中野家
梓「先輩たちは私より先に卒業します。だから、これはその予習です」
さわ子「予習ねぇ。普段からそれくらい真面目だといいんだけど~」
梓「はぁ。教科書には、なにか眠くなるサブリミナルが刷り込まれてると思うんですが」
さわ子「そんなわけないでしょ! はぁ~。最初、あなた見たときちょっとヤバイ子だとは思ってたのよねえ」
梓「はぁ。ドープでした?」
さわ子「なにちょっと照れてんのよ……」
さわ子「前に一度澪ちゃんに聞いたのよ。梓ちゃんは暇つぶしに部活に来てるんだって。
ずいぶんな後輩ね~」
梓「私は……寝るか、ギター弾くかしか時間のすごし方がないんです」
さわ子「ふぅ~ん。そのわりにはずいぶんがんばってチョコ作ってるじゃない」
梓「そうですか。なんででしょう?」
さわ子「いや、私に聞かれても……」
梓「なんだか最近落ち着かないんです」
さわ子「クールじゃないわねぇ」
梓「寝てもわりとすぐに目が覚めるし、ギター一人で弾いても物足りない気分になるし……
これが欲求不満というやつなんでしょうか」
さわ子「それじゃあ、なんだかヒワイよ。ん~そうね~。あれ、梓ちゃん、携帯光ってる」
梓「む……」コチコチ
fromあずにゃん8号
subほうこく!
チョコ途中までできたよー
ねえ、おいしそーでしょー
梓「……む」ゴソゴソガチャガチャ
さわ子「唯ちゃん? なんだって?」
梓「チヨコがおいしいらしいです」つアンプ
ブッ……ゥウウーーーン
ジャカジャジャジャーーンジャジャーーン!!
さわ子「バレンタインかぁ……」
秋山家
澪「か~んせ~い」
紬「やった!」
澪「あとはブロックのやつは切るだけなんだけど……」
律「パパパーンパパパーン」
唯「パパパーンパパパーン」
律「では、初めての共同作業」
唯「ヒラサワ。いきまーすっ」
―入刀―
唯「おめでとーございまーす!!」
律「コングラチュレーション!!」
澪「わかんない……」
中野家
さわ子「はい。では完成品がこちらにありまーす」
梓「おお……」
さわ子「はい。チョコレートです。いわゆる生チョコ。では~これから切り分けましょう。では、梓ちゃん、どうぞ」
梓「……むむ」プルプル
さわ子「あ、梓ちゃん? そんな緊張しなくていいのよ?」
梓「……では」
―入刀―
むにゅぅぅぅ
梓「……アレ?」
さわ子「あ~ちょっと失敗しちゃったかぁ。チョコと生クリームがうまく混ざってないとこうなるのよね~」
梓「……」
さわ子「どうしよっか。これでもいいと思うけど、もう一度……ってちょっと!?」
梓「……うっ……ヒック」ぽろぽろ
さわ子「え、え、なに? どうしたのよ~?」
梓「失敗しちゃった……失敗しちゃった……」
さわ子「ちょ、え、こんなの予想してなかったわよ! ちょっと、梓ちゃん」
梓「せっかく……せっかくせっかく……先輩たちに……あげようと思ったのに……」
梓「バレンタインは……好きな人に……渡すからって……」
さわ子「あーもう」ギュ
梓「先輩たちは……先にいなくなるから……ちゃんと……したかったのに……」
さわ子「そうよねえ」ナデナデ
梓「私……また一人になったら……どうすごせばいいか……わからない……」
さわ子「大丈夫よ~。梓ちゃんが3年生になるころは、新入生も来るわよ~」
梓「他の人じゃ……イヤだ……」
さわ子「そうね~」
さわ子「とにかく! まだ大丈夫よ! またチョコ作ればいいんだから!」
梓「……ぐす」
さわ子「もう一回やればうまくいくって! カ~ンタンなんだから~」
梓「簡単なのに……失敗した……」じわぁ
さわ子「わああ! いや、だからね、次はうまくいくのよ! そういうことになってるの!」
梓「……ほんとうに?」
