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「澪ちゃん…開けていい?」

ムギだった。

ちょっと待って今行く。
私はそう言ってから髪の毛を軽く整え、ドアを開けた

律「よっ…澪」

律も居た。というかみんな揃っていた

紬「あの…みんなで話したいことがあって、
その…澪ちゃんのお部屋いいかしら?」

できれば一人で色々と考えたかったけど

澪「ああ…全然構わないよ。ほら入って」


部屋にあったテーブルを中心に囲むように、みんな座った
憂ちゃん、梓、私はソファーに
和は少し離れてベットに座り、律は床であぐらをかいていた

はい。といってムギが6人分の紅茶を各々に差し出す

いい香りだ…

しばし沈黙がながれる中
律が切り出した

律「で、話って言うのは?」

紬「はい…唯ちゃんの病気についてです」

そう始めると、さらに話し続けた

紬「私の父はあの病院の方と知り合いでね、父を通して色々と聞いたの
唯ちゃんの事について」

きっとその知り合いの病院の方と言うのは院長とかそういうことだろう
というかじゃなかったら教えてくれないな

律「唯の事って…脳障害って事だろ?」

紬「それもなんですけど…唯ちゃんの身体、
原因不明のウィルスに感染してるらしいの…」

なっ…ウィルス?それも原因不明!?
なんで、病院の人は教えてくれなかったんだ!?

梓「ウィルスって…そんな事聞いてませんよ!?」

ムギは少し間を置くと、ある方向に視線を向けた

紬「そうよね?憂ちゃん…」


憂ちゃんの身体がビクッと反応した

梓「憂?知ってるの!?」

憂ちゃんのとなりに座っていた梓がすぐさま問いただす

憂ちゃんは顔を伏せてしまった
今にも泣きそうな、そういう顔

梓「憂どうなの!?」

梓がそう問うと、憂ちゃんは泣きそうな、悲しそうな顔を上げ
静かにゆっくりと話し始めた。

ウィルスの事。症状の事。原因がわからない事
今、思えばインフルの時から変だった事

憂ちゃんは全て話し終えたところで泣き出してしまった

反省した。
そうだ、憂ちゃんは唯の妹なのだ。唯があんな姿になって一番悲しいのは
唯の妹である彼女なのだ。

みんな同じ事を思ったのか部屋は静かになった
静まり返る部屋に響く嗚咽

憂「ヴッ…皆さん…ック… すみませんでした…」

澪「いやいや私達の方こそ憂ちゃんの事考えもせず…」

きっと私達に心配を掛けたくなかったのだろう。
姉の命が危険だと言う事で私達になにか支障があると考えたから

できた妹だったゆえに、自分で考えた結果
全てを背負い込もうと思ったのだ


憂…ごめんね…。と梓は彼女に呟いた
それに続いて律も

律「ごめんな…憂ちゃん」

謝る律。でもな?と続ける

律「でもな?全部背負い込まなくてもいいんだ
  唯がどんなになっても、私達は軽音楽部の仲間であって
  大事な大事な親友なんだ。困った事があったらなんでも言ってくれよ?
  憂ちゃん」

紬「そうよ、憂ちゃん。みんなで背負った方が軽くなるわ」

ニコッと笑いながらムギがそう言った
もっともだ。律が言った事も全くそのとおり
悩む必要などなかった。なにがあっても私達は

親友なのだから


『唯』見舞い日 PM 10:58 東京 ホテル内 廊下『律』


憂「皆さんありがとうございました」

彼女は深くお辞儀をしながら言った
こういう所、本当できた妹だ

律「悩みや唯のことはじゃんじゃん言ってくれよ!
みんなで背負っちゃおうぜ!」

憂ちゃんは元気よく、ハイ!と返事してくれた

律「よし!じゃあ解散!みんな自分の部屋に戻れー」

みんな笑いながら各々、各自、自分の部屋に戻っていった
よし!私も部屋に戻るか!


