音楽室
律「そんでさぁ~」
唯「なにそれ~!おもしろ~い!」アハハハ
澪「お~い~。いつになったら練習始めるんだ?」
唯「だってまだムギちゃんのお菓子たべてないよぉ?」
紬「ごめんなさい・・・。朝、天気悪かったでしょ?それで今日はおやつどうしても持ってこれなくて…。」
律・唯「えぇ~!?そんなぁ・・・」
澪「ほら。まったりする必要がなくなったな。練習練習!」
律「・・・・。 まぁ、たまには良いかもな!みっちり練習!」
唯「あぅ・・・りっちゃまで・・・」プリプリ
梓「ホントは毎日・・・」ボソッ
紬「ごめんなさい…でも明日は凄く豪華なお菓子を用意するわ!だから、ね!?きげん直して?」
唯「わーい!!約束ね!」
紬「ふふふ。」
ジャジャっジャジャっジャ~ン
紬「・・・」
澪「あのさ唯、さっきの所また間違えたろ、」
唯「え!?そうだったかな?」
澪「そうだよ。しっかりしろよなぁ。」
梓「唯先輩、今日コレ言われるの三回目ですよ?」
唯「あぅ」
澪(ここは強めに言っとこうかな・・・唯のことを思って!許せ、唯!)
澪「だいたいなぁ、この曲だって手を付けてから一ヶ月以上経つんだぞ。リードのお前がシッカリしてくれないと“みんな”がこまるんだよ。」
紬「まぁまぁまぁ」
唯「みんなって・・・やっぱりそうかな・・・りっちゃん・・・」
律を振り返る
律(ここは唯のことも考え、黙っとくか。澪の立場もあるしな。)ジー
唯「あぅ・・・」
紬「きょっ、今日はこのへんにしときません?」
律「…。 そうすっか!もう暗くなってるし。終るぞー!」
唯「・・・」
帰り道
律「おぃムギ!明日のおやつ期待しちゃって良いんだな?」ワクワク
紬「ええ!もちろん!」
梓「ええ!?これから毎日今日みたいな感じでやりましょうよ・・・。」
律「だぁめだ!ムギが持ってくるおやつがないと練習に身が入らん!!」
澪「そんなことばっか言って。また太るぞ、律。」
律「んな!!??」
唯「・・・・」
唯「あの・・・!!」
一同「・・・?」
唯「憂にお使いを頼まれてるから、今日はここで・・・」
律「・・・おぅ、そっか」
梓「また明日です。」
紬「さようならぁ。また明日。」
澪「・・・」
唯「じゃあまた明日ねぇ!バイバイ!」タッタッタ
澪「なぁ、律。今日、私言いすぎちゃったかな?」
律「唯にか?んまぁ、いいんじゃないか?たまにはビシッと言ってやらないと。」
梓「律先輩にもビシッと言ってやってください・・・」ボソッ
律「ん!?なんか言ったか?」ジロ
梓「・・」
公園
ベンチにて
唯「はぁ、怒られちゃった・・・」
唯「やっぱり今のままじゃいけないのかな・・・。」
でもみんな同じ練習量なのに・・・いや、むしろ家でやる自主練習を数えたら私が一番練習してるかも。 でも結果がついてこない・・・・
なんだろ、私だけ取り残されているような・・・この焦燥感。
薄々気付いてたんだ、それでも日々膨らんでいくこの感じ。
唯「それにしても、澪ちゃんだってあんなにキツク言わなくてもいいじゃんか!」
「りっちゃんだって、あそこで助けてくれても・・・」
「・・・なんてね。」
唯「アー!何でこんなにイライラしてるんだろ・・」
ふと肩とともに落とした視線の先には・・・
唯「たばこ」ボー
気がつくと唯はそのタバコを手にとっていた。
