平沢家

律「うーん…何も聞こえてこないな。もうやっつけたのかな?」

梓「わ、わかりません…。憂、大丈夫かな…やられちゃったのかも…」

律「だったら今頃私達もやられてるだろ。ちょっと覗いてみる?」

梓「う…。もしやばかったらどうします?」

律「そりゃあ憂ちゃんに加勢するに決まってるだろ…」

梓「…ですよね」

律「よし、開けるぞ…!」

ガチャ


平沢家 リビング

テレビ「ザーーーーーーー…」

律「テレビがつけっぱなしだな」

梓「憂は…見当たりませんね」

律「まさか…やられちゃったのかな?」

梓「そんな…!」

テレビ「ザー…ザザ…ザザザ…」

律「ん?何だ?テレビが…」

テレビ「ザザ…ザ……」

梓「あっ!画面に何か映ってますね…」

律「井戸…か?」

梓「あ…井戸から何か出てきますよ!?」

律「白い服の…女かな?」

梓「髪なが~…」

律「お前が言うな」

梓「何か…この女の人、やけに疲れてるように見えません?」

律「そういやそうだな。肩で息してるし。井戸登ったから疲れたのかな…?」

梓「あれ…?こっち見てますね」

律「う…なんか気味わりぃ…」

梓「ち、近づいてきますよ!?もしかして…こいつが唯先輩達をやったオバケなんじゃないですか!?」

律「だ、大丈夫!テレビの中にいるんだし…」

梓「り…律先輩…コイツどんどん近づいてきますよ…!?」

律「はは…さすがに私も怖くなってきたかも…」

梓「ていうか憂は!?や、やっぱりコイツに…!?」

律「だ…だったら私達がコイツをやっつけてカタキを討たないと…」

梓「やっつけるって…どうやって…」

律「わ、わかんね…」

梓「もう!律先輩は大雑把すぎですよ!!…って…うわ!?近い!近い近い!!」

律「ま、まさか画面から出てくるなんて事は…」

梓「な…?あは…あはは…そ、そんなわけないですよ…」

テレビの中の女「…」ズル…ズル…

梓「ちょ…やっぱりコイツ、こっち向かってきてますよ!?」

律「や、やばそうだな…。やっぱここは退散して作戦練り直そう!」

梓「は、はい!!」

律「よし、逃げるぞ梓!」タタッ

梓「はい!…痛っ!!」ドテ

律「大丈夫か梓!?」

梓「う…足の裏に何か刺さって…が、画鋲!?」

律「ってかよく見たらそのへんに画鋲いっぱい落ちてるぞ!?」

梓「な、なんでこんなものが…」

テレビの中の女「…」ズルリ…

律梓「うわああああああああああああああ!?出てきたああああああああああ!?」

この瞬間、私は死を覚悟した。梓ゴメン。とてもじゃないけど、守り切れそうもないや。
もしあの時…あのビデオを見ていなければ…こんな事にはならなかっただろう…。
澪、唯、ムギ、聡…カタキ討てなくてゴメンな…。




一ヶ月前
音楽室

澪「で、卒業旅行はどこにする?」

律「私はシブイ所がいいなぁ」

紬「あ、確か伊豆に父が経営するペンションがあったと思うわ。でもかなり小さかった気がするからオススメはしないけど…」

唯「別荘じゃなくてペンション?て事はサバイバルな感じなの?」

梓「サバイバルって…」

紬「うーん…ある程度の設備は整ってるから…。テレビもあるみたいだし」

律「ふーん…まあいいと思うぜ!渋くてさ!」

澪「卒業旅行に伊豆か…。女子高生っぽくないな…」

律「なんだよ?イヤなのかよ~?」

澪「まー…いいけど。じゃ、伊豆で決まりだな」

唯「卒業旅行は伊豆かぁ…」ワクワク

伊豆 ペンション

律「うわ!ホントに小せぇ!!」

澪「こら律!ムギに失礼だろ!」

紬「ごめんなさい…」

律「あ、わり…」

唯「大丈夫だよムギちゃん!狭いほうがみんなとの距離も近くなって仲良くなれるよ!」

澪「いや、私達すでに充分仲良いだろ…」

律「ちまたじゃ私ら、レズ集団と思われてるしな…」

紬「あらあら」

唯「よーし!遊ぶぞおおお!!」



その夜

唯「お腹いっぱーい…もう食べられないやぁ」ポンポン

律「おっさんか…。で、この後何する?夜はまだ長いぜ」

澪「ん~…。なあムギ、ここって娯楽施設とかないの?」

紬「ないわ」

唯(田舎だもんね…)

