図書資料館──────
律「ようやく4つ集まった……。しかし見事に誰にも合わないな。みんな死んだか脱出したのかね」
最後のナイトプラグをポシェットに入れる。
律「さっき唯の声が聴こえたのは……。」
何を言ってるんだ私は。ついに頭までおかしくなったか
田井中律
私は家族を助け出す、そしてアンブレラを潰す。私の意思で、私だけの力で
本当にそうだろうか
これは私の意思で、私自身が澪を遠ざけてるのだろうか。
あんなに大切だった澪の姿が霞んでいく
私はどこ向かい、何処へ行きたいのだろう
「見つけたわよ!律!」
律「あん?」
図書資料館の扉は二階一つ、これはやたら歯車がある部屋に繋がる。
そしてその下の二つの扉、一つは小さい扉、STARSの勤め所に繋がる。もう一つはノブの二つついた大きい扉、エントランスの二階へ出る。そこの扉前に彼女はいた
律「和か。久しぶりだな」
和「梯子を下ろしておいてくれたおかげで早く来れたわ。ありがとう律」
律「あんたの為に下ろしてわけじゃないよ」
和「あら、ならあなたの大好きな澪の為?脱出しやすいようにって」
ギリッ……
律「何が言いたいの?」
和「とぼけないで。私の部下を撃ったあなたにはS.T.A.R.S.で危険人物扱いされてるのよ!……何で…撃ったの?」
フフフ……
律は柔和に笑みを浮かべる
律「邪魔だったから。来い来いってしつこいんだもん。新手の誘拐の仕方だと思っちゃったよ」
和「律!!」
和が刀を抜く。
顔の表情は穏やかではない
嘗ての仲間に切っ先を向ける
律「やろうってんだ…私と」
どうしてこうなったんだろう
和「彼は私の大切な仲間よ。そんな彼を撃たれて黙ってられるわけない…」
唯は信じろと言ったけれど……!
律「こいよ、和」
今はこの道しかないのだから。その道に立ちふさがるなら仲間でも容赦はしない
和の刀の鎬(しのぎ)が図書資料館の電気に反射し光る、ジリジリと足を地面に滑らせながら律に近づいて行く。
律「そんな警戒することないだろ~?銃なんて出さないって。これで十分だよ」
律は腰からナイフを取り出す。コンバット式のサバイバルナイフだ。
和「なめられたもんね…」
律「あら~ん?怒りになりました?STARSの大尉殿」
和「今は少佐よ、おかげ様でね…」
律「そうでしたか少佐殿。」
和「悪く思わないでね…律(峰打ちで気絶させてから縛りあげて…それからは唯達と考えよう。)」
律「さっさと来なって……」
和から動き出す──。
カモシカの様に跳び駆ける。あっという間に律の前に来た和は刀の刃を逆にし、峰から横薙ぎに振るう。
律「っと!」
律はそれを屈んで避け、左手で持ったナイフを容赦なく和の左脇腹に目掛け突き込む────。
和「ぐぅっ」
左手で素早く鞘を持ちそれを盾にして律のナイフを防ぐ。
金属と金属のぶつかった澄んだ音が響く。
律「どうしたぁ?(やっぱりまだゾンビ犬にやられた傷が完全には治ってないか…)」
律は直ぐ様ナイフを右手に持ち換え、振り上げる様に切り上げる。それは和の頬をカスり眼鏡を跳ね飛ばす。
頬から切れ口から赤い一筋の血が流れる
和「っ……」
和は一旦バックステップで距離を取る、しかし読んでいた律はそれに並走している。
律「そうやってすぐ逃げる癖は変わらないな和」
和「なっ……このっ!」
和はまた刀を横薙ぎにしようとするが、
律「遅いよ……」
それよりも早く律は和の腕の内側に入り当て身をし、体勢を崩す。
和「(早い…っ)」
このまま倒れれば尻餅をついて終わる、ならと和は体を反り手を先について足を戻す。
早い話がバク転である。
律「お~凄い凄い」
律はふざけた風に手を叩いてみせた
和「(私がナイフ一本の相手に押されてる…。いや、違う…遠慮してるのね。唯に、澪に…みんなに)」
頬の血を右腕で拭う。言葉で語るより命を交えた方が彼女の気持ちがわかると思いしかけたけど…彼女は本気だ。本気に私を殺しに来ている。それだけの理由があるのだ
ならばその理由を聞き出さない限り本当の殺し合いになる
それは和にとっても唯達にとっても不本意だ。だから会話で揺さぶる
和「律、あなたの家族がアンブレラに人質にされているのは知ってるわ。」
律「……誰から聞いたの?」
和「梓がレオンから聞いたらしいわ」
律「…………そう。だから?」
和「私も協力する。だから一緒に来て。全て終わった後に罪を認めて欲しいの。これは唯も梓も同じよ。あなたが人質を取られたり色々あったことで心を病んで一人で背負い込んで……。でも!あなたには仲間がいるじゃない軽音部の仲間が!一緒に助けよう律!」
律「……和。」
ありがとう、でもこの言葉が言い放たれることはなかった。
朱色がかった律の目一気にが紅くなる。
律「仲間なんて物は所詮使う為にしか存在してないんだよ。自分が生き残る為に誰かを犠牲にしてそれを正当化して、本当に…本当に自分を救うのは自分だけ。自分だけなんだ」
和「なら何故あなたは命がけで澪を守ったの!?」
律「澪……その名前を呼ぶな……」
和「律!!」
律「うるさいっ!」
ナイフの柄の下が開きそこから銃口が覗いている。
和「パトリオットナイフ!?」
パァン!!
