小さな部屋の一番奥に、彼女はいた。
歳は10~12歳ほどか、髪は綺麗なブロンドで白いジャケット、下は紺のスカートと言う清楚な格好だ。胸にさげているペンダントを大事そうに持っている


澪「(こんな幼い子がなんで……)あなたのお名前は?」

少し屈み目線を合わせながら話す

ハンク「(澪かわえぇ…)」

シェリー「シェリー…シェリー・バーキン」

澪「シェリー、いい名前ね。お父さんとお母さんは?どうしてあなたはここに?」

シェリー「お父さんは知らない…お母さんがここに行けば安心だからって…」

澪は律を襲っていた怪物を思い出す

澪「……(確かに外よりはゾンビの数は少ない…けど他にもあんな怪物がいるのにこんな場所に一人で来させるなんて…)」

シェリー「お母さんもどこにいるのかわからなくなっちゃって…」

ハンク「ひでぇ親もいたもんだ」

シェリー「ダース…ベイダー?」

ハンク「残念ながらライトセーバーはないけどな」

澪「シェリー、あなたはこれからどうしたい?」

シェリー「えっ…?」

澪「私達と一緒に両親を探さないか?」

シェリー「でも…怖い…」

澪「お姉ちゃんが絶対守るから大丈夫!」

シェリー「本当に?」

澪「約束するよ」

澪は小指を立てた手をシェリーの前に出す

シェリー「な、なに?」
澪「約束する時はこうして小指と小指を絡ませながら…嘘ついたら針千本のーます、指きったってやるんだよ」
シェリーの手を持ちながら説明する澪。まるでシェリーを妹のような眼差しで見ている

シェリー「約束げんまん……」

澪「そう。約束」

シェリーは少し悩んだ後に、首を縦に降った。

澪「じゃあ行こうかシェリー。お母さんとお父さんを探しに」

シェリー「うん!えっと…お姉ちゃんは…」

澪「私は秋山澪。澪でいいよ。こっちはハンク。ダースベイダーでいいよ」

ハンク「それ押すねぇ澪っちwww」

シェリー「澪お姉ちゃんにハンクさん、よろしく!」

死神チームは新たにシェリーが増え三人となった。

とりあえずここにいても埒があかないので部屋を出ることにした三人


ハンクが澪に近寄り小さな声で囁く

ハンク「(しかしいいのか?この子の両親探してる暇があんのかよ?)」

澪「(ないけど…このまま放ってはおけないだろ)」

ハンク「(それはそうだが……)」

シェリーは健気にハンクと澪の後ろをついてきている。

ハンク「(確かに……放ってはおけないか。あっちのメンバーが見たりしてるかもしれないしな。まあ生きてればの話だが)」

澪達が署長室へ戻って来た時だった。

「なんだ?お前達は。勝手に私の部屋に入ってるとは無礼な奴らだな」

澪「まさか…」

RPD署長、ブライアン・アイアンズ


中年太りしている男が偉そうに椅子に腰掛けながらこちらを見ている。

ブライアン「で、何の用かね?こんな非常時に」

澪「勝手に入ったのは謝ります。私は秋山澪って言うフリーのライターです。少しお話を聞かせてくれませんか?」

ブライアン「ふん、意地汚いジャーナリストか。どうせこの街についてとかだろう?私だって知りたいさ」

澪「じゃああなたはこの事件に関係ないと?」

ブライアン「それはどう言う意味かね?心外だよそんな言われ方をするとは」

澪「ベン、ベン・ベルトリッチと言う人物をご存知ですよね?」

ブライアン「ふん…あのジャーナリストの恋人か何か?奴なら地下牢にぶちこんである。助けたいなら好きにしろ」

澪「違います。ベンはもう死にました…。それでベンはこの事件の真相を暴くことを私に委ねたんです。ベンの資料であなたがアンブレラに関わっているのは知っています」

ブライアン「……なるほどな。私が今回のこと馬鹿げた騒動を起こした張本人だと君は睨んでるのかお嬢さん?」

澪「張本人、じゃなくとも荷担しているんじゃないか、と私は言いたいんです」

ブライアン「くくく…なるほど、二流だ」

澪「なっ」

ブライアン「お嬢さん、私はね、この警察署が好きだ。ここの署長になるために何年も何年も苦労してようやくなった私がこんな全てを無に帰す事をして何の特になると言うのだ?」

