唯に気を取られているうちに鎧の拳が目の前まで来ていた。
とっさに唯を抱きかかえうずくまる。


ズキューン!ガランガラン!!

しかし銃声とともに拳は吹き飛んだ。

澪「…助かったよ!」

律「うまいな!」

紬「お父さんが趣味でやってて私も少しだけやったことがあるの。」

律「さっすがお嬢様!澪は雑魚どもを片づけてくれ!ムギは援護だ!」

澪「わかった。」
紬「まかせて!」

ドスン!ザシュ!ズキューン!

三人の猛攻が始まった。
しかし鎧の姿をしているだけあって決定打には至らない


律「くそ!しぶといな…」

ジャマヲスルナ!

ブン!

ハンマーによってできた大きな死角に被せて鎧が拳を振るう。

律「ヤバ!」

ガキーン!

澪「ふぐぅ…おもいな…」

澪が律の前に割って入り剣で拳を受け止めた。
そしてなぎ払う。

律「みお!!」

澪「なにぼーっとしてるんだよ!小さいのはもう倒したよ。」

律「こいつは格がちげえって!」

澪「ん、まあ…たしかに近くで見ると威圧感が…」

律「あれ?ビビってらっしゃる?」

澪「な、そんなことない!やるよ!」

その後も一進一退の攻防が続いた。

律「はあ、いくらなんでもしぶとすぎるぜ…」

澪「律!あいつの右腕!」

律「やべ!見失った!」

澪はいち早く勘付き振り向く。

澪「ムギィ!!うえだああ!!!」

紬はスコープを覗き込んでいたために気付いていなかった
慌ててライフルのスコープから目を離し上を見る。
しかしすでに目の前にあり避けるのは不可能だった。

紬「きゃああああ!!!!!!!」

声をあげ頭を抱えうずくまる。

律「ムギィ!!!!」

ズシャア!!!




恐れないで

キミは世界一強い武器を持ってる

その名は

キーブレード

紬に振り下ろされた拳をなぎ払ったのは唯だった。
唯は戻ってきた。右手に鍵を携えて。

唯「充電完了!!みんなおまたせ!!」

律「ゆ、唯!遅すぎるぞ!」

とは言うものの顔は嬉しさを隠し切れていなかった。

唯「勇者は遅れてやってくるのです。
  それに…みんなだって遅かったくしぇに…」

紬「まあまあまあまあまあまあ。唯ちゃん。ありがとう。」

唯「えへへ~!お怪我はありませんか、マドモアゼル?」

紬「ふふ。ありませんわ。」

唯「よーしいっくぞ~!!」

唯が加わるとみんなの勢いがさっきまでとはまるで違った。
その止むことのない攻撃が敵を圧倒していく。


唯「ええい!!」

ザシュ!


唯の一撃に鎧は動きを止める。

ガランガラン!シュワア…

体からハートのようなものが放出された。
そしてついに鎧は消えていった。

唯「いやったああ!!!!!」
律「よっしゃあああああ!!」
紬「やったー!!」
澪「やったな。」

わいわーい!

