一方
律「うぅっ…澪…澪…」
紬「推測だけど、これまで政府を狙ったテロは澪ちゃんが関与しているかもしれないの」
律「えっ…?」
紬「梓ちゃんから聞いたんけど、二ヶ月前に澪ちゃんは仮出所したらしいの…今は澪ちゃんは既に時の人…だからマスコミは仮出所まで取り上げられことはなかったのよ」
律「それとテロと何の関連性があるんだよ!澪は…澪はそんなことをするはずがないだろっ!!」
紬「それじゃあ、今のところテロの標的は誰になっていたかしら?梓ちゃんに憂ちゃん、唯ちゃん…ここから何が導き出せるかしら?」
律「つまり…澪に行き着くわけか…」
紬「あくまでも、推測よ…」
律「だとしたら…何で澪は私に直接攻撃してこないんだよ…!」
紬「テロはね…相手を直接攻撃するのではなく、間接的に攻撃するのよ、目的のために」
律「………」
紬「今回の目的は、律っちゃんと関連がある人を攻めて律っちゃんを追い込む…まさに生殺しの様なもの…本当に憎んでいないと出来ないことよ」
律「澪が…私を…憎んでいる…だと…?」ガタッ
私は崩れ落ちた…
もはや取り返しのつかない所まで来てしまっているのか…?
病室・ICU
ピピッ…ピピッ…
「ん…ん…あれ…?」
ピピッ…ピピッ…
「ここは…あっ…憂!あずにゃん!」
ピピッ…ピピッ…
「寝ちゃっているのかな~?風邪ひくよ~二人とも!」
ピピッ…ピピッ…
「そうだ!布団をかけてあげようと!これなら二人も大丈夫だね!」
ピピッ…ピピッ…
「よ~し!これでばっちり!」
ピピッ…ピピッ…
「そういえば、ここ病院だね~何でここにいるんだろう…?」
ピピッ…ピピッ…
「まっ…ベッドにいたから戻るかぁ~あれ…?先に誰か寝てる…」
ピピッ…ピピッ…
「私…?」
ピピッ…ピッ…ピ――――
東京・某廃ビル
和「………」ガタガタガタ
澪「本当に何もしゃべんないとは…何かしゃべろよ!」ドカッ
和「うぐっ…かはっ…はぁ……」
部下A「リーダー…余りやり過ぎると…」
澪「あ?」ドカッ
和「ごほっ…げほっ、けほっ…」
部下A「いえ…」
澪「あぁ、次の作戦か…15:30からでやれ……」
部下A「は…はい……」
澪「あと、こいつを閉じ込めておけ!」
部下A「りょ…了解…しました…」
カシャーン
部下A「悪く思うなよ…全部あんたらが悪いんだからな…けっ!」スタスタスタ…
ここでやっと我に返った…
それと同時に目から溢れ出るものが止まることなく流れ続けた…
和「澪…どうして…どうして…」ポロポロポロ…
澪「………」
部下A「リーダー!準備・配備完了です!」
澪「そうか…ご苦労…」
部下A「次の財務省で田井中政権もおしまいですねぇ~」
澪「あぁ…実に楽しみだ…そのために私はいろんなものを捨ててきたのだからな……」
……
律「…クソッ!!バカ野郎っ!!私のバカ野郎っ!!」ダンッダンッ
紬「だとしたら…ここはもう危険ね…」
律「な…なぜ……?」
紬「あら?今までの話覚えてないの?澪ちゃんがテロに関与していると仮定したら、テロの標的が憂ちゃん、梓ちゃん、唯ちゃんと続き、律っちゃんを除く人物が次に狙われることになるのよ?」
律「む、ムギ…まさか…」
紬「そう…次に狙われるのは…私…」
律「そんなっ!!そんなのって…ありかよ…!!」
紬「律っちゃん、私を政界に連れて来てくれてありがとう…本当に楽しかったわ…」ニコッ
律「ムギ……」
紬「いろんな世界を見れたし、いろんな人にも会えたわ…ただ、学生時代でやったクリスマス会みたいに放課後ティータイムのメンバーと憂ちゃん、和ちゃんとで集まることが出来なかったのが一つの心残りだけどね……」
どうしてこうなったんだ…
紬「それじゃ、律っちゃん、また会いましょう♪」パチンッ
ガシッ
律「お、おいっ!!離せっ!!」
連れ出されるなか、ドアで遮られるまでムギの顔を見続けた…
結局、私はムギを守れなかったのだ…
リーダーなのに…仲間一人さえも私は救えなかったのだ……
律「離せぇぇー!!ムギィィー!!」
バタンッ
紬「………」
秘書「大臣…これで本当に良かったのですか…」
紬「ふふふ♪じゃなきゃ、やりずらいでしょ?」
秘書「本当にあなたは気配り上手な方でした…」カチャリッ
ターンッ
律「離せっ…!えっ…?」
「銃声がしたぞー!」
「琴吹大臣が撃たれぞー!」
「救急車はまだかー!」
律「そ…そんな……」
SP「総理…急ぎますよ…」
律「………」
……
記者「速報です!15:42に財務省大臣室で琴吹大臣が銃撃されたもよう!
