憂「お姉ちゃん、早く起きないと遅刻だよ~」
唯「ふわ~い……」
憂「ほら、パン焼けたよ。バターとジャム塗ってあげるね」
唯「ありがとう、憂」
『……それでは続いての
ニュースです。
今朝早く琵琶湖に魚の死骸が多数打ち上げられているのを地元の市民が発見。
警察に通報しました。
地元の市民によれば最近琵琶湖周辺で謎の生物の目撃例が多発しているとのことで
警察では関連を調べています』
唯「・・・・・」
憂「なんだか、怖いニュースだね」
唯「う、うん。本当に怖いね……」
憂「お姉ちゃんもうこんな時間だよ。悠長にテレビなんて見てる暇は……」
唯「うわ!本当だ!急がないと!!」
──放課後
律「ムギ~。お茶おかわり~」
紬「はい♪」
澪「なぁ律、そろそろ練習しないか?」
梓「そうです!いくらなんでも弛みすぎです!!」
律「いいじゃん、ちょっとくらい~」
澪「ちょっとじゃないから問題なんだ」
紬「まぁまぁ、もう一杯だけ、ね?」
梓「ムギ先輩は甘すぎます~」
律「そう言えばさ、今朝のニュース見たか?」
澪「あの琵琶湖での魚の死骸騒ぎのことか?」
律「そうそう、謎の生物の目撃例も多数あるんだってさ」
紬「怖いわね」
律「きっと謎の巨大生物が魚を食い散らかしてるんだぜ」
梓「そんなオカルトじみた話信じられませんよ。ねぇ唯先輩」
唯「えっ? あ、うん、そ、そうだね……」
梓「どうしたんですか唯先輩?具合でも悪いんですか?」
唯「大丈夫だよ、あずにゃん」
梓「そうですか?」
律「あ、もしかして唯ったら謎の生物が怖いんじゃ……」
唯「そんな事ないよ!絶対安全なんだから!!」
澪「唯?」
唯「あ、いや……な、なんでもないから」
コンコン ガチャ
和「唯、ちょっといいかしら?」
唯「あ……和ちゃん」
澪「何か用か? まさか!! 律がまた何かしでかしたとか……」
律「わ、私何もしてないよ……ね?」
和「大丈夫よ。ちょっと唯に用があるだけだから」
律「ほっ……」
和「なんでここに来たか、あんたにはもう解ってるわよね?」
唯「……うん」
和「さぁ、いらっしゃい。話を聞いてあげる」
紬「どういう事?」
和「悪いけど、ちょっと唯借りていくわよ」
梓「唯先輩、いったい何したんですか?」
唯「ごめんねみんな、ちょっと行ってくるから」
バタン
澪「……行っちゃった」
律「何なんだ?いったい?」
和「まさかとは思うけど唯、やっぱりアレを……」
唯「……うん。ごめんね和ちゃん」
和「私に謝ったってしかたないわよ」
唯「でも、私……」
和「気持ちは分からないでもないけどね、でもアレは危険よ」
唯「大丈夫だよ。私ちゃんと躾たんだから」
和「ペットじゃないのよ。それに何かあってからじゃ遅いんだから」
唯「何かって?」
和「言いたくないけど……人を襲ったり……とか」
唯「!?」
唯「そんな事絶対しないんだから!!」
和「とにかく、見つかったら絶対にあの子殺されちゃうわよ」
唯「嫌だ!! 和ちゃん、なんとかならない?」
和「また、隠して飼うくらいしか……」
唯「……それは、無理だよ」
和「まさか、あれ以上大きくなってるとか……?」
唯「もうとっくに、私なんかよりも何倍も大きいよ」
和「そんな!? なんてこと……」
唯「とりあえず、今夜琵琶湖に行ってみる」
和「私も一緒に行くわ」
──琵琶湖・夜
和「唯はしょっちゅう会いに来てるわけ?」
唯「中学までは部活も何もやってなかったから空いた時間があれば来てたけど
軽音部に入ってからはあんまり……」
和「……無責任にも程があるわ」
唯「でも、可愛い子には旅させろって言うし」
