唯「ねぇりっちゃん?今日はね?凄いお知らせがあるんだ!」

唯「一ヶ月ぐらい前にね、ずっと働いてたコンビニで、社員として働かないかって言われたんだ」

唯「これで私も一端の社会人だよ?まだまだ戸惑うこともあるけど、来年も良いお知らせができるように頑張るよ」

唯「ねぇ?りっちゃん?今の私はりっちゃんにとってどう見える?」

………

唯「やっぱりバカみたいなのかなぁ?」

唯「今日はもう帰るよ、また来年だね」

唯「ばいばい」



りっちゃん、あなたがここへ来てから私はとても退屈な人生を過ごしていました

もしかすると、今でも退屈なのかもしれません

りっちゃんはそっちで楽しくやれてる?退屈してない?

あの明るかったりっちゃんなら大丈夫だよね?

ねぇ、りっちゃん



………答えてよ


色んな想いが駆け巡りながら私は自宅へとたどり着いた

あの日から何も変わらず、憂が私を出迎えてくれる

いや、あの日より前に戻ったと言うべきなのか

こうしてみるとりっちゃんが死んでしまった事実もいずれは皆、忘れてしまうのかなとも思い、悲しくなった

いや、これは都合良く言い過ぎだ

りっちゃんは………、私が殺したも同然なのだから




私が高校二年生の時………


律「何か腹減ったなぁ」

唯「じゃあコンビニ行く?」

律「えぇ、雨降ってんじゃん」

唯「近いしいいじゃん!傘貸すから歩いて行こうよ!」

律「それなら行こっか!」

唯「うん!」

律「おい唯!歩きながら食べるのやめろよ」

唯「だっておいひぃんだもん」

律「ったく」


キキーーーッ

律「唯!危ない!!!」


ドンッ

………

……



唯「私が代わりに死んでいたら…」


昔の事を思い出すといつも泣けてくる

それがりっちゃんが死んでしまった時のことでも

みんなで楽しくお茶してる時のことでも

みんなで真剣に演奏してる時のことでも…

そして、そうやって泣いてる私はいつの間にかベッドに倒れこんでいる


今回もだ

するととても懐かしいものが目に入った

ギー太だ…

いや、実際は毎日顔を会わしているはずなのだが、私が懐かしいと感じたのはなるべく意識しないようにしていたからなのだろう

ギー太を見ると昔を思い出す

するともういつものパターンだ


唯「ごめんね?ギー太。私がもっとましなギタリストなら、もっと良い音を出してあげれたのに…」

ギー太を弾きながら私はそういった。こうやってギー太を弾いてやるのは実に久しぶりだ。高二以来か

ギー太「いえ、あなたにはあなたしか出せない音があります」

唯「弾いてやれなきゃ意味ないよ」

ギー太「それでも私はあなたが主で良かったと思っています」

唯「…ありがとう」


そんな会話を頭の中で繰り広げていた

しかし私には確かにギー太の声は聞こえたのだ

それでも端から見るとただの変人なのだろうが…


ジリリリリリ

唯「んーー」

カチャ

いつの間にか寝てしまっていたのか

すると私の横にはギー太がいた

唯「久しぶりだなぁ、こうやって添い寝するのも」

すると階段の下から声が聞こえた

憂「お姉ちゃん!朝だよ!起きて!」

唯「はぁい!今行くよぉ!!!」

階段を降りていくとまた声が聞こえた

憂「え?珍しいね、一回で起きるなんて」

唯「冗談でしょ?」

私は毎日一回できちんと起きているはずだ

憂「ごめんね、まだ朝ごはんできてないから先に顔洗ってきて?」

唯「うん、分かったぁ」

唯「………」ジャブジャブ

唯「………」フキフキ

唯「………ふぅ」

そして寝癖を直そうと鏡を見ると信じられないものが目に写った


唯「若ぁい!!!」


久しぶりにギー太を弾いてやったからだろうか

とても気分が良くなった

唯「憂!見て!!!若返ったとおも…わ………」

憂「あ、お姉ちゃん!早く朝ごはん食べよ?」

なんてことだ…

………憂も若い

唯「憂どうしたの?」

憂「ん?何が?」

唯「………いや、別に」

これは若いとかの騒ぎじゃない、まだ子供じゃないか

憂「早く食べなきゃ遅刻するよ?」

唯「何言ってるの?まだまだあるじゃん」

私は社員になってからは遅刻を絶対にしないように目覚ましを早めにかけている

それだけじゃあ心配なので憂にも会社に行く前に起こしてもらうようにしている

唯「あれ!?憂こそ遅刻じゃないの?今日は休み?」

憂「え?変なこと言ってないで早く食べなよ。それこそ私も遅刻しちゃうよ」

唯「………?分かった…」

憂「よし、早く着替えてきて!もう後10分しかないよ」

唯「まだ一時間あるよ…」

憂「また時計見間違えてるんじゃない?」

唯「………あってるよ」ボソッ

憂「いいから早く!!!」

唯「分かった!分かったから!!!」

唯「…スーツがない」

唯「憂!スーツどこぉ!?」