り……!…い!…きろ…つ!

んんぅ…?
誰か呼んでいる?

目を開けるとそこは、ごく普通の家庭的食卓だった
私の座っている椅子の前にはテーブル。
その上にはおいしそうな炊きたてのご飯が盛ってある茶碗。

そして正面にはムギが座っている

な、なぜだろう…ものすごく眉毛がきになる…
私は耐え切れず質問してしまった。

律「む、ムギって眉毛太いな!」


くそ!あの眉毛の誘惑が!言ってしまった…
そんなことを思っているとムギが返事をした

紬「えぇ…実はこれ…」

と言って眉毛に手を伸ばす
するとその眉毛を剥がしながら言った
え?剥がす?

紬「沢庵なのー♪」

な、なんですとおおおおおおおおおおおおおおおお
そそそそんな沢庵だったなんててて

口をパクパクしながら困惑している私を見かねてか、
ムギはその眉毛から剥がした…いや眉毛だった沢庵を
茶碗に盛ってあるご飯の上に乗せた

紬「食べてみて?」

ま、まじですか…

茶碗を左手に箸を右手に持ち迷っていた
美味いのだろうか…いやいやそれ以前に食えるのか?
しばらく悩んだ結果、私は決意し、それを口に運んだ

パクリ

これは……!

律「うめえ!」パッパラパーパッパラーパッパラパー

いい加減起きろ馬鹿りつううう!

律「ひでぶっ!」

何が起きたかと言うと
私は澪の神の左手のげんこつを頭にクリーンヒットされて
ベット場外に落ちていた、ダメージ9999
というかまだ夜中だぞ澪

澪「ったく…やっと起きたか」

うぅ痛い、頭が痛い
あれ?というかあれは夢だったのか…悲しいような嬉しいような
なんともおかしな夢だったな

律「いっつ~~!どうした澪?てかどうやって入った…」

澪は、はぁ。と溜息ひとつついて

澪「お前の部屋の前でいくら呼んでも起きないから
  ムギにあけてもらったんだよ!」

扉、カード式なんですけど…




『唯』見舞い日 AM 01:21 東京帝国ホテル内 『律』


律「そ、そうか」

ムギがなんで私の部屋の扉をいとも簡単に
空けることができたのかは聞かないことにして

律「で、こんな夜中にどうした?」

私は再度質問した
ふぅ…。と少し息を落ち着かせてから

澪「外の様子がおかしいんだ。たまに悲鳴とかも聞えてきて…」

律「で、怖くなって誰かに話そうと」

澪「い、言うなぁ!」

律「全く…怖がりの澪ちゅわんは困りまちゅねー」

澪「茶化すなあ!」

全く…まぁ東京はそういう怖い事が日常茶飯時なんだってー

ピーポーピーポー

……確かに少し騒がしい気もするな
まぁ、澪の言うことだし、そうたいした事ないだろう。

と、浅はかに考えながら私は端の方に垂れ下がってある紐をひいて
窓に覆い被さっているカーテンを上げた

本当に浅はかな考えであった
外の様子は、景色は、予想以上に酷いものだった

驚愕。恐怖。絶句。

律「……んだよ…これ……」


逃げ回る人、人、人
人と車でできた渋滞、飛び交うヘリコプター
あらゆる所からサイレンと緊急放送が流れているようだった

この私達の泊まっているホテルは54階建てで
私達はそれの52階に泊まっていたわけだが

その高さからでも分かる人の山
なんでこんな事に?

