威吹鬼「この距離だったら有効だろ!」

ピピピッ! ピピピッ!

姫1「ウグ……ガアアアア!」

パァン!

背中付近から大量の体液を吹きだし、破裂した。



童子2「ぬううう……!」

童子は体制を立て直そうと、まだ生き残っている童子と姫達と
逃げようとしている。だが、威吹鬼はここでとどめを刺してしまおうと考えた。

ピピッ!
パシュン!パシュンパシュンパシュン!

烈風のモードを変え、鬼石を射出する。

その全てが、大体の童子と姫にまんべんなく直撃した。


童子2「ぐ……ぐうう……!」

鬼石を撃ちこまれた童子達は、すぐさま威吹鬼を取り押さえようとする。
が、

威吹鬼「スゥー……」
   「疾風一閃!」


パパー!!!!!!

烈風に腹のバックルをコネクトし、
ラッパ型に変形させて力いっぱい息を吹く。

童子2「うぐう……!ぐうううう!!!」

その風に反応するように、童子達に埋まった鬼石が反響を始める。

パパー!!!!!!


凄まじい風圧に、童子達の足は止まる。
そして……


童子達「ウガ…アアー!!!」


パァンパン パァン!!!

共鳴した鬼石の力によって、一斉に童子達が弾けた。


威吹鬼「ハァッ……!ハァッ!……ふぅー。」

響鬼「威吹鬼ー!」

威吹鬼「響鬼さん!」

童子達を全部倒した後、
少し遅れてから響鬼が到着する。

響鬼「オトロシの童子と姫が3対も出たんだって?」


威吹鬼「ええ。ちょっとおかしな事が起きてるみたいですね。」

あきら「一度琴吹さんの所に寄って、整理してから出発しましょう。」

威吹鬼「そうだね。響鬼さんはどうされます?」

響鬼「そうだなぁ……まだディスクが帰ってきてないから、全部帰ったら戻るよ。」

そう言って、響鬼と威吹鬼達は分かれた。
先ほど響鬼が言っていた「オトロシ」とは、
百年に一度出現すると言われる摩訶魍なのだが、
今回に限って3体出現したらしい。それはそれはもう異常なことである。


唯「響鬼さん達まだかなぁ?」

澪「まだ11時だぞ。お昼までは時間がある。気長に待とう。」

唯「ほーい。」

ただ待つことしかできない軽音部の一行は、
とりあえず練習を行うことにした。

ジャーン!

