唯「もういいんじゃ…?」
「ハァハァ…ゴク…そう…ですね……」
その人はゆっくりと腰を低くした体勢から立ち上がった
ちょうど光が当たって、顔についた血が妖しく光っていた
どこかで見たことのある顔だった
唯「ううッッ!」
またあの激痛が頭を襲ってきた
それも前より激しく
「大丈夫ですか!?」
そう言ってるのがわかった、
なにも考える事ができない。
「……とりあえず…そこのソファーに!」
その人は少し何か考えた後私の肩を支えソファーまで運んでくれた
「ふぅ…とりあえず頭痛薬もってきますね。あと電気も点けておきますので」
そういってリビングを出て行くと同時に部屋が光で満ちた
突然の眩い光に頭痛が酷くなる
唯「ぐッうぅ…」
あの人は誰?あの人はダレ?
またあの感覚
頭痛と共に蘇っていく記憶
私の一つ下の…妹
料理がとても上手いなんでもできる
名前『』名前『』
『憂』
唯「憂…」
自然と涙が出ていた
──『憂』
なんでこの家に?そして誰?
私は手や顔についた血を洗い流しながら考えていた
それに頭が痛いって感染しているの?
でもそしたらすでに空気感染で…
憂「ふぅ…」
私は蛇口の水を止め顔を拭いた
タオルも赤い…
そういえば重要な時意外使うなって言われてた銃使っちゃった
でも…人の命には変えられないよ
とりあえず頭痛薬を飲ませて経過をみてどうやって生き残ったか聞いてみよう
リビングに歩を進めた
憂「持ってきました」
「憂…」
え?
今、憂って
え?
──『唯』
憂がリビングに入ってきた
とりあえず私は名前を呼んでみた
唯「憂…」
だけど私がそう呼ぶと彼女はピタリと動きを止めた
──?
どうしたのだろう?
私が名前を呼んだ理由は
その人が本当に憂であると確認するため、まぁ間違いないと思っていたのだが
私はなにか変な事を言ったのかな?
それともいきなり呼ばれて驚いている?
私があれそれと考えていると彼女は口を開いた
「お姉ちゃん…?」
やっぱり!間違っていなかった!
涙が止まらなかった
唯「うう゛い゛い゛い゛…グスッ」
私はソファーから立ち上がり憂に飛びつこうと思った
だが私が少し動こうとした所で
憂「動かないでっ!」
唯「ひっ!」
な、なんで?
いきなりの怒声に身体が硬直してしまった
私はものすごいびっくりした。だが憂もとても驚いている様子だった
私以上に。なぜ?
憂はそのまま何か考え事をしていた
たまに呟くようにブツブツ言いながら
1分ほどの沈黙の後、憂が口を開いた
憂「ご、ごめんね!お姉ちゃん」
憂「いきなり、怒鳴ってごめんね」
唯「う゛い゛い゛い゛い゛…グスッ」
なんで怒っていたのだろう?長い間姿を見せなかったからだろうか?
私は特に深く考えず、憂に抱きついていた。
今度は怒鳴られる事もなかった
唯「ういぃ!」
憂「く、くすぐったいよぉお姉ちゃん」
ああ、このふくよかな感じ、やわらかく暖かい肌。この抱きこごち…
憂だなあ。やっと家に帰ってこれた、そんな感じがした
憂「とりあえず…お姉ちゃん、シャワー浴びてきな?」
今更リビングに充満している鼻につく臭い、俗に言うアンモニア臭
今までまるで嗅覚を遮断していたような、言われて初めてその臭いに私は気づいた
若干の吐き気を催しながら
唯「う…うん、ありがとう」
私は何時頃振りなのかわからないシャワーを浴びる事にした
ザアアアアアアアアアアアアアア
お湯と言うものはここまで気持ちのいいものだったのかと
感動しながら、私はあの手術室で起きた時のように自分の身体を見ていた
さっきまでは汚れや、血などもついていて酷かったが
今は大分洗い流された。
だがそのせいなのかやはり白い肌に注射痕や傷跡が目立っているた
私はなにを?傷跡は身体中にあり小さなものだったから
時間がたてば消えそうなものだった。
ただ、注射痕のあとが半端じゃない数あり、これは残りそうだった
一通り見て、傷から目を離す
そしてシャンプーに手を伸ばす
久しぶり、何時頃振りかのシャンプー
泡というものはこれほど気持ちのいいものだったのか!
と、些かのデジャブ
唯「ふぅ…よし!と」
身体を洗い終えた私は浴室から出て身体を拭こうと思った
いつもならこの後ゆっくりと湯船に浸かっているのだが…
今、こんな状況下でそんな贅沢は言ってられない
身体を拭き終えると憂が用意してくれたであろう服に着替える事にした。
新品のように綺麗だった、というか恐らくタンスの奥などにしまってあった服だろう
少し私の身体にはきつかった。
…お?
