さわ子「今でも蜂の幼虫とかイナゴ食べるじゃない。
    オーストラリアの先住民は芋虫食べるしアフリカじゃカブトムシ…」

澪「やめてやめてやめてぇぇーーー!!!」

そして一同は唯と律が取ってきた食料の吟味を始める

梓「いろんなものが取れましたね…」

澪「梨みたいな果物、アケビ、キノコ何種類か、
  どんぐりは、ブナの実、クヌギの実、椎の実。
  あと、柿の実、紫色のビワみたいな形した…何の実だ?」

唯「その紫色の実ね、良い匂いがしたから食べれると思うよ♪」

澪「そんなので判断していいのか…」

律「でも、今肝心なのは、サバイバル物には避けて通れぬ…」

律「毒キノコの選別だっ!!」クワッ!

梓「王道ですね…」

澪「選別っていっても…」

さわ子「はじめに渡した本に、食べられる植物や菌類の見分け方が書いてあるわよ?」

律「そ、そうか、ならば…」ペラペラペラ

律「ここのページからか…」

律「何々…?『毒をもった植物を見分ける方法を伝授する前に
  君たちにアドバイスを行いたい。それは一度有毒な植物を口にしてみることだ。』」

律「『毒のある植物を口にすることで、君たちは自然の恐ろしさを知ると同時に…』」

律「大丈夫かよコレ…」

さわ子「あ、そこは、玄人というかネ○チャー人間になりたい人向けだから
    あんまり本気にしちゃ駄目よ。」

律「おいおい…」


律「ふむ…一応写真付きね。」ペラ

梓「あ、この白いシイタケみたいな奴…」

紬「『フクロツルタケ』?」

律「『フクロツルタケは神経系や内臓にものすごく効く毒キノコだ。
   一本食えば高い確率で極楽に行けるぞ!』」

澪「…」


※気になる人はグーグル先生画像検索に聞いてみてください


唯「えっと、こっちの赤茶色のキノコもやばそうだね。」

澪「それは『ベニテングタケ』だな。私でも知ってる有名な毒キノコだ。」

律「あとは…」ペラ


-五分経過-

律「結局毒キノコはこの二つだけか…」

澪「食べられるキノコは、シメジ、ヒラタケ、ナラタケ、ハツタケ…」

澪「うん、量的にも種類的にもまずまずだ。」

さわ子「はぁー…」

唯「さわちゃん?」

さわ子「不正解っ!!!」ガッ!

律「な、なんだってぇーーー!?」

澪「え、ど、どれなんですか!?」

さわ子「今回だけは智恵貸したげるわ。」

さわ子「そのシメジみたいなのの…これとこれ。
    この二つ以外は本物のシメジ、食べられる奴よ。」

唯「二つも混ざってたんだ。おいしそうなのに…」

さわ子「おいしそうも何も、これ『イッポンシメジ』よ。」

さわ子「死にはしないけど、シメジと似てるから中毒起こす人がけっこういるのよ。」

律「へー…」

澪「あとは無いんですね?」

さわ子「ええ、安心してちょうだい。」

唯「りっちゃんりっちゃん。あれあれ!」

律「おっアレか!ちょっとまってろ!」

そういうと近くの木陰にかけていく律。

梓「どうしたんですか?」

唯「えへへ♪」

律「おらっ!お前らよく見てみろっ!!」

澪「ん?…ん!?んんっ!!!」

梓「そ、それはまさしく…」


「「マツタケ様っ!!」」


さわ子「…」

梓「スゴイですスゴイです!」キラキラ

澪「マツタケまであるのか…さすが琴吹家所有だな!」

律「三年ぶりの…三年ぶりのマツタケ…」

紬(なんでそんなに喜ぶのかしら?)

澪「あ、でもこれもさっきのみたいに実は偽物、なんてことはないよな?」

さわ子「大丈夫よ、食べれるわ。」

律「ほら見ろ!」

さわ子(マツタケじゃなくて『マツタケモドキ』だけどね。)



