― ☆preparation☆ ―
――チクタク
憂「ふぁ…」
憂「……」
憂「ねむい」
チクタク…チクタク
憂「お姉ちゃん、遅いなぁ」
憂「……」
憂「はー…」
憂「なんだか、ひとりでのご飯とか」
憂「この広い家で、ひとりぼっちとか」
憂「やっぱり寂しいとは思いませんか」
憂「ねぇ、ウサギさん」
ぬいぐるみ「……」
憂「そう思わない?」
ぬいぐるみ「……」
憂「……」
憂「……はー」
憂「わたし何言ってるんだろ」ズーン
ぬいぐるみ「……」
憂「なーに言ってるんだろうねー、ウサギさん」ツンツン…
ぬいぐるみ「……」
憂「……」ツンツン
ぬいぐるみ「……」
チクタク…チクタク
憂「はぁ」グテー
憂「……」
憂「……」
憂「えい、えい」ツンツン
ぬいぐるみ「……」
ピンポーン
憂「あ、やっと帰ってきた」
トタトタトタ…
ガチャ
ぬいぐるみ「……」
――ガチャ
バタン
憂「よいしょっ」ズルズル
唯「うわぁ……ぐるぐる、回ってるよぉ」ズルズル
憂「大丈夫ー…?お姉ちゃん」
唯「らいじょーぶです」
唯「もういっけん、いけますっ」
憂「……」
唯「いひひ」
唯「ぶいぶい☆」
憂「……」
憂「はぁ」アセ
憂「ちょっと待っててね。今、お水持ってくるから」
唯「はー…」ニコニコ
唯「……」
唯「ぶーー」ミョーン
唯「ぅーーん……」ゴロン
唯「わぁー」
ゴロン
唯「……」
唯「どーしよ」
唯「ぐるぐるしてる」
唯「どーする?どーする?」クスクス
唯「あはは」
唯「床、つめたーい」
唯「……ふぃー」グテー
憂「お水、持ってきたよー」トタトタ
憂「はい。お姉ちゃん」
唯「ありがとー、ういー」ニヒヒ
唯「……」コク…コク
唯「……」
唯「ふぅ」
憂「お酒、飲んじゃだめだよ」
憂「まだ高校生なんだよ?」
唯「わかってるよぅー」
憂「めっ」ポン
唯「…あう」
唯「ごめんなさい」ショボ
唯「ごめん、な…さぃ」クスン
憂「あ、あ、ごめんね、お姉ちゃん」アセアセ
唯「ん……な…さぃ」
唯「……」
唯「……」
憂「お姉ちゃん?」
憂「……」ソー
ツンツン
唯「……」
唯「……すー…ふー」
憂「……」
憂「はぁ」アセ
唯「…すー」
憂「……」
ツンツン
唯「…んん……」モゾ
憂「……」
憂「……」クス
憂「…ふー」
憂「このままじゃ…風邪、ひいちゃうね」
憂「…よいしょ」グッ
唯「ん……」
憂「…お、とっと」フラフラ
唯「…すー……ふー」
トタ……トタトタ…トタ
憂「そろそろ、限界、だよ」ヨロ…ヨロ
憂「意外と、重いね、お姉ちゃん…」ズル…ズル
唯「うー……」ムニャ
憂「よい、…しょ」ポフン
ゴロン
ファサ
唯「……」
唯「すー…ふー」
憂「はぁぁー…」ガク
憂「……」
憂「……」
憂「おやすみ、お姉ちゃん」
パチン
――トタトタトタ
…
――おはよー
――おはようさーん
憂「おはよ、梓ちゃん」
梓「あ、憂おはよ」ペラ…
憂「なに読んでるのー?」
梓「ああ、これ?知り合いの先輩に借りた小説。ほら」サッ
憂「へぇー…」ジー
憂「……」
憂「………?」
憂「……」スンスン
憂「梓ちゃん、アルコールの匂いがする…」
梓「え!?ほんと」クンクンクン
梓「しまったー……、ばれないかな。うわ、どうしよう」アタフタ
憂「先生が近づいてきたら、ばれちゃうかも…」
梓「うわー…」
梓「律…先輩、頼みますよ…ほんと」…ズーン
憂「……」
憂「そっか」
憂「昨日お姉ちゃん達と、ご飯食べに行ったんだよね」
梓「ん?」スンスン
梓「あー、うん。駅前の焼肉屋さんね」
梓「そういえば、なんで憂は来なかったの?」
憂「わたしも行きたかったんだけど…」
憂「連絡来たときにはもう、ご飯の支度しちゃってて」ズーン
梓「あー…間が悪いね。確かに昨日はいきなりだったから、ビックリしたかも」
