澪「あ、ま、待って……!」

ダッ


ドラム「…………」


ガチャン


澪「…………」


澪「……今、確か……ここに入っていったよね……?」

澪「あ、あのぉ……?」


澪「うぅ、さむっ!」

ガタガタ

澪「なに、ここ……?」


ガチャン


ドラム「…………」


ドラム「氷の保管庫さ、施設内で使用する」


澪「…………」


澪「あなた、何……?」


澪「私に、何か用……?」


ドラム「…………」


ドラム「…………何だよ」

澪「…………」


ドラム「私のこと、覚えてないのかよ……!」


澪(……あれ、この声ってどこかで)


ドラム「……ほら、こうすれば分かるだろ!」


バサッ


澪「カチューシャ……?」

澪「…………律…」


律「…………久々。」


澪「うそ…………」


律「…………」


澪「律……なんで……?」

澪「……梓のバンドのドラムは、律だったのか……?」


律「……そうだよ。」


律「……聡に聞いて、とっくに知ってるかと思ったけど」


澪「律………」


澪「あ、あの、私……お前に話さないといけない事が……」


律「……あのさぁ」

律「……ここ、どこか知ってる?」


澪「……え?」


澪「知ってるも何も……今お前が氷とかの保管庫だって言ったじゃないか……」


律「……そ。マイナス5℃の保管場所」


澪「……それがどうしたんだ?」

澪「……それより私は、お前に話さなくちゃいけない事が…………!」


律「……まあ待てよ」


律「じゃあ、これは何だと思う?」


ジャラ


澪「…………」

澪「………鍵?」


律「この時期にさ……」


律「ここに閉じ込められたら、多分死ぬかな」


澪「……お、おい……何を言って…………」


澪「……あ、どこ行くんだよ!!」


バタン

ガチャ


澪「おい、律……!!」ダッ


ガチャガチャ


澪「ど、どういうつもりだよ……!」

律「…………」


ガチャガチャ


澪「律ぅ………!」


澪「た、頼む、戻って来てくれ……!」


澪「私はまだ、お前に話したいことが…………」


ガチャガチャ


律「…………」




律「さよなら、澪」




ジェットコースター搭乗口前

――ご搭乗のお客様は、貴重品を持ってから、

――お荷物をゲート横のカゴの中にお入れ下さい


唯「聡君、携帯は?」


聡「えっと……念のため、ポケットに」


唯「じゃあ、私も持っていこ」


唯「おサイフも持ったし……よし、準備万端」


聡「それでは、乗りましょうか」


―――――――――――――――――――

ギター「あ、今飲み物置いたわね」

ギター「しめしめ……チャ~ンス!」

ギター「あの子の鞄は一体どれかなぁ~?」

ギター「ふふ……あった、あった」

ギター「飲み物のフタを開けて、と……」


カパッ

サラサラ

ギター「……10グラムで、天国行き~♪」

サラサラ

ギター「……20グラムで、天国逝き~♪」

サラサラ

ギター「……30グラムで、地獄逝き~♪」

サラサラ

ギター「……40グラム」


ギター「……うぅ、可哀想に……これじゃあもう廃人か死人だね……」


―――――――――――――――――――

唯「すごかったね~、ジェットコースター!」


聡「いや~俺、ああいう一回転する奴は苦手っす…………うぇ」


唯「あはは、聡君、顔真っ青~」


唯「あ……えっ~と、カバン、カバン」


キョロキョロ


唯「……あった、あった」

聡「じゃ、下に降りましょうか」


―――――――――――――――――――

PM 8:30


聡「だんだん暗くなってきましたね」


唯「うん……ライブ、何時に行けば間に合うかなぁ?」


聡「結構広いですからね……歩いて行こうと思ったら、40分くらいはかかるかと」


唯「じゃあもう少しあるか……」


唯「あ、私飲み物捨ててくるね」

聡「あれ……唯さん、それまだ残ってるんじゃないですか?」