和「その結果が、こんな騒動になってるんじゃない」
唯「ううぅ……」
和「とにかく周りには人の気配もないし、早く呼んじゃいなさい」
唯「分かったよ和ちゃん。出てこ~い、ザリ太!うんたん♪」
和「やっぱり、カスタネットで呼び寄せるのね」
唯「うんたん♪うんたん♪」
謎の生物「ちゃぷん」
唯「あはっ♪ザリ太、久しぶり。でもなんだか体がボロボロだね……。そろそろ脱皮なのかな?」
和「本当に大きくなったわね。昔はせいぜい2、30センチくらいだったのに
水面から頭しか出てないから詳しくは分からないけど3、4メートルはあるんじゃないの」
唯「ザリ太は人を襲ったりしないよね」
ザリ太「コクコク」
和「相変わらず人の言葉を理解するのね」
ザリ太「じ~」
和「わ、私のこと見てるわよ」
唯「ザリ太が和ちゃん久しぶり、って言ってるよ」
和「あんた、やっぱり理解できるの?」
唯「なんとなくだけどね」
和「確かに、そう言われればそんな気もしないでもないわね」
和「久しぶりね、ザリ太。あんた見ないうちに大きくなっちゃったのね」
ザリ太「コクコク」
和「なんと言うか、これじゃ情も移っちゃうのも分かるわ」
唯「でしょ」
和「でも、見つかっちゃったらどうなるか分かるわよね」
唯「ウルトラ警備隊とかが来ちゃってやっつけられちゃう!」
和「そんなものいないけど、良くても今後の研究のために利用されることは間違いないわね」
唯「じゃあ悪かったら?」
和「その場で殺されちゃうでしょうね」
唯「……だよね」
和「この子の前で言うのも悪いけど、普通の人がザリ太を見たら間違いなく危険なものだって認識するでしょうね」
和「ましてや人の意思が通じるなんて考えもつかないでしょうし」
唯「私が説明してみんなに分かってもらうよ」
和「私たちは昔っから知ってるからいいけど、いきなりそんなこと言われても信じるわけないわ」
唯「じゃあ、どうすれば……」
ザリ太「しゅん……」
唯「ザリ太……」
和「……ムギに話してみるのもいいかもね」
唯「えっ?」
和「こう言っちゃなんだけど、ここはやっぱりお金持ちの手を借りるしかないわ」
和「なんとか説明すれば手厚く保護なりなんなりしてもらえるかも」
和「まぁ、こっちの都合ばかりだからそんなにうまくいくとは思えないけど、何もしないよりましだと思うわ」
唯「うん。分かった。明日ムギちゃんに話してみるよ」
唯「じゃあ、また今度ねザリ太」
ザリ太「コクコク」
ちゃぷん ついーーー……
唯「バイバ~イ」
和「ホント、手懐けちゃってるわね」
──翌日
紬「ごめんなさい、よく話が分からないんだけど……」
唯「だからね、ザリ太が大きくなりすぎて、このままじゃウルトラマンに退治されちゃうかもしれないの」
紬「???」
唯「ウルトラマンじゃなくても、ゴジラvsザリ太とかになっちゃうかも。ほら南海の大決闘みたいな」
紬「ち、ちょっと唯ちゃん待って。私には何がなんだか……」
唯「えっとね、詳しく説明すると南海の大決闘っていうのはゴジラとエビラとモスラが出てきてね……」
和「唯!詳しく説明する方向を間違えてるわよ!!」
紬「和ちゃん、助けて!」
和「ごめんなさい、唯に説明させた私が悪かったわ」
唯「でね、ゴジラが鼻をこすって加山雄三の真似をするんだけどそれがまた可愛くってさ~」
和「唯、少し黙っててもらえるかしら」
───
───────
──────────────
紬「ザリガニが巨大化!?」
和「信じられないとは思うんだけど事実なの」
和「前に唯がザリガニを夢中になって捕まえて、ウチの湯船いっぱいにした話したじゃない?」
