みなさんは、モテ期という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 人生に何回かやってくるモテモテになる時期らしいけど、私、真鍋和は今までそんなもの信
 じていませんでした。
 そう、あの日が来るまでは・・・


 その日の朝、私は久しぶりに寝坊してしまいました。
 朝食を食べる時間を省けばギリギリ間に合う時間だったので、私は朝食を食べずに家を出ま
 した。
 私は、毎朝朝食後にトイレに行くのが日課だったのですがその時間もなかったので、ちょっ
 とだけ便意がこみ上げてきました。

唯「のーどかちゃんっ!」

 通学路を歩いてると唯に声をかけられました。彼女は私の幼馴染です。

和「唯。おはよう」

唯「おはよ~。ねーねー和ちゃん」

和「何?」

唯「和ちゃんって好きな人いる?」

 唯がこんなこと聞いてくるなんて意外でした。

和「えっと・・・いきなりどうしたの?」

 とりあえず会話を続けました。
 便意はありましたが、この時の私は、学校に着いたらトイレに行けばいいや程度にしか考え
 ていませんでした。
 今思うと、これが忘れられない一日の始まりだったのです。


唯「なんとなくだよ~。それで、どうなの?」

和「好きな人?今は別にいないけど・・・」

唯「そっかあ」

和「あんたはどうなの?」

唯「え!?」

和「え?私に聞いてきたってことは、そういう話をしたかったんじゃないの?」

唯「べ、別に違うよ。ごめんね、気にしないで!えへへ」

 何か様子がおかしいと思いましたが、唯はもともとちょっと変な子です。
 私は特に気にしませんでした。
 トイレに行きたかったからか、自然と早歩きで歩いていました。


 学校に到着したけど、トイレに行く時間はありませんでした。
 唯と別れて自分の教室へ。あ、これは私が2年生の頃の話です。
 席についた直後に1時限目の先生がやってきました。

先生「出席を取りまーす。秋山」

澪「はい」

 澪が返事をしながらこちらを見て私と目が合いました。
 彼女は唯と同じ軽音部です。澪はすこしニコッとすると、目線を前に戻しました。
 今の笑顔にどういう意味があるのかはよく分かりませんでしたが、
 おそらく「ギリギリセーフで良かったな」といった感じの意味だと思いました。


 1時限目の間は、たまにこみ上げて来る便意のおかげでなかなか集中できませんでした。
 でも何とか乗り切り、授業終了のチャイムが鳴りました。

「きりーつ。れい。ありがとうございましたー」

 挨拶を終え、私はさっさとトイレに行こうと席を立とうとしましたが。

澪「和!」

 澪に話しかけられました。

和「おはよう」

澪「おはよう。今日の朝遅かったよね。どうしたの?」

和「ちょっと寝坊しちゃってね」

澪「和が寝坊なんて珍しいなー」

和「普通は寝坊なんてしないでしょ」

澪「やっぱり和はすごいよ」

和「そんなことないって」


  キーンコーンカーンコーン。

和「!」

澪「あ、もうか。じゃあ席に戻るね」

和「え、ええ」

 澪と話しているうちにトイレに行きそびれてしまいました。
 だって、澪が話してる時すごく楽しそうだったから途中でトイレに行きづらかったんです。

先生「水と酸素を化合させると・・・」

 授業の内容はあまり頭に入りませんでした。
 便意がこみ上げる頻度が上がってきたので、ノートを取るのがやっとです。
 それでもなんとか授業終了時間になりました。


和「澪には悪いけど・・・」

 授業が終わると同時に立ち上がり、廊下に出ました。
 そしてトイレに到着・・・だけど満室でした。
 普段なら待つところですが、いつ開くともわからない扉を待っていられる心境ではなかった
 ので、1階下のトイレに向かいました。1年の教室がある階です。

