雲一つないよく晴れた夏の暑い日
ずっと前の方に見慣れた後ろ姿を見つけて走って追い掛ける
律「澪ーっ!はぁはぁ…おはよう」
澪「おはよう。走って追い掛けてきたのか?」
律「まぁね、あっついあっつい」
数十メートルもなかったと思うけど、全力で走ったからさすがに疲れた
呼吸を整えて胸に手をあてると心臓が8ビートを刻んでた
律「今日は朝からあっついなー」
澪「あんな走るからだよ、お前は小学生か」
律「でも私が走って追い付いて来なかったら澪は一人ぼっちで登校だったんだぜ」
澪「私は一人で登校しても別に寂しくない」
律「またまた強がっちゃってー」
澪「そういう律が一人ぼっちで登校が寂しいから走って追い掛けてきたんじゃないか?」
律「ないない、私だって一人ぼっちで登校でも寂しくないし」
唯「おーい、澪ちゃんりっちゃんおはよー!」
律「おう!唯おはよ」
澪「おはよう」
唯「今日も2人で一緒に登校なんてラブラブだね、朝から暑いのは2人のせいだね!」
澪「ラブラブなんかじゃない!暑いのは夏だからだろ」
律「唯はいつもラブラブな憂ちゃんがいないな?だらけ過ぎてついに捨てられたか」
唯「憂は日直だから先に行っただけで捨てられてなんてないもんね」
唯「今日のムギちゃんのお菓子なにかなぁ…暑いからアイス食べたいな」
澪「アイス持ってきても放課後までに溶けちゃうよ」
唯「クーラーボックスだっけ?あれに入れてくるとか」
律「小学生の時に試験管にいれたジュース凍らせてアイス作ったりしたよな」
澪「そういえばそんなのしたなー」
唯「なにそれ!?私そんなのやったことないよ」
律「なんだ唯のいた学校はやらなかったのか」
唯「今度学校にジュース持ってきて勝手に作ってみよう」
澪「怒られるぞ」
唯「やっぱり?」
私達3人はそんな他愛もない話をしながら学校までの道程を歩いた
教室に着くとムギはもう来ていた
紬「あ、みんなおはよう」
律「おはようムギ、今日も早いな」
唯「ムギちゃぁんアイスとかないよね?」
紬「アイスクリーム?持ってないわ」
唯「やっぱり……今度アイスも持ってきてー」
澪「コラッ、ムギにばっかり負担かけるなって」
唯「えへへ、ごめんごめん」
律「唯はほんとにアイス大好きだな」
唯「うん!アイスは私の命の源だからね」
長かった午前中の授業が終わった
日が昇っていくとともに暑さも増していき授業にはまるで集中できなかった
涼しい日もとくに授業に集中はしていない気もするけど…
律「ゆいーアイスでも買いに行こうぜ」
唯「いいよー、でもアイスどこに買いに行くの?」
律「近くのコンビニでいいかな」
唯「外出だね、なんかワクワクするね」
澪「ちゃんと外出届書いて行けよ」
律「めんどくさいし書かなくていいだろ」
唯「書かない方がなんかワクワクするしねっ」
律「では行くぞ!唯隊員!」
唯「オッケー!りっちゃん隊員!」
澪「あのバカ2人…」
紬「2人ともとっても楽しそうね」
和「唯達走ってどこか行ったけど、どうしたの?」
澪「アイス買いに行くんだって」
紬「私達は先にお昼ご飯を食べてましょう」
和「そうね」
律「よし…誰もいないみたいだな…行くぞ唯」
唯「了解…」
唯「ねぇりっちゃん…なんでダンボールなんて被って行かなきゃダメなの?」
律「見つかったら怒られるからな、隠密といったらダンボールって決まってるだろスネーク」
唯「でも暑いし歩きにくいし逆に目立ってる気がするよ」
律「校門を出るまでなんだから我慢だ我慢」
教師「そこのダンボール何してる!」
律「やべぇ見つかった!」
唯「逃げようりっちゃん」
唯「アイスのために捕まるわけにはいかないよー」
律「やっぱり外出届書いてくればよかったな」
教師「待てお前ら!」
律「こうなったら…くらえ太陽拳!」
教師「うわっ…目が、目がぁ!」
唯「おぉ!りっちゃんすごーい!」
律「ほら早く走るぞ」
唯「ほ、ほいっ!」
澪「ムギにどれだけ負担かけるんだよ」
唯「ダメかなぁ?」
律「さすがのムギでもそれは難しいだろう」
唯「学校の中にアイス屋さんとかあればいいのになぁ」
律「なんとか逃げ切ったな…」
唯「無駄に汗かいて疲れただけだった気がするよー」
律「でも苦労して食べるアイスは格別にうまいぜ」
唯「そうだよね、それに…」
いらっしゃいませ―…
唯「コンビニに入った時の涼しさも格別だよ」
律「幸せや…」
唯「アイス何にしようかな…」
律「私はパピコにしようかな」
唯「ここは贅沢にハーゲンダッツ!でもやっぱりたくさん食べたいからガリガリ君!」
