ガブリアスよりもカイリューよりも高い暴慢な攻撃種族値と
役割破壊も容易な特攻種族値を兼ね備え
拘りスカーフの装備も優々可能な素早さ100族であると同時に
特性の威嚇による実質の防御種族値130は物理攻撃での突破を難解極り無いものとしている
タイプのドラゴン飛行は半減5つに無効が1つ
型が多くて読めないのも強み
耐久両刀なんでもござれ
氷にさえ気をつければ必然的に勝利を掴める無敵のポケモン
恵まれた種族値 天賦の才能
「唯ぃ~ またやってるのか?」
律っちゃんは既にテーブルのショートケーキを平らげ
生クリームのこびり付いたフォークを煙草のように咥えながら 私の携帯ゲーム機を睨んでる
「そんなの学校に持ってくるなよなー。せめて部活中は控えとこうぜ、な?」
「わかってるよぉ。この周が終わったらセーブしておくね」
テキトーな返事をしながら黙々とゲームを続ける
「唯先輩はいつも何のゲームをしてるんですか?」
私にとってそれはまさに待望の一問
ニンテンドーDSに挿されているポケットモンスターについて語って語って
語り過ぎて喉が干乾びてムギちゃんの淹れてくれた紅茶を飲み尽くして
語って語って舌が上顎にくっ付いて剥がれなくなるくらい語って
そんな姿に心を打たれた軽音部の皆が興味持って私とゲームやって
澪ちゃんから貰ったサーナイト♀と私のミミロップ♀を育て屋さんに預けて卵産みたいよぉ
「あ、でも卵グループが違うや」
「え、いや、さっきから何をブツブツと・・・」
「梓、もう唯はもうそっとしておけ・・・」
澪ちゃんが私を呆れたように見てる・・
澪ちゃんが私を呆れたように見てる・・・!
練習はあまり力が入らなかった
いつものことだけど
「最近唯先輩のギター、下手くそです!練習してください!」
あずにゃんの瞳は何時見てもキラキラ光っている
眩しいくらいに光っている
日々の努力は未来に輝く夢の為 そう信じてやまない瞳だね
勿論私だって練習は大切だと思ってるけども
最近の私はゲームにしか興味が持てなくなっていて
それは私がゲーム大好きってことで そういう好きとか嫌いとかは仕方ない事だし
またいつかは音楽の方も好きになるかもしれないね
ってことを憤るあずにゃんに話したら澪ちゃんが口を開いた
「早くゲームクリアしちゃって、練習に力を入れてくれよ・・・?」
澪ちゃんが・・・
「唯は生まれ持った才能があるんだから」
澪ちゃんが私を呆れたように見てる・・・!
その日の晩御飯がカレーライスだったと気付いたのは
帰宅して鞄を放り投げニンテンドーDSを起動しつつ食卓に並んだ食料を口に運んでいると
憂に何か注意されて何か返事をしながら食事が終わり二階の自室に行き
目が疲れるのはゲームのやり過ぎかなぁとか思いながらもギー太を触ることもなくゲームやって
宿題やろうとしてやっぱやめてマンガ読んでゲームやってお風呂入って寝る時間になって
トイレに行ったついでに水でも飲もうかとリビングに立ち寄りそのキッチン周辺にカレーの臭いを感じ取った時だった
さっきまで何食べたかも気付かなかったけど
こうなると、なるほどカレーが胃の中に溜まっている気がする
「お姉ちゃん、まだ起きてたの・・?」
憂が突然後ろから話しかけてきたせいで胃の中のカレーが波打った
「最近ちょっとおかしいよ・・・ゲームばっかりで私の言うこと聞いてくれないし・・」
「うん、ごめんね憂」
「謝ってもらっても・・ね、もうゲームはやめにしよ?」
「それは難しいなぁ。私もやり過ぎないようにしてるんだけどねぇ」
「それとも・・お姉ちゃんは私のこと嫌いになっちゃったの・・・?」
憂の顔はやたらめったらに哀しそうだった
それを見て私の心はズキリと痛む
確かに痛んでいる 痛い 間違いなく痛い
「違うよ、憂のこと嫌いなんじゃないよ・・」
「じゃあなんで」
「憂は嫌いじゃないの。それに前は大好きだった」
「前は・・?」
「うん。今はゲームにしか目がいかないんだ」
こればっかりは抗えない
