私は少し皮肉を入れてみた。一瞬、律っちゃんは顔をこわばらせたけど、すぐに弛んだ…
律「そう…そうだな…久しぶりだな…ははっ…!」
そうよね…律っちゃんは、澪ちゃんを裏切った張本人だからね…
私は顔で許しても心では許せなかった…
いつか、澪ちゃんと共に笑い合える日を願っていた…
でも、それは最初のこと…
今はどうでも良くなっちゃったのだから♪
厚労省
唯「あ~ん、終わらないよ~!」カタカタ
唯「誰だぁ!こんなに仕事を残していたのはー!」
唯「………」
唯「私だ……てへっ」
コンコン
唯「はいどーぞー」
ガチャッ
憂「お姉ちゃん、お仕事大丈夫?」
唯「うーいー(涙)」
憂「しょうがないな…お姉ちゃん、後は私がやるから。もうすぐ、律さん達と宴会でしょ?」
唯「ありがとう~憂~やっぱり憂が秘書で良かったよ~!」パァ-
憂「私もお姉ちゃんの助けになれて嬉しいよ…」ニコッ
唯「それじゃあ、行ってくるね~!」バタバタ
憂「あっ!飲みすぎないでねー!」
唯「は~い!」バタンッ
憂「さてと…この仕事の山をどうにかしないとね…」カタカタ
コンコン
憂「今大臣はおりませんよー」
………
憂「……?どなたかおられますか?」ガチャッ
カチャリッ
憂「えっ…?きゃぁぁぁー!!」
ターンッ
内閣首相官邸
梓「も~律先輩酷いです~明日の議会スケジュールを全く確認しないなんて~」カタカタ
コンコン
梓「総理はいませんよ~」カタカタ
ガチャッ
和「あら、律はいないのね…」
梓「酷いですよ~明日の議会と閣議について私に任せっきりなんですから~」カタカタ
和「ふふ…律らしいわね…」
梓「全くです…」ぶー
和「あ、これ、報告書と書類をまとめたものね。律に目を通しておくように…って無理か…」
梓「う~…分かりました……」カタカタ
和「それじゃあ、私は先に失礼するわね」
梓「お疲れさまです…あっ、和先輩聞いてます?澪先輩、二ヶ月前に仮出所したらしいんですよ…」カタカタ
和「えっ…!?」ドキッ
梓「澪先輩、何で私たちに連絡をしてこないんでしょうね?澪先輩、出所してから行方が分かりませんし…」
和「さ、さぁ…出所して間もないし落ち着かないからでしょ?そ、それじゃ、お先に失礼するね…」
梓「お疲れさまでーす……」カタカタ
バタンッ
和「………」
理由はないわけではない…
澪は今の私たちをどう思っているんだろ…
特に私なんて澪から離れてのうのうと律の内閣に入っている…
せめて面会でもしていれば…
和「とにかく、澪と連絡を取らないと…」
コツコツ
サササッ
和「?誰かいるの…?」
物音がしたと思ったんだが…
………
私の気のせいみたいね…
コツコツ
今日は早めに寝た方が良いのかしら…
コツコツ
カチャリッ
赤坂・某料亭
唯「えへへ~遅れてごめんね~」
律「遅いぞ~唯~わははは!」
唯「ありゃりゃ、律っちゃん総理はもう酔いが回ってる~」
紬「ふふふ…唯ちゃん、お疲れさま♪はい、熱燗♪」
唯「ありがとう。ムギちゃん」
唯「そう言えば、あずにゃんは?」
紬「梓ちゃんは今日も仕事で終わり次第来る予定だったけど、無理みたいね…」
唯「律っちゃんの秘書だから大変だもんね~」
律「何だと~こいつ~」グリグリ
唯「ギブギブ!律っちゃん!ギブ!」
律「わははは…」
唯「あははは…」
紬「うふふふ…」
宴は盛り上がる…別の者の心も盛り上がる素晴らしい夜であった…
翌朝・内閣首相官邸
律「な…何だこりゃ…!?」
見事に荒された総理室
梓のノートPCが残ったままである…幸い機密事項に関わる所までは荒らされてはいないようだ…
律「! そういえば…梓は…!いったいどこに…!」
『現在電波の届かない所におられるか電源が切れ…』
律「くっ…なんてこった…」
いくら不法侵入とは言えど、警備の堅い首相官邸を…こうも糸も容易く破るとは…ただ者じゃない…
いったい、どんな奴だ…?
恐らくそいつらが梓を…いったいどこへ?何の為に?
カサッ
一枚のメモが落ちた。
中身は以下の通りだった。気味の悪い字体である。
『
中野梓は預かった。場所は東京港湾3-A-〇倉庫
我々の目的は現内閣を苦しませること
身代金は要らない』
律「ふざけやがって!」ダンッ
律「何が梓を預かっただっ!何が我々の目的は現内閣を苦しませることだっ!」
和「ちょっとどうしたのよ!?律?何を騒いでいるの?」
律「これを見ろよ!」ピッ
和「な…何てこと……」
prrrrrr…
和「はい…こちら首相官邸…唯?」
唯『うぇっぐ…うぇっぐ…憂が…憂が…いなくなっちゃった…うわぁぁぁん!』
和「お…落ち着いて…唯…」
律「唯にも何かあったのか…?」
和「おそらく、律と同じ…秘書の誘拐よ…!」
律「議員秘書の誘拐…」
和「今のところは唯と律だけのようね…混乱を招くだけだから警察には一応公にしないように伝えておいたけど…」
律「梓、憂ちゃん無事でいてくれ…」
prrrrrr…
和「はぁ!?すでにマスコミに漏れているっ!?」
…
記者「こちら東京湾にある倉庫です!