律(渋いってレベルじゃねーな)

紬「確かフロントでビデオ借りられたと思うけど…」

澪「じゃ、何か借りてきてみんなで観るか」

唯紬「さんせー!」

律「ば、バカお前ら!澪に映画を選ばせると大変な事に…」



フロント

澪「でな、キューブリックはこの場面で、人類の武器が木の棒から核兵器にまで進化してしまった事を表現しているんだ」

唯「そ、そうなんだ…」

紬「あっ、私、これ観てみたいなあ」

澪「小さな恋のメロディか!それもいい映画だぞ。最後に主人公とヒロインがトロッコで駆け落ちするんだけど、そのシーンを観てどう思うかで、その人が子供視点で作品を見ていたか、大人視点で見ていたかがわかるんだ。面白い仕掛けだよな。 加えて音楽もすっごくいいんだ。何曲かは今でもCMに使われてるし。主人公の男の子も可愛くてさ。当時はそれが話題になったらしいよ。 いやー、その映画を選ぶなんて、ムギもいいセンスしてるな!」

紬「あ、ありがとう…(ネタバレはしないで欲しい…)」

唯「わ…私、やっぱりコレが観たいなぁ…」

澪「ん?ははは、クローズドノート?それはやめたほうがいいって。その監督、ポンコツだから。 所詮は岩井俊二の二番煎じだよ。まあ実際に岩井俊二の弟子みたいなもんなんだけどさ。岩井はいいぞ。記憶の魔術師の異名を持つだけあって、あ~こういうのあったなぁ…って青春時代を思い出す事の出来る映画を撮るんだよ。 光と音楽の使い方もうまい。過度な心理描写はしないから、想像力が必要になるけどね」

唯「そ、そうなんだ…(長い…。ていうか私達まだ青春マッタダナカじゃん…)」

律「言わんこっちゃない…」

澪「律はどれが観たいの?私が解説してやるぞ!!」

律「え…?わ、私は…そうだなぁ…。ん…?何だあのビデオ…」


唯「ん~?カバーがないね?」

律「シールも張ってないしな。なんのビデオだろ?」

紬「(もしかしてエッチなビデオかしら…?///)わ、私…それ観てみたいなぁ…///」

澪「ええ?こんな得体の知れないビデオ、絶対駄作に決まってるよ。私が言うんだから間違いない!
  駄作と言えば、AIって映画は批判されまくってるけど、あれは内容をちゃんと見ないで広告を信用した連中に観る目がないだけで、脚本書いたキューブリックの過去作と比較するとry」クドクド

唯「わああああ!私もっ!私もこれが観たいなあ!!」

澪「え?唯も?」

唯「う、うん!だって気になるじゃん!!ね、りっちゃん!?」
律「お、おう!!」コクコク

澪「そうかぁ?まあみんなが観たいならいいけど」

唯「あ、ありがとう澪ちゃん!すいません!このビデオ貸してくださーい!!」

澪「…??何慌ててるんだ?」

受付「はいどうぞ」

唯律「ありがとうございまーっす!!」

澪「??」

紬「…///」ドキドキ



ペンション

唯「じゃ、早速観てみよー!」

律「よっしゃ!カセットをデッキに入れまして~っと」

ガチャコン

紬「…///」ドキドキ

澪「絶対駄作だって。つまんなかったらもっかい借りに行くからなー?」

律「ま、まあまあ!とりあえず観てから考えようぜ…」

唯「あっ!始まるよ!」

テレビ「…ザ…ザザザ…」

テレビ「…グワングワングワン…」

律「何だこりゃ?眼?」

唯「貞…って書いてあるね。…と…新聞記事…噴火…?」

紬「あ、女の人が髪をすいてる(この人が女優かしら…?)」

澪(ん?この構図…おかしいぞ?)

