ハートの女王「判決を言い渡す!被告アリスは有罪!
ハートの女王である私を襲い、ハートを奪おうとした罪である!」
唯「ハートを奪おうとした!?」
ハートを奪おうとしたという言葉に心当たりがあった。
律「犯人はアリスじゃないな。」
紬「そうね…」
澪「でも…」
律「冤罪だって分かってるのにじっとしてられるか!」
ハートの女王「この娘の首を―」
律「ちょーっとまったあああああ!!!」
女王の判決を遮るように律が飛び出す。
3人もその勢いに続いた。
澪「考えもなしに飛び込んで…どうなっても知らないからな…」ボソ
ハートの女王「なんだおまえたちは!?」
律「私たち真犯人に心当たりがあるんです!」
唯「そーなのです!」
律「この子は犯人じゃありません!」
唯「そーだそーだ!」
ハートの女王「バカをお言いでないよ!ならば証拠は?」
律「げ…」
澪「ほらみろ…」
唯「証拠ならあります!」
律澪「え?」
唯「私がそう思う!それが証拠です!」キリ!
律澪(め、めちゃくちゃだ~!)
紬(あらあら…)
誰が聞いてもめちゃくちゃだった。
ハートの女王「く…アリスが犯人じゃないだと…」
だが効いた。
律澪(こいつアホー!)
律「こ、これでもアリスが犯人だって言うのか!?」
勢いを崩さぬようにと律がたたみかける。
ハートの女王「ええいおだまり!法律を忘れたのかね!?私に逆らった者は有罪!」
だが唯のめちゃくちゃな一言も律の努力も意味はなかった。
唯「ええ~!!」
律「こいつはもっとめちゃくちゃだ~!」
紬「アリスちゃん。ここは私たちに任せてあの部屋に隠れてて?」
アリス「知らない方なのに、ありがとうございます。」
これから戦いが始まることを感じ取りアリスを逃がした。
ハートの女王「さあ!こいつらの首をはねよ!」
女王が命令すると4人にトランプの兵たちが襲いかかった。
ザン!ザシュ!ドス!ズキューン!
しかしトランプたちはいとも簡単に倒された。
律「さあどうする!?」
ハートの女王「フフ…それくらいでいい気になるんじゃないよ!所詮そいつらは時間稼ぎさ!」
律「どうゆう意味だ!」
澪「こわくないこわくないこわくない……」
律は気付いていなかったが他のみんなは感じ取っていた
律「澪!どうした!?」
唯「りっちゃん、寒気がするよ…」
紬「殺気を感じるわ…」
律「私には分かんないけど…澪の怖がり方で普通じゃないのは分かる…」
ハートの女王「私でも手に負えないからね。逃げさせてもらうよ。」
律「澪がこんなんだし、ひとまずさっきの部屋に逃げよう!」
紬「そうね。」
ガチャ!バタン!
律「みお!!しっかりしろ!」
澪「見えない聞こえない…」
澪は一向に立ち直る気配がない。
紬「あれ?アリスちゃん?」
唯「ほんとだ、いないね。アリスちゃ~ん!」
もわんもわん…
アリスを探していると目の前に何者かが現れた。
縞の囚人が着るような服、そして片腕に自分の頭を担いでいた。
見るからに怪しい。
澪「ひい!」
律「おまえがハートの女王が呼んだ相手か!」
何事もなかったように頭を首に乗せ、話し始める
チシャ猫「チシャはチシャ猫。
いい奴?悪い奴?チシャには分からない。
でも知ってる。アリスはここにはいないよ。」
唯「か、かわいい…!」
律「きもいだろ…てかょっとは緊張感持て!」
紬「じゃあアリスちゃんはどこに?それともあなたがアリスちゃんを?」
チシャ猫「チシャはなんでも知ってる。でも教えるとは限らない。
代わりに教える氷の力。武器を出してみて。」
どうやら悪い奴ではなさそうだと認識し武器を出す。
澪の武器は律が無理矢理出させた。
チシャ猫が武器に触れるとマーリンが教えてくれたときのように武器が光る。
氷の力を手に入れた。
チシャ猫「さあさあ死神やってきた。やつは一枚ドアの向こう。
チシャは帰るとしようかな。」
もわんもわん…
チシャ猫は謎を残して去って行ったが考えてる暇はない。
ギギィ…
バタン…
裁かれる時は来た。
やあ。
相手はそのおぞましいほどの殺気とは裏腹に気さくに姿を現した。
唯「お、おいっす!」
律「ばか!」ゴン!
