唯「なんなんだろうこれ。すごーい。どんどん音が大きくなっていくよ!」

もう少し良く見ようと、唯が目の前に腕輪型ギターを持ってきた瞬間、
唯のおでこにも若干の違和感。

唯「なんだかむずがゆい……どうしたんだろう……?」

唯が自分のおでこに触ってみると、そこには何か固い、
鉄のような物が浮き上がっていた。

唯「な、何これ!?すごいすごーい!私のおでこに変なのが生えたー!」


唯が喜んでいるのもつかの間、
まさに頭上で雷鳴が鳴ったと思いきや、
唯めがけて落ちてきたのである。

唯「うわ!びっくりした……。あ、あれ?」

唯としては、それよりも驚くべきことが起きた。
自分の周りがどんどん明るくなっていくのに気付き、
さらにもう一つ大事なことに気がついた。


服が破けていくのである。


唯「な、何これ!?どうしよう!服が!服が!」


唯が完全に光に包まれ、
空気中にはバチバチと電気を放出している。


唯「うわー!うわー!うわー!」

完全にパニックである。
狂いつつある頭で考えた唯は、腕を振り始めた。
光を追い払おうとした結果、この行動をするに至ったようだ。

しかしながら、この行動が次のアクションへのトリガーとなったのだった。


バチバチバチバチ…!ビューン!


唯の体を纏う光が消えたと思いきや、
唯が立っていたであろう場所には
一本の角を持ち、体は金属光沢にする鬼が居たのである。

唯(?)「何これ…?うわっ!?ギー太が変形している!」

恐らくは唯の変身体なのであろう。
その手に持たれたギー太は、かなり堅そうに、さらに刃物まで付いて、
まさに形容するなら戦闘用。

唯「……なんだか、とても心が落ち着く……。」
 「!?轟鬼さんが危ない!」

そう言うや否や、唯は走り出した。
轟鬼は危険だなんて知る由もないはずの唯だが、
何かが見えたのだ。

唯は走った。自分でもびっくりする速度と反射神経で。

唯(何で轟鬼さんが危険だなんて分かったんだろう……?それよりも、
  私はどこに進んでいるんだろう……?)

今唯は考えていない。
反射的に体が進んでいるのである。
鬼として覚醒したのか、元々あった勘なのかは分からないが、
驚異的な感覚を発揮している。


ズン…ズン…ズン…!

唯(うわっ……!?何あれ!?)


普通に生きている上ではおおよそ目の当たりにしないであろう、
バカのような大きさのクモを見て

頭は女の子の反応をした。キモチワルイ。怖い。

しかしどうだろう。体はクモの方に向かっているのである。
ギー太を握りしめ、前傾姿勢で、

クモを倒さねばならないという使命感を纏いながら。


唯「やあああああ!」


ギー太を振い、完全に轟鬼の方向を向いているツチグモの脚を
二本切り落とした。

ツチグモ「ギャアアアアアアアアアアア!!!」

中途半端な支えになったツチグモは、右斜め後ろに体が沈む。
しかし、鎧のような体と強靭な肉で、
グググと踏みとどまってしまった。


轟鬼よりも唯の方が危険と判断し、すぐに唯に向き直すツチグモ。
しかし、唯の動きは早かった。

唯「えいっ!!!」

ズバァッ!
まさに雷のような速度で、クモの右脚を全て切り落とす。
完全に支えを失ったクモの体は、右側に倒れこんでしまった。


すかさずギー太をツチグモに突き刺し、
腹にあったバックルをギー太にくっつける。

ジャキッ!


唯(私、何でやることが分かるんだろう?)

そう思いながらも、唯はギー太を鳴らし始める。


唯「音撃斬!Cagayake Girls!!」

ジャラーン!

ジャジャジャッジャジャジャジャジャッジャーン
ジャジャジャッ ジャジャジャジャーン!

唯「Jumping up! ガチでカシマシNever ending girl's talk!!
  終業チャイムまで待てない!」

唯「遅刻はしても早退はNon Non Non!」

唯「精一杯Study afetr school!!!」

ジャーン!


クン…クン!クンクンクンクンクン!!!

ツチグモ「グ…グギギギ…!ギィー!!!!」


メコメコメコメコ!パァン!!!


唯「うわぁ!!!」


唯の演奏が終わると、ツチグモは大爆発を起こし、
そこに残ったのは草と土、木の破片のようなものだけ。

唯「びっくりしたー!なんだったんだろう……さっきのクモは……。」
 「そうだ!轟鬼さん!」

元々の目的を思い出し、轟鬼を探そうと足を踏み出した唯だったが……

唯「あれ……?」

バタン!