唯「誰かの忘れ物かな?」
唯はふと思い出した。正月に行われる親戚同士の集まりと、その親戚のおじさんが旨そうにタバコを加える姿を。
唯「タバコておいしいのかな・・・?」
唯は回りを確認する。辺りはもうすっかり暗くなっていて散歩をする人すら見当たらない。
唯「コレっていけないことなんだよね」
そう思いつつも唯はタバコを銜える。部活へか自分へかは分らないイライラと、好奇心が唯の自制心を跳ね除けた。
カチっ
シュボ
スー
唯「・・・ゴホッ!ゲホッ!」
「うぇ~・・・美味しくない・・・」
「でも」
唯の心はなぜか満たされていた。この行き場のない思いが社会秩序への反抗という行為により少し和らいだ気がしていた。
それに加え、憧れであった大人への存在にこのような行為で近づけた気がしたからだ。
唯「へへへ。大人だ。」エフッ
とあるコンビニ
律「なんでこんな時間に私がお使いを・・・・私も立派な女だぞ!」
店員「アランドロンフザイデシター」
ウィン
トボトボ
公園
律「ん・・・?アレって・・・」
律の目が捉えたのは星空に向かってタバコの煙を吹きかける少女の姿であった。
律「え!?うそだろ・・・マジ!?」
律「唯・・・か!?」
律(い、いや!絶対人違いだ!)
何事もなかったかのように公園を通りすぎようとする律。
しかし
律「うわぁ。でも気になる・・・。ギター持ってたし。」
「っくそ!」
小走りで引き返し、公園内の樹の陰に隠れ、様子を伺う律
律「へ、へへへ。悪い高校生がいるもんだぜ。こんな時間に外出で、しかも喫煙とはな!」
「ここからじゃ良く見えないな・・・。」ガサっ
唯「っ!?」ビクッ
律(しまった・・・)
唯は急いで持っていた火のついたタバコを踏みつけ、振り返り、音のした木の影を凝視した。
唯「だ、誰かいるんですか?」
律(うわぁ・・・やっぱり唯だったかぁ。こりゃ誤魔化せねえな。)ガサ
「おう、誰かと思えば唯じゃねえか。なにやってんだこんな所で?」
唯「りっ、りっちゃん!!?びっくりしたぁ。」
律「・・・」
唯「・・・」
律「ああぁ、私はちょっと親にお使いを頼まれ・・・て。唯は?」
唯「私もお使いの帰り道。星が綺麗だったからボーっと見てたんだぁ。」
律「そうなのか。あんまり遅くならないようにしろよ。んじゃおやすみ~」
唯「・・・」
律は唯とすれ違い、家へ向かった。
そのとき確かにタバコの匂いが。
唯「りっちゃん。今・・・・」
律は振り返らず進む。
角を曲がり唯の視界から消えると、全速力で家に走った。
…
家に着き、一目散に自分の部屋に入り、ベットに倒れこんだ。
そして先ほどの会話に不自然な点がないか回想した。
律「うん!不自然だらけだ!」ワラエネェー
「嘘だろ・・・唯がタバコを吸ってたなんて・・・」
「いやっ、でも私の見間違えかも。いやっ、でも確かにタバコの匂いがしてた。いやっ、でも公園にタバコを捨てる人なんていくらでもいるし、」
いやっ、でも、いやっ、でも、いやっ、でも・・・・
(唯に限ってそんなことするはずがない!)そう無理矢理結論付けた律はそのまま何も考えず寝ることにした。
公園
唯は自分の喫煙している所を見られたのではと動揺した。しかしいつもどおり?の律の振る舞いに
唯(ふぅー。ばれてなかったみたい!)