唯「やっぱりあずにゃんが居ないと物足りないっていうか……。」

律「まぁ仕方ないだろ。怪我しちゃってるんだし。」

澪「今は私たちで練習するしかないなぁ。」


辺りはマンネリムード。
梓が気になって練習にも身が入らない。
そんな中、澪が席を立った。

律「澪、どうしたんだ?」

澪「ん?いや、ちょっとお手洗いに……。」

律「早く帰ってこいよー。」

澪「はいはーい。」


澪「ふぅ……しかしとんだ災難だ……。こんなことになるなんて……。」


独り言を言いながら歩く澪の背後を、影が一つ横切る。
空気には敏感な澪。何かの気配を感じて後ろを振り向いた。

澪「な、何か通らなかった……?気のせいだよね!そう!気のせい!ははは!」

そう言って前を向き直す。
さっきまで空元気を絞り出していた彼女の顔が、急激にこわばった。

澪「な……何……?こr…… ヒッ!?」


キャアアアーーーーー!!!!!!!
屋敷内に澪の叫び声と、窓ガラスの割れる音がこだまする。

律「澪!?」

唯「何今の音!?」

紬「心配だわ。行ってみましょう!」

屋敷内をドタドタと駆ける三人。
そこに澪の姿は無く、割れた窓ガラスと空いた窓 そしてその先に広がる不気味すぎる森があるだけであった。」


律「澪!?澪!!!」

紬「まさか……澪ちゃん!?」


紬すらもパニックに陥ってしまい、
三人が右往左往していたそんな時、

ピンポーンとチャイムが鳴らされる。


轟鬼「すいませーん!帰ってきたっす!あと、威吹鬼さんもいらっしゃいましたー!」


紬「良かった……!轟鬼さん達!大変です!澪ちゃんが!!」

轟鬼「ええ!?連れ去られちゃったんすか!?」

紬「とにかく早く連れ戻さないと……!それと、これを見てほしいのですけど……。」

そう言って、窓の外を指差す。
その瞬間、鬼達の顔が険しくなる。


威吹鬼「これは……!」

斬鬼「コダマの森みたいだな。」


唯「森?確かあっちの方向は坂じゃありませんでした?」

威吹鬼「えっと……ちょっと面倒な森でね、とにかく危険なんだ。」

律「危険……!」


危険という言葉に、律が不安そうな声を上げる。
だが、すかさずあきらがフォローを入れた。

あきら「危険と言っても、威吹鬼さんと轟鬼さんで解決したことがありますから、
    大丈夫です。お友達は絶対に助かりますよ。」


斬鬼「とにかくこの屋敷は危険だ。今は別の場所に行っててくれ。」

律「嫌だ!澪が助かるまでどこへも行けない!」

威吹鬼「そう思うのは分かるんだけど……君まで危険な目にあわす事はできないんだ。」

律「うう……。」

渋々承諾する律。
その後鬼達はコダマの森へ入っていき、
コダマ退治を開始した。

軽音部メンバーは、とりあえず病院へ行く事になったのだが……

律「これは……香須実さんのバッグ……。」
 「あたしにも何か……何か出来る事があるかもしれない……!」

絶対に駄目なこととは分かっていたが、
香須実のバッグを開けてみる律。

律「こ……これは……?」

少しあさってみると、唯が変身した時と同じような、
でも形の違う音叉のような物を発見した。

律「これさえあれば……もしかして変身できたりするのかな……?」

おちゃらけているようで、とても真面目な律の性格だったが、
大親友の危険とあらば選択の余地が無かったようで、

とりあえず書き置きをバッグの中に残して
音叉を拝借してしまった。

律「ごめんなさい……香須実さん……!」


唯「りっちゃーん!おいてっちゃうよー!」

律「ああ、ごめん!今行くよ!」




コダマの森。
強大な力を持つ摩訶魍、「コダマ」が住むと言われる、
神出鬼没の森。
神隠しが多発すると言われるその森は、
出現しただけで災厄が起こるという伝承がある。


斬鬼「しかし……またオロチが起きるのかねぇ?」

轟鬼「コダマの森が出てきたって事は、恐らくそういうことだと思います……。」

コダマの森を歩く鬼一行。
しかし一行が最初に発見したのは、コダマではなく鬼だった。

威吹鬼「あれ……?あそこで倒れてるのってまさか!?」

轟鬼「裁鬼さんじゃないっすか!?」


裁鬼「う…うう!」

斬鬼「裁鬼さん!さいきん働き詰めだったってのに……また無茶を……。」

裁鬼「後輩の……頼みだったら仕方ないだろ……?うっ!」

威吹鬼「まさか一足先に到着してただなんて……喋らないで!あきら、裁鬼さんを頼む。」

あきら「はい!」


しかし、犠牲者(?)が倒れていたというのなら話は早い。
恐らくこの近くにコダマが居るのであろう。


轟鬼「斬鬼さん!」

斬鬼「ああ。近くに居るぞ。」


轟鬼「フン!」

手に持っていた烈雷を、地面に刺す。
それと同時に、威吹鬼が笛を鳴らし、額に当てる。

轟鬼も腕の弦を鳴らし、額に当てる。


轟鬼「セイッ!」

威吹鬼「ハッ!」

轟鬼を纏う雷鳴と、
威吹鬼を纏うつむじ風が消え、
二人同時に変身が完了した。


威吹鬼「じゃあ、行きましょう!」

轟鬼「はい!」




唯「……」

紬「……」

律「……」

病院へと向かう一行の心は、重く沈んでいた。
梓が怪我をしただけではなく、
澪までもが連れ去られてしまった。


恐怖だけではなく、怒りと、焦燥と、
色々な思いが渦巻き、
一層心がぬかるんでいく。

律「澪……!」
 「あたし、やっぱり戻る!」

唯「え!?」

紬「律ちゃん!駄目!戻って!」

律「大丈夫!あたしなら大丈夫だから!」


もう話を聞くはずもなく、
一目散にコダマの森へと走り出した律。

唯「ど、どどどどうしよう!」

紬「本当にどうしましょう……!でも、向こうには轟鬼さん達が居るはずだから……大丈夫……。」


大丈夫 という言葉に反して、自信無くどんどん声が小さくなっていく紬。


唯「戻ろう。」

紬「え?」

唯「絶対大丈夫!ムギちゃん!戻ろう!」

紬「……分かったわ。その前に宿に戻りましょう?渡すものがあるの。」

唯「え?分かった!」


こうして、結果的に全員がコダマの森に移動する形となってしまった。


律「澪……!澪……!澪……!澪……!!」

全速力でコダマの森を駆ける律。
その耳に、金属がぶつかるような音が聞こえてきた。


ガン!ガッ!
ピピピッ!ピッ!ブゥン!

