律「ゆい~!!」

唯「ハァハァ りっちゃん」

律「どこ行ってたんだよ!」

唯「ごめんねりっちゃん、これ、」

律「アイス…」

律「もう、びっくりさせんなよ!」

唯「うん、ごめんなさい」

私と唯は電車に乗り、今日行けるギリギリの所で降りる事にした

律「唯、寒くないか?」

唯「うん、大丈夫だよ」

唯「澪ちゃん達に何も言わず出ちゃったね」

律「仕方ないよ、落ち着いたら連絡しよう」

唯「そうだね」


電車に乗った途端時間が経つにつれて私の不安も大きくなっていった
逃げようと決めたもののこれからどうなるんだろう…
ただの高校生の私が唯を守れるんだろうか


律「結構田舎に来ちゃったなぁ」

唯「泊まれる所あるかな?」

律「んー普通のホテルは身分証明書とかいるだろうしなぁ」

律「あのホテルなら大丈夫かな」

唯「あのって?」

律「あー唯は知らなくていいよ」


私たちはホテルに入りお風呂に入って食事をとった

律「どこかで落ち着けてバイトでもしないとな」

律「いつまでも泊まり歩くわけにはいかないし」

唯「うん、そうだね 私なにしようかな?」

唯「うーん、思いつかないや ねぇりっちゃ…」


りっちゃんは眠っていました
今まで見てきた中で一番疲れた顔をして眠っていました

りっちゃん…

早朝から私たちはホテルを出て、さらに遠くに行くために駅に向かった

律「あんまり田舎に行っても働く所も住む所も無いだろうしなぁ」

律「少し街な所を探すかぁ」

唯「そうだね」

律「本屋探して地図見て決めようか?」

唯「うん」

律「んー、この辺店とか多いな、ここから結構離れてるし」

律「ここにするか?」

唯「うん、そうしよう」


私たちはいつまでも落ち着ける場所を探すために電車に乗った


唯「りっちゃんとこんなに遠くまで旅行するの初めてだねぇ」

律「そうだな、って旅行か…」

唯「えへへ」

唯「誰も知らない所で、りっちゃんと生きて行くんだぁ」

律「…あぁ」


目的の地に着いた、そこは都会でもなく田舎でもない
私たちにはちょうどいいくらいの街だった


律「まず探さなきゃいけないのは、住む所だな」

唯「不動産屋さんに行く?」

律「そうだな、とりあえず探して行ってみるか」


「いらっしゃいませー」

律「あの、部屋を探してるんですけど…」

「どのようなお部屋ですか?」

律「狭くてもいいんでなるべく安い所は…」

「失礼ですがご年齢は?」

律「…20です」

「身分証明証等はお持ちでしょうか?」

律「…無いんですが、お金ならありますから!」

「身分証明証が無いと…、あと保証人様はいらっしゃいますか?」

律「え?」

律「いません」

「申し訳無いのですがそれではお部屋を提供出来ません」

律「わかりました…」


唯「駄目だったね…」

律「…」


律「住む所が無いとやっていけないぞ、、」

唯「うん…」


律「…そうだ、住み込みの仕事を探すんだ!」

律「それなら一石二鳥だぞ!」

唯「高校生でもいいのかなぁ?」

律「とりあえず探して行ってみるんだよ!」


就職情報雑誌で住み込みの仕事を2件見つけた
だけど、どっちも未成年という事で断られた


律「駄目だな…」

唯「うん…」

律「ホテルじゃ金かかるしなー」

律「まいったな」

唯「りっちゃん、ごめんね、、」

律「謝るなって」

唯「うん…」

律「なんか食べるか」

唯「うん」

律「なに食おうかな」


唯「りっちゃん!」

律「え?食いたいもんあったか?」

唯「ううん、あれ見て!」

唯「部屋貸します、だって」

律「ほんとだ!」

律「しかしボロい家だなぁ、どうせまた断られるだろうし」

律「まぁ駄目元で行ってみるか」

唯「そうしよう!」


ピンポーン

出て来たのは80歳くらいに見えるお婆さんだった

「なんだい?」

律「あのー、部屋貸しますって張り紙見たんですけどー」

「借りたいのかい?」

律「はい!是非、お願いします!」

唯「お願いします!」

「いつから来る?」

律「え?」

「借りるんじゃないのかい?」

律「貸してもらえるんですか!」

「あぁ」

律「やった!ありがとうございます!」

唯「あ、ありがとうございます!!」グスッ

律「今日からお願いします!」

「急な話だね、まぁいいよ」

「あそこの離れを使いな、掃除は自分でやりなさい」

律「はい!」

律「あの…私たちの事何も聞かないんですか?」

「興味ないね、家賃は月3万、いいかい?」

律「…は、はい、ありがとうございます!」

「この部屋だよ、火事だけは起こすんじゃないよ!」

律「はい、気をつけます!」

律「やったな唯!」

唯「うん、やったね!りっちゃん!」

律「これで1つ安心だ」

唯「うん!後はお仕事だね!」

律「早めに決めないとな、金も無くなっていくばかりだし」

律「とりあえずお祝いになにか食おうぜ!」

唯「うん!」


律「あー腹へったなぁ」

唯「わたしもー」


こんなに美味しく感じた食事は初めてだった
今までは甘い生活をしていたという事に初めて気づいた

律「あー美味しかったなぁ」

唯「うん!」

律「じゃあ部屋戻ろうかぁ」

唯「…」

律「唯?」

唯「え?あ、ごめん、なに?」

律「どうした?気分悪いのか?」

唯「ううん、全然!」

律「ならいいけど」


ひとつだけ心に重い物が

家出や殺人で警察がわたしたちを追わない理由は分かる

政府

でも、あいつらが追って来ない
諦めた?

