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パチッ

目を覚ました私は薄暗い部屋にいた。部屋の隅にあるランプのおかげか
部屋の中は淡く照らされていた。どうやらベットに横たわっているらしい
茶色で統一されたその部屋、木造かな?
窓はあったが、なにやら頑丈そうな物で塞いである

「……おや?目を覚ましましたか?」

突然、左方隣から声が聞えた。びっくりした
薄暗いがわかる。どうやら斎藤さんのようだ

斎藤「起きた様ですね。頭の調子は大丈夫ですか?」
唯「はい…大丈夫です」

斎藤「そうですか──ではこれを」

と言いながら近くの机上にあったポッドから水をコップに汲み、私に差し出した


斎藤「さぁ、お飲みください」

久しぶりの水。そんな気がした
私はゆっくりコップに口をつけ、一気に水を飲み干した
結構冷えた水、それが喉を通る感覚。気持ちいいなぁ

唯「あの…私何時から寝てたんですか?」

斎藤「……あの地下で突然倒られまして、それから13時間ほどですね」

今は朝の5時──ただ日はまだ昇っていないようだった

斎藤「全て思い出しましたか?」

思い出した。思い出したくなかった記憶

唯「──はい」

私は小さく答えた

そうですか。と斎藤さんは呟くと水を一口飲んでから、更に続けた

斎藤「色々分からない事もあるでしょう。私が説明します」

──確かに質問したい事はいっぱいあるけど、知りたくなかった
私が原因だから。全て。…でも知らなくちゃいけない事だから、
受け入れなきゃいけないことだから、私は何も言わずにそのまま聞いた

斎藤「まず唯様の体内でできたウィルスについて……律様はあなたが体内で創った
と言いましたが、正確には体内で原因不明の当然変異を遂げた新型インフルエンザ
ウィルスなのです。」

似たような物だ。創ったにしろ、突然変異にしろ、
それは私の身体から始まったのだから

斎藤「ウィルス名はY.V(ユイヌマウィルス)。これは厚生省が最後に発表した事です
発症すると狂犬病のような症状がでて、そして死にます。
ですが発症しながらも生き残った者達は、あのダークシーカーになります」


斎藤「あなたの事も襲ったダークシーカー。あれは理性や知能、太陽光に対する
    耐性を完全に失っています。ですが代わりといっては最悪ですが、
   常人を遥かに上回る身体能力を持っています」

そうか。だから昼間のあの時トイレにいたのか──あそこは真っ暗だから

斎藤「そしてY.Vに免疫を持っている人間は全人類で考えて1%以下」

1%?1?
およその数にすれば分かるであろう、その深刻さ。
具体的な数は私にはわからなかったけど1%と言われただけで悟った

唯「じゃあ、斎藤さん達はその免疫を持っているんですか?」

生きている以上そうなのだろうが一応聞いた

斎藤「はい、私はそうです。ですが例外があります、律様に憂様等です」



斎藤「これは予想ですが、唯様がインフルにかかり
とんでもないスピードで治したその後の3週間。恐らくその時から
まだ弱い状態ですがウィルスが存在してたのでしょう。
3週間の間に近くで接触した人には発症せずそのまま免疫ができてしまったのです
まぁそんな中でも免疫ができたのは数名のようですが……」

そうか。ムギちゃんとあずにゃんは……

斎藤「と、結構話しましたね。少し休憩しますか。私はトイレにいきますので
唯様、その方を見守っていてください」

ん?その方?
違和感がなさすぎて気づかなかったが、
憂が私の手を握りながらベットの横で座り眠りこくっていた

ずっといてくれたんだ……

ありがとう──憂

私は憂をそのまま寝かしたまま斎藤さんを待った
しばらくすると静かにドアを開け斎藤さんが戻ってきた

ふぅ…と一息つくと

斎藤「もうあまり話すことはないんのですが、律様の事について」

と難しい顔をして話し始めた

斎藤「律様はあなたにきつく当たっていますが、悩んでいるのです
唯様が2年前お嬢様やその各ご友人に襲い掛かったのは聞いております
ですがそれがあなたの意思であってあなたの意思では無いと言うことも
律様は知っています。あなたはわざとやったのではない──そうでしょう?」

