バッサバッサ

澪「すいません。アテナ隊長」

ふわ☆ふわ「ぴっぴ♪」

律「澪!」

アテナ「あなた、コルバットにつかまってピッピを抱えて・・・何しにきたの?」

バッサバッサ

澪「下から登ってくる時間がもったいなかったので飛んできて最上階の壁を破壊しました」

律「そんなこと言っちゃって・・・中に入るのが怖いからだろ?」

澪「うるさい!」

唯「澪ちゃん無事だったんだね!あの後大丈夫だったの?」

澪「馴れ馴れしいぞ。お前たちに心配される義理はない」

アテナ「で、なんの用かしら?というかあなたこの子たちとどういう関係?」

澪「なんの関係もありません。・・・アテナ隊長に、ポケモンタワー占領の中止を伝えに来ました」

アテナ「なんですって・・・!」

澪「ロケット団研究部は、例の電波に関して実用化には3年ほどかかるとの結論を出しました。 よって今このタワーを占領しておく必要はありません。それよりもヤマブキへの兵力集結を急ぐべきとサカキ様が決定しました」

アテナ「私の部隊の苦労は無駄だったってわけね・・・やってらんない。
    こんなタワーからはさっさと撤収するわ」

澪「早急に部隊のヤマブキへの移動をお願いします。現在は本部もヤマブキへ置かれています」

アテナ「・・なぜ?タマムシは?」

澪「諸事情により撤退を余儀なくされました」チラ

唯律梓「・・・」

アテナ「そう・・・あなた達!もうやる気なくなったからとどめは刺さないであげる。
    よかったわね」

スタスタ

澪「・・・行ったか」


澪「な、離れろ」

唯「無事で良かったー」グリグリ

梓「心配してましたよ澪先輩」

律「澪・・・ありがとな。あのとき私たちを逃がしてくれて」


澪「礼はいい・・・そろそろ離れろ」グイ

唯「あう」

律「サカキには何もされなかったか?!」

澪「もちろんお叱りは受けた・・・だが許してれた。なぜかお前らのことは聞いてこなかった ただ『今までの功績に免じて今回は見逃す』と」

律「そうか・・・私たちのことは思い出せないのか?」

澪「・・・うん」

律「前みたいに強引に思い出させようとして苦しめたくないからな。今回はそういうことはしないよ。 でも、私たちと一緒に来る気はないのか?」

澪「悪いが私はロケット団の隊長としての責任がある。もうすぐ大きな戦いが起こるだろう・・・そんな時にロケット団を離れるわけにはいかない」

梓「大きな戦い・・・?」


唯「戦いってどんな?」

澪「何人かのジムリーダー達が、動き出したみたいだ」

唯律梓「!!!」

澪「ヤマブキシティを制圧する際、ジムリーダーのナツメを取り逃がした。
  彼女が行動を起こしたのかもしれない」

澪「カントーのジムリーダーには横のつながりがほとんどないし、
  セキエイのリーグ本部にはこちらのコネがあるからリーダーたちが結束することはまずないと踏んでいたんだが・・・」