さわ子「ホントホントー! だって周富徳だって料理の鉄人で言ってたから!(アレ?自分でも何言ってんだかわかんないぞわたし)」
梓「……ぐす」
平沢家
唯「ただーいまー」
憂「お、おかえり! お姉ちゃん、ご飯はー?」
唯「澪ちゃんちでごちそうになっちゃった! でも、お風呂から出たら食べるー」
憂「うん! わかったー」
憂「(あ、後は冷やすだけ……)」
唯「ぐちゃぐちゃへたる~なやみ~ごとも~」
憂「(お姉ちゃんに見つからないようにしなきゃ)」
中野家
さわ子「たららったったったった♪ たららったったったった♪」
梓「……」
さわ子「たららったたらりーら♪ たん、たん、たん、たん♪」
梓「……たん」
さわ子「はい、今回は生チョコ。いいですねー。恋人に渡すのいいですけど。
男性の方々、日ごろの感謝を込めて、逆チョコもありですよー」
梓「……ですよー」
さわ子「はい、それではさっそくとりかかりましょうー」
さわ子「はい、材料はこちらー。市販チョコ、生クリーム、ココアパウダー。
そ・れ・か・ら、愛情! ですねー」
梓「……じょう!」
さわ子「はい、それではさっそく、このチヨコ、八つ裂きにしてあげましょー。
そうですねー、例えば去年のクリスマス前に新宿の高島屋の前のスタバで私に
別れを告げた憎いあんちくしょうなどを参考にしましょうー」
梓「……やつざき!」
さわ子「たん、たん、たん、たん♪」
梓「……」ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ!!
さわ子「じょ・お・し・きっをは~るかにこえて!」
梓「……にゃ」ザクザク
さわ子「好き好き大好き♪ 好き好き大好き♪ 愛してるって言わなきゃ殺すっ!!」
梓「……ほにゃにゃにゃ~♪」ザクザク
さわ子「あ~今思い出してもムカッ腹立つー!! あの野郎~私があのときのプレゼントにいくらかけたと思ってんだー!! 唯ちゃんたちに見せたのはもちろんフェイクだけど、あのとき私年末前で金なかったんじゃー!! 金返せー!!」
梓「貸した金返せよ~♪」ザクザクドムドム
さわ子「さて、生クリームですね!」
梓「……」
さわ子「はい、こちらが煮立った生クリーム。もういいですね~。
では、このバラバラチヨコを投入しましょ~」
梓「あ……」
さわ子「だーいじょうぶよ!」
さわ子「え……さっきはちょっと作業が遅かったのよ。
ほら、チヨコとクリームを混ぜる混ぜる!」
梓「……う……はぁ」ぐ~るぐ~る
梓「……むむ」
さわ子「(一生懸命になっちゃって。普通の子じゃない。ま、それでよかったけど)」
梓「せ、せんせー」
さわ子「はぁい」
梓「もういいですか。いや、まだ足らないですよね。もっと回したほうがいいですよね」グルグルグル
さわ子「い、いや、待ちなさい! あんまりやりすぎても……」
梓「さっき失敗したから……今度はうまくやらなきゃ……ああ、でもまぜすぎてもアレまぜすぎ?」
さわ子「(成功とか失敗とかロクにしたことないのね)」
平沢家
憂「とりあえず、ここなら見つからないハズ……」
唯「うーいーごはんマダー?」
憂「う、うん! ちょっと待ってー」
唯「うふふ~」
憂「お姉ちゃんうれしそうだね。今日、澪さんの家で何してたの?」
唯「え~……ッ……ひ、秘密だよっ!(危なかったー言いそうになっちゃった)」
憂「え~なに~?」
唯「え!? う、ううん、じ、実はムギちゃんが~エーと」
憂「紬さんが?」
唯「ば、ばばば、ば、ばなな。そう! バナナパンツ好きなんだって!」
琴吹家
紬「んふふ。コレ、持ってきちゃった」つ澪パンツ
紬「わ、私ったらこんなにイケナイ子だったのね。と、とりあえずどうしようかしらコレ」
わたしの~お~も~いを~つ~た~えて~♪
紬「アラ、唯ちゃん♪」
