中野家

梓「先輩たちは私より先に卒業します。だから、これはその予習です」

さわ子「予習ねぇ。普段からそれくらい真面目だといいんだけど~」

梓「はぁ。教科書には、なにか眠くなるサブリミナルが刷り込まれてると思うんですが」

さわ子「そんなわけないでしょ! はぁ~。最初、あなた見たときちょっとヤバイ子だとは思ってたのよねえ」

梓「はぁ。ドープでした?」

さわ子「なにちょっと照れてんのよ……」

さわ子「前に一度澪ちゃんに聞いたのよ。梓ちゃんは暇つぶしに部活に来てるんだって。
    ずいぶんな後輩ね~」

梓「私は……寝るか、ギター弾くかしか時間のすごし方がないんです」

さわ子「ふぅ~ん。そのわりにはずいぶんがんばってチョコ作ってるじゃない」

梓「そうですか。なんででしょう?」

さわ子「いや、私に聞かれても……」

梓「なんだか最近落ち着かないんです」

さわ子「クールじゃないわねぇ」

梓「寝てもわりとすぐに目が覚めるし、ギター一人で弾いても物足りない気分になるし……
  これが欲求不満というやつなんでしょうか」

さわ子「それじゃあ、なんだかヒワイよ。ん~そうね~。あれ、梓ちゃん、携帯光ってる」

梓「む……」コチコチ



fromあずにゃん8号
subほうこく!
チョコ途中までできたよー
ねえ、おいしそーでしょー




梓「……む」ゴソゴソガチャガチャ

さわ子「唯ちゃん? なんだって?」

梓「チヨコがおいしいらしいです」つアンプ

  ブッ……ゥウウーーーン
  ジャカジャジャジャーーンジャジャーーン!!


My Bloody Valentine - Only Shallow
(http://www.youtube.com/watch?v=Lf8j1bUgwJ8)


