「犯人はこの中にいる! 外部の犯行や不可能犯罪なんかじゃないわ!」
メガネをクイッと上げて宣言した!
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「和ちゃんも一緒に行こうよ」
唯が私を誘っているのは、2泊3日でムギの家が所有する無人島で行う軽音部の合宿のことだ。
「私は部外者よ? 行っていいの?」
「いいよいいよぉ、そんなのみんな気にしないって」
「うぅん、みんながいいって言うなら行ってもいいかな」
「やったぁ、じゃあ決定で! みんなに聞いてくるね」
そう言うと唯は軽音部の部室へと走っていった。
夏真っ盛り!
夕日が沈む中、船に揺られて着いたのは無人島。私、唯、澪、律、ムギ、梓ちゃんの6人は船からおりて地に足をつけた。
「す、すごい! 無人島なんて初めて来たよ!」
「私もです! こ、こんなにすごいなんて!」
唯が目をキラキラさせながら話すと梓ちゃんがそれに答えた。
「相変わらずスケールがすげぇなぁ」
律が若干呆れながらつぶやく。
「ムギ! 無人島に怖いものなんていないよね!」
「澪ちゃん、そんな物はいませんよ」
澪は律に無人島の怖い話でもされたのだろうか? ムギにずっと質問をしている。
「憂やさわちゃん先生も来ればよかったのに……」
唯が残念そうにと話すと、
「用事じゃしかたないだろ。2人の分まで楽しもうぜ!」
律がそうなだめた。
丘の上にあるムギの別荘に着くと、二つの感動が待っていた。
1つは夕日が地平線に消えていく光景。遮るものが何もない大自然からの贈り物。
もう1つは別荘の外観で、大きさもそうなのだけど、その綺麗なたたずまいは目を見張った。
家の中に入るとムギからこの別荘についての説明があった。
別荘は2階建てで、1階には広い玄関、リビング、ダイニング、キッチン、大浴場、練習をするスタジオがあり、2階にはいくつ
かのの個室があり、それぞれ専用の部屋が割り与えられている。
時間も遅いので、食事をしてからさっそくスタジオで練習することになった。
ダイニングルームからみんなとスタジオまで歩いている途中、
「なあ、今日は休もうぜ。さすがに長旅で疲れたよ」
律がげんなりしながら言うと、
「まあまありっちゃん、和ちゃんもいるし、練習を見てもらうのもたまにはいいんじゃないかしら」
ムギが律の背中を押しながらフォローを入れる。
スタジオに着くと、そこにはいろいろな楽器や高そうなアンプ、テレビ局にありそうな大きいカメラがあった。
「す、すっげぇ! まえのスタジオもすごかったけど今回のはともっとすげぇ!」
律はそう叫ぶとテンションが上がったようで、スタジオの中をいろいろと物色している。
「本当にすごいわねぇ、スタジオの広さってこんなものなの?」
はしゃぐ律を見ながらげんなりしている澪に聞いてみた。
「ん? いや、普通はここまで広くないよ」
そう言うと澪は自分もテンションアップしてきたのか、うきうきしながらアンプの方へ向かった。
「ムギちゃん、ムギちゃん、このカメラは何に使うの?」
唯が目をキラキラさせながらムギに聞いている。
「このカメラは動画を撮れるから、練習風景を撮影して、この画面で演奏のいいところ悪いところをチェックするのよ」
ムギがそのカメラをいじりながら答える。
「へえぇ、すごぉい!」
唯はカメラをじろじろ見ながら驚いていた。
「これでよし」
ムギがそう言うとカメラが起動したようで、赤いランプ光りだした。
演奏をし始めると5人の雰囲気が変わる。
今までふざけていたのが嘘のように真剣な目つきをしている。