憂「何言ってんの?早く制服に着替えてよ」

唯「制服ぅ!?」

憂「そこに掛かってるでしょ」

唯「冗談でしょ!?学校なんてとっくに辞めたじゃん」

憂「もう!私が着させてあげるから早く!」

唯「………憂?今何歳?」

憂「お姉ちゃんの一個下」

唯「じゃあ私は何歳だっけ?」

憂「16歳でしょ」

唯「………そっか」


私は今年30歳になるはずなのだが…


唯「ということはまさか…」

憂「もう!!!早く行こうよ!!!」


りっちゃん…、りっちゃんはいるのかな


りっちゃんのことばかり考えていると学校に着いた

これが相対性理論ってやつか?ほんとにすぐに着いた

この扉を開けばすぐに分かる

しかし、私は中々扉を開けることができずにいた

しばらく立ち止まっていると後ろから肩を叩かれた

私は恥ずかしながら声を出して驚いてしまった

「よぉ唯!何やってんだよドアの前で」

聞き覚えのある声…、私はすぐに振り向いた

唯「あぁぁ、りっちゃん」ポロポロ

私は思わず泣いてしまった

律「ど、どうしたんだよ!?そんなに強く肩叩いたか?」オドオド

唯「違うよぉ…りっちゃぁん!ふぇぇぇぇん!」

私はりっちゃんを潰れるほど抱き締めた

他の生徒の視線が痛いので教室に入った

「あらあら、朝から仲が良いのね」

このおっとりとした声で迎えてくれるのは

唯「ムギちゃん!」

紬「おはよう、唯ちゃん、りっちゃん」

律「聞いてくれよムギ!唯のやつさぁ、私が肩に手を置いたらさぁ急に泣き出しちゃってさぁ」

唯「ちょっと!その話はもういいよ!」

紬「あらあら、何かあったの?」

唯「何でもないよ」

急に恥ずかしくなってきた

唯「ねぇ今って何月だっけ?」

律「7月だよ」

唯「7月…?ってもしかして」

紬「どうかしたの?」

唯「今日は…部活は?」

律「だからテスト前だから無いんだって」

紬「テスト終わったら美味しいお菓子持ってくるから?ね?」

唯「………テスト…」


そしてテスト返却日

唯「危なかった…」

憂のお陰で追試は無かった、しかし私はやはり中卒だけあって覚えるのも苦労した…

私はこっちではちゃんと卒業できるのだろうか…

そういえば高二になってから数日たったけど今だに戻れない

まぁ戻りたいとも思わないが…



そして夏の合宿

私は何故か咳が頻繁に出るようになっていた

医者は何も異常はないと言っていたし、普段の私生活には支障は無いので気にはしなかった

とにかく遊ぼう!みんなとこうして遊ぶのは10年以上なかったので大人げなく心が踊った

梓「練習しましょうよ~!」

唯「いいじゃん梓ちゃん!遊ぼうよ!後で練習もするから」

もちろん練習も楽しみだ

梓「ん?あれ?あ、梓ちゃん?」

梓「先輩、急に梓ちゃんだなんてどうしたんですか?」

唯「あ…、そっか」


30歳のおばちゃんがあずにゃんだなんて恥ずかしくて呼べるはずもない

唯「…あ、あずにゃん///」

梓「もう!何なんですか!こっちまで恥ずかしくなってきちゃいましたよ!」

唯「ごめん」

梓「怒ってないですって!さぁ、遊びましょう!」

唯「うん!」




澪「私も遊ぶ~!!」

律「ニヤリ」



その日の夜

唯「つ、疲れた…」ゼェハァ

さすがに体力はそのままか

しばらく引きこもっていたせいですっかり体力が無くなってしまった…

しかし練習もやりたい…

唯「………」ゴホッゴホッ

澪「唯、大丈夫か?」

唯「え?うん!大丈夫だよ!」

澪「あんまり無理はするなよ?」

律「飯~飯~!!!」

澪「少しは唯を見習え!!!」ゴンッ

律「ってぇ………」

久しぶりの演奏はとても酷いものだった

澪「やっぱり調子悪いんじゃないか?」

唯「大丈夫だよ~えへへ」

このキャラは疲れる…

もっとも取り柄である音感はまだ生きていたのでそれが救いだった

最後に一回合わせてご飯を食べることになった

凄く良い感じだったのに私が足を引っ張ってしまったのが少し後ろめたい


りっちゃんの提案で肝試しをすることになった

私はもう二度とりっちゃんに危険な目は会わせたくなかったが、どうしても澪ちゃんを驚かせたいらしく渋々肝試しをすることにした

肝試し…か、引きこもっていたせいか暗いところがとても落ち着くようになった

なので何も恐怖は感じなかった…

すると悲鳴が聞こえてきた

澪ちゃんだ

怖がりな彼女なら仕方ないが、その悲鳴に少し驚いてしまった

唯「あ、山中先生」

さわ子「何よ、今更そんな呼び方」

唯「えっと、さわちゃん先生、どうしたんですか?」

さわ子「皆を驚かそうと思ったら迷子になったのよぉ」


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最終更新:2010年02月07日 00:16