こ、ここの臭いは!
着替え終えた私は香しい臭いに誘われてリビングに釣られた
憂「あ!お姉ちゃん。ご飯できてるよ、食べよ?」
まるで日常そのものだった
憂「ごめんね…お米はなくてね」
唯「ひいほ!ひいほ!」
私は鯖の味噌煮、水煮で作ったとは思えない料理を
口いっぱいに詰め込みながら喋った
憂「ほら、お姉ちゃん。口に物入れながら喋らない」
ほーい
と返事をする。ここまでの物ができるのか…水煮様と味噌煮様で
憂が神々しく見えた。というか鯖缶詰様とタッグ組ましたら神だ!GOD!
一旦飲み込み
唯「憂!とてもおいしいよ!」
憂「そ、そう?よかった…エヘヘ」
そしてまた料理に箸を伸ばそうとした時、憂が話し掛けてきた
憂「お姉ちゃん…どこから来たの?」
箸を止めた、いや止まってしまった
いずれというか絶対話さないといけない事
唯「そうだよね…話さないと」
私は病院で目を覚ましたこと
そのあと少しの記憶を頼りにここに来た事
その他注射痕が酷い事など色々と話した
憂「そう…そういうこと…」
唯「そういうこと?」
憂「ん、ううんなにもないよ!大変だったね…ほら食べて食べて」
ほーい
と少し変だなとおもいながら返事をする
あ、そういえばあまりにも違和感がないから気づかなかった
シャワーを浴びる前まで臭っていたアンモニア臭
全く無くなっている、掃除したのか…自分が片付けなきゃいけないのに
憂…ありがとね…
憂「お姉ちゃん記憶無いんだよね?」
唯「そうだよ?」
憂「じゃあもしかして律さん達、軽音楽部のことも?」
…?なんだろうそれは。軽音楽部?軽い音楽?
カスタネットとかたたく部活か!
それより
唯「律さんって誰?」
やっぱりっと憂は言った
それから憂は私の記憶について話してくれた
自分では思い出せなかったけど
唯「そうなんだ…私軽音部に入って…」
ギターを弾いていたなんて、そういう部活だったなんて
私は先ほど想像したカスタネット部(軽音楽部)とはかけ離れた物で
それに入部していた自分にビックリした
憂「何か思い出した?」
唯「ううん…ごめんね」
いいよ、ゆっくり思い出してね。と憂は言った
笑みを作っていたけどどこか寂しそうに
憂は優しいな…私も早く思い出さないと!
とかかれこれ考えている内に憂の作った料理を全てたいらげてしまった
唯「ごちそう様でした」
お粗末様。憂はそう言って立ち上がると
憂「じゃあ私お皿片付けるね。お姉ちゃんは外に出る準備をして?
服とか色々ね」
外?この家で過ごすのではなく?
疑問に思ったがこの状況下に私より詳しいであろう
憂の言う通りにした方がいいことはわかっていたため
私は言われた通り準備を始めることにした
とりあえず二階の自分の部屋に上がってきたわけですが
特に持ち出すものは無いようだった
というのも服という服は使えないもの以外全て持ち出されていたから
多分、憂が。これから準備をして行くところに運んだのだろう
しかたなく私は思い出の品、といっても記憶はないのだが
思い出すためにも色々探す事にした。とりあえず手始めに机周辺を
唯「あ…これ写真?」
机の引出しの中にはある写真があった
多分憂の言っていった軽音部のメンバーだろう
私も含めた5人の女の子が水着姿で海にいる写真
夢で見た子達だった
ズキッ
唯「うあっ…」
あの頭痛だ。だがそれほど酷くなかった
特になにか思い出しもしなかった。痛みはすぐに引いた
唯「っつー」
とりあえず写真もきっと大事な物なのだろうと思い
適当に引っ張りだしたリュックサックの中に入れた
その後は特に頭痛を引き起こすような物はなく
適当にリュックサックを一杯にして私は階段を下りた
ただ…私の部屋はなにか寂しい感じだった
なにか大事な物が失われている気がした
虚無感。そんな感じ
唯「うーいー準備できたよー」
リビングの扉を開けながら言った
先ほどつかったお皿などは見事に綺麗に整頓されていた
憂は色々とリュックサックに入れているようだった
缶詰様や薬など…
憂「はーい」
ふぅ。と憂は一息つくと時計を見ながら
13時か…。と呟いた
憂「そろそろ出発しようか」
唯「どこに?」
憂「…紬さんの家にだよ」
紬?さっき話してくれたメンバーの一人の…
お嬢様だっていう人ね
唯「その人は生きているの?」
憂「え」
顔を伏せて黙ってしまった
聞いちゃいけない事だったのかな
憂「……生きてるよ。一応…」
一応。憂はそう言った