でも、5人はすごく楽しそうで、演奏を聴いているとこっちまで楽しくなってきた。
演奏が終わると拍手をして唯たちに駆け寄った。
「すごく良かったわ。やっぱり近くで聴くと違うわね」
少し興奮しながら絶賛すると、
「いやぁ、照れるなぁ」
唯は自分の頭を撫でながら答えた。
「ありがとう……」
澪がうつむきかげんで照れながらつぶやく。
それを見た律とムギが微笑んでいる。
「梓ちゃんも良かったよ」
「あ、ありがとうございます。和さん」
梓ちゃんは顔を赤らめ微笑んだ。
この日はここで解散。明日に備えて眠ることにする。
「よぉし! 遊ぶぞっ!」
「おぉっ!」
律と唯が海に向かって走って行く。
「もぉ、本当に仕方ないなぁ」
「昨日練習したんだし、今日は大目に見てあげましょ」
澪が呆れながらそうつぶやくと、ムギがそうなだめた。
軽音部は練習もせず、海に来ている。
唯と律の提案で朝食後すぐに海へ行くことになったのだ。
みんなで水着に着替えて、浜辺に行くとそこには爽快な青い海が広がっていた。
唯と律がはしゃぐのも無理はないと思う。他の人が誰もいない、私達だけのビーチ。
「唯ぃ、準備体操しないと危ないわよ」
いつものように唯の世話を焼く。もうこれが普通ね。
「うん! いっちにっ、いっちにっ」
雑に屈伸運動をする唯。
「もう、本当に……」
その光景を見ながら微笑んだ。
最初は乗り気じゃなかった澪と梓ちゃんだったけど、時間がたつと唯や私達に混ってビーチバレーと海水浴を楽しんでいた。
ちなみに、一番はしゃいでいたのは梓ちゃんだ。
その梓ちゃんだけど、疲れたのかシートの上でぐったりしている。
「あずにゃんだいじょうぶ?」
「梓ちゃんだいじょうぶ?」
唯とムギが心配そうに話しかけた。
「大丈夫です……。でも、先に部屋に帰っていいですか?」
少し辛そうに答える。
「私が付き添うわ」
「私も行くよ!」
ムギと唯がそう言うと律も、
「部長として私も付きそうぞ!」
「じゃあ、みんなで行きましょう」
「先輩……」
ムギの提案により、みんなで梓ちゃんを別荘まで送ることになった。
別荘に着き、梓ちゃんを見送る。
「介抱しなくていいの?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶですから……。先輩達はもうちょっと楽しんでてください……」
ムギの打診を断り、梓ちゃんは別荘に入ろうとする。
「梓ちゃん、これ」
ムギは別荘の鍵を梓ちゃんに渡した。
「もし、気分が良くなって戻って来たくなったら、この鍵でドアを閉めてね」
別荘の鍵は二本あり、1本だけを梓ちゃんに渡し、もう1本は今ムギが持っている。
「ありがとうございます……」
梓ちゃんは中から鍵を閉め、1人別荘に入って行った。
CASE1
「疲れたぁ、お腹すいたぁ」
梓ちゃんが別荘に帰ってから1時間後、海から変える途中に律が疲れを口にする。
「我慢しろ」
澪がすかさずツッコミを入れた。
「梓ちゃんだいじょうぶかしら……」
歩きながら心配するムギ。
「そうね、ちょっと心配ね」
私もなんだか不安に思えてきた。あのまま1人帰して良かったのだろうか?
「よぉし、あずにゃんのために早く帰ってあげよぉ!」
そう言うと唯は早歩きをしだした。
別荘に到着。
ムギがドアを開けようとドアのぶを引っ張るが開かない。
梓ちゃんが中から鍵を閉めたのを思い出す。ムギは鍵を取り出して鍵を開けた。
「あずにゃぁん、どこぉ?」
唯は大きな声をだしながら一人歩いて行く。
「もう、唯ったら……」
「きゃあああああああああああああああ!」
突然唯の悲鳴が別荘の中を駆け巡る!
