アンセムレポート4
私はついに心だけの存在となり、ハートレスへと回帰したはずだが、何ら変化は無い。
確かに肉体は消滅した。
だが、他のハートレスとは違い、以前の記憶を持ち、ハートレスとしての姿にもなっていない。
まだまだ解明しなければならないことが多いということだ。
この世界では無い闇の側へ行くには、世界の心を繋げた場所、
キングダムハーツの扉の向こう側へと行かなければならない。
世界の心を繋げた奥、闇の世界へと繋がるその場所。
まだ知らぬ世界は数多い。
現存する世界。
闇の世界。
光の世界。
そして、狭間の世界。
真の楽園はどこに存在するのか?
アグラバー
到着した先は潤うことなき灼熱の都。
栄えているようだが人の気配を微塵も感じない。
影達に街を追い出されたのだろうか?
唯「だーれもいないね。」
澪「なんでだろう。」
キャアア!!
奇妙な静けさの中、女の悲鳴が響き渡る。
街の中心から聞こえたのがすぐに分かり全員が走りだす。
駆け付けると女の人が影達に囲まれていた。
唯「やっぱハートレスだ!」
律「よし、やろう!」
ここまでくると戦いにも慣れてきて一瞬にして影達を消し去った。
影に囲まれていた女の人は褐色の肌に漆黒の髪がよく似合う綺麗な人だった。
ジャスミン「ありがとう。私はジャスミン。アグラバーの王の娘よ。」
唯律澪「お、おお、お姫さま!?」
紬「?」
ジャスミン「そんなに驚かないで、姫様もあまりいいものではないわ。
それにいまやこの国はジャファーのもの…」
唯「ジャファー?」
律「あ、私たち少し離れた所から来たからこの辺のこと知らないんだ。」
ジャスミン「そうだったの。じゃあ教えておかないと危険ね。
この国の大臣のジャファーが邪悪な魔力を手に入れて
アグラバーを支配したの…」
紬「街の人がいないのもそのせいかしら?」
ジャスミン「そうよ。みんな追い出されて…中には殺された人もいたわ…」
律「ひでえ…そいつは何が目的なんだ?」
ジャスミン「えっと―」
「ジャスミン!悲鳴が聞こえたけど大丈夫か!」
そこにジャスミンの知り合いの青年が現れた。
しかし格好を見る限り同じ王族の人ではなさそうだ。
ジャスミン「ええ大丈夫よ。彼女たちがあの怪物から助けてくれたの。」
「ジャスミンを助けてくれてありがとう」
唯「誰?」
ジャスミン「彼はアラジンよ。この間ジャファーに捕まった時助けてくれたの。」
アラジン「アルって呼んでくれ。」
それに答えてみんなも自己紹介する。
ジャスミン「そうだ!彼の目的を思い出したわ!
ジャファーは確か鍵穴を探していると言ってた。
あと私を捕まえて何かに利用しようとしている。
でもどちらも何の事だかよくわからないの。」
「お喋りな小娘だ。」
不意に背後から声が聞こえた。
振り向くとそこには明らかに悪そうな目つきの男が立っていた
ジャスミン「ジャ、ジャファー!」
ジャファー「ジャスミン姫、あなたにはもっとふさわしい場所を用意しております。
もっとふさわしい人間も―」
アラジン「ジャスミン逃げろ!」
ジャスミン「う、うん!」
タッタッタ!
唯「いっくよー!」
ジャスミンが逃げたことを確認するとそれぞれが戦闘態勢に入った。
ジャファー「ほう…おまえが鍵を持つ少女か。」
ジャファー「ここで始末しておきたいところだが…今はジャスミンが先だ
なにせ我々の鍵は彼女なのでね…」
唯「鍵?」
ジャファー「おまえには関係のないことだ。やれ!ハートレス!」
ざわざわざわざわ…
今まで見たこともないような数の影達に囲まれた。
逃げ場は一切ない。
唯「ふお!」
律「は!?どんだけ出てくんだよ!」
澪「これってハートレスを操る力じゃないか…?」
紬「マレフィセントね。」
律「そうか!おまえがマレフィセント軍の一人か!」
ジャファー「さて…私はジャスミンを追うとしようか。」
唯達の問いに答えることはなくジャスミンの後を追って行った。
追いかけたいところだがまずは影をどうにかしなければならない。
アラジン「仕方ない…!こいつを使うか!」ササ!
