律「バンド活動もいいけど、たまにはこうやってスポーツするのもいいな」
澪「もう、腕がパンパンだ……」
紬「そうそう澪ちゃん。これプレゼント」
澪「なにこれ?」
紬「琴吹のスポーツ部門が開発に成功した投手養成ギブスよ」
紬「これを付けてるだけで気づかないうちに投手に必要な動作や筋肉が身につくの」
律「すげ~な澪! これで大リーグボールも夢じゃないぜ!!」
澪「……」
福本「ちょっと」
唯「へ? 私ですか?」
福本「そうそう、キミ外野やってみいひん?」
福本「今日見させてもろたけど、なかなか足も速いし感もええし」
唯「えへへ、そうですか」
福本「せやから次回からは外野中心のメニューで練習してみよか」
唯「はいっ! よろしくお願いします」
そんなこんなで夏休みも中盤を過ぎ──
律「私たちもなかなか様になってきたな」
唯「そうだね!」
和「そりゃあ、あんた達は毎日のように練習してるからね」
澪「だいたい、私たちは軽音部員なのに、バンドの練習もほったらかしで……」
唯「バントの練習は欠かさずやってるけどね」
律「おっ、唯ウマいこと言うなぁ」
唯「えへへ~」
澪「お前ら……」
紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ」
澪「球技大会終わったら学祭もあるのにのに……」
律「それが終わったらバンドの練習もするって」
澪「本当は私だってイヤイヤ野球やってるんだから──」
さわ子「そんなっ!? 澪ちゃん!!」
唯「さわちゃん先生いつの間に!?」
さわ子「やっぱり、澪ちゃんは気がのらないわよね……」
さわ子「ごめんね。無理やりやらせたみたいで」
澪(みたいじゃなくて、やらされたんですけどね……)
さわ子「みんなの思い出になればって提案はしたけど」
さわ子「私の思い上がりだったようね」
紬「さわ子先生……」
さわ子「ごめんね。こんなんじゃ担任失格よね」
律「そんなことないぜ、さわちゃん!」
唯「そうだよ! 私たちさわちゃん先生で良かったって思ってるよ!」
さわ子「あなた達……。でも澪ちゃんには嫌われてるみたい」うるうる
澪「うぅ……」
律「澪っ! さわちゃんは私たちのことを考えてやってくれてるんだ!」
澪「わかったよ! やるよ! けど終わったら絶対バンド練習だからな!」
紬「よかった。これでまた一段と団結することができたわ」
和「でも、少しは勉強もした方がいいんじゃn」
唯律「し~~~~~~っ」
そして新学期も数日が過ぎ──
平沢家
憂「お姉ちゃんなんだか逞しくなったよね~」
唯「うん! なんせ世界の盗賊王に鍛えられてるからっ!」
憂「へぇ~、そうなんだ。なんだかスゴイね!」
唯「憂は球技大会出るの~?」
憂「うん。私も野球で参加するよ」
憂「私のクラス、お姉ちゃんのクラスと対戦するらしいよ」
唯「そうなのっ!? じゃあライバルだね!」
憂「担任同士も熱い火花が散ってるって話だよ」
唯「どういうこと?」
憂「ウチの担任の鹿野先生って音楽教師じゃない? それで山中先生も音楽教師だし」
憂「噂じゃ、仲があんまりよくないらしいの」
憂「しかも負けた方が焼肉おごるって約束したらしいんだ」
唯「へぇ~(焼肉おごる間柄なら仲はいいんじゃ……?)」
またまたすっ飛んで試合当日
さわ子「さぁ、あなた達。今までの練習の成果を存分に発揮するのよ!!」
唯「さわちゃん先生気合入ってるね!」
さわ子「今日は監督と呼んでくれるかしら?」
律「分かったぜ監督!!」
さわ子「勝ちにいくわよ!!」
「おお~~~っ!!」
先攻 3年2組オーダー
4和
6ショート子
3紬
2律
5サード子
9ライト子
7レフト子
8唯
1澪
……
実況「さぁ、まだ残暑厳しい日々が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか」
実況「本日は、桜ヶ丘高校の球技大会の模様をお伝えしていきます」
実況「実況はABC清水次郎、解説はおなじみ阪神タイガース唯一の日本一監督吉田義男さん」
実況「そして世界の盗塁王福本豊さんに努めて頂きます。よろしくお願いします」
ムッシュ「よろしくぅ~」
福本「お願いします」
実況「さて、ご両人は今から試合をする3年2組のコーチングをしたと噂を聞いておりますが」
ムッシュ「はい、その通りですぅ~」
実況「その話も随時お伺いしていきたいと思います。それでは試合開始です」
実況「先攻の3年2組トップバッターの真鍋がバッターボックスに入り……いま球審の声がかかりました」
「プレイッ!!」
和「憂が投手なのね」
憂「ふふっ。和さんと一緒に野球するのも久しぶりですね」
和「そうね、でもその時は一緒のチームだったけど……」
実況「ピッチャー、第一球……投げました!」
和 カキン!!