-食事中-

律「この、ヤマナシだっけか、すっぱいな…」シャリシャリ

唯「この柿は渋くないよ!」

梓「紫色の実も酸味強いですけど、食べれないことはありませんね。」

さわ子「それは一応ビワの仲間よ。」シャリ

唯「でも、キノコはまだ食べれないね…」

律「洗ってから焼くなり煮るなりしないとなー」

律「さて、飯も食ったし、道具の作成に入りますか。」

唯「土器作りたい!」

律「釣り針作るか…」

澪「おまえら…まあ、いいか。石器を作らせてもらうよ。」

紬「唯ちゃんのお手伝いするわ♪」

梓「じゃ、じゃあ澪先輩の…」

さわ子「私は昼寝。」



律「『釣り針は鹿の骨・角かイノシシの牙・骨、木材などを加工して作る。』

律「『当然だが、現代の金属製の釣り針より大幅に大きくなってしまうことは
   否めない。』」

律「『黒曜石でできた厚手のナイフ状の石器と研磨用の大き目の石をしようする。
   また、この際、水に濡らして加工しやすいようにする必要がある。』」

律「あ、黒曜石の石器が必要なのか。私も澪を手伝うか…」



唯「できたー!『ドラえもん』!」

紬「上手上手!」

唯「でもムギちゃんのほうがずっと上手いよ?プロの人みたい。」

紬「お父さんが陶芸を趣味にしているから、時々手伝わせてもらってるの。」

唯「ふーん。」



澪「大き目の石で黒曜石の塊を砕く!」

キーン!

澪「石の工作台の上に砕いた塊を置いて、小型の石を使って成形する…」

キン…!キン…!

梓「けっこう鋭いですね…」

澪「扱うときは気をつけろよ?」

キン…!キン…!