憂「あ!和さん!おはようございます!」

 トイレの手前で、唯の妹である憂と出会いました。

和「あら、おはよう」

憂「今日、お姉ちゃん学校間に合いました?」

和「私と同じだったから間に合ったと思うわよ」

憂「そうですか。良かったあ」

和「じゃあ私はトイ」

憂「でも、お姉ちゃんと同じって和さんも結構遅かったんですね!」

 またその話題ですか。


憂「・・・でも、私もお姉ちゃんも和さんのおかげで今までやってこれたんですよ」

和「そんなこと」

憂「和さんは私の憧れでしたから!あ、言っちゃった//」

和「そ、そう。ありがとう」

 キーンコーンカーンコーン。

憂「あ。じゃあ私は戻りますね~」

和「ええ・・・」

 憂と話して、というより一方的に話されてまたトイレに行けませんでした。


 3時限目。そろそろ便意のこみ上げる頻度が多くなり、便意がない時の方が少なくなりました。

先生「ここでxに代入して・・・」

 先生。代入よりも大便がしたいです。あ、上手いこと言っちゃいましたね。

「きりーつ。れい。ありがとうございましたー」

 下らないことを考えている間にやっと授業が終わりました。ノートは少ししか取れませんでした。

澪「あ、和」

和「ごめん、後で」

澪「うん・・・」

 澪は想像以上に落ち込んでしまいましたが、心を鬼にして教室を出ました。
 ああ、これでやっとトイレにいける。そう思っていると。

律「おー!和!」

和「あ・・・」

 軽音部の部長、律に話しかけられました。


律「ねえねえ」

和「な、何?」

律「お昼、私も一緒に食べていい?」

 ちなみに普段の昼休みは、澪と私で食べていました。

和「うん。いいけど」

律「へへ、サンキュー」

 律と澪は幼馴染なので、きっと一緒に食べたくなったんだろうな。
 そんなことを考えながら、私の今の目的を思い出しました。

和「そうだ。私トイレに」

律「和と澪っていつもどんな会話してんのー?」

 このパターンはまずい。私もわかっていました。
 だけど私の性格上、質問を投げかれられてしまったら答えないわけにはいきませんでした。


 なんだかんだで4時限目に突入してしまいました。
 便意はこみ上げて来る、というよりも常に便意に襲われていました。結構辛かったです。

先生「こうしてベルリンの壁が崩壊して冷戦は・・・」

 先生、私のベルリンの壁が崩壊してしまいそうです。おっとまた上手いこと言ってしまいま
 した。
 そしてなんとか4時限目も終了。もはやノートを取る余裕などありませんでした。
 起立と礼をすませ、トイレに向かおうとします。
 ここまで来るとみなさんも予想できてしまうかもしれませんが、またしても妨害されまし
 た。

律「おっす!来たぞー」

唯「えへへ、私も来ちゃった」

紬「おじゃましまーす」

 律と唯と紬です。おそらくそういえば律と一緒に食べる約束をしていたなあと思いだしました。

和「先に入ってて、私は」

 ここまで言いかけて思いました。今から考えるとその時の私にはまだ余裕があったのでしょ
 う。
 昼休みのトイレは、ご存じの通り一番混みあいます。運が悪ければ、昼を食べる時間が無く
 なってしまうのです。


 せっかく唯や軽音部のみんなとお昼を一緒に食べれるのに、そんなのは嫌でした。
 私は決心しました。昼休みの間は我慢しよう、と。
 そして、昼休みが終わる直前にトイレに行き、5時限目は遅刻しても構わないと。

律「ん?どうした?」

和「なんでもないわ。入りましょうか」

 みんなとのお昼はとても楽しいものでした。
 もちろん便意はつらいものがありましたが、楽しく会話をしていると辛さも軽減したような
 気がしました。

唯「和ちゃん、食べさせてあげるよ!あーん」

和「いくらなんでも恥ずかしいから」

律「あ!私も和に食べさせたい!ほら、あーんして!」

澪「わ、わわ私も!あ、あーん」

和「ちょ待って同時は・・・もごもご」

紬「うふふ」

 なんでみんな私に食べさせたがっていたのかよくわかりませんでした。

 こうして楽しいお昼休みも終わりに近づき、唯たちは自分のクラスに帰って行きました。
 やっとトイレにいける、そう思って私が教室を出ようとすると澪に話しかけられました。

澪「どこ行くの?もう昼休み終わるよ」

和「ちょっとトイレにね」

澪「何言ってるんだよ?次の時間体育だよ!もう着替えないと間に合わないよ」

和「あ」

 私はとんでもないミスを犯してしまいました。
 そう、この日の5、6時限は体育だったのです。


 この日の科目はバレーボールでした。この状態で跳んだり転んだりすればかなり危険です。
 極力動かないようにしなけらばなりませんでした。ですがバレーボールは少人数のチームで
 す。
 ボールは無情にも飛んできます。

澪「和!頼む」

和「え、ええ・・・」

澪「あ、落ちちゃった」

和「ごめんなさい」

 私がまともに動けないせいで、私のチームは散々でした。本当に申し訳なく思います。

先生「真鍋さん。今日は動きに切れがありませんね」

 先生、動きに切れが・・・切れじゃなく・・・すいません、上手いこと言えません。


 さて、体育は5、6時限と続いているので、休み時間はうやむやになってしまいました。
 6時限目は同じくバレーボール。これを乗り越えればもう放課後です。
 体調が悪いと言って抜けようとも考えましたが、それでは保険室送りになってしまうのでや
 めました。


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最終更新:2010年03月17日 01:33