澪「それは…」

ブライアン「さっきから憶測で物を語りすぎ何じゃないかね君は?人の残した資料を見ただけで人を犯人と断定するとは侮辱も甚だしい」

澪「でも!ベンは…!」

ブライアン「話がそれだけなら帰ってくれ。私は最後をこの警察署で迎えると決めている」

これで大抵の人間は騙し仰せるだろう、だがこちらには神がいる

死神と言う名の
彼にとっては死臭をかぎ分けることなど造作もなかった


ハンク「ククク……あんた嘘つきだね。ならその机の下に隠している死体はなんだ?」


ブライアン「くっ……」

ハンクは机の下から少し見えていたヒールの踵を見逃さなかった

ハンク「あんた剥製が好きみたいだな?あっちにもいっぱい飾ってあったよ。大方彼女を剥製にしたくて荷担したんじゃないのか?」

ブライアン「何を!」

ハンク「なら何故首を跳ねない?脳みそを潰さない?でなければ彼女はゾンビとなって襲ってくるだろうに。あんたは知ってるんだ、そうならないと。血を抜いて殺したんだろ?いくらウイルスでも死んだ人間は生き返らないからな。
それに剥製にするには血を抜かないと腐っちまうからなぁ!」

ブライアン「貴様ァ!」

ブライアンは机の引き出しから拳銃を取り出す。澪と同じデザートイーグルだ

ハンク「シェリー、下がってろ。」

シェリーは頷くとハンクの後ろへ隠れた。

ブライアン「バーキンの娘か、父親が化物になってこの警察署をさまよっていると言うのにのんきなもんだ」

シェリー「えっ?」

澪「どう言うこと!?」

ブライアン「お前達も会ったかもしれんがあの化物はウィリアム・バーキン、そこのシェリー・バーキンの父親さ。奴は自分自身の研究していたGウイルスを自らの体に射ち込み化物になったのさ!」

ハンク「てめぇ良くも娘の前でそんな事を!」

ブライアン「何を言ってるんだ?良く見たら貴様USS隊員ではないか!ウィリアムをそうした張本人のお前達がよくもそんな事を言えたものだな!」


ハンク「なに……?」

ブライアン「アンブレラの工作員、USSの隊員が知らないわけないだろう?お前達はウィリアムからGウイルスを奪うためにここに派遣されたのだから」

何を言ってるんだこいつは

ブライアン「そちらのお嬢さんは随分アンブレラを憎んでいるようだが…じゃあ何故こいつといるんだ?こいつは憎いアンブレラの工作員だと言うのに」

澪「えっ……」

やめろ……やめてくれ

ブライアン「はっはっは!こいつは傑作だ!お互い何も知らないまま仲良くこんなところまで来るとはな!」

偽りの仮面がついに、剥がれ落ちた


澪「ハンク……本当なの?」

ハンク「…………」

澪「ねえ何か言ってよ!!」

シェリー「お父さんが…あの化物…?」

ブライアン「さて、そろそろお別れの時間だ。楽しい茶番をありがとう諸君」

銃を構えるブライアン。

ブライアン「冥土の土産に教えてやろう。この事件には私は直接関係していない。これは本当だ。アンブレラと結託しているのは本当だがあくまで場所を提供しただけに過ぎない。どこからウイルスが漏れたかは知らないが私も迷惑していたのだよこの珍事には」

澪達の頭にはもうそんな言葉は届いていない

ブライアン「さて、話は終わりだ。誰から死んでもらうとしよう」

確か澪とか言ったな。彼女は美しいから私がたっぷり可愛がった後に剥製にしてやろう

ふふふ、ははははは!