実況「打った! 打球はセンターへ。真鍋初球を難なく捌きヒット!」
ムッシュ「基本に忠実なセンター返しですねぇ~」
唯「やった~! 和ちゃん!」
さわ子(ここは無難に送るわよ)パパパ
実況「さて、続いてのバッターは早くも送りバントの構えです」
福本「えらい手堅いですが、早う点取ってピッチャー楽にしたりたいといったところですかね」
カコン
実況「いい送りバントが決まって3年2組いきなり得点のチャンス。そしてクリーンナップへと続きます」
唯「かっとばせー! ムギちゃん」
紬「うふふ。任せて」
実況「福本さんこの選手はどのようなバッターなのでしょうか?」
福本「顔に似あわずエゲツない打球飛ばすよ」
実況「ピッチャー……投げた!」
紬「シャランラ♪」カキーーーン!!
実況「痛烈な打球が左中間を抜けて行きました! 2塁ランナーは悠々とホームイン!」
実況「打ったバッターは2塁でストップ。3年2組さい先良く1点先制です」
さわ子「よし! りっちゃんも続いて!!」
律「ヨッシャー! 主砲の田井中様のお出ましだー!!」
ズバン!!
「ッラーイク! バッターアウッ!!」
実況「威勢はよかったのですが3球三振という結果に終わりました」
福本「いくら威勢がいいからってバットに当たらな意味ないがな」
ムッシュ「しかし、振りは中々鋭かったですよ。次の打席に期待が持てますぅ~」
実況「続いてのバッターもあえなく凡退でチェンジ。しかし3年2組1点先制です」
和「ムギ、ナイスバッティング」
紬「うふふ。ありがとう和ちゃん」
さわ子「りっちゃんドンマイ」
律「ふふふ。実は相手を油断させるためにワザと三振したのさ」
唯「そんな高度な心理戦をっ!? さすが野村の弟子!!」
澪「……ウソつけ」
後攻 2年1組オーダー
6梓
2キャッチャー子
3ファースト子
1憂
8センター子
5サード美
7レフト美
4セカンド子
9純
…
梓「先輩達本当に夏休み中ずっと野球やってたんですね」
梓「独りっきりで寂しかったです」
律「あはは……ごめんごめん」
梓「その情熱を少しでも部活の方に向けて欲しいですよ」
律「そう言うなよ梓。これが終わったらちゃんとするからさ」
梓「絶対ですよ!」
律「その前に澪の投球見てやってくれよ。絶対打てないぜ」
梓「私だって、少しは憂達と練習したからそう簡単には……」
ズバンッ!!
梓「速っ!!」
律「だろ~? 115キロは余裕で出てるぜ。しかも指によくかかってるらしくて伸びるんだってさ」
梓「澪先輩って何やらせてもスゴイんですね!」
律「いやいや、これも私のリードがあっての……」
梓「へ~」
律「聞けっての!」
実況「秋山投手なかなかいい球を投げていますね」
ムッシュ「はいぃ~。何やら変化球も投げるらしいですぅ~」
実況「それはすごい! 期待しましょう」
「ッラーイク! バッターアウッ!!」
実況「2年1組三者凡退で1回の裏終了。秋山投手、上々の立ち上がりです」
さわ子「スゴイじゃない澪ちゃん。さすが私が見込んだだけのことはあるわ」
澪「はぁ……。どうも」
律「なんだ~澪。まだ乗り気じゃないってのか?」
澪「当たり前だ! 結局夏休み中はずっと野球やってたし……」
律「でもそのおかげで、澪の隠れた才能が発掘されたわけだし」
澪「別に私はピッチャーがやりたいわけじゃないんだ!」
律「そんな事言ったって、球技大会まではやるって言ったじゃん」
澪「分かってるよ。だから、もう早いとこ終わらすぞ」
律「はいはい」
憂「梓ちゃん、澪さんの球はどうだった?」
梓「結構、速かったよ。手元で伸びる感じだったし」
憂「へ~。なかなか楽しませてくれそうだね♪」
梓「そ、そうだね」
憂「お遊びだと思ってたけど、なんだか熱くなれそう」
梓「う、憂?」
憂「ほらっ、守備だよ」
梓「ねぇ純。憂ったら少しおかしくない?」
純「梓は知らないと思うけど。憂は小学生の時結構有名だったんだよ」
梓「何が?」
純「近所のお姉さんと一緒に地元のリトルリーグに所属しててさ」
純「で、瞬く間にスゴイ野球少女が現れたって噂が広まってね」
梓「そうなんだ……」
実況「さぁ、2回の表ですが早くも2アウトランナー無しです」
実況「ここで8番バッターの平沢の登場です。福本さん彼女はどのようなバッターなのですか?」
福本「バッティングはからっきしやけどね。足も速いし守備も上手いんよ」
実況「では良くも悪くも打順通りの実力ということでしょうか?」
福本「まぁ……せやね」
憂(お姉ちゃんに強い球投げるなんてできないよ)フワッ
唯「キタッ!!」ブンッ!! カスッ コロコロ……
実況「おっと! バットには当たった模様ですがスイングの勢いとは裏腹に打球はかなり弱々しい」
律「唯! 早く走れ!!」