まるで秘密兵器でも出すかのような口ぶりでポケットに手を入れる。
しかし何を出すかと思えばこじんまりとしたランプだった。
律「ら、ランプなんか出してどうすんだよ…」
アラジン「見てな!ジーニー!こいつらをおっぱらえ!!」
ポワワーン!!
アラジンがランプを擦りながら念じる。
すると青色の大きな魔人が姿を現した。
ジーニー「待ってたぜえ!一つ目の願いだな!」
アラジン「ああ!頼むよ!」
ジーニー「そーれい!!」パチ!
ポン!!
指を鳴らしただけで一瞬にして大群のハートレスが気持ちのいい音とともに消えた
律「指鳴らしただけであの数のハートレスが…すっげえ!」
唯「ゆ、指パッチン!」
アラジン「この魔法のランプを手に入れた者はランプの魔人に願いを―」
ジーニー「ハイハイハイハーイ!何を隠そうその魔人こそこのジーニーちゃんでーす!」
律「ははっ!なんか楽しい奴だな!」
ジーニー「ランプをこすればパパッと参上!なんでも願いを―」
アラジン「戻れジーニー。今は時間がないんだ。」
ジーニー「久しぶりの外なんだからそんないけずするn―」
スオオオー!キュポン!
唯「吸い込まれちゃった!」
アラジン「とりあえずジャスミンを探さないと!」
紬「私たちも協力します。」
アラジン「本当かい!?」
律「一応ジャファーは私たちの敵でもあるんだ。」
アラジン「助かるよ!ジャスミンに逃げ道を教えたのは僕だ。
行先は分かってる。ついてきて!」
そしてこの街に古くから存在する多くの裏道を進んでいった。
進んでいくとやがてジャスミンに追いついた。
しかし唯達よりも早くジャファーがジャスミンを捕えていた。
アラジン「この道は街に住む人でも知ってる人は少ないのに…」
ジャファー「いつまでもここの街のことを何も知らないと思ったか!
ここの世界の鍵穴を探し始めてずいぶんになるのだよ。」
アラジン「仕方ない。ジーニー、2つ目の願いだ。ジャスミンを助けてくれ…!」ボソボソ
ジャファー「さあ、いこうかジャス―」
ジーニー「ジャスミンはここだよーん!これくらいならお安い御用だ!」
ジャファーが振り返るとジャスミンはすでにジーニーによって助け出されていた。
しかしジャファーは不敵な笑みを浮かべる。
ジャファー「そうゆうことか…なら2つ目の願いはキャンセルだ!」
アラジン「どうゆうことだ!」
ジャファー「こうゆうことだ!」ササ!
なんと懐から出てきたのはさっきまでアラジンが手にしていたランプだった
アラジン「ラ、ランプがない…!」
ジャファー「ハートレスを使えば簡単なことだ」
ジーニー「ごめんよ…アル。」
ジャファーのしもべとなったジーニーは渋々ジャスミンをジャファーに引き渡し消えていった。
ざわざわ…
ジャファーの下にハートレスが現れた。
ジャファー「どうした、呼んでおらんぞ。」
ハートレス「ケタ…ケタケタ…」
ジャファー「ほう、×××から鍵穴の反応があったか…!」
律「鍵穴…!?」
唯「肝心な部分が聞こえなかった!」
ジャファー「さあジャスミン、ジーニー、行こうか。」
シュン…
ジャファー達は闇の回廊の中へ消えていった。
律「鍵穴にハートレス送られたらキングダムハーツが出て来ちまうな…」
万策尽きたかに思われたが澪が申し訳なさそうに口を開く。
澪「自信はないけど…たぶん魔法の洞窟って言ってたよ。」
紬「合ってると思う。私も自信ないけどそう聞こえたわ。」
アラジン「本当か!そこなら知ってる!急ごう!」
ピュー!
ビューン!
アラジンが口笛を吹くとどこからともなくじゅうたんが飛んできた。
唯「じゅうたん!」
アラジン「こいつは魔法のじゅうたんだ!ランプと同じ魔法の道具さ。
さあ行くよ!!!」
ビュウーン!
その魔法の絨毯はアラジンの掛け声とともにものすごい勢いで飛び出した。
―魔法の洞窟―
ジャファー「一つ目の願いだ!鍵穴を見つけ出せ!」
ジーニー「ほらよ」
パチ!
パアア…!
ジャファー「さすがだ!あれほど探した鍵穴がいとも簡単に!」
シュン…!
ジャファー「おお来たか…」
さすがだね。あとはハートレスを送りこむだけじゃないか。
ジャファー「それより勇者どもが我々の存在に気づいてるらしい。」
あの小娘どもが?