轟鬼「セイッ!ハッ!」


律の目に移りこんできたのは、
轟鬼、威吹鬼、見たことのない化け物、
あまり優勢とは言えないこの戦況と、
気を失った大親友、澪の横たわる姿だった。

轟鬼「ウワァー!」

威吹鬼「グッ!」

そうこうしているうちに、二人がコダマに吹き飛ばされて
今にもとどめを刺されんとしている。


律「……お前……澪をあんな風にしやがって……!」


しかし、律の目には二人の姿よりも、
コダマと澪の姿が優先的に写りこんでいた。

そして、澪をあんな風にした事への怒りがふつふつとこみあげ、
気が付くと音叉を手に握りしめていたのである。


キィィィィン……!

ほぼ無意識的に、音叉を鳴らし、額へと持っていく。
ボッ!ボッ!

律「ハァーーーーーー!!!」

律の体が燃える。
赤く、赤く燃える。

律「ハァーーーーー!!!!」

まるで、今の律の心情を表わすかのように。

律「ハァッ!」


律が腕を薙ぐと、そこには赤鬼が立っていた。
大親友を連れ去られた怒りに燃える赤鬼が。


律「覚悟しやがれ!はっぱ怪人め!!」


これまた無意識的にバチを両手に取ると、
コダマに向かって全力疾走を始めていた。


唯「ハァ……!ハァ……!」

紬「唯ちゃん、もう少しで宿よ!がんばって!」

唯「はぁーい!」


琴吹屋敷に着いた紬は、
唯を座らせると香須実のバッグを開け始めた。

唯「あれ?それ香須実さんのじゃ……?」

紬「もし何かあったら、中の物を皆に渡すように言われているの。
  あれ……?何かしらこの紙……。」

その内容を読んで、紬の顔に心配の色が現れる。

紬「……りっちゃん!!!」

唯「りっちゃんがどうかしたの!?」

紬「りっちゃん、もう今コダマの森に居るみたい!
  変身する器具も持っていったみたいだから、もしかしたら鬼になってるのかも……!」


唯「りっちゃんも鬼に!?すごーい!」

紬「何にしても危険だわ!早くこれとギー太を持っていきましょう!」

そう言って唯に鬼弦を渡す。

唯「これは……あの時と同じちっちゃいギターだ!」

紬「とにかく早く森へ行きましょう!」

唯「おーう!」





律「やっ!はぁっ!おらぁーっ!」

コダマ「グッ!ウグウ!」


敵は轟鬼と威吹鬼だけだと考えていたコダマは完全に面喰い、
うまく反撃を出せずにいる。

律「澪を!澪を!!こんなふうにしやがってええええ!!」

律のほうはと言うと、完全に頭に血が上っている。
しかし怒りを力に変え、まさに鬼のような勢いでコダマにダメージを与えていった。

律「おらぁーっ!」

渾身のスイングがコダマの腹に直撃し、
後ろの木にめりこむコダマ。

コダマ「ガッ!ガハァ!」


律「これか!?」

頭に浮かぶまま、ベルトに着いたバックルを
コダマへと付きだす律。

ズン!
ポンポンポンポン ヨォーッ!


その瞬間、音撃鼓が巨大化し、普通の太鼓のような大きさに変化した。

律「うわっ!?どうなってんだこれ?」

流頭に血が上った律も、これには驚愕を隠せなかったが
そのままバチを振う。

音撃打!Cagayake Girlsぅ!!!

ドンドンドンドドンドドドンドンドン!!!

律「オラオラオラオラオラオラァ!」

コダマ「ギ…ギギィ!!」

ドンドンドドドドン!

クンクンクンクンクンクン…!! パァン!


コダマ「ウワァー!!!」


律「はぁ……はぁ……ッシャァー!」

コダマを倒し終えた律は、その場に座り込む。


律「はぁ……ふぅー……。」

大仕事を終えた律は、変身を解こうとした。
が、昨日の唯の一件が思い出される。

律「は、裸になるんだったっけ……。」

アホほど疲れては居るが、
一応目の前には男性が居る訳で

仕方が無いので変身を解除するのはもう少し先にすることにした。

律(それまで持ってくれよ……!私の精神!)

轟鬼「もしかして、律……ちゃん?」

律「はっ!はっ!へ、えへへ……。」

威吹鬼「まさか……君に助けられてしまうとはね。ありがとう。」

律「いや、助けるだなんて、そんな。」


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最終更新:2010年03月14日 00:34