そう。確かにそうだけど……

斎藤「あの状態になってしまった人は理性を失い知性もありません、あるのは本能
仕様が無い事なのです。ですが律様にとって澪様を失った事が
相当のことらしく──あのようにきつく当たっているものだと思います」

当たり前だ。澪ちゃんはりっちゃんにとって幼馴染で
大切なメンバーで、とてもとても大切な親友なのだから

澪ちゃんとりっちゃん。それに連想されるように
私は和ちゃんの事を思い出していた。過去の思い出。
和ちゃんと過ごした幼少期。中学時代。

唯「うぅ゛……グスッ…ヒッグ…」

斉藤「──唯様。あなたはなにも悪くないんですから、責任を感じないでください
お辛いのはわかります。ですが今は亡きお二方の分も、強く生きましょう」

唯「──ばい゛っ」

その時、斉藤さんが小さく、ふと呟いた

それに──あなたは私達の希望なんですから──
こう呟いた。私が希望?思わず口にだして、希望?といってしまった。

斉藤「はい…まぁこれはまた今日起きた後話しましょう……
まだ寝たり無いでしょう。ぐっすり眠ってください」

では。と一礼しながらそう言うと斉藤さんはそそくさと静かに
部屋から出て行ってしまった


お──ちゃ──きて!──

なにやらとてつもなく久々に感じる声
そこ声に釣られるように、私は目を覚ました。

「お姉ちゃん!もう12時だよ!?」

この声は…憂か…いつの間にか寝ちゃったのか
それより太陽の光が眩しい。私が寝付く前、頑丈な何かに閉ざされていた窓は
すでに開いており、光を部屋一杯に取り込んでいた。

憂「お姉ちゃん!ボーっとしないで」

学校でしょ?そんな事言われる気もしたがそんな訳は無く
でも、どこか日常に近い物を感じた

唯「うーん、今起きるよー…」

そう答えると、私は憂の用意していた服に着替え
憂に案内されながらその部屋を出た。


なんて広いんだ……外から見た以上の広さ……
まるで迷路みたいなこの屋敷を憂は迷い無く進んで行く
この屋敷全体を把握している様だった

唯「うーいーものすごい広いねー」

憂「そうでしょー私も最初はものすごい迷ったよ?
でも一日で慣れたかな。お姉ちゃんもすぐわかるようになるよ」

わ、私は到底無理だよ憂。

唯「何処に向かってるの?」

憂「食堂だよー」

唯「飯ですか!」

憂「飯です!」

久しぶりの楽しい会話だった


数分?数十分?それほどかかっただろうか。
私はやっと食堂の席に付いていた。

憂がここで待っててね。と言ってどこかに消えて数分。
恐らく厨房に向かったのだろう、私は暇になり周りを観察していた。

広さは充分広く、テーブルが並んでいるのだが
それもどこか高級感が漂っていた。

憂「お待たせー」

憂が二つトレイに料理を持って厨房から出てきた
それを私の前に置き、向かいの席に座り自分の手元にも置く

憂「はい、食べよ?」

唯「うん!」


料理の内容は焼き鮭に味噌汁、漬物、そして白米
ごく一般的、日常的料理。でもそれがとても嬉しかった
特に白米、お米を食べられる日がくるとは……

憂「どうお姉ちゃん?口に合うかな?」

唯「うん!すっごいおいしいよ!憂は料理の天才だね!」

憂「えへへ」

懐かしいやり取り。もうこんな日常取り戻せないと思っていた
なぜか目に涙が浮かんでくる。涙腺緩くなっちゃたのかな?

唯「憂……よかったよ……憂に会えて……本当に」

憂「お姉ちゃん…私も嬉しいよ会えて…
ほらそんな泣きそうな顔しないで?食べよ!」

唯「う゛ん」

憂に感謝してもしきれない程、心を支えられている。そう思った



唯「ごちそう様でした」

お粗末さま。そう憂は言うと私と自分の皿をトレイに重ね
厨房の方に片付けに行った。

美味かったなー。ちゃんとした憂の手料理を食べたのは久しぶりだ。
まぁどんな物を作っても憂の料理は美味しいんだけどね!