あずにゃんに言ったのと同じように、もうゲームやりたくてどうしようもなくて
別に好きだったものが嫌いになったわけじゃないんだけど
結局は好きなものより下に位置するようになって
繰り下がっちゃっただけなんだよって教えてあげる
でもそれを聞いた憂は、表情を哀しいものから変えることなく
何も言わずに暗い廊下へ歩いていった
静かな足音を聞いていると また心がズキリと痛んだ
翌日
和ちゃんと一緒に登校する
澄み切った秋空は上向いたまま登校する人間がいてもおかしくないくらい綺麗だったけど
私はタッチパネルに視線を釘付けて歩いている
「前向いて歩かないと危ないわよ」
うん、と返事をしながらバトルタワー1000連勝目を果たした
このバトルタワーを数百勝するのはやたら難しいのだがそれというのも
どんなに考えてパーティ組んでも運要素云々であっけなく落ちる
結局一番の突破口は高火力でゴリ押して進んでいくパワー戦法
「あなた何時交通事故で死んでも文句言えないわよ」
「大丈夫だよ、和ちゃんが一緒だもん」
「聞いたわよ、部活中にもゲームやってるって。折角好きなものができたのに・・」
「一番好きなものはゲームになりました!」
和ちゃんが私を呆れたような眼で見てるけど
あんまり興奮しないね
迂闊だった
人生でこれほどの過ちを犯したことがあっただろうか
その日の6限もいつも通りに机の下にニンテンドーDSを隠しながら
授業そっちのけでポケモンの卵を孵化させていたのだけど
突然教科書の読みあげを指名されてしまったばかりに
腸内部のカレーだった物もひっくり返る勢いで慌てふためき
うっかりゲーム機を落としてしまったのだ
取り上げられたゲームは1週間帰ってくることはないので
その間私の中の大切かつ好きなものランキングが変動してしまう
つまり今まで二位に押しやられていた音楽と憂と律っちゃんとムギちゃんと
あずにゃんと和ちゃんとさわちゃんとお父さんお母さんとギー太と音楽室と
土曜日と日曜日とクリスマスとお正月と春休みと夏休みと冬休みと誕生日が1位に返り咲く
澪ちゃんはちょっと特別な位置だから何とも言えないけど
意気揚々と音楽室に向かい勢いよく扉を開いて
憩いのティータイムを満喫する
全力の満喫 お菓子は全部食べる
皆と話す
他愛の無い話題で大笑いできる
「今日の唯はいつもの三倍増しに楽しそうだな」
律っちゃんはスプーンでコーヒーカップをかき混ぜながら
笑顔で私の顔を眺めた
「ゲーム取り上げられちゃって、一位になったからねぇ」
「一位・・?まぁ、やっぱりゲームが無い方がいいな、唯は」
その後毎度お馴染みのあずにゃんのお説教が始まって
澪ちゃんの穏やかくつろぎモードだった目が
焦ったようにキリッと練習モードに切り替わるその瞬間が凄いヤバくて
超半端無くてとんでもなく尋常じゃないので
私の心の中のふでペンボールペンはもうはち切れんばかりにギンギン時間
練習中あずにゃんが目を丸くして私の方を見る
猫に豆鉄砲喰らわせたような顔だ
「唯先輩、何時の間にそんな上手に・・・!?」
褒められるのは悪い気しないけど
そんなに変わったのだろうか
「演奏中の先輩、先週とはまるで別人ですよ。楽しんでるって言うか」
「あーそれはあるかもー」
「ほら、やっぱ唯は才能あるからな」
澪ちゃんが私を見直したように見つめてる・・
澪ちゃんが私を見直したように見つめてる・・・!
家に帰ると憂に抱きついて頬ずりしてただいまの挨拶を交わす
晩御飯のハンバーグを憂と会話しながら美味しく頂いて
部屋でギー太の練習したり宿題やるふりしてお菓子食べたり
憂と一緒にお風呂に入って洗いっこして耳たぶ甘噛みして首筋舐めたりしたけど
これらは全てゲームが無いからだろう
上に立っていた王者が立退いた今
憂や軽音部の活動が実に有意義かつ楽しい要素となって私を取り囲んでいるのだ
「お姉ちゃん、またいつものお姉ちゃんに戻ったんだね」
究極の笑みで私を見つめる憂はあり得ないくらい幸せそうだし
私も心が癒される
最終更新:2010年02月19日 00:47