ジャファー「梓、といったか…あいつが情報を漏らしてるんじゃ?」
そんなことはないさ。着々と―
アラジン「見つけたぞジャファー!」
魔法の洞窟の一番奥にジャファーはいた。
どうやら手遅れにはなっていなさそうだ。
しかしそこにはジャファー以上の魔力をもつ魔女もいた。
律「もう一人つええババアがいるぞ…」
唯「ま、マレフィセント…!」
ジャファー、ここは任せたよ。この子は連れていくわ…
シュン…
その魔女はジャスミンを連れて闇の回廊へと消えていった。
律「まて!」
アラジン「ジャスミン!!」
澪「律!今は相手が少ない方がいい。」
律「確かにそうだな…」
アラジン「ジャファー!ジャスミンを返せ!」
ジャファー「そうはいかぬ。彼女は扉を開くセブンプリンセスの一人だからな。」
律「扉を開く…!?」
ジャファー「その扉の先をおまえたちが見ることはないがな。」
唯達が戦闘態勢に入る。
ジャファーは魔法のランプをこすりジーニーに最後の願いを言った。
ジャファー「ジーニーよ最後の願いだ!私をおまえと同じ無敵の魔人にせよ!」
ジーニー「うう…」
ジーニーが一番恐れている願いだった。
アラジンを苦しめることになる。
しかし体は言うことを聞かず願いを叶えてしまう。
律(そんなガキのお願いみたいなのもありかよ!)
唯「あ、あたまいい…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!
ジャファー「力が…湧いてくる!!!」
ジャファーは真っ赤な魔人となり魔力に比例してみるみる大きくなっていく。
律「やべえな…」
カラン…カラン…
ジャファーの体からランプが落ちてきた。
唯「あれ?ランプが落ちてきたよ?
澪「ジーニーのじゃないか?」
ジーニー「は…そんな趣味悪いのと一緒にすんなよ…」
みんな「まさか!」
唯「ん?」
ジャファー「なにをこそこそしている?」
みんな「www」ニヤニヤ
もはやみんなのニヤニヤは止まることを知らない。
律「これをみろー!」
唯「じゃじゃーん!ランプなのです!」
唯がランプをジャファーに見せつける。
しかしジャファーはまだピンと来ていない。
ジャファー「だからなんだ…あまりの恐怖に頭がおかしくなったようだな。」
律「おまえ言ったよな。ジーニーと同じにしてくれって!」
ジャファー「だからなん…あ!」
ジャファーはようやく気付いた。しかし時すでに遅し。
ジャファー「お、おいばかやめろ!」
澪「唯、ジャファーを封じ込めるんだ!」
唯「まって!!」
律「なんだよ…」
唯「ジーニーと同じってことはさ…」ニヤニヤ
ジャファー「な、何をする気だ…」
唯「溶けないアイスを一年分出せー!!!!」
ジャファー「ぐ、か、体がゆうことを…ぐああああ!!!!」
パチン!
ドシャアああ!!!!
唯達のしもべとなったジャファーが指を鳴らすとジャラジャラとアイスが飛び出した。
唯「うおほおおおおう!!!アイスウウウ!!!」
律「ゆい!ずるいぞ!私にも貸せ!」
紬「わ、私も使いたいな。」
律「む、ムギも?」
唯「おお、はいムギちゃん!」
律「ムギがどんなお願いするのか気になるな…」
紬「考えただけでも鼻血が出そう。」
律澪「へ?」
紬「りっちゃんと澪ちゃんを―」
唯「おおお!!!」
律澪「ちょっとまてええい!!!」
紬「百合百合にしてくぁwせdrftgyふじこlp;!!!」
ブシュウ!!!
バタ…
紬はあと少しというところで盛大に鼻血の噴水をあげて倒れた。
律「自滅してくれて助かった。」
澪「うん。」
唯「おしい…」
律「あ!?」
唯「お、おいしいって…!」
ちょっと見たかった唯でした。
唯「魔人ジャファーよ!ランプにもどれえええ!!」
ジャファー「もういやだああああああああ!!!!!!!」
スオオオオオオ!!キュポン!
唯「おもしろかったね。」
律「ほんっとアホだなあいつー!」
澪「とりあえず鍵穴を閉めよう。」
唯「まかせて!」
キュイーン…カチャ…
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
鍵穴を閉じると洞窟が崩れ始めた。
最終更新:2010年03月03日 01:02