憂「お姉ちゃん、じゃあ行こうか」

うおっ!は、早い。お皿もう洗ったのか……さすが憂。

唯「ど、どこに行くの?」

憂「斉藤さんがね話したい事がありますって」

──昨日の私が希望とかどうとかの事かな?
とりあえず私はまた憂につられて、屋敷の迷路に入って行った


またもや数十分かけて

私はまたもあの階段を下りていた
薄暗く赤いランプに照らされた階段

そしてあの消毒部屋を通り、またあの研究施設に入る
斉藤さんは奥のガラス張りの部屋の中にいた。白衣を着ている

ん?ベットが増えている様だった。そしてその上には『あれ』
ダークシーカーだ。ピーとなにかの機械音が聞える。
そう、よく医療現場を背景としたドラマなんかで心臓が止まった時に
流れるあの音。現実で聞いたのは自分の記憶では初めてであった。

斉藤さんはその前で喋りながら、何かをしている。実験?
白衣のポケットからなにやら取り出す、そしてそれをダークシーカーに刺す

すると、さっきまでピーと鳴っていた機械音が一定のリズムを刻み始めた
確かこれはドラマでよく見る人が生死の間から息を吹き返した時に鳴る音!

斉藤さんは魔法使いだったのか!!!


と、そんな訳無く私は実験を終えた斉藤さんと憂で話をしていた

唯「話って昨日、と言うか今日話した、私が希望とかいう事についてですよね?」

斉藤「はい、そうです。では早速話しましょう。希望の件について話す前に、
一度私の予想を聞いてください。なぜ唯様が生きているかと言う事についてです」

そう言って斉藤さんは語り始めた

斉藤「確保部隊は唯様をを無事確保した。だけど搬送する途中トラブルに巻き込まれ
通信手段を失った。まぁ恐らくダークシーカーズに襲撃されたというのが
妥当な線でしょう。恐らく唯様の背中にある大きな傷はその時の物…そうですよね憂様」

背中に傷?全く知らなかったが憂は知っている様子で
はい、そうです。と答えていた。


斉藤「襲われながらも無事病院に着き、あの手術室に。という私達もあそこには何回か
   探索しに行ったんですけどね。あそこだけはどうしてもカードロックで開かなくて
   恐らくある特殊なカードキーを使わないかぎり、内側からしか開かない様、細工したのでしょう
   まぁ──寝ていた2年間の間になにが唯様の体内で起きたかはわかりませんが
   分かる事は発祥元の唯様が自分で免疫をつけたという事。」

──だからあなたは希望なのです。

そう言った。けど私の頭では理解できなかった

斉藤「つまり…発症した状態から正常に戻ったあなたはかなり強い免疫を持っている
    だからそれから血清を作りお嬢様方を治せるかもしれない──そういうことです」

血清とか免疫とか難しい事はわからない。けど
治せるかもしれない、その意味だけはしっかりとわかった

斉藤「……なので少し採血してもよろしいですか?」

はい!。と私は喜んで返事をした


私が二年間も寝ていた理由については、こう言っていた。

斉藤「これも私の予想ですが、唯様は恐らく無意識にお嬢様達に危害を加えた事という
事実から逃げたくて、自ら塞ぎこみ眠りについていた、こう考えています。
まぁ麻酔か何かでずっと眠っていたという方が現実味がありますね」