田井中首相の秘書・中野梓さんと平沢厚労大臣の秘書・
平沢憂さんが監禁されていると今朝テレビ局の方に連絡が来ました!」
キャスター「番組を変更しまして生放送でお送り致しております」
キャスター「いや、しかし犯人グループはなぜこんなことを…」
コメンテーター「考えられることはこれはテロではないでしょうか?現政権で好転しない景気に苛立ちを感じた人々が蜂起した、と考えれば説明は少しつきます」
キャスター「身代金を要求していないのはそうした背景からなのでしょうか…犯人は一体どんな集団なのでしょうか?」
専門家「犯人は20代~30代あるいは40代~50代のグループと考えられます」
キャスター「…そ…そうですか…」
記者「速報です!二人共無事救出されました!若干衰弱していますが、命に別状はないとのことです!」
律「よ…良かった~」ヘナヘナ…
和「そうもいかないわよ、律…」
律「?」
キャスター「おや…またもや速報です。犯人からと思われる手紙が届きました。中身は…本番はこれからだ、とこれだけです!」
律「………」
律「誰だか知らんが、ふざけたことを…」ギリッ…
東京・某廃ビル
?「ふふ…パフォーマンスにしてはまぁまぁじゃないか?」
部下A「リーダー!次の作戦の準備は完了しております!開始命令をお願いします!」
?「まぁ、落ち着け…C4はそう簡単には見つからないさ…」
部下A「はっ!」
?「よし…午前11時より作戦を次の段階に移せ!以上だ!」
部下A「はっ!了解しました!」ビシッ
某ホテル・駐車場
?「……」
ガサゴソ…カチッ
『12:00』ピッ
?「……」ニヤッ
スタスタスタ
某ホテル会場
記者会見終了後
唯「ふわー何度やっても緊張するよ~!」
政務官「大臣しっかりしてください…まぁ、今回はお察しします……ですが、妹さんの被害が擦り傷だけとは、不幸中の幸いですね…」
唯「でも、憂にこんな危険な目に会わせるなんて酷いよ~!」
政務官「現在入院されている病室に警備を固めております」
唯「ねぇ~見舞いに行ってもいい~?」
政務官「これからの予定を考えましたら…残念ですが、次の機会に…」
唯「そんなぁ~ねぇ…ダメかな…?」うるうる
政務官「! ……///」(あぁ…この純真な目は卑怯だ…卑怯だぞ…!)
政務官「おほん…仕方ありません…予定をずらしましょう…///」
唯「わーい!分かってくれてありがとう~!」ダキッ
政務官(これなんてえろげ?///)ぽー
病室
党員A「いやぁ、ご無事で何より…本当に心配しておりましたよ…」
憂「ご心配をおかけしてすいません…」
党員B「平沢大臣が来られるみたいですよ?」
憂「お姉ちゃんがっ!?」ガバッ
党員A「まだ安静にしてなさい…嬉しいのはわかりますが…」
憂(何だか胸騒ぎがする…)
車中
政務官「もうすぐお昼になりますね。着きましたら、妹さんと食べていくのも良いでしょう」
唯「そこまで時間調整してくれたの?ごめんね~迷惑をかけて…」テヘへ
政務官「いえいえ…それにしても、大臣、気をつけてください」
唯「ほぇ?何で?」
政務官「今回の誘拐事件は一種のテロです。現内閣に対する不満であれば大臣の命も危なくなりかねません」
唯「そ、それは…怖いね…」ビクビク
唯「………」
唯「そんなことしたって、みんな笑顔になれないのに……」
政務官「大臣……?」
唯「怖い思いをさせるよりも手を握り合って温め合った方が思いは通じるんだよ!」ニコッ
補佐官「大臣……///」
私の記憶はその大臣の最高の笑顔から続くことはなかった…
財務省
紬(月が紅い…)
秘書「大臣…例の方です」
紬「あら、分かりましたわ…」くるっ
記者「速報です!平沢厚労大臣の乗っていた車が国道進行中に爆破したとの情報が入りました!現在、車に乗っていた方の状態はまだ伝えられておりません!」
紬(もう出た船は戻れないわけね…)
秘書「大臣…」
紬「は~い♪」
国会議事堂
野党議員「今回の与党が立てた外国人労働者の入国規制に関しまして効果が見こめず―」
律(ちっ…重箱の隅をつつくことばっか…正直聞く気にもなんねぇ…今朝のせいで余計に腹が立つ…)
官房長官「総理…」ひそ
律「ん…」
官房長官「平沢大臣が浪籍者により狩られましたよ…」ひそひそ
律「なっ…!?」
官房長官「つけいれられる所までつけいれられましたね…」ふー
律「くっ…」ギリッ
最終更新:2010年02月12日 01:14