傷を負って意識不明とか?そういうことなのかな
でもとりあえず生きている…それは嬉しいことだった
多分私にとっても大事な人だから
唯「生きててよかった」
憂は唇を噛み締めていた今にもちぎれそうなほどに
憂「じゃいくよ。気をつけてね」
私は憂の操縦する自転車の後ろに2人乗りをしている
2人乗りというのは初めての経験だった
そもそも普段から自転車に乗ることも少なかった
自転車に乗りながら見る変わり果てた街の景観は
なにかすごいもので、まるでこの町には日本には世界には
私達2人しかいないような…
そんなことを思いながら私はふと憂に質問した
唯「憂…あの私を襲ったのは何者なの?」
色々ありすぎて聞くのを忘れていた質問
憂「うーん…色々と複雑だから向こう着いて落ち着いてから話すね」
流されちゃった?でもまぁ落ち着かないのは本当か
2人乗りで漕いでるんだもん。話しながらは疲れるよね
しばしの沈黙
そんな中でふと思い口に出してしまった
唯「私どれくらい寝てたのかな…」
返答はなかった。というか困っている様子だった
唯「憂?」
憂は静かに口を開いた
憂「お姉ちゃん落ち着いて聞いてね」
憂「多分…2年ぐらい……」
?
2年?
2年!?
2年ってなに?じゃあ私はその間どうやって…
なんで私は2年間も寝ていて生きているの?
あれこれ考えていると憂が続けた
憂「とりあえず…そのことに関してもあとで着いてからね…」
うん…。そう返事した。いやそれが精一杯だった
私は長い事眠っていたというのは予想できていた
けど…予想でも大体1、2週間それぐらい
現実は予想の60倍程上回っていた
はぁ…頭が痛くなってきた。
記憶が蘇るとかそれではなくストレスみたいな
あれこれ悩んでいる内についてしまった
憂「お姉ちゃん着いたよ」
唯「」
で、でかい…でかすぎる、なんという豪邸
中は50部屋もありそうな…いやもっとありそうな感じ
そもそも敷地だけでものすごい広いし
今この立っているこの場所から見て、その豪邸は少し遠くに建っており
そこまでは庭のようだった
それだけで並大抵のお嬢様ではないとわかった
憂「じゃあお姉ちゃんちょっと待っててね」
憂はそう言うと、その豪邸の方とは全然違う方向に歩き始め
やがて姿を消した
どこ行ったんだろ?
入るためになにかスイッチを押しに行って
そこら中に設置してある罠を解除しないといけないとか
んなわけないかー♪
…この豪邸から想像したら絶対ないとは言えないから困った
予想以上に待たされていた
1時間ぐらい経っている気が…。そんな遠くにスイッチがあるの?
もう完璧スイッチを押しに行ってると思ってるけど
それでいいの?
はぁ…暇になってしまった
今は私の時間間隔があっていれば15時と言った所か
キキッー
ん?どこかから車のブレーキ音が聞えてきた
結構近い。車のエンジン音も聞えてくる
私はその聞えてきた方向の道をを一点にみつめた
一瞬だった。遠くの方を車が通過した
なぜここに?生存者?人?
もしかして憂が呼んだ?
色々考えていたが次の瞬間思考が固まった
車がこっちをみていた
いや正確に言うと車の中の恐らく、人がこっちを見ていた
こっちをなにかを覗いて見ているようだった
双眼鏡?かなにか、それは太陽に反射して光を放っていた
しばらくすると車はこっちに向きを変え走ってきた
結構なスピードで
え?轢かれちゃう?ととと止まってくれるよね
すると車から声が聞えてきた
「おい!!!」
私に向かって叫んでいるようだった
…
ガソリンを調達し、少し離れたところで作った畑から野菜を収穫
いつも通りのドライブ
私みたいな免許もまだ取っていない小娘が
乗っているのはおかしいが、
こんな世界じゃそんなのは関係ないし、しょうがない
私は隣にいる相棒に話し掛けた
「アズ?誕生日パーティーとかは事前に知らせてくれよ?
別にサプライズじゃなくてもちゃんと驚いてやるから」
犬に話し掛けている私。笑っちゃうな
こいつはあずわん1号。犬種シェパード
私の相棒だ。名前は梓が…
ふと左方向をみた
!?
…
──『』
今…見間違えだよな…?
ここはムギの家周辺で…あいつは死んでいて…
私は車を少し戻した
そして助手席と私の間にあるM4を取り出し
スコープからそれをみた
信じたくなかった
信じられなかった
でも、だが、それは唯だった
最終更新:2010年02月25日 12:35