さわ子「バレンタインかぁ……」




秋山家

澪「か~んせ~い」

紬「やった!」

澪「あとはブロックのやつは切るだけなんだけど……」

律「パパパーンパパパーン」

唯「パパパーンパパパーン」

律「では、初めての共同作業」

唯「ヒラサワ。いきまーすっ」

  ―入刀―

唯「おめでとーございまーす!!」

律「コングラチュレーション!!」

澪「わかんない……」




中野家

さわ子「はい。では完成品がこちらにありまーす」

梓「おお……」

さわ子「はい。チョコレートです。いわゆる生チョコ。では~これから切り分けましょう。では、梓ちゃん、どうぞ」

梓「……むむ」プルプル

さわ子「あ、梓ちゃん? そんな緊張しなくていいのよ?」

梓「……では」

  ―入刀―

  むにゅぅぅぅ


梓「……アレ?」

さわ子「あ~ちょっと失敗しちゃったかぁ。チョコと生クリームがうまく混ざってないとこうなるのよね~」

梓「……」

さわ子「どうしよっか。これでもいいと思うけど、もう一度……ってちょっと!?」

梓「……うっ……ヒック」ぽろぽろ

さわ子「え、え、なに? どうしたのよ~?」

梓「失敗しちゃった……失敗しちゃった……」

さわ子「ちょ、え、こんなの予想してなかったわよ! ちょっと、梓ちゃん」

梓「せっかく……せっかくせっかく……先輩たちに……あげようと思ったのに……」

梓「バレンタインは……好きな人に……渡すからって……」

さわ子「あーもう」ギュ

梓「先輩たちは……先にいなくなるから……ちゃんと……したかったのに……」

さわ子「そうよねえ」ナデナデ

梓「私……また一人になったら……どうすごせばいいか……わからない……」

さわ子「大丈夫よ~。梓ちゃんが3年生になるころは、新入生も来るわよ~」

梓「他の人じゃ……イヤだ……」

さわ子「そうね~」

さわ子「とにかく! まだ大丈夫よ! またチョコ作ればいいんだから!」

梓「……ぐす」

さわ子「もう一回やればうまくいくって! カ~ンタンなんだから~」

梓「簡単なのに……失敗した……」じわぁ

さわ子「わああ! いや、だからね、次はうまくいくのよ! そういうことになってるの!」

梓「……ほんとうに?」

さわ子「ホントホントー! だって周富徳だって料理の鉄人で言ってたから!(アレ?自分でも何言ってんだかわかんないぞわたし)」

梓「……ぐす」




平沢家

唯「ただーいまー」

憂「お、おかえり! お姉ちゃん、ご飯はー?」

唯「澪ちゃんちでごちそうになっちゃった! でも、お風呂から出たら食べるー」

憂「うん! わかったー」

憂「(あ、後は冷やすだけ……)」

唯「ぐちゃぐちゃへたる~なやみ~ごとも~」

憂「(お姉ちゃんに見つからないようにしなきゃ)」




中野家

さわ子「たららったったったった♪ たららったったったった♪」

梓「……」

さわ子「たららったたらりーら♪ たん、たん、たん、たん♪」

梓「……たん」

さわ子「はい、今回は生チョコ。いいですねー。恋人に渡すのいいですけど。
    男性の方々、日ごろの感謝を込めて、逆チョコもありですよー」

梓「……ですよー」

さわ子「はい、それではさっそくとりかかりましょうー」

さわ子「はい、材料はこちらー。市販チョコ、生クリーム、ココアパウダー。
    そ・れ・か・ら、愛情! ですねー」

梓「……じょう!」

さわ子「はい、それではさっそく、このチヨコ、八つ裂きにしてあげましょー。
    そうですねー、例えば去年のクリスマス前に新宿の高島屋の前のスタバで私に
    別れを告げた憎いあんちくしょうなどを参考にしましょうー」

梓「……やつざき!」

さわ子「たん、たん、たん、たん♪」

梓「……」ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ!!

さわ子「じょ・お・し・きっをは~るかにこえて!」

梓「……にゃ」ザクザク

さわ子「好き好き大好き♪ 好き好き大好き♪ 愛してるって言わなきゃ殺すっ!!」

梓「……ほにゃにゃにゃ~♪」ザクザク

さわ子「あ~今思い出してもムカッ腹立つー!! あの野郎~私があのときのプレゼントにいくらかけたと思ってんだー!! 唯ちゃんたちに見せたのはもちろんフェイクだけど、あのとき私年末前で金なかったんじゃー!! 金返せー!!」