そうは思えない
なぜ?


律「今日は疲れたから掃除とか明日にしよう」

唯「そうだね」

律「明日は仕事も探さないとな」

唯「うん」

律「唯は無理しなくていいぞ」

唯「駄目だよ、わたしもお仕事しなきゃ」

律「無理するなよ」

律「今日は早めに寝るか、疲れた」

唯「うん、寝よう」

唯「りっちゃん」

律「ん?」

唯「わたしたちのお家だねぇ」

律「あぁ、私と唯の家だ」

唯「ありがとう、りっちゃん」

律「よせよ…」

唯「ふふ、おやすみ」

律「おやすみー」


唯「さ、寒いよう・・」

律「ふ、布団買ってなかったな…」


新しい生活の始まりだ

いろいろ仕事を探してみたんだけどやはり正社員になるのは私たちには無理だった
それぞれアルバイトをする事になった

唯はお弁当屋さん 
私は引っ越しの作業員、辛いけど時給が良かったからだ

お互い夜の7時位まで


律「唯ー?弁当屋どうだ?」

唯「う、うん、なんとかやってるよ」

律「(苦戦してるようだな)」

唯「りっちゃんは身体大丈夫?重労働でしょ…」

律「大丈夫だよ、ドラムで鍛えてたからな」

唯「あ、そうかー りっちゃんドラムやってたんだもんね」

唯「私はギターやってたんだったなぁ…」

律「なんだかもう懐かしいな」

唯「そんなに時間経ってないのにね…」

律「唯… 辛いか?」

唯「…」

唯「…私は辛くなんてないよ」

唯「それより私のせいで、りっちゃんに辛い生活させてるのが…」

律「私は辛くなんてないぞ?唯とこういう生活できて楽しいぞ」

唯「…私も楽しい」

唯「りっちゃんと一緒だから楽しいよ」

律「それならいいんだ」

律「それにな、唯のせいとか思ってないぞ」

律「私が好きでやってるんだ、逃げようって言ったの私だしさ」

唯「うん、、」


唯は相変わらずバイトでドジやってるらしいけど前よりはマシになったみたいだ
私も少し慣れてきた、最初の頃はすぐヘバって怒られてたのに

自炊するようになり少しだけど貯金できるようになった
家賃が安いおかげだ、おばあちゃんに感謝しないと



唯「ありがとうございましたー」

「唯ちゃん、ちょっとこっち手伝ってくれる?」

唯「はーい」

唯「!」

唯「あっ」クラッ

その場にしゃがみこんでしまった

「どうしたの!?唯ちゃん!」

唯「あ、だ、大丈夫です」

唯「ちょっと風邪ひいたのかもー」

「大丈夫なの?気をつけてね」

唯「はい、すみませーん」

唯「…」



律「ただいまー」

律「唯ー?」

律「どうしたんだ、唯?」

唯「あ、おかえりー りっちゃん、少し疲れただけ、布団上げるね」

律「体調悪いのか?」

唯「ううん」

律「唯!」

律「正直に言え、唯」

唯「なんでもないよー疲れちゃっただけ」

律「今から病院、」

律「(駄目だ、唯の身体見せたら大騒ぎになってしまう)」

律「あいつらの仕業か?」

唯「なんでもないよ」

律「そんなわけな・」

唯「なんでもないんだってば!!」

律「唯…」

律「なんでもないわけないだろ!」

唯「もういい!りっちゃんなんて嫌い!!」ガタッ

律「どこ行くんだよ!唯、おい!」


辺りを探したけどいない、普通の人間の私と違って走るのが速いんだあいつ
もう日が沈む頃だ


どこだ?弁当屋にもどこにもいない
あ…




唯「…」グスッ

唯「(りっちゃん…)」


律「ゆい」

唯「…りっちゃん」

やっぱりここにいた、あの家に住んで間もない時に偶然見つけた川の畔

静かで人けもあまり無い
唯がここの景色が好きだと言った川の畔


唯「りっちゃん、ごめん…」

律「いいよ」

唯「りっちゃんは私の事心配してくれたのに」

唯「私怖いんだ、、自分の身体がどうなっちゃうのか…」

唯「怖いよお、、りっちゃん…」

唯「怖いよぉお!」

律「唯、大丈夫だ唯!」

律「唯がどんな身体になろうが私がそばにいる」

唯「りっちゃん…」グスッ

唯「りっちゃんを傷つけちゃったら嫌だよお!」

律「それでもそばにいるから!!」

唯「りっちゃん」

律「私がいるからさ…」

唯「ごめんね」

唯「ごめんね、りっちゃん、嫌いなんて言って…」

律「気にするなよ、本気じゃないだろ~」

唯「…エヘヘ」グスッ


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最終更新:2010年02月15日 01:09