唯「私ってもっと料理とか勉強とかできてたのかな?」

律「んなわけあるかい!」

澪「まぁ、唯はたぶん今の唯のまんまだろうなぁ…」

唯「ぶー、酷いよ~律っちゃん!澪ちゃん!」



……ヒタヒタ……

「あぎょうさん、さぎょうご」グルリッ


……ヒタヒタ……



―翌朝―

ジリリリリリ…

唯「ん…朝か~」

目覚ましを止め、カーテンを開けると朝日が入り込む。

唯「今日も良い天気だぁ~!」

唯(あれ?私ってこんなに朝に強かったっけ?)

唯(そういえば、憂がいつも起こしに来てくれたような…)

唯「!って、もう学校に行かなきゃ!!」ドタバタ


キーンコーンカンコーン

唯「ふぇ~間に合ったよ~」

律「オッス!唯!今日は寝坊か~?」

唯「エヘヘ…ギリギリに起きちゃって…」

律「目覚ましか親に起こしてもらえよ!そうしたら遅刻せずにすむぜ!」

唯「ん~。今日は目覚ましかけていたんだけどね…」

律「んだよ~目覚ましの意味ないじゃん~」
唯「テへ…いつもは憂に起こしてもらっていたんだけど、憂がいなくてね…」


律「何だよ~人任せかよ~んで、その憂って子だれ?」

唯「え?」


唯「律っちゃん何言ってんの…憂だよ!憂!私の妹だよ!」

律「へぇ~唯にも妹いたんだ~!今度遊びに行く時に会わせてよ!」

唯「な、何を言っているの?律っちゃん!あずにゃんの同じクラスにいるじゃない!!」

律「何だよ~同じ学校にいたのかよ~何で教えてくれなかったんだよ?」

唯「律っちゃん!言って良いことと悪いことがあるんだよ?」バンッ

律「お…おい、どうしたんだよ。急に…」

紬「どうしたの?」

律「おお、ムギか。知っていたかか?唯に妹いたの?」

紬「初耳だわ~」

唯「え…?ムギちゃんまで…」

紬「どんな子かしら?」

律「案外、唯と違ってしっかりしてたりして!」


紬・律「アハハ……」
唯「……」



―休み時間―

唯「あずちゃんのクラスに行けば分かるって!」

律「痛いって!唯!そう引っ張るなよ!」

紬「わくわく…」


唯(憂がいないわけないもん!)

ガラッ

唯「あずにゃん~憂いる~?」

梓「先輩たち…どうしたんですか?」

唯「ねぇ、あずにゃん!憂を見かけなかった?」

梓「憂…?誰なんですか?ここのクラスにはいませ…」

唯「あ、あずにゃんまで何を言っているの!?」

梓「え?どうしました?唯先輩?」

唯「酷いよ!皆酷いよ!憂を知らない振りするなんて酷いよ!」



律「ちょっと、ストップ!ストップ!」

律「唯…まずは落ち着こうな!冷静になれよ!な?」


唯「……何で?」

律「うん?どうしたんだ?」

唯「何で急に皆は憂のことを忘れちゃったの?」

律「…なぁ、唯。今日は疲れているんじゃないのか?」

唯「!?」ガタッ

律「実際に唯の妹に私ら会ったことないみたいだしさ…」


唯「……」プルプル……

律「だからさ――」

唯「もう皆知らない!!」ダッ



紬「唯ちゃん、出ていってしまったね…」

梓「あの…唯先輩どうしちゃったんですか?」

律「うーん…わかんね!」



―通学路―

唯(皆酷いよ。酷すぎるよ…)グスッ

唯(あずにゃんまで憂を知らないなんて言うなんて…)ズー

唯(勢いの余りでそのまま出てしまったな…)トボトボ


―「あの~君…」

唯「はい?」ゴシゴシ
―「桜が丘高校ってどこか教えてくれないかな?」

唯「……」(何?この人?)

―「あ、怪しい者じゃないんだけどさ、私。こういうの!」スッ


名刺をもらう唯

唯「いたこ…?霊媒師、葉月いずな…?」

いずな「そうそう!私霊媒師やってんの!そこの高校に用があってね…」

唯「私…そこの高校に通っています…」

いずな「マジ?それなら、案内してよ!ラッキ~」

唯はいずなを高校に連れていくことになった。

唯(霊媒師が何で学校に用があるわだろう?)