澪「ん…?」

澪が唯を見て目を丸くした。
勢いよく唯が手に持つ物に指をさす。

澪「それ!!」

唯「へ?」


澪「だからそれ!鍵じゃないか!!!」

律「は?澪の剣と変わんないじゃん。」

唯「ほんとだ!おそろいだね!」

澪「違うって!ペグの片側が長くてどこか鍵っぽく見えるだろ。
  それにその武器の名前が―」

唯「ギー太だよ!家にいないと思ったら私を守るために隠れてたんだね!?」

律「え!?それぎーたなの?」

唯「うんギー」

澪「じゃなくてホントの名前!」

唯「ふえ!き…きーぶれーど?」

澪「ほら!」

律「あーなるほど。」

紬「鍵の剣ね。」

スタスタ…

そこにちょうどよくさっきの魔道師がやってきた。


律「マーリンさん!」

マーリン「ほっほっほ。鍵を見つけたな。」

澪「やっぱり唯か。」唯「へ?わたし?」

律「そうだ!さっそくこの世界のこと教えてくれよ!」

マーリン「では、今の世界の状況について少し話そうかの。」

そしてハートレス、世界の崩壊、キングダムハーツの存在、アンセムの野望など今この世界に起きていることと唯達がすべきことを長々と説明した。

唯「ほ~げ~」

律「安心しろ。私もよくわからんかった。」

紬「要するにKHの鍵穴が開かれないように世界中の扉を閉めて周る。
  そしてKH開こうとしているアンセムを倒せばいいのよね?」

律「おーさすがムギ。」

マーリン「うむ。物分かりがよい子じゃな。」

唯「で、でもまず憂とあずにゃんを助けなきゃ!」

律「梓もあれから部活来ないもんな…」

唯「それもあるけど…あずにゃんなんかおかしかったんだ。
きっと憂を助けなきゃって責任を感じてるんだと思う…」

澪「梓は責任感強いから心配だな…」

マーリン「大丈夫じゃよ。唯にはめぐり合いの相が出ておる。
     信じ続ければ、きっとどこかで繋がっておるよ。」

唯「ほんとに!?」

マーリン「ほんとじゃとも、お主の光がみんなを一つに導いてくれる。」

唯「じゃあさっそく世界を救おう!!」

マーリン「これこれ。まだ話はおわっとらん。お主らに力をやるから武器を出しなさい。」

唯は退屈そうに渋々武器を出す。それにみんなも続いた。

マーリン「それ!」

パアア!

マーリンの掛け声とともにそれぞれの武器が赤く光る。
みんなにも力が湧いてくるのが伝わった。


マーリン「これは炎の力。使い方は簡単じゃ
炎を心に思い浮かべて武器からイメージを解き放つ…それ!!!」

ブシュウウ!!!パーン!キラキラ~☆

唯「わああ!」
律「おお!!」
澪「きれい…」
紬「た~まや~!!」

杖から解き放たれた火球は天まで昇り花を咲かせた。

マーリン「ほれ、みんなもやってみなさい。」

律「私からいくぜ!炎をイメージして……燃えろおおおお!!!!!」




しーん



マーリン「ぷ!」
唯澪「ぷ!」
紬「うふふ。」

律「笑うなああくぁwせdrftgyふじこlp;!!!!!!」

紬「まあまあまあまあまあまあ。誰にもそうゆう時はあるわ。」


マーリン「まあそうなるじゃろうと思っておったよ。
     そこで、その武器が役に立つ、楽器じゃろう?本来の姿を想像してみなさい。」

律「え?あー…こうか?」

シュイーン!

律「おお!!」

なんと律の目の前にはドラムセットが現れ、手にはスティックが現れた。

マーリン「魔法というのは心を開放するほど強くなる。
     楽器はそのきっかけじゃ。さあそれを弾いて魔法を使いなさい。」

律「任せろ!」

Tan,tan,taaaan!zudodododoooon!!!!

律「燃えろおおおお!!!!!」

ボワアアアアア!!!!!!

唯「ふおお!!!!」

目の前に火の海が広がり、山のように燃え盛った。

マーリン「ではみんなもやってみるんじゃ。」

みんなも楽器を演奏しながら魔法を試すが思うようにはいかなかった。


マーリン「ふむ、どうやら律が一番向いておるようじゃな。
     コツがつかめれば楽器なしでも使えるようになる。日々精進するんじゃな。」

律「へっへーん!唯なんて笑ったくせに炎も出なかったじゃん!」

唯「む~…」

マーリン「大丈夫じゃよ。魔法には属性ごとに向き不向きがあるし、
     お主は見たところ一番才能があるように思う。」

唯「おお!!そのうちりっちゃんを見返してやる!」

律「望むところだ!」

澪「じゃ、そろそろ行こうか。」

紬「でもどこへ?この世界はもう唯ちゃんを探すときにほとんど周ったわ?」

律「他の世界に行くにはどうすればいいんだよ?」

マーリン「唯を光が導いてくれる。
     お主らがその仲間と再開を果たす運命なら仲間へと繋がる。
     世界を救う勇者ならば光と繋がる。
     運命とは必然じゃ。そして信じる心が運命を開く。」