律「んー、何だぁこのビデオ?ハズレかなぁ」

唯「あ、井戸だ」

テレビ「ザーーーーーーーーーーーーーーーーー」

紬「終わっちゃった(エッチなビデオじゃなかったのね…)」ガックシ

律「変なビデオだったなぁ」

プルルルルルルル

唯「あ、この部屋の電話が鳴ってるよ」

ガチャ

唯「はーい!平沢です!」

律「自宅か!」

電話「きぃーーーーーん…きぃーーーーーーん…」

唯「あれ?もしもーし!」

電話「きぃーーーーーん…きぃーーーーーーん…」

唯「んー?イタズラかなあ」

ガチャ

紬「なんだったの?」

唯「なんかね、変な音がするだけで良くわかんなかった。イタズラだよきっと」

紬「まぁ…。父に言って注意してもらわないと」

律「…で、なんだったんだろうな?今のビデオ」

唯「さあ?」

紬「澪ちゃんの言う通り駄作だったわね」

澪「…」

律「ん?どしたの澪?」

澪「いや…駄作には違いないんだけどさ、一箇所だけ気になるところがあって」

紬「気になるところ?」

澪「女の人が髪すいてるシーンなんだけどさ、鏡があっただろ?」

律「そういやあったな」

澪「あの角度からだと、カメラマンが鏡に映っちゃうはずなんだよ。でもそんなのはなかった。おかしくないか?」

唯「んー…きっとCGで誤魔化したんじゃないかなぁ?」

澪「そうかも。変なところにはこだわるんだな。やっぱり駄作だ」


律「あ、もしかしてさ!呪いのビデオとかじゃね!?」

澪「ひいっ!?」


律「それを観た者は一週間以内に死ぬ…」

澪「ひいいいいいいい!!」

律「なーんつってなー!」

澪「りつ~っ!!」ゴッ

律「ぎゃん!!」

律「いてて…。…でもちょっと面白いな今のビデオ」

澪「は?どこが?駄作だよ。間違いない」

律「いや、音とかさ!なんていうか、プログレっぽくね?」

澪「全然」

律「そーだ!!ダビングして聡にも見せてやろう!」

澪「律、いくら駄作でもそれはダメだ。映画をダビングして他人に譲渡するなんてのは映画業界にどれだけの悪影響が…」クドクド

律「い、いいだろ~?ていうかそもそも映画かどうかも微妙じゃね?」

唯「そうだねー。映画の事はよくわかんないけど、素人っぽかった」

紬(素人モノだったのかしら?)

澪「…確かに…映画っていうより個人が撮っただけのビデオみたいだったな」

律「な?だからダビングしても問題ないって!」

律「ムギ、これ持って帰っていい?」

紬「うん。大丈夫だと思うわ」

律「よっしゃ!サンキュー!」

澪「やれやれ。…じゃ、他のビデオ借りに行くか!」

唯「え…」

澪「そうだなあ…ジュゼッペ・トルナトーレの映画はオススメだぞ。映像も脚本も音楽も、全てにおいてハイレベルなイタリアの監督なんだけどさ。あ、音楽は大体あのエンニオ・モリコーネが書いてるんだけど、その息子がry」クドクド

唯「ト、トランプ!!私トランプがしたいなあ!!」

澪「ん?」

紬「わ、私も!!トランプしたい!!」

律「私も!!いいだろ澪!?」

澪「んー…別にそれでもいいけど」

唯「じゃあ決まり!!」

紬「わ、私トランプ切るね!」シャシャシャシャ

澪「??」



翌日

律「じゃ、そろそろ出発するか」

唯「うん!楽しかったねー」

澪「ああ。映画はまたみんなで行こうな」

紬「う、うん…」

律「よし!みんなー!写真撮るよー♪」

唯「わーい!ピースピース!」

カシャ

澪「どれどれ」

律「ありゃ?ブレちゃった…」

紬「これ、いくらなんでもブレすぎじゃない…?」

唯「あはは!みんなぐにゃぐにゃだね~」

澪「しょうがないな。私が撮るよ。律、カメラかして」

律「ほい」

澪「いくよー。はい、キームチー」

カシャ

澪「あれ…?私もブレちゃった…」

唯「カメラの故障かなあ?」

律「ええ?じゃあ思い出が撮れないじゃん!」

澪「うーん…残念だけど、諦めるしかないな」

紬「残念ね…」

澪「まぁ、みんなで映画行く時に撮ればいいよ」

唯律紬(もう映画行くの決定なんだ…)


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最終更新:2010年02月25日 17:44