現場は大変混乱しております!琴吹大臣は現在、救急病院へ搬送中!意識不明の重体!」
キャスター「また番組を変更しましてお送り致しております。
15:42頃、琴吹財務大臣が財務省大臣室にて銃撃され、意識不明の重体となっております。
これで平沢厚労大臣の爆撃事件に続き、第2の犠牲者となりました」
澪「………」
部下A「はははっ!田井中政権、ついに墜ちましたね!」グッ
澪「そう…だな……」
澪「………」スタッ
部下A「リーダー…どこへ?」
澪「気分を換えたいんだ…ちょっとふらつく…」
部下A「気をつけて下さいよ…パトカーの音がしきりに外から聞こえますんで……」
澪「分かってるよ……」
バタンッ
部下A「………」
部下A「黙っていりゃぁ、良い女なのによ……」
燃え尽きて 我が手に残る 虚しさよ
我に言わせよ 我に聞かせよ
執念を燃やすだけの人生は、はっきり言って華がない…
ただ、血と汗を流すだけで自己満足すら得られない…
それを是としてやってきた私にはもう戻ることは出来ない…
出来るのは自分に精一杯の嘘をつくだけ…
もう、それでしか…自分を…自分の人生を…守れない…
澪「何やっていたんだろ…私……」
ふとこぼれる小口にただ苛立ちが積もる…
和「うっ…うっ…」ポロポロポロ
そして、なぜコイツの前に私は来たのだろう…
和「澪…うっうっ…澪…ううっ…」ポロポロポロ
澪「何だ……?」
和「!!」ビクッ
澪「何だって聞いてんだよ!」ガンッ
和「………」ガタガタガタ…
澪「……ちっ…」
澪「あぁ…そうだ…ムギも病院送りなったそうだ……」
和「!!ど、どうしてなの…?」ガタガタガタ
澪「………」
澪「何がだ……?」
和「どうして…私じゃなく…唯やムギをそんな目に会わせるのよっ!!」
澪「………」
和「あの二人が澪に何をしたって言うのよっ!!私だけ…私だけを苦しませれば良いじゃないっ!!」
澪「……ふっ…ふふっ……」
澪「ふふっ…ははっ…あははは……」
和「…?」
澪「アーハッハッハッハッハッハッ!!!!」
和「み、澪……?」
ガシッ
澪「苦しいか?あぁ、そうだよな?自分のせいで他の奴が痛い目に会っているからなっ!!お前と律だけは徹底的に苦しんでもらわんとなっ!!」
和「み…澪…ごめんなさいっ!!私…あなたを苦しませる気はなかったのよっ!!」
澪「うるさいっ!!!!今さら謝ったってもう遅いんだよっ!!!!私だけ退け者にした罰だっ!!!!
特に和っ!!!!お前は私の味方だと言ってたはずなのに堂々と裏切りやがって…お前だけは律以上に苦しんでもらうからな…覚悟してろよっ!!!!」ギロッ
キィー、バタンッ
和「澪…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
私は澪がいなくなった先に向かってひたすら謝るしかなかった…
車中
律「………」
「総理、よろしいかと…」
律「………」
「総理!!」
律「あ…何だ…」
「今から総理は避難施設に隠れることになります…
もはや首相官邸など公的機関におられましては危険です。
一旦、公務から離れた方が身の安全かと…」
律「そうか……」
唯に続いてムギ…
もし澪がテロに関与していると仮定すれば、次に狙われるのは最後に残る私…
律「……クソッ…」ボソリッ
prrrrrr…
律「はい…」
『田井中総理ですか?私、警視庁公安部の者です。
もうすぐ総理とのアクセスができなくなられるとお聞き致しましたのでご連絡させていただきました』
律「公安…?今日のテロについてか…?」
『お察しの通りです。いやぁ、大変ですね…司法省も狙われているんですよね?
公安庁も動けないと思うと心中残念ですねぇ~』
こんな時でも管轄争いか…そんなことしている場合か
律「…早く要件を言え!」
『失礼致しました…滅多に総理でもお伝えもしない情報ですから慣れないものでしてね、お伝え致します』
『本日一貫して起こったテロを招いた組織を判明致しました。
組織名もなく、人数もあまりないようなので、集団とでも言いますか…比較的新しい集団です。
集団の目的は現政権、田井中内閣の倒閣。
公安部員の捜査から首謀者は
秋山澪…おや、昔の政敵と同姓同名ですね…こんな偶然もあるんですねぇ~』
なんてことだ…ムギの言った通りじゃねぇか…
『東京〇〇区の○○ビルでその集団の一員が出入りしているとの目撃情報があり、そこが拠点ではないかと思い…』
律「やはり…そうだったのか…後は任せる…ご苦労…」ピッ
律「……はぁ~…」
なぜか、肩の荷が降りる感じがした…
いや、力以上に何かが抜ける感じだ…
夢であって欲しい…
誰かが「これまでのは嘘です」とさえ言ってくれればもう何も要らない…
律「なんだよ…これ…私が望んだ将来ってこんなんなのかよ……」
ただうなだれるしかなかった……
東京・某廃ビル
澪「最後の作戦だっ!!これで田井中政権の灯火は消えるっ!!気を引き締めて挑むようにっ!!」
部下一同「「はっ!!」」
部下A「これまでの流れを受け、内閣は逃げに回り、警察が動きに回るっ!!そこで今回は厳戒警備体制のスキを狙った作戦だっ!!」
澪「警察と言えど公安…ヘマを起こせばこれまでの努力がおじゃんになる…」
部下A「現在、首都高で埼玉方面に向かう公用車に乗っている総理を狙撃するものだっ!!」
部下A「目的地点から狙撃を行うっ!!Bっ!!お前の腕にかかっているっ!!」
部下B「はっ!!」
澪「B…頼んだぞ…お前なら出来る…」
部下B「外しはしませんよ…リーダー!」
澪「その意気だ…!」
もう戻れない段階にまで私は来てしまっているのだな……
失うものはもう自分の手で潰してきたんだ…
私が心配するものなんてもうない
最終更新:2010年02月12日 01:16