銃弾は和の右肩に当たりそこから血が噴き出す。
律は走ってエントランス二階へ続く扉へ
和「くっ、逃げるの!?律!言い返してみなさいよ!あなたは!軽音部の部長でしょうが!」
バタン───
その必死の声も、和以外誰もいないこの図書資料館で虚しく残響を残すだけだった。
署長室前───────。
パァン!!
澪「銃声!?」
ハンク「近いぞ!」
澪は署長室と逆方向、銃声のした方へ走る。
ハンク「待て澪!あぶねぇって!」
追いかけるハンク。
澪「はあ……はあ……」
エントランスの二階へ出た、銃声はどこから……!?
辺りを見回してると奥の大きな扉が開く。遠くからでもそれが誰かわかった
澪「律ぅ!!!」
澪は大声で叫んだ。エントランス内に澪の声が木霊する。
律「…………くっ…」
律は頭を抱えながら走り中央の梯子で一階に降りていく
澪「待って!律!話が…」
澪も中央へ走り梯子を降りようとすると、銃声が響く。
澪「律……」
それは律が放った物でコルトから弾き出さた薬莢が地面にに落ちカランと音をたてた。
律「はあ…降りて来るな……!」
そのまま銃を構えたまま後退る律、
和「待って!律!」
さっき律が出てきた扉から肩を抑えながら和が出てきた。
律「っく……」
律は走り警察署の出入口の左側のドアへ消えて行った…。
澪「律……」
律も気になる……けど今は!
澪「和!大丈夫?!」
血を出して倒れ込んでいる和の元へ駆け寄る。ちょっと前なら構わず律を追ったかもしれない。けれど今は違う、大切なのは律だからじゃないってことを気づいたから。仲間だから大切なんだよ、律
和「その声は…澪?……久しぶり……ね。」
息が荒い、でも出血はあまりしてないようだ
澪「手当するから服を脱いで」
和「わかった……けど……チラ……」
『ターンターンターンタタターンタタターンターンターンターンタタターンタタターン』
ハンク「自分マスクつけてるんで全く見えてないっす!」キリッ
澪「ハンク、律を追ってくれ」
ハンク「律ってあの茶髪か?でもな~俺はこっちの子の方が好みだし今からヌード(ry」
澪「マスクの空気口増やされたくなかったらさっさと行け」
ハンク「はいぃぃぃ(みーちゃんドSだなぁ……まあそこもいいんやけど)」
ハンクが一階に降りたのを確認してから和のSTARSの制服をはだけさせる
澪「この傷……律にやられたの?コルトにしては傷口が小さい」
和「律のパトリオットナイフにやられてね……油断したわ」
澪「律が……和を…」
律…あなたはもう変わってしまったの?律……
──────。
はあ…はあ…
後ろを振り返っても誰も追って来る様子はなかった。
律「澪……何で追って来ないんだよ…私が大切じゃないのか…?」
私より和の方が大切なんだ
律「違う!澪は私のことを……私の……」
自分から遠ざけた癖に何泣いてんだ私
律「澪のことは……もう忘れよう」
私は家族を助けないといけないんだ。いや…その前にあれを…いや…何だっけ…どうでもよくなってきた
律「変わったんだな……澪」
不意に呟いてしまった言葉
寂しいけどこれでいい、これ以上危険なことに彼女を巻き込みたくないから
ほんとにそれでいいの?