唯「そっか!そうゆうことなんだ!」

律「なにが!?」

唯「私なんだよ!」

律「だから!なにが!?」


―だから忘れないで


その扉を開くのは


キミなんだ



目の前に現れた運命の扉。

それは鍵を導く希望の光


唯「よーし!次の世界へレッツゴー!」




アンセムレポート1

実験を始めて数カ月。検体者はことごとく心が崩壊してしまった。

なんと心は脆いのだろう。

しかたないので城の地下に隠しておいた。

心の謎を解き明かしたときに戻してやればいい。

しかし不可解なことが起きた。

検体者が一人もいなくなってしまった。

どこかから逃げだしたのだろうか。

しかし心が崩壊しているのにどうやって。

そんなことを考えている時間も惜しいので研究室に戻ろうとした。

しかし振り向くとそこには影がいた。

間違いない。検体者の人数分だ。


その眼はまるで私の心を見透かしているようだった。

心を求めているのだろうか。

心の闇が光を押さえつけ体を捨て去り具現化した存在。

私は彼らをこう呼ぶことにした。

心なき者、ハートレスと

あれこそが私の追い求めてきた闇






―ワンダーランド―

唯「とうちゃーく!」

着いた先は大きな部屋。部屋だけではなく家具まで全てが大きい。
むしろ唯達が小さいといった感じだ
大きなクマちゃんが大きなソファに座っているなど可愛らしい部屋だった。

唯「かわいい部屋だね~澪ちゃん!」

澪「うん!落ち着く。」

律「お前らとはぜってえ趣味合わねえわ…」

ドタバタ!

紬「ん?」

白ウサギ「ちこくちこく~」

騒がしい足音を立てていたのは小さなウサちゃん。
どうやらとても急いでる様子。

律「おお!唯みたいなのが!」

唯「ほんとだ!」

澪「少しは否定しろよ…」


白ウサギ「急がないと次は私の首まで飛ばされる~!!」

可愛らしさと裏腹に事態はあまり思わしくないらしい。

白ウサギ「あけてあけて~!!」

走りながら大きなドアノブのついた扉に叫ぶ。

喋るドア「朝からさわがしいなあ…ほら。」

ギギイ…バタ…

その意思を持つドアノブは取っ手が鼻、その上には目、そして鍵穴が口になっている。

紬「あのウサちゃんはどうして急いでたのかしら?」

喋るドア「隣で裁判があるからさ。」


律「ゆい…?裁判くらいは知ってるよな?」

唯「む~!りっちゃんはどれだけ私を常識知らずだと思ってるの!?」

律「かなり。」

唯「うう…ひどい…」

澪「鍵穴にしろ梓達にしろ手掛かりはないから裁判のぞいてみようか?」

律「それもそうだな。よし。開けてくれ!」

喋るドア「まったく…さわがしいなあ…」

ギギィ…バタン…

パパパ!パパパ!パ~!!

隣の部屋に行くとラッパが鳴り響いた。
部屋を見渡すとトランプの兵隊が整列している。
どうやら裁判が始まるようだ。

白ウサギ「ただいまより、開廷する!」

澪「始まったな…」

白ウサギ「被告人はアリス!」

その被告人はブロンズの綺麗な髪で華奢な女の子だった。

唯「あの子ムギちゃんぐらいお人形さんみたいだね!」

律「悪いことしそうには見えないよな。」


白ウサギ「裁判長はハートの女王陛下~」

その女王は大きなお腹で貫録たっぷりでとても意地汚そうな顔をしている。

アリス「どうして裁判をするの!?」

ハートの女王「この娘 アリスが今回の事件の犯人であることは間違いない!
       なぜなら…わたしがそう決めたんだから!」

アリス「そんなのってないわ!」

ハートの女王「被告アリス!なにか言いたいことはあるかね?」

アリス「あります!私悪いことなんてしてないもの!
女王だかなんだか知らないけどあなたみたいなわがままな人、今まで見たことないわ!」

ハートの女王「おだまり!私を怒らせる気かい!?」

紬「かわいそうね…」

唯「理不尽だ~!」

律「私らで助けてやらないか?」

澪「でもマーリンさんが他世界への干渉はしてはいけないって言ってただろ。」

今までその世界だけで成り立ってきた秩序に他世界から来た者が必要以上に干渉すれば、
その世界がその世界でなくなってしまう危険を伴う。

律「そうか…」


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最終更新:2010年03月03日 00:50