唯「いて!」
相手はやはりトランプ。
律「ジョーカー…手に負えないってそうゆうことか。」
ジョーカー「久しぶりの仕事だ。楽しませてくれよ?」
シャキン!
背に担いだ大きな鎌を取り出した。
澪「怖くない怖くない~…」
紬「しっかりして!澪ちゃん!」
ジョーカー「その子は面白そうだから最後まで取っておくよ。」
律「させるか!おまえが最初で最後だ!」
ジョーカー「それは楽しみだ。」
律「ムギは澪と下がって援護してくれ!」
紬「ええ。澪ちゃん行きましょ。」
そしてそれぞれが適当な間合いについた。
唯「いっくぞ~!」律「おう!」紬「ええ!」
シュイーン!
三人の武器が姿を現す。
ジョーカー「伝説の勇者じゃないか!今日は楽しめそうだな。」
律「ごちゃごちゃうっせえええええ!!!!」
ブオン!
空を貫く豪快な音が空しく響く。
今までのトランプとは動きが違い、次に続く唯の攻撃も難なく避けた。
ジョーカー「遅いよ。」
期待外れだと言わんばかりの態度で鎌を振りかぶる。
そしてその鎌はからぶって体勢を崩した唯に振り下ろされる。
ヒュン!
唯「わああああ!!!!!!」
ズキューン!カキン!
しかし紬が唯を守る。
紬「そうはさせないわ。」
ジョーカー「この鎌をとらえるなんてすごい腕だね。」
死神は紬を見て微笑む。
律「どこみてんだあああ!!!」
紬に気を取られる死神に鉄槌を奮う。
しかし注意がそれていたのは死神の方ではなかった。
ジョーカー「キミこそどこ見てるんだ?」
ポタ…ポタ…
律「え…」
何も見えなかった。
しかし鎌は律の横腹に深く食い込んでいた。
ジョーカー「おかしいな。まさか真っ二つにならないとは思わなかった。」
憎らしくその鎌を引き抜く
律「ぐあ…」
気付かなかった痛みも自覚とともに激痛となってこみ上げる。
唯「りっちゃん!」
律の元に唯が駆け寄る。
唯「ポーションだよ!」
律「サンキュ…」ゴク…
ジョーカー「自分の心配した方がいいんじゃない?」
死神が唯の背後に一瞬で迫る。
律「後ろ…!!」
唯「え…?」
ヒュン!ザシュ!
唯「ぐう…あ……」
鎌は唯の腹部を貫いた。
ジョーカー「勇者の恐怖に満ちた顔!最高だよ!
でも悲鳴が聞こえなかったな。次こそは悲鳴を聞かせてくれよ?」
ズ…
唯「う…」
その鎌を引き抜き再び唯に向かって構える。
ジョーカー「さあ悲鳴をあげ―」
律「どこ見てんだって…言ったろ…」
全快とは程遠いがポーションが効き何とか動けた。そして死神の腕をとった。
律「なめんなよ…所詮は紙だろ…?」
ジョーカー「なに…?」
律「燃えろ!」
ボワアアアアア!!!!!!!
大きな火柱が死神を包む。
ジョーカー「ぐわああああああああ!!!!!!!!」
ドサ…
悪魔は炎の中で崩れた。
律「ぐ…もう少し早く気付いてれば…」
フラフラと唯のもとへ歩く。
律「まだ間に合うよな…飲んでくれ。」
…ゴ…ク……
魔法の薬は傷を治すだけで命を取り戻すことはない。
唯は力はないが一口飲んだ。
これで死ぬことはないだろうと律は安心した。
ザザ…ザ…
紬「りっちゃん…!」
紬が不安そうな声で律を呼ぶ。
ザ…ザザ…!
律「なに!?」
そこには漆黒の死神が立っていた。
地獄の炎から這い上がって。
ジョーカー「驚いたよ…炎を使えるなんて。」
律「くそ…楽器なしじゃ火力が足りなかったか…」
ジョーカー「キミのせいで体に傷がついたじゃないか…
許さない…そもそも罪人のくせに生意気だ…
おまえら罪人は恐怖に満ちた顔で悲鳴を上げてれば良いんだあああ!!!!」
ブワッ!!!