唯「(エリカちゃん、うまくいったのかなあ?)」

澪「いつ大規模な戦闘が起こるかわからない状態だ。お前たちはヤマブキシティに近づかないでほしい・・・お前たちを戦いに巻き込みたくないんだ」

律「澪・・・」


澪「私がお前たちにしてやれるのはこのくらいだ・・・ばさ☆ばさ!空を飛ぶ」

バッサバッサバッサ・・・

唯「あ!澪ちゃん!」

梓「また行っちゃいましたね・・・」

律「元気みたいで良かったよ。私らへの敵意もなくなったし・・・記憶は心配だけど」

フジ「おーお嬢ちゃんたち!君たちか!ロケット団を追い払ってくれたのは!」

唯「あ、もしかしてフジさんですか?」

フジ「そうじゃ。本当にありがとうな・・・そうだ何かお礼を!」

律「いえいいですよそんな!」

フジ「遠慮しないでくれ。そうだこれをあげよう。ポケモンの笛じゃ」

梓「笛?」

フジ「この笛の音色を聞いたポケモンはたちまち眠りからさめるんじゃ。
   お嬢さんたちもトレーナーなら役に立つと思うぞ。」


………………

シオンタウン フジ老人の家

唯「すいません。休ませていただいて」

フジ「いいんじゃよ。お嬢さんたちは命の恩人じゃからな。
   いやー・・・また女の子に命を救われることになるとはのう」

律「また?」

フジ「ああ、30年ちょっと前じゃったかな・・・お嬢さんたちと同じくらいの年の女の子に助けられたことがあっての・・・」

「!!!」

梓「30年前!女の子!・・・もしかして」

律「フジさん!その子の名前は!?」

フジ「ああ、紬ちゃんという子じゃよ。初代ポケモンチャンピオンだから君たちも知ってるかもしれんな」

唯「やっぱり!・・・おじいさん!知ってる限りその子の話を聞かせてください!」

フジ「ふむ・・・少し長くなるがいいのか?」

律「はい!どんなに長くてもいいですから!」

フジ「30年と少し前・・・わしはグレン島のポケモン屋敷で研究者をやっておった。
   今ではあそこは廃屋じゃが、当時はポケモンの研究施設だったんじゃ」

………………

31年前 グレン島 海岸



紬「・・・・・・うーん・・・」

ザザーン ザザーン

紬「・・・海・・・?私・・・なんでこんなところに・・・」

紬「そうだわ・・・唯ちゃんの家でパーティーしてた・・・みんなと・・・」

「ですから博士・・・」

「いやしかし・・・」

紬「・・・誰か来る・・・?でも・・・体が動かない・・・それに・・・意識が・・・」

「・・!博士!あそこに人が!」

「ん?君・・・!大丈夫か!」

………………

ポケモン屋敷

フジ「・・・落ち着いたか?」

紬「・・・はい」

フジ「とりあえず自己紹介しておこう。
   私はここの研究者のフジだ。そしてこっちの若者はカツラ君。私の助手だ」

カツラ「よろしく。君の名前は?」

紬「琴吹・・・紬です」

フジ「なかなか立派な名前だな。それで・・・なぜあんな所に倒れてたんだ?」

紬「・・・すいません。・・・頭が混乱していて・・・」

カツラ「無理に答える必要はないぞ」

フジ「そうだな。何か事情がありそうだし、こんな屋敷でいいなら好きなだけ休むといい」

紬「ありがとうございます・・・」

フジ「いいよ。話したくなったらいつでも話してくれ」

カツラ「さて・・・私はそろそろ訓練に行かせてもらいます」

フジ「おお。そんな時間か?」

紬「訓練・・・?」

カツラ「ポケモンバトルの訓練だよ」

フジ「カツラ君はここで私の研究を手伝いながら、ジムリーダーを目指してるんだ。
   こんな海に囲まれた島で炎ポケモンの訓練なんて無茶だと言っているんだがね」

カツラ「逆境で訓練してこそポケモンが強くなるんです!」

フジ「ふふふ。君は相変わらずポケモンバトルのことになると熱いな」

紬「・・・えっと・・・ポケモンって・・・?」

フジ「ポケモンのことを知らないらしいぞ」

カツラ「もしかしたら何かの事件か事故に巻き込まれて記憶が無くなっているのかもしれません・・・」

紬「(・・・おかしい・・・この人たちもこの建物も・・・すべの雰囲気が異様というか・・・まるで違う世界みたい・・・話を合わせた方がいいかも・・・)」

紬「あの・・・カツラさんの言う通りかもしれないです・・・記憶が抜けているみたいで・・・」

カツラ「やはりそうか。ポケモンのことが思い出せないなら実際にポケモンを見た方がいいかもしれないな。 俺の訓練について来るか?」