それは少し遠くを見るとわかった

まるでこの地域を取り囲む様にできた赤いランプの線
どうやら検問をしているようだった。この人の山はそれが原因だった
しかもよく見れば自衛隊までもが出動していて
警官も自衛隊も総動員してるんではないかと思う程

律「どうなってるんだ?澪?」

澪「わからないんだ…ムギもこの状況みてから部屋に閉じこもっちゃったし…」

緊急事態。異常事態。非常事態。
それだけははっきりとわかっていた。


「澪!律!」

半開き状態だった部屋のドアを思いっきり開けて入ってきたのは
梓に憂ちゃんを連れた和だった。

これどうなってんだ!?そう聞こうとする前に和が言った

和「とりあえず、テレビ見て!」

気迫に押されて言われるがままテレビの電源を入れた

40インチはあろうテレビの大きな画面に
最初に映ったのは、厚生労働省大臣 緊急会見
そしてほぼ全てのチャンネルが同じ様な画面だった

私達は適当なチャンネルにし、それを見ることにした


『──在、東京を封鎖と同時に住民を避難させております。
都内の方は強制的に検問などで感染していないか検査することになります。」

どうやら少々テレビを見るのが遅かった様だった

『尚、検査に引っかかった者は都内に留まってもらいます』

『その人は見殺しにするのか!』

見事に会見場内の記者が私の言いたい事を言ってくれた

『絶対救います。なのでその時までご自宅に戻って安全を確保してください
これは関東圏に住んでいる方にも言えることです』

『最後に質問です。そのウィルスはどこから?原因は?』

大臣は困った様な。眉間にしわを寄せた顔で答えた

『……わかりません。原因不明です。』
『ではこれにて会見を終了します』

逃げる様に会見は終わった


見るのが少し遅かったからなのか
それとも本当に原因不明だからなのか
なぜこのような状況になっているのかまで知り得なかったため
和は進んでホテル内に情報を集めに行った

情報集めは和に任せ
私達は避難の準備を始めていた

幸い一日宿泊するだけの予定だったので
荷物はすでにまとめてあった

ふぅ…そういえばムギは部屋でなにしてんだ?
澪は閉じこもっているって言ってたけど…

荷物を纏め終わっていた私はムギの部屋に行くことにした

ドンドンと、ドアを叩きながら名前を呼んだ

律「おーい、ムギー?」

反応がなかった。いないのか?
しかたなくだ、私はドアに右耳を付け、耳を澄ました

話し声。話し声が聞えた…
誰と話してんだ?

私は再度、よく聞えるようにドアに耳をつけ、耳を澄ました
あり?なんも聞えない…耳つける場所が悪かっ

ガン!

ドアが突然開いた。突然すぎた

律「いっっつー…」

紬「りっちゃん!?大丈夫!?」

ああ。と大丈夫な素振りを見せてから
私は聞いた

律「誰と話してたんだ?」

紬「…家の執事に電話を」

そっか、電話があったか。部屋に他に一人居るとしか考えてなかった
話の内容は聞かないとして、ムギが慌てた様子で話した

紬「とりあえず!すぐにここを避難しましょ?
ここから少し離れた所にある、ビルのヘリポートにヘリを手配したわ
それですぐに避難しましょう」

すごい。
と、素直にそう思った


『唯』見舞い日 AM 01:41 東京帝国ホテル内 廊下 『律』

私達はホテル内の廊下に荷物を持って集まっていた

和「揃ったわね」

和は情報収集から戻ってきていた
だが大した収穫はなかった。ホテル内の人全員が同じような事しか知らなかったから

紬「でわ、早く行きましょう」

慌てていた。やっぱりそう感じた
まぁ…こんな状況じゃしょうがない。そう思った

紬「ホテル前に車を呼んだので、それに乗りましょ」

車まで…パネェ…


「お嬢様方こちらです!」

ホテル前には黒いセダンのハイヤーが2台止まっていて
車の横には黒いスーツで身を固めた屈強なガードマンらしき人達がいた

「ささっ早く!」

車の助手席にはガードマンが座っていて、もちろん運転はガードマン。
そのため後ろに3人しか乗れないため、私達はとっさに分かれて乗った

前の車にムギ、和、憂ちゃん
後続の車には澪、梓、そして私

私達が乗るとすぐに車は発進した。
幸いこのホテル周辺に渋滞はできていなかったため
止まる事無く進んでいた。4つ程交差点を通り過ぎ
5つ目の交差点を通ろうとした、その時…

ギキーッ

急ブレーキ。ブレーキ音。かなりビックリした
信号は青だった。だったのに右方から自動車が猛スピードで走ってきた
ったくびっくりさせやがって…

そっちは赤だろ!守れよ!