律「うるさい…!あんたがこうしたんだろ!田井中律!」
…
澪「弾は取り出したからこれで大丈夫だと思う。」
和「ありがとう澪。ついでで悪いんだけど眼鏡取って来てくれない?私眼鏡ないとほとんど見えないから…」
澪「…わかった。」
図書資料室に入り転がっている眼鏡を拾い上げた。
しかし右側の耳に掛ける部分がポロりと取れ落ちた。眼鏡のレンズには若干血がついている
澪「律……!」
怒りにも似た想いを胸に押し留め、和にこのことを伝える
和「そっか。スペアはあんまり使いたくないけど」
どこかから取り出した下のフレームが赤い眼鏡。和のトレードマークだ
二人はここに来た経緯や出会った人物、今の状況などの情報を交換し合った。
そして話題は律の話へ移行していく。
澪「和……正直に話してほしい。律は本当に和の部下を撃ったのか?」
和「直接見たわけじゃないから100%とは断言出来ない……けど撃たれた部下が茶髪で灰色のコートを着ていた女の子に撃たれたと…言っていたの。」
澪「……そう。」
澪は大きく息を吐いた。
和「でもね澪。私はさっきの戦いで確信したわ。あれは律じゃない」
澪「……そうだよね」
和「違うの澪。そのままの意味よ。律そのものじゃないの」
澪「どう言う意味?」
和「戦ってる時とあなたの名前を出して揺さぶった時の差が激しすぎるのよ。何か自分を抑えきれてなかった…そんな感じだった」
澪「抑えきれ……」
そう言えば自分にも覚えがあった。唯を叩いた時だ。
自分の行動を正当化するつもりはないがあの時はそれを抑えることが出来なかった。
コップいっぱいに入った水の中にコインを入れるような行為。溢れるのがわかっていても入れなきゃ駄目だって思ってしまう。
澪「変な能力……赤みがかった目……性格の変化……まさかこれって」
澪の中で三つの出来事が繋がっていく
澪「そうだ……確かにそれなら辻褄が合う…何かも!」
こんな状況下なのに何故その選択肢を除外していたのだろうか
こんなウイルスが溢れるこの場所で
一気に推理はkskする
和「??」
澪「いやでも……」
律は完全抗体者だ……かかるわけが…でも
澪「和!唯は確かにTウイルスに汚染されたの?」
和「え、えぇ…。今はもう元気でそろそろこっちに来ると思うけど…」
澪「それは良かった。」
となるとある状況化だと完全抗体者でもウイルス感染はありえる…でも律はゾンビ化していない。 なら他のウイルス…?確かベンの資料にGウイルスとか…
和「言うか迷ったんだけど…律はアンブレラに家族を人質に取られているらしいわ。何かを探してるって聞いたけどそれに関係するのかもね…(本当は澪や唯の家族もだけど…これは言わない方がいいわね)」
澪「家族を……?それをずっと……私達に黙って…一人で……」
あのバカ律っ……!
気づけば私は走り出していた。
和「澪!」
澪「ごめん和!後で迎えに来るから!」
和「私なら大丈夫よ。大した怪我じゃないし、行ってあげて」
澪「うん……!」
もう迷いはなかった────。
律を説得する
澪がエントランス一階に降りるとハンクが待っていた。
ハンク「やっこさん見失っちまったぜ」
澪「バカハンク!律がどこへ行くのかわかればいいんだけど……でも何でこっちに戻って来たんだろう」
律の目的は下水道の先にある筈だ。じゃないと私達にわざわざついて来たりしない……。そして下水道へ行く道はあの犬舎からだけ…
澪「ハンク!犬舎に戻ろう!そこに律がいる!」
ハンク「えっ…署長室は行かなくて…」
澪「それは後!」
澪はハンクを置いて走り出した。
警察署前────
唯「思ったより早くついたね~。やっぱり車は偉大だよぉ」
梓「……」
唯「盗んだんじゃないよ?!警察官は緊急の場合借りられるのだよ梓君!映画とかでもやってるしさぁ~」
梓「……」
唯「あずにゃん?」
梓「は、はい!?何ですか?」
唯「どうしたの?時計塔出てからおかしいよ?」
梓「いえ…少し考えをまとめていただけです。それで何の話でしたっけ?」
唯「警察官は市民の味方って話だよぉ。さ、入ろうあずにゃん」
梓「はい(また奴が居たり…いや…あれは…)」
二人は本日二度目のRPDの門を潜った。
唯「う~んみんなはいないみたいだねぇ」
梓「もう地下から脱出したのかもしれませんね」
───────。
最終更新:2010年03月05日 02:55