唯「あ……あはは、疲れすぎちゃったみたい……もう、一歩も……動け……な……」


パァーン!

光に包まれた鬼モードの唯。
光が消えた後に残っていたのは、
草や木屑、土に埋もれた全裸の唯であった。





香須実「さっきの感じからするとこの辺で戦闘があったっぽいんだけど……。」

律「香須実さーん!」

香須実「律ちゃん!?病室で待っていてって言ったでしょ!?」

律「すいません……でも、唯が心配で……!」

香須実「唯ちゃん!?どうかしたの?」

律「実は……」


律は、香須実が居なくなる直前に唯が居なくなり、
唯を探して外に出てきてしまった事を伝えた。

律を病室に戻すことは逆に危険だと判断し、
一緒に轟鬼と唯を探すことにした。

香須実「いい?絶対私から離れちゃだめよ?」

律「はい!」


二人を捜索する香須実と律。
少し森に入った所で、
律が唯の顔らしきものを見つけた。

律「あれ!?あれ、唯じゃないか!?」

香須実「あ!律ちゃん!走っちゃだめ!」


律「唯!唯!唯!ゆ…い…?」


律の目に写ったのは、地べたに全裸で幸せそうに眠る唯の姿。

律「」

香須実「唯ちゃん!?なんで裸に…」

律「ま、まぁこの際そんなことには目をつむる!唯!起きろ!何があったんだ!?」

唯「う、うーん……あれ?りっちゃん?」

律「あれ?りっちゃん?じゃないよ!なんでこんなところで裸で寝てるんだよ!」

唯「裸?」

流石にそれは無いだろう という表情で律を見て、
確かめるように自分の体を見る唯。


唯「……え?」
 「な、なにこれえええ!?」


律「覚えてないっていうのか?」

唯「いや、覚えてるんだけど……なんで裸なのおお!?」

香須実「襲われでもしたのかしら……。ん!?唯ちゃんその腕輪……!」

唯「あ、これ?これを鳴らしたら変身しちゃって、
  それで大きなクモを倒して……それでどうしたんだっけ……?」

律「大きなクモぉ!?そんなの居る訳ないだろ。夢でも見てたのか?」

香須実「た、倒したの!?ツチグモを!?」

珍しく大きな声を上げる香須実。
唯はそんな香須実に圧倒され、声が出ない。


香須実「ゴホン。えっと……その腕輪は轟鬼君の物なの。
    それを使って……変身、したの?」

唯「はっ!?そうだ!轟鬼さん!!この近くに居るはずなの!」

香須実「本当!?恐らく怪我してるはず……一体どこに……」

周りを見回す一同。
轟鬼を見つけるには、さほど時間はかからなかった。

律「居た!」

香須実「どこ!?」

律「上のほう!全裸で木にぶら下がって……」

唯「」
律「」
香須実「」


その後、律は唯にタオルケットを持ってきて、
その場しのぎでなんとか宿に帰ることができた。
(その間轟鬼は放置した。)

梓と轟鬼を除く全員が宿に帰ってきた後、
斬鬼と響鬼の二人で轟鬼を迎えに行って事無きをえた。


響鬼「で、話をまとめると」

斬鬼「轟鬼がヤマビコの姫を倒した所でツチグモが出てきて、童子を食った後それに襲われたと。ツチグモにブッ飛ばされたお前は音錠も吹き飛び、たまたまそれを拾った唯ちゃんが変身してツチグモを倒したと。」