律「たくさん買ったら食べる前に溶けるぞ」
唯「そうだよね、じゃあガリガリ君2本くらいにしておこうかな」
律「話聞いてたか?」
唯「ちゃんと聞いてたよー!溶ける前に2本一気に食べるもんねー」
ありがとうございました―…
唯「食べながら帰ろう」
律「ほんとに2本同時に食べるんだな」
唯「ほいひいほー」
律「くわえながらしゃべるなよ」
唯「はっへはひゃくはべにゃいひょほけひゃうひょ」
律「なに言ってるか全然わかんないよ」
唯「んー………早く食べないと溶けちゃうよって言ったんだよー」
律「分かるか!」
唯「おおうっ!やったー当たりだ!ラッキー」
律「なんだ運がいいやつだな」
唯「えへへー学校帰りに取り替えようっと」
「募金おねがいしまーす」
律「ん?」
街角で一団が呼び掛けている
なにやらアメリカで心臓移植をするための募金らしい
唯「あー!私募金してくるー!」
そう言って唯が走り寄っていく、まさかガリガリ君の当たり棒を渡したりしないだろうな
唯ならやってもおかしくない気がする…アイスは命の源って言うくらいだからな
唯「ただいまー行ってきたよー」
律「まさかガリガリ君の当たり棒渡したりしてないよな?」
唯「そんな事してないよー当たったからガリガリ君分のお金募金してきたんだよ」
律「唯のくせにいいことしてんな」
唯「えっへん!」
偉そうに軽く背伸びして得意げな顔をする唯に触発されてか
ほんの少しだけど私もさっきのお釣りを募金してきた
「ありがとうございます!」
とくにこの人が助かってほしいと思って募金したわけでもない
学校を抜け出してアイスを食べてる罪滅ぼしのつもりで募金したのかな…
それでも学校を抜け出したのが無しになる訳はなく戻ってからきっちりと怒られた
放課後は音楽室でいつものように5人でテーブルを囲みティータイムをしていた
澪「だから外出届を出していけば怒られる事もなかったのに…だからバカ律なんだよ」
律「澪にはこのロマンはわかりませんよだ」
梓「昼休みに窓から見てましたけど、あのダンボールの中って唯先輩と律先輩だったんですね」
唯「完璧な擬態だったでしょ!」
梓「いえ、めちゃくちゃ目立ってたしバレバレでしたよ」
唯「あずにゃんも今度一緒やろうよーメタルギア」
梓「嫌です」
紬「私はやってみたいわ、とっても楽しそうだもの」
律「ムギなら光学迷彩服とか準備できそうだよな」
澪「さすがのムギでもそれは無理だろう」
紬「用意はできるけど、私はそんな物よりダンボールに隠れたいわ」
澪「用意できるのかよ」
梓「それより皆さん練習しましょうよ、このままじゃまたダラダラタイムになっちゃいます」
澪「そうだな、そろそろ始めるか」
律「えーっ!もうちょっとティータイムを…」
澪「ダメだ!練習するぞ練習」
ジャジャーン♪
澪「うん、なかなかだな」
澪「あとふわふわ時間をあわせてみよう」
律「いくぜー!ワンツースリーフォー」
♪~♪~
唯「君を見てるといつもハートDOKIDOKI♪」
律「…う…………」
何か急に胸のあたりを突かれる感じがする…
唯「揺れるおも……あれ?」
澪「律?どうした?急に止まって」
律「…」
澪「律?」
律「ん?…あ、あぁ!どうした?」
澪「どうした?はこっちのセリフだよ、急に止まってどうしたんだ?」
律「あー…そっか、そうだよな!えっと…少しぼーっとしてた」
澪「なんだよそれ」
梓「律先輩しっかりして下さいよ」
紬「少し休憩した方がいいんじゃない?」
律「そうしよう、そうしよう」
梓「もう休憩ってまだあまり練習してませんよ」
唯「私も少し疲れたから休憩したーい」
澪「しょうがないな、少しだけだぞ」
澪「そうだ、律さっきのドラムまた走り気味だったぞ」
律「疾走感があってカッコよかっただろ?」
澪「何言ってるんだ、リズム隊はリズムが命だろ」
律「いや、勢いだよ勢い!勢い命だ」
澪「リズム」律「勢い」澪「リズム」律「勢い」
紬「2人とも相変わらず仲がいいわねぇ」
澪律「どこがだよ!」
唯「息ピッタリじゃん」
紬「そういえば2人はどうしてそんな仲良しになったの?」
律「それは小学生の頃にいじめられてた澪を私が助けてからだな」
澪「捏造するな」
唯「あはは、りっちゃんってどちらかと言うといじめる側っぽいもんね」
律「失礼な、私はそんな悪いやつじゃないぞ」
紬「で、実際はどうしてそんなに仲良くなったの?」
律「それは~…あの時からかな?」
澪「あぁ、小学生4年生の時の」
紬「その話詳しく聞かせて!」