唯「わわわ! そうだった!!」ダッ
実況「しかし、これはおもしろい所に転がっています」
サード美「くっ……!! 間に合って!!」
実況「3塁手が前に出てきて打球を掴み1塁へ送球!!」
唯「ぬおおおおお!!」ダダダダダ
実況「これはギリギリの勝負になりそうです!」
唯「うわっ!?」コケッ
∩ ∩
~| ∪ | (´´
ヘノ ノ (´⌒(´
((つ ノ⊃≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;
ズズズズズ
「せ、セーフ!」
実況「な、なんとヘッドスライディングです!」
福本「あれだけ、頭から突っ込んだらアカンって言うたのに……」
福本「怪我したら、終いやがな」
律「おお! 唯気合入ってんな!!」
紬「スゴイわ!」
澪「なぁ、和。あれって……」
和「ええ、そうね。ベース手前でコケただけね」
さわ子「やるじゃない唯ちゃんも。これで澪ちゃんで終わっても次の回はまた和ちゃんからよ」
さわ子「流れはウチに来てるわ!!」
律「行けー澪! かっ飛ばせー!」
澪「バッティングには期待しないでもらいたい……」
憂「あわわわわ。お姉ちゃん大丈夫かな……」
憂「心配だよ~」フワッ
澪「!? 緩い球! これならっ!!」パコーン!
憂「しまった!? お姉ちゃんを気にしすぎるあまりっ!!」
実況「秋山、ピッチャーながら打っていきました。打球は二遊間へ。センターに抜けるか!?」
梓「させないです!」ピョン パシッ!
実況「いえ、ショートの中野、猫のように素晴らしい身のこなしで打球を処理しました
そしてセカンドベースカバーにボールをトスして3アウt……」
今だ!2塁ゲットォォォォ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ (´´
∧∧ (´⌒(´
⊂(゚Д゚ )≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
⊆⊂´ ̄ ⊂ソ (´⌒(´⌒;;
 ̄ ̄ ̄ ズザーーーーーッ
「セーフ!!」
実況「なんと! 1塁走者の平沢、電光石火のごとくセカンドを陥れた!」
実況「誰もがショートの中野が打球に追いついた時点で
セカンドにトスして2塁封殺と思ったことでしょう」
実況「あるいは、そのままセカンドが1塁に送球していれば打者走者がアウトになっていたかもしれません」
実況「しかし、あまりの出来事に一瞬プレーが止まってしまいました!」
福本「だから言うたやろ、足速いって」
実況「スライディングも素晴らしかったですね福本さん」
福本「アレ教えたのもワシやがな」
ムッシュ「ちょっとごめんさないね~。僕はアウトを取れなかったとはいえ
ショートの守備も褒めるべきだと思います~」
実況「はい、どちらもギリギリの素晴らしいプレーでした」
律「おおー! 唯ってあんなに足速かったんだな」
和「小学生のころから寝坊しては走って学校に通ってたから」
紬「そういえば、唯ちゃんギリギリはあっても遅刻はしたことないわね」
和「昔っからそうなのよ。走ることに関しては結構なものだと思うわ」
和「まさに寝坊の賜物ね」
唯「イエ~イ! ピースピース!」
さわ子「澪ちゃんでこの回終わりだって思ってたけど」
さわ子「こうなったら欲張っちゃうじゃないのよ」
さわ子「真鍋さん。ちょっと……」
和「何ですか? 先生」
さわ子「カ・ン・ト・ク」
和「……か、監督」
さわ子「なんとかフルカウントまで粘れない?」
和「分かりました。やってみます」
紬「どうして?」
律「塁が詰まった状態で2アウトフルカウントだったら投手が投げた瞬間にランナーはスタート切れるんだよ」
律「アウトだったらそのままチェンジだし、ボールだったらフォアボールだし」
紬「あ~。そういえばそんな事も習ったわね」
さわ子「そうよ。スタート切って打球が内野の間を抜けさえすれば
唯ちゃんの足だったら必ず帰って来れるわ!」
実況「2回の表3年2組の攻撃。バッターは先程センター前ヒットを放った真鍋」
実況「2アウトランナー1、2塁。この局面でカウントは2-2」
実況「先程から真鍋、臭いところは全てカットしています」
憂「さすが、和さんはしつこいですね」
和「あなたもね。コース一杯ばっかり狙うんじゃなくて、たまにははっきりとストライク投げなさいよ」
憂「いやですよ。不用意に投げて長打ってのが一番最悪なんですから」
実況「ピッチャー、真鍋に対して8球目……投げました!」
和(低いっ!)ピタッ
「ボール!!」
実況「これでフルカウントとなりランナーは投球と同時に自動的にスタートを切ります」
最終更新:2010年02月03日 02:06