唯「へへーん。すごいでしょー!」

香須実「本当に凄いよ!」


唯を褒める時間が若干あってから、
鬼二人と香須実は顔をしかめて轟鬼の方を見た。


斬鬼「で、轟鬼。お前は……。」

轟鬼「すっ、スイマセン!」

響鬼「まぁ……生きてただけ良いよ。本来あんなに吹っ飛んだら死んでる所だったしね。」

轟鬼「はい……でも、ツチグモが他の童子を食うなんて初めて見ました。」

香須実「それは気になるわね……。何か変なことが起きているのかしら……。」


鬼連中が思案にふけっている間、
軽音メンバーはティータイムに興じていた。

澪「しかし、本当に無事でよかったよ。唯。」

唯「私がお化けを倒したんだからね!えっへん!」

律「あたしは未だに信じられないなぁ。」

紬「ウフフフフ」


こうして夜は更けて行き、
大波乱で幕を開けた夏合宿の1日目が終了した。





威吹鬼「ふぅ……。ここが屋久島かぁ。あきら、荷物は持った?」

あきら「はい。全部持ちました。」

威吹鬼「じゃあ、出発しようか。」

あきら「はい。」




唯「ふわぁーっ!はぁ。」

律「でっかいあくびだなぁ。」

唯「いやー。心なしかよく寝られた気がしてねー。」

紬「大仕事した次の日だものね。」



澪「響鬼さん達は?」

澪の言葉を受けて、キョロキョロと辺りを見回す。
そこに響鬼をはじめとする鬼達の姿は無く、
やけに広い居間があるだけである。

唯「本当だ。居ないねぇ。」

紬「彼らは摩訶魍退治に出かけたみたい。早く屋久島を平和にしなくちゃいけないからね。」


どうやら響鬼達は、琴吹屋敷を主な宿としつつ、
そのほかの場所にもキャンプを張っていつでも出動できる形をとったらしい。


唯「でも、これじゃあずにゃんの所に行けないね…。」

紬「お昼には戻ってくるそうだから、ご飯を食べたら連れて行ってもらいましょう!」

唯、律、澪「おーう!」


姫「ハッ!」

パリィン!


威吹鬼「あきら、すぐに響鬼さん達に連絡して、ここから遠い場所に行ってくれ。」

あきら「分かりました。」

威吹鬼「さてと…。」


目の前には、方に角のようなものが生え、
サイのような皮膚をした童子と姫が3対ずつ。


威吹鬼「100年に1度が3回も重なることってあるのかな……?」

童子1「餌となる者に多くを語る必要は無い。」

童子2「ハァッ!」


童子の内1体が、威吹鬼めがけてタックルをかましてくる。

威吹鬼「フゥー…」

ピィィー!!!

威吹鬼は笛のような物をとりだすと、
吹いて音を出してから額へと持っていく。

額に鬼の文様が浮かんだ後、腕を横に薙ぐと
威吹鬼を中心に鋭いつむじ風が発生する。

童子2「ぐっ!?ぐう……!」

童子がそのつむじ風に巻き込まれ、横に飛んだ。
つむじ風が完全に威吹鬼を包み込んだ時、

威吹鬼が内部からつむじ風に向かって手刀を放つ。

威吹鬼「タァッ!」


青みを湛えた三本角の鬼。
つむじ風が消えた跡には、凛々しい鬼が立っていた。


ピピピッ ピピピッ


威吹鬼の武器、烈風は銃である。
風を圧縮した弾を連射することのできる飛び道具で、
絶大な威力を持つ。


童子1「フン。」

しかし、童子はそれを軽々と避けてしまった。

威吹鬼「クッ……!」

ピピピッ ピピピッ


キキキン!キキキン!


威吹鬼「何っ!?」

今度は避けず、全てを腕で防がれてしまう。
この童子と姫は、サイのような風貌から
防御力と攻撃力がズバ抜けており、
並みの攻撃は防ぐことができてしまう。


威吹鬼「近くからじゃないとだめか…。」


その時

童子2「ハァッ!」

ガッ!

変身の時に横に飛ばした童子が起き上がり、
後ろから羽交い絞めにされてしまったのである。

威吹鬼「くっ…!」

もがくが、並大抵の力ではないため
軽く引き離すことはできない。

そうこうしている内にも、正面の5体のうち、姫と童子が1体ずつこちらに走ってきている。
このままでは袋叩きになってしまう。

威吹鬼「今だっ!」

童子2「!?」

今羽交い絞めにされている童子を、背負い投げの要領で前方に投げ飛ばし、
自分を袋叩きにせんとする童子と姫にぶつける事に成功した。


威吹鬼「ハァアアアアアア!」

童子を投げ飛ばしたままの格好で気合いを入れ始めた。
威吹鬼の周りを風が吹き始める。


童子2「ヌンッ!」


先ほど投げた童子が襲いかかる。
が、

威吹鬼「タァッ!」

風を纏った威吹鬼の回し蹴りにより、
頭に大きな傷を負った童子は

頭から盛大に体液を噴き出し始めた。

童子2「アアアアアアアア」

威吹鬼「ハァッ!」

棒立ちになったまま痙攣を続ける童子に対し、
腹めがけて風を纏った後ろ回し蹴りを放つ。

その蹴りは童子の腹を貫き、
大きな音を立てて童子は破裂した。


次は目の前に居た姫に目星をつけ、攻撃を放った。
まず手刀を繰り出す。

姫1「グフウ!」
首付近にヒットし、姫はノックバックする。


間合いを詰め、腹に烈風を直接当てた状態で引き金を引く。


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最終更新:2010年03月14日 00:33