お茶を飲みながら私と澪は小学生の頃の思い出話をみんなに聞かせた
紬「澪ちゃんとりっちゃんが仲良くなったのにはそんなエピソードがあったの、いい話ねぇ~」
梓「律先輩、昔は良い子だったのになんで今はこんなになっちゃったんですか…」
唯「りっちゃんなら澪ちゃんにさらにプレッシャーをかけて潰しにいくくらいしそうなのに」
律「おいおい…」
紬「それで作文の発表はどうだったの?」
澪「律のおかげでうまくいったよ。それから律とよく遊ぶようになったな」
律「澪にいろいろ教えてあげたよな」
澪「ほとんどためになることは教えてもらわなかったけどな、ただ音楽を勧めてくれたのには感謝してるよ」
律「みおしゃん…」
澪「あと軽音部に誘ってくれたのにもな、誘われなかったら文芸部に入って今みんなとこうしてる事はなかったしな」
紬「澪ちゃん文芸部に入ろうとしてたのね」
澪「あぁ、律に入部届を破られて軽音部に無理矢理入らされたんだ」
唯「拉致したんだね、りっちゃんらしい」
梓「律先輩のくせにいい仕事してますね」
律「よし!じゃあそろそろ…」
梓「練習再開ですね」
律「帰るか」
梓「はい?」
律「なんか練習って感じじゃなくなったからさ、みんなで遊びに行こうぜ」
唯「いいねいいね、行こう行こーう!」
紬「私もみんなと遊びに行きたいわ」
律「よーし、過半数になったから遊びに行くぜー」
澪「まったく…仕方ないな」
律「梓は行かないのか?」
梓「澪先輩も行くならしょうがないです。私も行きます」
梓も渋々納得し部活を早めに切り上げみんなで遊びに行く事になった
唯「Under the name of Justice You can't break my soul♪」
紬「私カラオケって初めてきたわ」
澪「意外だな」
唯「Under the name of Justice Kill yourself♪」
律「ファーストフードもゲームセンターも駄菓子屋も行ったことなかったくらいだもんな」
梓「そうだったんですか?」
唯「Think you moran Fall out of line you cockroach♪」
紬「そうなのよ、みんなのおかげで貴重な経験ができたわ」
唯「The dark dark Sunday the blood stains You can't save yourself♪」
律「貴重な経験ってたいしたとこに連れていってないんだけどな」
紬「ううん、私にとってはすごく楽しい経験だったわ」
唯「The dark dark Sunday the blood stains♪」
澪「また今度時間をつくってムギといろんな所に遊びに行くか」
律「逆に私はムギが普段行ってる所に連れていってもらいたいよ」
梓「場違いになるからやめた方がいいと思いますよ」
唯「One day I will fuck your parents♪」
カラオケを終えて外へ出るとすでに日は沈み辺りは暗くなってきていた
唯「いやぁ!楽しかったね!」
紬「うん!またみんなでどこか行きましょうね」
梓「時間も時間ですし今日はそろそろお開きですかね」
澪「暗くなってきたしな」
律「じゃ今日はここで解散だな!また来週に学校でな」
私達は別れの挨拶をすると各々の家の方へと歩き始めた
澪「今日は楽しかったな」
律「部活を早めに切り上げて遊びに行ってよかっただろ?」
澪「そうだな。でも来週の部活はしっかり練習するからな」
律「分かってるって、ドラムガンガン叩くよ」
澪「そうじゃなくてちゃんとリズムキープしてくれよ」
律「私なりに頑張るよー」
澪「なんか元気ないな……じゃまたな」
律「うん、またなー」
家の方へと歩いていく澪の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから帰路につく
疲れたな…部活中からなんか調子悪かったし早く帰って寝よう
律「ただいま…」
聡「姉ちゃんおかえり!ご飯できてるよ」
律「あー私いらないや」
聡「今日ステーキだよ、ステーキ!姉ちゃんの分まで食べちゃうよ」
律「んー…別にいいよー」
聡「いいの?……変な姉ちゃん」
――――――――――
律「あれ…?」
私は…いつの間にか寝てしまっていたのか?
目を覚ました時に目に入ってきたのは見慣れない真っ白な天井だった
律「ここは~どこだろう…」
身体を起こしてまわりを見る
真っ白で清潔感のある部屋…間違いなく私の部屋ではない
最終更新:2010年03月06日 01:45