──案外そう通りなのかもしれない

もし私としての意識があった状態でみんなを自分が殺めたら
私は違う意味で眠るかもしれない

憂「お姉ちゃん!ぼーっとしてると危ないよ!」

唯「ってうわあ、危なかった……」

危うく電信柱にぶつかるところだった。

全く憂との楽しい散歩の時にこんな事考えるなんて駄目だな私


憂「そういえば、お姉ちゃん」
唯「ん?」
憂「ギー太の事忘れてない?」

唯「あ」

憂はクスッと笑いながら言った

憂「やっぱりね。大丈夫だよ私がちゃんと大事に保管してるから」

…すっかり忘れていた。今思えば、自分の部屋に上がったときの違和感。
なにか足りないそんな違和感。あれはギー太が居なかったからだ。

唯「ありがとねーういー」

そんな会話をしていると
遠くからエンジン音が聞えてきた。


それは本当に遠くから。いくつもの建物に反射し伝わってきた音
他に生存者はいない。だからこれはりっちゃんか

唯「りっちゃんだよね?」

憂「うん…そうだね」

ふと疑問に思った事、

唯「りっちゃんはこのなんも無い街でなにをしているの?」

憂「なにも無くは無いよ。食糧、ガソリン、薬、日常用品、
その他諸々色々と探し走っているんだよ」

あ、そっか。食糧は無限にある訳じゃない。
だとすれば拾ってくるか、栽培しなければならない
なんでこんな事も思いつかなかった私

憂「って言っても今の所、私達が食べているのは
元から貯蔵していた物がほとんどだったり、栽培したものが殆ど
お菓子とかはスーパーやコンビニからだけどね」

そう言うと、憂は突然なにか思い出したように言った

憂「あれ?そういえばお姉ちゃん知らないっけ?あれ」

あれ?あれってなんだろう
すると憂が私をみて察したようで

憂「──話してなかったみたいだね。えっとね…ある場所に行くって言う計画」

唯「え!?どこに!?」

少し間をあけ焦らすようにしてから言った

憂「東京に」


できれば聞きたくなかった場所。行きたくない場所。
理由としては貯蔵食糧が尽きてきたと言う事、だが本当の所
食糧に関しては栽培しているから切り詰めれば大丈夫らしい

つまりこの理由は後付け

本当の理由は二つ

一つ目の理由は研究所
あの屋敷地下にあるのも私から見れば研究所だが
斉藤さんからみればすこしばかり道具の揃った部屋、そんな物らしい

どうやらちゃんとしたワクチンを作るにはその研究所が必要らしい


そして二つ目の理由


生存者がいるから


なんでそんな事がわかるのか

琴吹家とはよく言ったもので、真の金持ち一家なのだろう
そう、宇宙にまで手を広げていた。つまりは人工衛星

琴吹家が打ち上げたのは情報収集衛星
災害時等のための画像情報を収集するための衛星

それを斉藤さんが利用し、昼間の間、生存者を探しているみたいで

ある日移ったらしい、人影が


憂は説明し終えると、付け加える様に言った

憂「実際は生存者なんていないと思うんだ…あそこは多分一番危ないから…
でももし本当に居たら、そう考えると逢いに行きたくなるんだよね
それに、紬さんや梓ちゃんのため、全世界人類のためにワクチンを作らないと
いけないからね!だから行くの」

つまり…

唯「私達は救世主ってことだね!」

憂「考えてみれば…そうだねお姉ちゃん!お姉ちゃん伝説になれるよ!」

で、伝説……!なんと良い響きなんだろう!

唯「ねぇ?憂?伝説って英語で何て言うの?」

憂「え?レジェンドだけど?」

レジェンド……!


憂「お姉ちゃん、かっこいい!」

唯「そうかい?憂君?ではもう一度…アイ・アム・レジェンド!」

憂「お姉ちゃん!本当かっこいいよ!」

そんな傍から見ればただの変人奇人な会話ををしていると
いきなり横から、その通りそのままの台詞が飛んで来た

「憂ちゃん……お前達、傍からみたら変人奇人だぞ」

憂「あ、律さん。」

私達の横、少し離れたところにりっちゃんは居た



PM 03:01 元田中駅周辺 住宅地付近 『律』


ふぅ。全く食糧調達にガソリン集めやらは疲れるな
そんな事を考えながら私は車を走らせていた。

そういえばこの前ライト落として壊しちゃったけ
はぁ……めんどくさいけど、その辺の家から拾うか…

私は適当に一軒家を選び、その前に車を止める
M4を持ち、相棒を呼ぶ。

律「アズ行くぞ。今回もいい働きしてくれよ」

そう言って、私はその家の庭から侵入した


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最終更新:2010年02月25日 12:46