Gチーム、うんたんチーム─────

4人は下水処理場から奥へ進み、天井から下水が噴射されてる所で立ち止まっていた。

唯「この下水道の地図によると研究室へ繋がる道はこの先だね」

律「さすがに頭から被るのは…なあ?乙女としてのプライドってもんが許さないよなそれを」

和「下水道をジャブジャブ進んでる時点でそんなプライドないけどね」

梓「スカートが濡れて冷たいです……」

唯「何かこれにオオカミのメダルとオオワシのメダルを入れると止まるらしいよ~」

律「メダルって言うとさっき仏さんが持ってたこれか?」

律はポケットから出した銀のメダルを落とし口に入れる。


すると手前の噴射口から下水が止む。だがその先にもう一つ下水が噴射してる。

律「なるほど、次にオオワシのメダルを入れれば下水は止まるわけだな」

梓「それを探すより少し濡れるのを覚悟して突っ切った方が早くないですか?」

和「それはおすすめ出来ないわね。この下水もかなりの汚染されている水な筈よ。触るぐらいならなんともないと思うけどこのまま突っ切ったら必ずびしょ濡れになる。当然頭なんかも……それが口に入り唾液と混じって飲んでしまったら……」

梓「そ、そうですね!メダル探しましょう」

耐性がない梓にとってはとても怖いことだった


和「じゃあせっかく二チームに別れてるんだから二手に別れましょ。私達はこの巨大なファンを通って下水管理室の方を探してみるわ」

唯「じゃあ私達はあっちの青いハーブがたくさん生えてた所に行ってみるね」

各々捜索を開始する。

律「気を付けてな~唯、梓」

梓「はい」

唯「りっちゃんもね~」

和「捜索時間は1時間ね。一時間経っても見つからないならおとなしくここへ戻るって来る、いいわね?時間は体感に任せるわ」

梓「わかりました。」

そうして二人と二人は別々の方向へ向かって歩き出した。




Gチーム─────

梯子を登り大きいファン内部をくぐる二人。

律「くせぇ…それになんか出そうだな……」

律は鼻を摘まんだまま話している。ファンの内部はあちこちが腐食しており異臭を放っている。

和「我慢しなさい。こことあそこしか道がないんだから」

律「あっち選んでてれば良かったじゃん…」

和「そうね。(唯にそんなことさせられない…とか言ったら律は怒りそうね)」


ファンの内部を進んで行く二人。

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

律「な、なぁ和。あそこ一帯……何か動いてないか?」

和「き、気のせいよ。疲れてるのよ律」

律「だ、だよなぁ……あんなデカい゛あれ゛……いないもんなぁ」
カサカサカサカサカサカサカサカサ


二人とも自然と早足になる

律「上見るなよ絶対」

和「えぇ死んでも見ないわ」

しかし次の瞬間カサカサは、バサバサに変わるのだった。

一匹律達の靴の大きさ大ほどもあるゴキブリが二人に向かって飛翔する。

たまらず二人は走って向こう側の梯子を降りるのだった。

ゴキブリに好かれている二人だった
Gチームだけに


律「あのゴキブリ共絶対バルサンで燻してやる……」

和「バルサンで死ぬのかが謎だけど……」

下水道の管理室にたどり着いた二人は早々に目標の品を発見する。オオカミのメダルの様に死体が握りしめていた。ここの管理人だろうか、大事そうに手に持っている

律「これってオオワシのメダルじゃないか?」

和「そうみたいね。ゴキブリの中を駆け抜けた甲斐があったわね……」

律「ごめんなさい…、私達は前に進まないとならないから」

そう言い死体からメダルを取る律。

どうやらゾンビ化はしてないようだ

律「さて、戻るか」

和「物凄く気が重いけれどね……」

律「こうバッと行けば大丈夫だよ!きっと……」

和「そうね……」

二人は足取り重くファンの前の梯子へついた時だった。

律「あれ?ファン回ってるぞ」

和「おかしいわね、さっき来た時は回ってなかったのに」

律「ここに何か書いてるな、何々」

1時間事にファンは回転します。点検の為にファン内部に入りたい場合バルブハンドルを差し込み、回し止めてください
また、止めたファンを回したい場合は左へ、止めたい場合は右へバルブハンドルを回してください