とは思うが、この状況下で信号を守るなんていうルールは
意味を成さなかった。

大丈夫ですか。と、助手席のガードマンが聞いてきた
みんな各々、大丈夫です。と答えると車は再発進した。

ムギ達の乗っている車は先に進んでしまい見えなくなっていたが
ガードマン達の、

G1「予定地点は把握しているな」
G2「はい、大丈夫です」

この会話を聞いて安心した。そんな中、梓がふと呟いた

絵うますぎワロタ、そしてありがとうございます
映画で使ってた様なライフルだったらもっとよかった


梓「これ…なにが起きてるんでしょうか…」

確かに。街は人の行列が通りすぎたのか、荒れていた
それに、多分見間違えでないとしたら…そこらかしろに血痕があった

ふと、テレビでの会見内容を思い出していた

『──ウィルスはどこから?』

ウィルス…そう言っていた。とても嫌な予感がしていた
それを見る数時間前に同じような言葉を聞いていたから

気を紛らわせるために冗談まじりに言った

律「エイリアンが襲来してきたのかもなー」

澪「な、な…怖くない怖くない怖くない」

…この状況下の澪に冗談は通じ

ドンッ


「きゃああああああああああああああああああ」

なにかが、突然横からぶつかってきた
ピシリと日々入るガラス。

その衝撃と、突然の襲来による驚き。動揺。
運転手はハンドル操作を誤り、そして車はあらぬ方向に

クソッ…
くらくらする頭で現状をみた
どうやら道路標識に突っ込んだ様だった

「みなさん大丈夫ですか?」

みんな無事だったみたいで、
はい。とみんな返事していた。

よし。とガードマンが呟くと、ガードマン達同士で話し始めた

G1「とりあえず安全確保。今ぶつかって来た奴は…」

サイドミラーで後ろを見て確認したあと

G1「…大丈夫だな」
G2「はい」
G1「そのあと車の様子を見よう。すぐに直せるようだったら
直してすぐ出発だ」
G2「了解です」

ガードマン達は話終えると私達に、少しの間お待ちください。
そう言って車外に出ていった。

私達の車は道路標識をくの字に折り曲げており、多少車のボンネットは歪めていた

ガードマン達はその歪んだボンネットを前に何か相談をした後、
一人は携帯電話を取り出し電話に、一人は車の復旧作業に移った


くっそーまだ頭が少し痛い。衝突の際ににどっか打ったか?
私が頭を擦っていると、梓が喋りだした

梓「そういえば…ぶつかって来たあれはなんなんでしょう…?」

そういえば…私と梓は身を後ろに向け窓から見た
…人?というかなんで突っ込んできた…
その人は右側車線のど真ん中にうつ伏せの状態で横たわっていた

梓「あれ…人…ですよね…」

そうだよな…。と返事をして私は続けた

律「近くで見てみるか?生きているかもしれないし…」

梓「なっ!生きていたとしても…車に突っ込んでくるなんて異常です!」

まぁ確かにそうだけども…

律「でも…もし偶然だったら?不慮の事故だったらどうする」

梓は少し考えてから仕方ないと言った感じで

梓「うぅ…そうですね。生死の確認だけでも…」

半ば強引だったかな。
私達は向かって左のドアから車外に出た

って、誰か忘れているような…
車内にいた綺麗な黒髪の女の子。澪の事を忘れていた


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最終更新:2010年02月25日 12:41