梓「貸した金返せよ~♪」ザクザクドムドム

さわ子「さて、生クリームですね!」

梓「……」

さわ子「はい、こちらが煮立った生クリーム。もういいですね~。
    では、このバラバラチヨコを投入しましょ~」

梓「あ……」

さわ子「だーいじょうぶよ!」

さわ子「え……さっきはちょっと作業が遅かったのよ。
  ほら、チヨコとクリームを混ぜる混ぜる!」

梓「……う……はぁ」ぐ~るぐ~る

梓「……むむ」

さわ子「(一生懸命になっちゃって。普通の子じゃない。ま、それでよかったけど)」

梓「せ、せんせー」

さわ子「はぁい」

梓「もういいですか。いや、まだ足らないですよね。もっと回したほうがいいですよね」グルグルグル

さわ子「い、いや、待ちなさい! あんまりやりすぎても……」

梓「さっき失敗したから……今度はうまくやらなきゃ……ああ、でもまぜすぎてもアレまぜすぎ?」

さわ子「(成功とか失敗とかロクにしたことないのね)」




平沢家

憂「とりあえず、ここなら見つからないハズ……」

唯「うーいーごはんマダー?」

憂「う、うん! ちょっと待ってー」

唯「うふふ~」

憂「お姉ちゃんうれしそうだね。今日、澪さんの家で何してたの?」

唯「え~……ッ……ひ、秘密だよっ!(危なかったー言いそうになっちゃった)」

憂「え~なに~?」

唯「え!? う、ううん、じ、実はムギちゃんが~エーと」

憂「紬さんが?」

唯「ば、ばばば、ば、ばなな。そう! バナナパンツ好きなんだって!」



琴吹家

紬「んふふ。コレ、持ってきちゃった」つ澪パンツ

紬「わ、私ったらこんなにイケナイ子だったのね。と、とりあえずどうしようかしらコレ」

  わたしの~お~も~いを~つ~た~えて~♪


紬「アラ、唯ちゃん♪」

唯「もしもしームギちゃんー?」

紬「唯ちゃん、こんばんわ~。どうしたのー?」

唯「うん……あのねー」

紬「うん?」

唯「えっとね……」

紬「もしかして言いづらいこと?」

唯「うん……」

紬「遠慮しないで。私たち、仲間じゃない!」つ澪パンツ

唯「うん……あのねームギちゃん、バナナ好き?」

紬「バナナ? そうねー栄養もあるし、好きだけど。あ、もしかして、今度のおかしはバナナがいいの?」

唯「そうじゃないんだぁ……」

紬「そう……じゃあ、なーに?」つ澪パンツ


唯「うん……ムギちゃん、バナナパンツってどう思う?」

紬「え!? ぱ、パンツ!?(え!? もしかしてバレてる!?)」つ澪パンツ


唯「あのねー憂にバレンタインのことごまかそうとして、ムギちゃんがバナナパンツが好きなんだって言っちゃったの」

紬「へ、へーっ」つイエローストライプ澪パンツ

唯「怒らないの?」

紬「う、ううん! いいのよ全然!」つイエローストライプ澪パンツ

唯「憂がねーバナナパンツっていうのはやぁらしいパンツのことだって言うの」

紬「い、イヤらしいって!?」つ澪のやぁらしいパンツ

唯「うん……なんか、女の子同士が、する? ときに使うヤツのことだって」

紬「そっ、それって、ペニバ……っ」つ澪のやぁらしいパンツ

唯「それでね、憂がすっごい誤解しちゃって。ムギちゃんと遊んじゃダメだって。
  もちろん、私は違うよって言ったよ!」

紬「う、うん」つ澪のやぁらしいパンツ

唯「ごめん……」

紬「お、落ち込まないで唯ちゃん! わ、私気にしてないからっ!」つ澪パンツ

唯「ほんとう?」

紬「ホントよーッ!! 私の愛器のキー坊に誓ってもいいわ!」つ澪パン

唯「ありがと~ムギちゃ~ん……グスッ」

紬「え? 唯ちゃん?」つ澪パン

唯「ホントに……ヒック……もう絶好だって言われたらどうしようってっ!」

紬「大丈夫! それくらいなんともないわ! だって、私たち仲間だもん!」つ澪パン

唯「ありがと~ムギちゃ~ん……おうおう」

紬「うん……うん……そう、うん……」つ澪パン

紬「うん、大丈夫。もう、ホントに大丈夫よー」つ澪パン

紬「うん……それじゃ、また明日ね。おやすみなさい」ピッ

紬「ハァーーッ……」つ澪パン

紬「……」澪パン

紬「こ、今度澪ちゃんの家に行ったとき、こっそり返しましょ!」つ澪のやぁらしい黄色いシマパン




中野家

さわ子「もういいでしょう」

梓「……」

さわ子「そんな顔しないでも、結果は出るわ。ほいっ、でーきーあーがーり!」

梓「あ……」

さわ子「ほら、包丁入れてみなさい」

梓「……」つ包丁

さわ子「大丈夫よ」

梓「……っ」ゴクリ

  ―入刀―

梓「あ……かたい……」

さわ子「ねっ。うまくいったでしょ?」

梓「すごい……かたいです! しっかりかたいです!」

さわ子「あ、梓ちゃん、あんまりかたいかたい連呼しないで……」

梓「それでは、切ります」

さわ子「(……絆創膏の指)」

梓「たららったったったった♪ たららったったったった♪」

さわ子「(唯ちゃんは弦で切ったとき貼ってあげたけど)」

梓「たん、たん、たん、たん♪」

さわ子「(私、家庭科じゃないんだけどなー)」

さわ子「今日の料理も残すところあとわずか。最後はラッピングしましょー」

梓「……おー」

さわ子「えーっと、何人分だっけ? 唯ちゃんたちでしょう?」

梓「9個です」

さわ子「え? そんなに多いの?」

梓「もっと多くてもいいですけど、今回は最初失敗して、量が減りましたから」

さわ子「それにしても、えーと、軽音部でしょう? 憂ちゃんにー……」

梓「できました」

さわ子「お! どれどれー」

梓「ドウゾ」

さわ子「え?」

梓「ドウゾ」

さわ子「あたしに? くれるの?」


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最終更新:2010年02月16日 00:50