冷静さを取り戻し、携帯を開く。
(あぁ、もうこんな時間か、早く帰らなきゃッ)
平沢宅
憂「おそかったね、どこ行ってたの?」
唯「ういぃ、ごめんねぇ~。ちょっとみんなで町をブラブラ~」
憂「こんな時間まで?」
唯「か、帰りにね、りっちゃん家に、、、よってたんだ。」
憂「そっか。ごはんできてるよぉ。」
憂(あれ?この匂い。)
憂「お姉ちゃんてさぁ、普段どんな所で遊ぶの?」
唯「ん!?なんでぇ?」
憂「いやぁ、なんていうか制服が少し匂うって言うか・・・」
唯「あっ、ゲ、ゲームセンターにいったんだよ!ほら、あそこタバコくさいじゃん!?」ハハッ
憂「お姉ちゃん・・・なんでタバコの話?」
唯「・・・」
唯「ご馳走様です。お風呂入って寝よっと♪」
タッタッタ
憂「お姉ちゃん・・・」
ベッド
(たばこの事・・憂が知ったら悲しむだろうなぁ・・・もう忘れよう。)
翌日学校
しかし唯はタバコをかばんの中に忍ばせている。
唯(誰にもばれないようにしなきゃ!)
(大人、大人!)フンッフンッ
世間一般の健全な女子高生は決して手を出さない物に手を触れたことにより、唯は一種の優越感を感じていた。
クラスの女子達より一歩でも大人に近い。そんな気がしていた。
ー部活ー
ジャジャーン
澪「ふぅ・・・・今日はここら辺にしとくか!」
律「腹減ったー!アイス食べてこうぜー!」
唯「さんせい!」
梓「さっきケーキ食べたばっかりなのに・・・。まだ食べるんですか?」
律「あん!?なんか言ったか?そういう梓は来ないのかよ?」ニヤ
梓「っ・・・!」
唯「行こうよー!アズニャンニャン♪」スリスリ
梓「先輩がそこまで言うなら・・・行きますです・・・///」
紬「まぁ♪ふふふ///」
アイス屋
律・唯「美味しかったーおっお!」
澪「もうこんな暗くなちゃったな。じゃ、そろそろ・・」
梓「家の人が心配しますしね。」
律「それでは一同解散!」
一同「ばいばーい!また明日~!」
澪「唯は・・・途中まで一緒だよな!」
唯「ごめーん。私今日も寄るところがあって・・・」
律「・・・・」
澪「そっか。それじゃあ!気をつけて帰れよ。」
唯「うん。ばいば~い!澪ちゃん!りっちゃんも」
律「“も”ってなんだ“も”って!!」
ばいば~い
律「・・・」
澪「律!?りーつ!」
律「んなぁ!?」
澪「どうしたんだよ?ありえない顔してたぞ?考え事か?」
律「まぁな。 なあ澪、たばこ吸う女ってどう思う?」
澪「ん・・・そうだな。ワイルドでかっこいいイメージかも」
律「女子高生だったら?」
澪「ただの馬鹿だな。わざわざ早いうちから体痛めつけちゃってさぁ、大切に育ててくれた親に申し訳ないとか思わないのかな?」
律「例えば、もし私が吸ってたら?」
澪「一発ぶん殴る。んでもう口きかない! まさか、吸ってるとか?」
律「私はそんなバカなことしないよ。ハハハ」(はぁ)
公園
唯(もうすっかり暗くなったなぁ。昨日と同じで人も全然いない・・・)
唯は鞄から大切そうに昨日拾ったタバコを取り出しまじまじと見つめる。
(昨日は憂のためにも、やめようと思ったけど・・・)
空を見上げると驚くほど綺麗な月が凛と浮かんでいる。
そして改めて用心深く周りを見渡す。
(凄い静か・・・なんかこの瞬間なら、何をやっても許される感じがする・・・なんてね。」ハハッ
何も考えずに唯はタバコをくわえ火をつけた。
シュ
ボッ
スー
「ゴホッ!ゲホッ!」
唯「うん、美味しくない・・・でも・・・」
それでも唯は昨日感じた満足感に浸ることが出来た。
唯(部活ではみんな私を見下すけど・・・もうみんなより大人だモンね)フン
覚えたてのタバコをふかし~♪
そのとき、背後の茂みで人の気配がした。
最終更新:2010年02月03日 23:24