行くから」ダッ

梓「澪先輩! 待ってください、澪先輩!!!」


梓(私は澪先輩を追って駈け出しました)

梓(でも、澪先輩は思ったより早くて……)

梓(やがて見失ってしまいました)

梓(途方にくれた私が立ち止まり、呼吸を整えていると、後ろから私を呼ぶ声がしました)


紬「梓ちゃん!」

梓「あっ、ムギ先輩」

紬「良かった。教室にいなかったから、随分探したのよ」

梓「あの、澪先輩見ませんでしたか?」

紬「なにかあったのね?」

梓「はい」

紬「わかった! 私に任せておいて」

梓「えっ。なにがわかったんですか?」

紬「私が告白をしたと知って、澪ちゃんが身を引こうとしたんじゃない?」

梓「あ、あってます……」

紬「それで梓ちゃんは澪ちゃんを追いかけてた……」ブツブツ

梓「……ムギ先輩?」

紬「ううん。言わなくてもわかってる。だって二人はとってもお似合いだもの」

梓「え?」

紬「大丈夫。ちゃんと二人が結ばれるようにしてあげるから」

梓「なんで……そうなるんですか?」

紬「私のこと気にしてくれるんだ。やっぱり優しいね、梓ちゃん」

紬「でも私のことはいいの」

紬「昨日のことは忘れて」

梓「どうして……」

紬「どうしてだと思う?」

梓「えっ」

紬「私ね、澪ちゃんと梓ちゃんが仲良くしてるのを見るだけで幸せなんだ」

紬「まるで本当の姉妹みたいに仲睦まじくしてるのを見ると、こっちまで幸せになれちゃうの」

紬「二人の間に恋愛感情はないと思ってたから告白しちゃったの。本当にごめんなさい」

紬「本当は澪ちゃんの気持ちに気づいてあげればよかったんだけど……」

紬「はぁ……。友達失格かなぁ……」

紬「うん。でも落ち込んじゃいられない」

紬「頑張って汚名返上しなくちゃ。梓ちゃんは何も心配しなくていいから」

紬「ばいばい」ダッ

梓「ムギ先輩! 待ってくださいムギ先輩!!」


梓(私はなんとか追いかけようとしましたが、ムギ先輩の背中はあっという間に小さくなりました)

梓(お二人とも、どうして……どうしてそんなにせっかちなんですか!!)


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最終更新:2012年10月07日 22:38