ジョーカーの怒りとともに抑えられていた殺気が溢れだす。
今までの物とは比べ物にならない。
紬「そんな…!」
律「手加減されてたってことか…」
ジョーカー「本気を出したらつまらないだろ。
だがそれも終わりだ。もう容赦はしない。」
律「ち…ムギ…かまえろ…」
紬「ええ…」
自分たちには武器があることを確かめるようにぐっと握る。
ジョーカー「まずはライフルの女…」ギロ…
死神の眼が紬を捉える。
紬「来る…」
紬が鍵盤を構える。
ジョーカー「おまえだ…」
ポタ…
数十メートル先にいた死神は紬の目の前にいた。
何が起きたのか分からない。
血の味がする。
意識が遠のく。
ドサ…
圧倒的強さを前に紬は倒れた。
ジョーカー「これだから本気を出すとつまらない。」
なんとも味気なさそうに呟く。
律「終わった…」
もう誰一人まともに動ける仲間はいない。
残された律は戦意を喪失する。
ザシュ!
律「ぐ…」
紬の場所から一瞬で律の前まで移動し鎌を突き刺した。
ジョーカー「お前はすぐに殺さない。」
ザシュ!
律「ぐふ…」
ジョーカー「早く悲鳴を上げろよ。」
ザシュ!
律「ぐああ……だ、誰があげるか…」
ジョーカー「ダメだ…我慢できない!死ねえええええ!!!」
ヒュン!
鎌が最後の鋭い風切り音を立てる。
ジョーカー「…?」
律「なん…だ…?」
ジョーカー「か、からだが…うごかない…おまえ…なにを?」
目の前には氷漬けの死神。
律は状況がすぐには分からなかった。
トランプの体の焼け落ちた隙間から後ろに誰かがいるのが見えた。
律「…やっと来たか…」
死神の向こう
怖気づくことなく、迷うことなく
一人で立つ澪がいた。
澪「ごめん…私が不甲斐ないばかりに…」
律「ううん…澪は頑張ってるよ…今だって…」
澪「ありがと。」
私は本当にいい仲間を持ったよ。
みんなには感謝してる。
ジョーカー「ど…して…おま…えが…」
澪「今度は私がみんなを守る。」
ジョーカー「さむ…たすけ…て…くれ…」
仲間をこんなにしておいて…救えないな…
澪・律「砕け散れ…」
パラパラ…
澪「私…みんなに迷惑を…」
律「そんなことないよ…澪がいたから…勝てた…
とりあえずムギに…ポーション。」
澪「あの後すぐに飲ませたから大丈夫。」
律「そっか…じゃ私に…」
澪「はい。」
律「動けないから…飲ませて?」
澪「ったく…今日だけだからな?」
ゴク…
紬「…!」ガバ!
傷を負ったのが信じられないほどに突然飛び起きた紬は律達を見つめる。
律澪「…!」
紬「…あ!どうぞ続けて。(ハアハア…!)」
澪「回復はや!」
律「つづけにくいわ!」
紬「ハアハア…!(気にしないで。)」
唯「ふお!いま何時!?」
薬が効いたのか、続いて唯も目を覚ます。
律「こいつもか!?」
唯「あーりっちゃんずるーい!澪ちゃん私にも飲ませて」
澪「やだよ!律も自分で飲め!はい!」
律「わ、わかったよ(久々に澪にあまえれたのになあ…)」
紬「唯ちゃん、私たちはもう少し倒れてましょ?」
唯「え?なんで?」
紬「久々に澪ちゃんにあまえれたのになあってりっちゃんが…!」
律「な、人の心を読むんじゃねー!」
紬の乙女レーダーはビンビンだった。
唯「りっちゃん…!」ニヤニヤ
律「な、なんだよ」
唯「邪魔してごめんね!
あいたたた!!!傷が開いて…!うう…」バタ!
律「いまさら倒れてもおまえらが騒々しいせいでもう動けるわ!」
唯「なんだ。」ムク!
紬「うふふ。」
ふああ~
喋るドア「まったく想像しい…落ち着いて眠れやしないわ……ふわああ─」
唯「ああ!!!」
律澪紬「鍵穴!!!」
喋る扉の口の中に鍵穴が見えた。
最終更新:2010年03月03日 00:57