いずな「……」



唯「ここです。職員室はあっちの方に――」
いずな「君さ…」

唯「はい…?」

いずな「君の身辺で何か変なこと起きなかったかい?」

唯「!?」

いずな(すでに何かあったようだな…ちっ!遅れたか!)


唯「あ…あの聞いてください!私の妹が!憂が――」

いずな「話はわかったよ。今晩、ここに来れるかい?」

唯「ふぇ…?」

いずな「今晩だったら妹さん、助けられるかもしれない」

唯「ほ…本当ですか!?」

いずな「なーに!大したことのない妖怪による神隠しっていったところだよ!」

唯「……う、う、うわーん~」ポロポロ

いずな「おい!ここで泣くな!私が泣かしたみたいじゃないの!」
唯「グスッ…憂に…グスッ…憂に会えるんですね…」

いずな「……」

唯「私の…私な友達が皆…憂のことを…グスッ…知らないって言うから…」


いずな「絶対に助けてやるさ!」

唯「ありがどう~お姉さん~」ヒックヒック

いずな(マジ可愛いんすけどこの娘…///)



―夜・学校―

唯(……うう、夜の学校は怖いよ…)トボトボ

唯(でも、これは憂のためだもん!憂がいない世界なんて嫌だ!)


………

憂『お姉ちゃ~ん!ご飯出来たよ~!』

憂『お姉ちゃん!アイス一緒に食べよ!』

憂『お姉ちゃん!帰りに肉まん買って帰る?』



唯「……」ヒックヒック

唯「憂……戻って来て…」グスン



―一方、学校内部―

ガツガツムシャムシャ…
ガツガツムシャムシャ…

いずな「………」

ゴクゴク、プハー!

ガツムシャ…

パチンッ
まわりが明るくなる。

?「んご!?」クルッ
いずな「ハァ―…またあんたかよ…」

ゴクゴク、ごくん

鵺野「き、君は…いずな君じゃないか!!」
いずな「なんでこんな再会なのよ!」キーw

鵺野「何だよ。せっかくの再会に不満なのか~?」

いずな「それより何であんたがここにいるのよ?九州は?」

鵺野「何でって研修だが…」

いずな「ここは高校よ!高校!しかも、女子校!JKよ!」キーww

いずな「あんたが行くべきところは小学校でしょ!」

鵺野「まあまあ、落ち着け。研修がてら徐霊を頼まれたんだ」

いずな「はぁ?私の商売に手を出す気なの?」

鵺野「っ!商売ってお前…まだそんなことをやっていたのかよ!」

いずな「何よ!悪いわけ?このビジネスでお金持ちになるのが私の夢なんだから!」

鵺野「全く…お前って奴は…」

いずな「ふんっ!私の修行の成果を今日見せてやるんだから!」

鵺野「まぁ~頑張れよ~♪」

いずな(ムカつく!!)


ガラッ

唯「あ、あの~すいません…」

いずな「あ、本当に来てくれたんだ!」

唯「はい!憂のためです!」

いずな「よ~し…それなら~」ゴツンッ

いずな「痛っ!何すんのよ!」

鵺野「お前はこの娘からいくらお金をふんだくるんだ?」

いずな「………なっ!」

鵺野「そこの君もこの人にもう依頼しなくていい…俺が徐霊する」

唯「へ…?え?」

いずな「な、何を勝手に…!」

鵺野「お前の噂は聞いている。大したことのない徐霊でも大金を人から払わせるんだろ?」

いずな「……くっ!」

唯(お姉さん…)

いずな「確かに…簡単な徐霊でも大金を要求したことはあった。事実だよ…」

鵺野「………」

いずな「それでもさ、困っている奴を助けることに意味を見い出してきたんだよ」

いずな「金持ちから大金をふんだくれば、払いたくても払えない人の助けになるんだよ!」


唯(お姉さん、カッコイイ…)