和「と言うことは次にファンが止まるのは一時間後ってことね……。」

律「それだと唯達かなり待たせちゃうな」

和「バルブハンドルを探しましょう。ここに使うってことはそう遠くない所にある筈よ」

律「了解」

二人は管理室に戻りバルブハンドルを探す。

和「ないわね……あの穴の形を見る限り結構大きいバルブハンドルだと思うんだけど」

律「……和、私がこんなこと言うのも変だけど…肩……大丈夫か?」

和「えぇ。もうそこまで痛みはないわ」

律「そっか……。」

和「律、ここへ来る前にも言ったけど…いいのよもう」


律「そう言ってくれるのは嬉しい…けどやっぱりその傷を見る度私は……」

和「似合わないわね。あなたはみんなの為に笑ってあげて。私なんかの為なんかにそんな顔をしなくてもいいのよ」

不意にこぼれてしまう本音

律「そんな…自分を安く言うなよ!」

ずっと抱えていた不安が止まらない

和「…………。いいの、私も気づいてるから。あの中で一番どうでもいい存在は私なんだもの」
みんながあなたを助けようと頑張ってるのが羨ましかった……

律「そんな……ことない…」

和「……、私は強いからって誰も頼れない。S.T.A.R.S.で、みんなを守る側だから…こんな顔を見せられない…。」


律「なら、私を頼ればいい」

和「律を…?」

律「その傷の償い…何て言ったらおこがましいけどさ。みんな誰かを頼って誰かに頼られて、そうやって成り立ってると思うんだ、私は。だから和が誰も頼れないなら私を頼ればいい」

和「誰かを頼って…誰かに頼られて…」

律「和は確かに凄いよ。その歳でもうSTARSの少佐で人望も厚い。けど…それが和を孤独にしていってるんだと思う」

和「……。昔はね、ずっと唯だけが親友だったの。唯だけが私の理解者で……でもそんな唯にもあなた達みたいな良い友達が出来た。それ自体は凄く良いことだと思った。けれど……その度に私が薄れて行くのがわかったの。それがずっと…ずっと…辛かった」


和「唯にはいいことだと思ってるの…大切な友達が出来ること…でも…心の中で素直に喜べない自分もいるのよ…」

律「……高校二年の時、覚えてるか?澪だけ2年1組になってさ、和と同じクラスになったじゃん」

和「そう言えばあったわねそんなこと。三年ではみんな一緒だったから忘れてたわ」

律「その時さ…澪と仲良くしてる和に…ちょっと腹がたった。多分…嫉妬だったのかな。でも私と和ってそこまでの仲じゃなかったからさ…そのイライラを澪にぶつけてライブ前に喧嘩しちゃっておまけに風邪までひいちゃってさ」


和「律……」

律「だから和の気持ち凄いわかるんだ。」

和「律はどうしたの……?仲直りできたの?」

律「簡単なことだよ。その澪と仲のいい友達とも仲良くなればいい。同じ友達になればいいんだ。和は大切な人に優先順位をつけてる、トップは唯だろ?」

和「うん……」

律「友達はみんな大切なんだ。確かに付き合い長いとちょっぴり贔屓しちゃうかもしれないけどな!澪なんてやっぱり私にベタベタだし」ニコ

律「それじゃあ私の言ってること本末転倒か。まあ私が言いたいことはこういうこと」

律は和を抱き締める

律「私の、友達になってください」

和「なっ」


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最終更新:2010年03月05日 03:02