和「その中に他のザリガニとくらべて2倍くらいの大きさのやつがいたの」
和「しかもやたらと人懐っこくてね、唯と二人で飼うことにしたのよ」
和「そしたら、みるみるうちに大きくなっちゃって」
紬「・・・・・」
和「そうよね、信じられないわよね」
紬「いえ……信じるわ」
和「えっ!?」
紬「その……エビラだったかしら。私にも見せてくれない?」
和「ザリ太だけど……本当に信じてくれるの?」
紬「ええ、保護の件もお父様にお願いしてみるわ」
和(物分りがよすぎないかしら……)
紬「じゃあさっそく、今夜にでも会いにいきましょうか」
和「え、ええ。そうね。唯よかったわね」
唯「でもゴジラが人間の味方するの私はあんまり好きじゃないんだよね~
だって、それじゃゴジラが生まれた悲しみが……うんたらかんたら」
和「唯。そろそろ帰ってらっしゃい」
──琵琶湖
唯「あ、ザリ太もう来てる」
和「呼ぶ前に来るなんて、あんた達テレパシーでもしてるんじゃない?」
謎の生物「・・・・・」ちゃぷちゃぷ
紬「!?」
和「ビックリした?」
紬「え、ええ。まさかこれほど大きいとは思ってなかったから……」
紬「危なくないのかしら」
和「大丈夫よ。とっても懐いてるの」
…
律「なんか昼間からこそこそしてると思って尾行してきたけど」
梓「夜にこんな人気の無い所に来るなんて怪しいですね」
澪「ち、ちょっと。もうこんな事やめようよ」
律「そんな事言って澪も結局ここまでついてきたじゃん!」
澪「だけどさ~……」
梓「いったい何をしてるんでしょう?」
……
唯「ザリ太はね、とっても優しい心の持ち主なんだよ」
謎の生物「ざば~~~っ」
一同「!!?」
唯「だ、ダメだよザリ太!隠れてなきゃ!」
\ヒエ~~~~/
和「誰かいるの!?」
律「おい澪、しっかりしろ!」
梓「な、なんですか……アレ……」
唯「りっちゃん!?」
律「あ、あはは……バレちゃったか」
梓「唯先輩、これはいったい?」
和「あんた達、後をつけてくるだなんて趣味悪いわよ」
律「いや、こんなもん隠してる方が趣味悪ぃだろ!」
紬「唯ちゃん! 早く隠れるように言って!!」
唯「う、うん!ザリ太、良い子だから早く水の中に隠れよう、ね?」
謎の生物「ぐわっ!!」
唯「ザリ太? ハサミを大きく振り上げてどうしたの?」
和「!? 唯!!危ない!!」
唯「ひっ!?」
「お姉ちゃん!!」
.ィ
( ノィ'⌒丶、
.. -=≠=- .`丶、 \
. : ´ ` . 、一
≡ / ヽ ヘ
, ' Vハ
≡ ノ' //∧ ヽ }iく
 ̄' /| / ヽヽ //:{⌒
≡ i /^l,′ ヘ V V//:j ≡
i| i:. { / { }ハ V.:,
__,、 i| i:::. Vxテミ テミxV ! }/
〃ニ;;::`lヽ,,_ | i:::::i 《 r'.:::i r'.::::} 》从/ }
〈 (lll!! テ-;;;;゙fn __,,--j∧:::iN ゞ-゚ , ゞ-゚' ノ
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ヽ_=--"⌒ ゙゙̄ヾ:/ /:::::::/:::::::::`<==-- ノ / /
憂「これでもくらえっ!!」
謎の生物「!?」カキンカキン
憂「くっ……!! 拳銃じゃまったく歯が立たない」
唯「う、憂っ!!」
憂「そいつが怯んでるうちに早く逃げて!!」
唯「あ、足が動かないの」ガクガク
謎の生物「うがーっ!!」
梓「また唯先輩に向かってハサミをっ!?」
最終更新:2010年02月17日 01:14