唯「あ、うん。でも冷えちゃったから……」


聡「いらないんなら、俺がもらいますよ」


ぱしっ


唯「あ、ちょっと……!」


聡「いただきま~す」


唯「ダメーーーー!!」


聡「……へ?」

唯「あ、いやその……それって何ていうか、間接キスっていうか……///」


聡「あ、ああ、そうですね! すみません」


唯「ううん……」


唯「……それ、貸して」


聡「? はい……」


唯「…………」


唯「んぐ、んぐ、んぐ……………ぷはぁ」

ポイッ

唯「じゃ、行こうか?」

唯「次、どこ行く……?」

聡「そうっすね……」


聡「ちょっと話たい事があるんで……こっち来てもらっていいすか?


唯「……うん、いいよ」


―――――――――――――――――――

ギター「うふふ…………あははっ………クスクス」


ギター「あ~あ、飲んじゃった、飲んじゃったぁ~!」


ギター「可哀想に……あの子の将来、真っ暗だよぉ~!クスクス」


―――――――――――――――――――

PM 8:45


梓「遅い遅い遅い遅い遅い」


ベース「あ、梓、落ち着けって……」


梓「おっそぉーーーーい!!!」


梓「もうっ、ギターも律先輩も何やってるんですか!!」


キーボード「ま、まあまあ……そのうちきっと来るわよ」


梓「遅すぎです!!」


梓「ああ、もう……本番前にもう一度合わせたいのに……!」


ベース「まあ、その内来るって」

―――――――――――――――――――

唯「さ、聡君、どこ行くの……?」

スタスタ

聡「……こっちです」


唯「ま、待って……」

はぁ、はぁ

唯(……やば、ここに来て頭がフラフラしてきた……)


聡「ほら、唯さんこっち……」


唯(……聡君の言ってることも、よく聞こえないし……)


ここですよ、唯さん


やっぱり熱が上がってきたのかな……


どうしたんですか、唯さん?

唯「……はぁ、はぁ」


聡「……ほら、あそこに観覧車が見えるでしょう?」


唯「……ご、ごめん、頭がボーっとして……」


聡「大丈夫ですか、唯さん?」


聡(頭がボーっと? 熱が上がったのかな……?)


聡(……どちらにせよ、これはチャンスかもしれない)

聡「ほら、唯さん、こっち……」


ぎゅう


唯「……うん」


聡「…………」


聡(……どうする? 直接アレの居場所を尋ねるか……?)


唯「…………」


聡(……いや、ダメだ。こいつはまだ俺のことを信用しきっていない……)


聡(あれだけ探してなかったんだ……きっと意図的にどこか見つからない場所へ隠しているんだろう)


聡(あれだけは、何としてでも手に入れなくては……)

聡(……あれは、金になる)

聡(恐らく、100万……いや、上手くいけば、200万……!)


唯「…………」


唯「…………聡君?」


唯「……どうしたの、聡君?」


聡「あ、いや……」


聡(どうする……?)


聡(どうする、俺……?)


聡「そうだ……」


聡(こいつを完全に落としてしまえば……!)


聡(……幸い、風邪で思考は働いていないはず)


聡「…………」


聡「………唯さん」


唯「………ほぇ?」


聡「観覧車、乗りましょうか」

唯「…………」


唯「ダメ、だよ……」


唯「……だって聡君、彼女……いるでしょ?」


聡「…………」


聡「いや……いませんよ、彼女なんて」


唯「うそ……私、見たんだもん……」


唯「……この前駅の近くで、聡君が女の子と歩いてるとこ……」


聡「……ああ、あれ?」


聡「あんな女、彼女じゃないですよ……」


唯「で、でも……」


唯「すっごく楽しそうに歩いていたし……」


聡「ほんとうですよ?」


唯「…………」


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最終更新:2010年02月26日 01:23