フジ「いいかもしれないな。紬ちゃんが良ければだが」

紬「(ポケモンってなんなのか・・・ここが何なのか知らないと・・・)
  はい・・・じゃあご一緒させてください」

カツラ「よし。では博士、行ってきます。こっちだ。歩けるか?」

紬「はい」





フジ「さてと・・・こっちもエサの時間が過ぎてしまったな。早く行ってやらんと・・・」

フジ「待たせたな。ミュウ」


………………

海岸

カツラ「ここが俺の訓練場所だ。野生の水ポケモンがよく出るからな」

紬「はあ・・・」

カツラ「で、こいつらが俺のポケモンだ。出ろ!ガーディ!ポニータ!」

ガーディ「わん!」

ポニータ「ひひーん」

紬「(・・・これがポケモン・・・今まで見てきたどんな生き物とも何かが違う・・・)」

カツラ「君は、ポケモンを持っていた覚えとかはないのか?」

紬「いえ・・・全然覚えてないです・・・だから教えてもらえますか?ポケモンのこと・・・それに、この世界のこと」

カツラ「ああ、俺に教えられることならな。君の記憶が早く戻るといいな」

紬「はい(本当はパーティまでの記憶は完全に残ってるんだけど・・・こうしたほうがいいわよね)」

………………

1週間後 海岸


紬「ポニータ!ふみつけ!」

ポニータ「ひひーん!」

ポニータのふみつけ!野生のクラブは倒れた

紬「勝った・・・!カツラさんっ!」

カツラ「見てたぞ。やったな」

フジ「おーい!二人とも」

カツラ「博士。どうしたんですか?」

フジ「おや・・・?紬ちゃんがポケモンを?」

紬「実際に使った方がポケモンに慣れるからって、カツラさんがこの子を貸してくれたんです」

ポニータ「ひひーん♪」

カツラ「すごいですよ彼女は。とても飲み込みが早くて、教えがいがあります」

フジ「それはよかった。こんな時に悪いんだがカツラ君、一緒に研究所にきてくれないか?」

カツラ「何かあったんですか?」

フジ「ここではちょっとな」

カツラ「・・・わかりました。ポニータは預けておくから、一人で訓練できるか?」

紬「はい。大丈夫です」

フジ「では行こうか」



ポケモン屋敷

カツラ「やはり・・・ミュウのことですか?」

フジ「その通りだ。これを見てくれ」

ミュウ「・・・」

カツラ「・・・卵!?」

フジ「ああ。今朝見たら大事そうに抱えていたんだ」

カツラ「ミュウ一匹で卵を産んだんですか・・・?」

フジ「わからない・・・。ポケモンが卵を産んだことが正式に確認された例は今までないからな」

パキ パキ

「!!!」

フジ「まさかもう・・・生まれるのか・・・!?」

………………

研究記録 記入者:フジ

2月6日  ミュウが子供を産む。産まれたばかりのジュニアをミュウツーと呼ぶことにした。
     ミュウとミューツー。この2匹の研究がうまくいけばポケモンの生体の謎を解明す
     ることができるかもしれない。ミューツーには生まれた直後から薬物の投与などの
     実験を行い、潜在能力を調べていく予定だ。
     助手のカツラ君はこのことを学会に報告すべきだと主張しているが、私はまだ今は
     その時期ではないと判断している。


2月13日 私的記録だが、紬ちゃんがここにやってきて2週間になる。
    彼女の記憶はまだ戻らないようだ。
    しかし、友達とはぐれたことを思い出したらしい。どこにいるのかは全く見当がつか
    ないようだ。


2月24日 ミュウツーへの実験はどれも予想以上の結果をもたらしている。
    ミュウツーの成長速度はすさまじく、
    あらゆる薬物投与や実験に余裕で耐え、自らの力として取り込んですらいるようだ。
    なお、ミュウツーとミュウは別々の部屋で飼育しお互いの存在は認識できないように
    なっている。

3月4日 ミュウツーへの本格的な遺伝子改良実験を行った。
    結果は成功で、ミューツーはさらに強化された。
    しかしながら、最近はミュウが弱り始めたように思える。テレパシーでミュウツーを
    感じ、作用しているのだろうか


3月10日 最近はカツラ君がジムリーダー試験のための準備で忙く、こちらにはあまり来なく
    なった。 だが、紬ちゃんが掃除をしてくれたりお茶を入れたりしてくれている。も
    はや紬ちゃんが助手のようだ