唯「もしもしームギちゃんー?」
紬「唯ちゃん、こんばんわ~。どうしたのー?」
唯「うん……あのねー」
紬「うん?」
唯「えっとね……」
紬「もしかして言いづらいこと?」
唯「うん……」
紬「遠慮しないで。私たち、仲間じゃない!」つ澪パンツ
唯「うん……あのねームギちゃん、バナナ好き?」
紬「バナナ? そうねー栄養もあるし、好きだけど。あ、もしかして、今度のおかしはバナナがいいの?」
唯「そうじゃないんだぁ……」
紬「そう……じゃあ、なーに?」つ澪パンツ
唯「うん……ムギちゃん、バナナパンツってどう思う?」
紬「え!? ぱ、パンツ!?(え!? もしかしてバレてる!?)」つ澪パンツ
唯「あのねー憂にバレンタインのことごまかそうとして、ムギちゃんがバナナパンツが好きなんだって言っちゃったの」
紬「へ、へーっ」つイエローストライプ澪パンツ
唯「怒らないの?」
紬「う、ううん! いいのよ全然!」つイエローストライプ澪パンツ
唯「憂がねーバナナパンツっていうのはやぁらしいパンツのことだって言うの」
紬「い、イヤらしいって!?」つ澪のやぁらしいパンツ
唯「うん……なんか、女の子同士が、する? ときに使うヤツのことだって」
紬「そっ、それって、ペニバ……っ」つ澪のやぁらしいパンツ
唯「それでね、憂がすっごい誤解しちゃって。ムギちゃんと遊んじゃダメだって。
もちろん、私は違うよって言ったよ!」
紬「う、うん」つ澪のやぁらしいパンツ
唯「ごめん……」
紬「お、落ち込まないで唯ちゃん! わ、私気にしてないからっ!」つ澪パンツ
唯「ほんとう?」
紬「ホントよーッ!! 私の愛器のキー坊に誓ってもいいわ!」つ澪パン
唯「ありがと~ムギちゃ~ん……グスッ」
紬「え? 唯ちゃん?」つ澪パン
唯「ホントに……ヒック……もう絶好だって言われたらどうしようってっ!」
紬「大丈夫! それくらいなんともないわ! だって、私たち仲間だもん!」つ澪パン
唯「ありがと~ムギちゃ~ん……おうおう」
紬「うん……うん……そう、うん……」つ澪パン
紬「うん、大丈夫。もう、ホントに大丈夫よー」つ澪パン
紬「うん……それじゃ、また明日ね。おやすみなさい」ピッ
紬「ハァーーッ……」つ澪パン
紬「……」澪パン
紬「こ、今度澪ちゃんの家に行ったとき、こっそり返しましょ!」つ澪のやぁらしい黄色いシマパン
中野家
さわ子「もういいでしょう」
梓「……」
さわ子「そんな顔しないでも、結果は出るわ。ほいっ、でーきーあーがーり!」
梓「あ……」
さわ子「ほら、包丁入れてみなさい」
梓「……」つ包丁
さわ子「大丈夫よ」
梓「……っ」ゴクリ
―入刀―
梓「あ……かたい……」
さわ子「ねっ。うまくいったでしょ?」
梓「すごい……かたいです! しっかりかたいです!」
さわ子「あ、梓ちゃん、あんまりかたいかたい連呼しないで……」
梓「それでは、切ります」
さわ子「(……絆創膏の指)」
梓「たららったったったった♪ たららったったったった♪」
さわ子「(唯ちゃんは弦で切ったとき貼ってあげたけど)」
梓「たん、たん、たん、たん♪」
さわ子「(私、家庭科じゃないんだけどなー)」
さわ子「今日の料理も残すところあとわずか。最後はラッピングしましょー」
梓「……おー」
さわ子「えーっと、何人分だっけ? 唯ちゃんたちでしょう?」
梓「9個です」
さわ子「え? そんなに多いの?」
梓「もっと多くてもいいですけど、今回は最初失敗して、量が減りましたから」
さわ子「それにしても、えーと、軽音部でしょう? 憂ちゃんにー……」
梓「できました」
さわ子「お! どれどれー」
梓「ドウゾ」
さわ子「え?」
梓「ドウゾ」
さわ子「あたしに? くれるの?」
最終更新:2010年02月16日 00:50