梓「はい!」

澪「うん。形はこんなもんか。」

梓「太いかまぼこの切れ端みたいですね。」

澪「あの本によれば、包丁やナイフとして使うらしい。」

梓「へぇー」

律「おっ!良い感じにできてるじゃん!もらってくぞー」

ヒョイッ

澪「あっコラ!!」

梓「試作品第一号が…」


律「なになに…骨より角のほうが強度が強く成形しやすい…」

律「鹿の角なんてあったけか…」

ごそごそ

律「あ、一個だけあった。気付かなかったぜ。」

律「川魚用は一つの材料から小さめに作る。」

律「とりあえず2、3センチぐらいで切り出すか…」

シュコシュコ…

律「…」

シュコシュコ…

律「…」

シュコシュコ…


-10分後-

律「ストレスたまるわぁ…」


律「で、でけた…」

律「これを今度は大き目の石にこすり付けて三角形か長方形に…

中略

律「真ん中に穴を開け

中略

律「上辺を切り取り

中略

律「"かえし"の部分を作って、あとは細くなるよう、壊れないように磨く…

律「でけた!!」

律「正味3時間…長かった…長かったよ…」

唯「あーりっちゃん出来たんだー!」

律「おう!そういうお前らもたくさん…」

律「作りすぎじゃないか…?形もホンモノみたいに凝ってるし。」

紬「ちょっとこだわって見ました♪」

さわ子「国宝『火焔土器』と見まがうほどの…やるわねムギちゃん!」

澪「こっちも一通りできたぞ。」

律「ふんふん。さっきのナイフみたいなのと、やじりの先みたいなの?
  何に使うんだ?マンモスでも狩る気?」

澪「い、いつか役に起つかもしれないだろ!」

律「はいはい了解了解。」

さわ子「じゃあ、とりあえず粘土のほうを乾燥させないとね。」

バックから携帯電話を取り出すさわ子。



律「おいおい、こんな山の中で通じるのかよ…」

紬「衛星電話なのよ、それ。」

律「え?」

さわ子「あ、もしもし?『野焼き』前の乾燥をお願いしたんですけど…
    あと頼んでおいた海藻も…」

唯「野焼き??なんで海藻なの??」

梓「野焼きはようするに、火で土器を焼くってことですかね?」

斉藤「ただいま参りました。」

紬「斉藤!?」

斉藤「お嬢様、頑張っておいでで…
  (うぅ、琴吹家の令嬢ともあろうお方が古代人の格好を…)」

さわ子「そこにある土器の急速乾燥をお願いしますね。」

斉藤「かしこまりました。海藻はその原始住居の中でよろしいでしょうか?」

さわ子「はい、そちらに運んでいただければ…」


律「ワカメや昆布とその他諸々ねー。すっごい量だな。」

さわ子「この海藻があんたらの生命線になるかもよ?」

唯「さわちゃん、どういうこと?」

さわ子「まあ、明日の野焼き、土器の焼入れね、楽しみにしてて。」

さわ子「ってことで、これから大量の薪を集めてちょうだい。」

律「えー…」

さわ子「嫌ならいいのよ?これから先の生活、煮炊きの道具がないと
    食事はますます味気無くなるわねー。」

澪「そういうことだ、律。」



-そしてなんだかんだで夕暮れ時-

唯「つかへたよー…」

梓「薪の山ができましたね…」

さわ子「さて、夜も近づいてきたことだし、
    じゃあ火をおこしてちょうだいな。」

律「火をおこすって、まさか…原始人がよくやるみたいに
  木と木を擦って…」

さわ子「イエス!」

唯「わたし絶対ムリだよあんなの!!」

梓「そうですね、ここは律先輩かムギ先輩に…」

律「こら梓っ!!」



結局は火おこし担当は律と紬ということになった。

律「はっはっ…はっはっ…」

シュコシュコシュコシュコシュコ…

律「…」

シュコシュコシュコシュコシュコ…

律「あームリ!100パー無理!!」

唯「すごいよムギちゃん!もう煙が出てきたよっ!」

律「え!?」

紬「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

梓「あっ!ほんのり赤く輝いてきましたよ!」

澪「よし!木屑をくべろ!息を吹きかけて火を大きくするんだ!」

律「…」


律「わたし無駄骨じゃん。」




-竪穴式住居内-

澪「よし!良い感じに燃えてきたぞ!」

唯「なんかさ、ドキドキするような雰囲気♪」

紬「浅い穴の上にお家を建てたているのね。」

梓「だから竪穴式住居って言うんでしょうか?
  それに床も、木を並べた上に毛皮が敷いてあって、結構快適です。」

さわ子「木というか、"すのこ"に近いものよ。
    掛け布団として端っこに人数分の毛皮があるから自由に使ってちょうだいね。」

律「なぁ、はやくメシにしようや…」

唯「うんうん!さっそく取ってきたキノコを…」

律「この茶碗土器で煮る。」

唯&律「…」どよーん…

梓「大き目のキノコは木串にして焼いたほうがいいですかね?」

紬「うふふ、"おままごと"みたいで楽しいわ♪」

律「まさに命を賭けた"おままごと"だぜ…」


唯「…」ムシャムシャ

澪「…」シャリシャリ

律「…」

唯「味がない…」

律「…」

唯「しょうゆがほしいよ…塩がほしい…」

律「言うな唯…」


梓「縄文時代の人たちは、こんな味気ない、というか
  塩気無い生活をおくってたんですかね?」

澪「いや、海水を煮詰めれば塩ができるだろ?
  そうやって作ってたんじゃないか?」

さわ子「残念ながら違うわ。海水を蒸発させて塩を作る方法は、
    縄文時代の本当の末期か弥生時代ごろに考え出されたの。
    それまでは、別の方法で作られていたのよ。」

さわ子「あと、塩ではないけれど、ナンプラーに近いものを作っていた可能性もあるみたい。」

梓「そうだったんですか…」

唯「私達これからずっと塩無しなの!?」

さわ子「大丈夫よ、唯ちゃん。明日、縄文時代の塩の作り方を教えるわ。」


女子が五名+1集まれば姦しい。
食事のあと、唯たちは時間も忘れておしゃべりを楽しんだ。
そして就寝。火は消さずに規模を小さくする。獣避けのためだ。
晩夏といっても、森林の中では気温はそれほど高くなく、快適なぐらい。

シャッシャ…シャシャッ…

ホー…ホー…

ウ…ウヴ…ウ…

梓(眠れない…)

シャシャッ…シャ…

梓(さっきから…動物の鳴き声?)

真っ暗ではないけれど光源の明るさは、ぼんやりとした橙。
となりに寝ている者の顔の判別もつかないほど。

グホッ…グホッ…

ジッ…ジッ…ジッ…

梓(…)

ヴヴ…ヴヴヴ…

シャー…アッコサン…シャー

梓(怖いよぉ…)

梓(…)

ホー…ホー…ホー…

シュッ…シュッ…シュッ…

梓(おしっこしたい…)

ヴーヴー

梓(でも…一人じゃ…)

梓(!)

梓(先輩について来てもらって…)

梓は起き上がると、隣に寝ているはずの澪に近づく。

梓(あれ?いない…)


澪の寝床はもぬけの殻。

梓(えっと…)

周りを見回す梓。

梓(あ…)


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最終更新:2010年02月14日 03:59