鵺野「最低だな……」


いずな「くっ!そりゃあ、あんたみたいに貧乏覚悟なんて私には――」

鵺野「いや、最低なのは俺さ…お前のそうした成長を見抜けないなんてな…」

いずな「!!」

鵺野「協力してやるさ!」

いずな「……か、勝手にすれば…///」カアア…

鵺野「おっとそうだ!君の名前を聞いてなかったな!」

唯「あ…はい。平沢唯です…お願いします!憂を!私の妹を見つけてください!」グスッ

鵺野「俺は鵺野鳴介。ぬ~べ~とでも呼んでくれ」

唯「ぬ~べ~?」


唯は事情を詳しく話した。

鵺野「ふむ…妹さんが行方不明なのと、周りの人の記憶が消えているとは…」

いずな「そうなんだよ…早く徐霊をしてあげないと…」

鵺野「しかし、聞いてていたのとは違うな…弱い妖怪の仕業じゃなかったのか?」

いずな「どういうことなのさ?」

鵺野「神隠しにしては知っていたはずの人間の記憶が消えるのはおかしいだろ」

いずな「た…確かに…」

鵺野「何やらイヤな予感がする…」

唯「………」

徐霊に向けて霊視が行われた。

鵺野「うーん…妖気のひとかけらも感じんぞ…」キョロキョロ

いずな「しかし…何なの、ここ。ものすっごい磁場の歪みを感じるんだけど…」

鵺野「確かに…これは放っておくのは危険だな…」

唯(ようき?じば?)

鵺野「うーん…何も手がかりを掴めないとは…」

唯「……」

いずな「……唯ちゃん、ごめん」

唯「えっ?」

いずな「私が軽々しくすぐ助けてやるって言ったばかりに無駄な期待をさせてごめん!」

唯「そ…そんな…私を信じてくれる人がいるだけでも嬉しかったです…」


唯「それに、明日もありますし…明日なら…明日なら…ヒック」

いずな「本当にごめんね、唯ちゃん」

鵺野「………」


鵺野「今日は帰りなさい。ご両親が心配される」

いずな「私らだけでも今晩、探すからさ」

唯「わかりました!お願いします!」

鵺野(強い子だ…)



―唯・帰宅後―

ガラッ

いずな「無事に帰れたのね、あの子」

鵺野「ああ、あの子の安全のためだ」

いずな「もしかして…今回のはかなり厄介なの?」

鵺野「分からん…南無大慈大悲救苦救難広大霊感…ここにいる霊たちよ 姿を現せ」


いずな「こ、これは…?」

姿を現したのは綺麗な女性の霊だった。
しかし、その目には冷たさしかないようだ。

鵺野「まさか…な…」
鵺野「神隠しの原因はお前か?お前なら返し――」

ガシャンッパリンッ

鵺野「クッ…いずな!伏せていろ!」

パリンッパリンッ

霊によるポルターガイストはぬ~べ~たちに手を出せないほどでたった。


鵺野「とんだ厄介な霊だぜ…だが、これで黒だと分かったぜ…」


いずな「何よ!あの霊!あれじゃ、立ち向かえないじゃない!」

鵺野「こんな危機は久しぶりだな…南無大慈大悲救苦救難広大霊感…鬼の手よ!示せ!」

鬼の手を出すぬ~べ~。あの左手は未だ鬼の手として健在である。

鵺野「南無!」

ズシャンッ

鵺野「…話し合う気がないからだ。強行手段として出してもらったぞ…」

いずな「バカ!そいつはまだ動くよ!」

鵺野「なにっ!?」

霊「クケー!!ケッケッケッー」しゅう…


霊はぬ~べ~たちの目の前から消えていってしまった。


鵺野「クッ…逃がしたか…」

いずな「………」


―――
――

鵺野「くっ…あの子に会わす顔がない…」

いずな「また明日も出るかもしれないし、落ち込むなよ…」

鵺野「あの霊は厄介だぞ。悪霊としても邪気が普通のと桁違いだ」

いずな「………」

鵺野「何としても夜明けまで探さないと…ここの生徒たちが危ない!」

いずな「ふふ…あんたはそうこなくっちゃ!」



しかし、その晩、ぬ~べ~たちの努力の甲斐もなく、あの霊は見つからなかった。


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最終更新:2010年02月08日 04:42