3月19日 久しぶりに、カントー本土への連絡船がやってきた。カツラ君はこの船でカントー
    本土に渡り、ヤマブキのカントーリーグ本部でジムリーダー選抜試験を受けることに
    なる。カツラ君のポニータは正式に紬ちゃんに譲られた。
    紬ちゃんは、友達を探すために本土に渡ることを検討していたようだが、
    今回は見送るようだ
    本土へ渡るのは一人で本土を旅できるくらいの実力を身につけてからと言っていた。
    本当は友達のことが心配ですぐにでも飛び出して探したいだろうに・・・  
    とても賢くて強い子だ

3月20日 紬ちゃんに、研究の助手になってくれるようにお願し、快諾してくれた。彼女には
    ミュウの世話を頼んだ。ミュウツーの存在は伏せている。
    彼女には薬物投与や遺伝子実験を知ってほしくない。


4月20日 新しい助手が来て一ヶ月。
    紬ちゃんの丁寧な世話のお陰かミュウの体調は良くなってきている。
    ミューツーは、すでに親よりも大きくなっている。どこまで成長するのだろうか


5月3日 カツラ君から手紙が届いた。ついにジムリーダー試験に合格し、
    このグレンでのジム開設が認められたそうだ。
    とてもうれしく思う。紬ちゃんも喜んでいた。

5月25日 カツラ君が本土からの連絡船に乗って帰って来た。私たちは歓迎会を開いた。
    カツラ君は紬ちゃんがだいぶ強くなっていて驚いていた。
    本土で一人旅しても十分大丈夫な実力だそうだ。
    ただ、紬ちゃんは私に気を使ってか、しばらく本土には行かないと言っていた。

6月15日 グレンジムは盛況のようだ。
    カツラ君は島民のポケモン技術向上に貢献していくだろう。

7月1日 今日、初めてミュウツーが私に反抗した。
    いつものように注射をしようと思ったらいきなり突き飛ばされたのだ
    その後は普段通りに戻ったが、ミューツーに確実に強い自我が芽生えてきているよう
    だ・・・

7月18日 ミュウツーの反抗が多くなってきた。私は何回も突き飛ばされた。
    反抗がなくなるまで実験はしばらく中止にすることにした。
    紬ちゃんは、急に傷が増えた私を不思議に思っている。知られるのも時間の問題か。

8月2日 ついに紬ちゃんにミュウツーの存在が知られてしまった。
    ミュウツーが実験室の扉をこじ開けてうろついていたのを
    紬ちゃんが発見したのだ。
    ミュウツーはなんとか部屋に戻し閉じ込めることができた。
    私はミュウツーのすべてを話し、今まで黙っていたことを詫びた。
    紬ちゃんは、いいんですと言っていたがどこか悲しい目をしていた。
    私を軽蔑しているのかもしれない。当然のことなのだが。


8月15日 カツラ君にこのことを話し、協力を頼んだ。
    ミューツーに何重にも拘束具をつけ部屋に閉じ込め厳重に封鎖した。
    カツラ君の腕をもってしてもミューツーを抑え込むのに相当苦労していた。
    カツラ君は解決策が見つかるまでジムの仕事を休み警備をすると約束してくれた。


8月25日 ミュウツーは私が何もしなくても自ら成長し続けているようだ・・・
    ミュウツーを拘束している部屋からは物音が日に日に大きく聞こえてくる
    もうすぐ拘束具すら完全に破壊してしまうだろう・・・
    今更過ちに気付いても遅すぎるかもしれないが・・・
    私はとんでもない怪物をつくってしまった。
    紬ちゃんは、ミュウの世話を続けてくれているが、明らかに怯えている。
    私もカツラ君も逃げるように行ったのだが聞こうとしなかった

9月1日 ポケモン ミュウツーは強すぎる。ダメだ…私の手には負えない!


パタン

フジ「この研究記録もいつまで書けることか・・・」


9
最終更新:2012年09月26日 22:10