憂「うん。せっかく夕飯作ったのに、無駄にできないなーと思って」
憂「……生物多かったし」ショボン
憂「お姉ちゃんはお姉ちゃんで」
憂「帰ってきたら酷いことになってたし……いったいなんなの」ズーン
梓「あー…、それは仕方ないよ」クスス
梓「唯先輩、凄く楽しそうだったもん」
憂「そうなんだ」
梓「そもそも、入った矢先に律先輩が」
梓「泡の出る金の麦茶をジョッキで9杯、巻きでヨロシクー。…なんて言うから」
梓「最初っから、みんな問答無用にお酒だったし」
梓「そのおかげでムギ先輩が途中、もう凄いことになっちゃって」クスクス
憂「……」
憂「はぁ」アセ
梓「わたし、あーいう飲み会、…なのかな?」
梓「そういうの初めてだったから、楽しかった」クスクス
憂「梓ちゃん、高校生でしょ」ボソ
梓「あはは、堅いこと言わないの」
憂「言うよー……。それにね」
憂「お姉ちゃんが、男の人と帰ってきたの」
梓「そっか、送ってあげたんだね」
梓「あの人、唯先輩の知り合いの人だよ」
憂「知り合い?」
梓「ほら、学園祭のライブが丁度終わったときに、乗り込んできた人たちいたでしょ?」
憂「あ、うん。いたね」
梓「そのなかのひとり」
憂「ええええ」ガーン
憂「どうしよう」アタフタ
憂「お姉ちゃん…、そんな人たちと仲良くしてるんだ」
梓「でも、あれから何度か学校にきてるし」
梓「話してみると、意外と面白い人たちだったよ」
憂「そうなの?」
梓「その、一応……」
梓「一応、学園祭のときのことも謝りに来てくれたしね」
憂「そうなんだ」
梓「この本貸してくれたのも、その知り合いの先輩だし」
梓「悪い人たちじゃないと思う」
憂「…そっか」
憂「……」
憂「やっぱり、あの人…お姉ちゃんの彼氏、なのかな」
梓「いや、それはないんじゃないかな」
梓「二人とも仲がいいけど…」
梓「そういうのとは、ちょっと違う感じがするなー…」
憂「確かにあの人、お姉ちゃんとは…友達だって言ってた」
憂「それ以上でも、それ以下でもないって」
梓「わざわざ聞いたの?」アセ
憂「だ、だって、気になるでしょ?お姉ちゃんだよ?」
梓「いやいや、意味がわからないんだけど」ノシ
梓「別に、唯先輩が誰と友達だっていいんじゃない」
憂「それは…そうだけど」
梓「それとも――」
梓「唯先輩が誰かにとられちゃう、って思ったの?」
憂「……」
梓「わたしはずーっと、一人っ子だったから」
梓「そういうのは、わからないなぁ」
梓「わからないけど」
梓「それってさ、お互い依存しすぎて」
梓「姉離れ、妹離れ。できてないんじゃない?」
憂「……」
梓「ちょっとだけ、羨ましいな」
憂「…え?」
梓「わたし、お姉ちゃん欲しいって思ったことあるし」クス
キーンコーンカーンコーン
梓「憂ー、途中まで一緒に行こ」テクテク
憂「……」
梓「……憂?」
憂「……」
梓「元気ないね。憂」
梓「まだ気にしてるの?」
憂「…え?あ。梓ちゃん」
憂「ごめんね」アタフタ
憂「ちょっと、考えごとしてた…」
憂「で、なんだっけ?」
梓「……」
梓「ふぅ」ガク
――テクテク
梓「憂だってさー」
梓「友達だから言えないこと」
梓「好きだから言えないこと」
梓「家族だから言えないこと」
梓「そういうこと、あるでしょ」
憂「……」
梓「誰にだって、言えないこと、隠してること、あると思うよ」
梓「察してあげるのもまた、気づかいなんじゃないかなーって思うけど」
憂「……うん」
梓「じゃぁ、わたし部活だから」
梓「ばいばい、憂」
憂「うん、またね。梓ちゃん」
テクテク
ピタ
梓「……」
梓「ねぇ、憂」
憂「なに?」
梓「……」ポリポリ
梓「なんか、困ったら言いなよ」
梓「ちょっとぐらいなら、胸貸すよ」
憂「……」
憂「……胸」
憂「ないのに」ボソ
梓「う、うるさい」ガーン
最終更新:2010年02月13日 00:43