私とムギは顔を見合わせ、只事じゃないと思い、悲鳴が聞こえた所に走って行った。
「唯っ!」
「唯ちゃんっ!」
視線の先には、キッチンの前で震えている唯がいた。
唯のそばに着くと、ぶるぶる震える唯を抱きしめる。
「だいじょうぶ唯? どうしたの?」
心配しながら尋ねると、唯はキッチンのほうを指差し、
「あずにゃんが死んでる……」
「「えっ!」」
それを聞いた私とムギは同時にキッチンの方を見る。
そこに梓ちゃんがいた……。
内臓がぶちまけられ、床に倒れている梓ちゃんが……。
「あずにゃんが死んでる!」
もう一度唯はそう叫んだ。
「唯っ! 何があったんだ!」
騒動を聞きつけて律と澪がやってくる。
「ひっ!」
「なんだ……これ!?」
梓ちゃんの死体を見て二人が絶句する。
「澪っ!」
ショックで澪が倒れそうになる。しかし何とか律が澪を支えた。
「梓どうなっちまったんだよ!?」
律が大きな声を出して、問いかけてくる。
「解らないわ、私達が来たときには、もう……唯は?」
そう答え、唯に話しを振った。
「わ、私も解らない! キッチンのドアを開けたらそこにあずにゃんが……」
やはりまだショックが残っているようで、たどたどしくそう答えた。
「でも、いったい誰がこんなこと……」
「そうだよ! この島には私たちしかいないはずだろ!」
律と澪が疑問を投げかける。
「それにもっとおかしいことがあるわ、この家にどうやって入ったの?」
ムギも疑問を口にする。
そう、この事件はおかしいことだらけだ。
「私達、海に行くまえに戸締まりのチェックをしたわ。それなのに……」
「もしかしたら、どこか開いてるんじゃないか? 調べに行こうぜ!」
ムギの言葉を聞き、律が一人で行こうとする。
「待って律、1人じゃ危ないわ。もしかしたらまだ犯人が潜んでいるかも」
「じゃあ、どうするんだよ和!?」
「みんなで固まって調べに行きましょう、こういう時は一人にならないほうがいいわ」
「……そうだな、そうしよう」
私、唯、律、澪、ムギの5人で別荘の戸締まりを調べに行く。
固まって歩き、それぞれ周りを注意しながらビクビクと歩く。
今まで普通に過ごしてきた別荘が、悪魔の城になったかのような不気味さを醸し出している。
結論から言えば全ての窓とドアが施錠されていて、どこにも出入りできるところは無かった。
今は2階にある梓ちゃんの部屋にいる。その部屋の中にはムギが梓ちゃんに渡した別荘の鍵があった。
みんなでベットに座って私と澪と律は考え事をしている。唯は不安なんだろう、ムギに抱きついている。
「これで密室殺人が揺るぎないものになったわね……」
「完全な密室……」
私と澪が愕然とする。
「なあ、こういうことは考えられないか?」
律が突然立ち上がり話しだす。
「何か解ったの?」
「やっぱり、犯人は外にいると思う……。犯人はこの島に潜んでいて、梓が一人になったところ狙ったんだ! 私たちが梓を別荘に
残して海に行ったあと、犯人は別荘に行った。言葉巧みに鍵を梓に開けさて、襲ったんだ! その後キッチンまで逃げたけど犯人に
追いつめられて……。それから犯人は私達が来るのを待って、別荘に潜んだんだ! 私達が来たあと、梓の死体を見つけた混乱に乗
じて、この玄関から逃げたんだ。どうだこの推理?」
律がもっともらしい推理を披露するがムギから横槍が入る。
「ごめんなさい、りっちゃん……。鍵を開けてみんなが中に入ったあと、すぐに玄関の鍵を閉めたの」
律の顔がそれを聞いた瞬間青ざめる。
「じゃあ犯人はまだ……この別荘の中にいるんじゃないか!」
「ひいっ!」
律がそう言うと澪が震えだす。
「澪……そうとも限らないわ。梓ちゃんもバカじゃない、この無人島で私達以外の人が訪ねてきたら怪しいと感じるはずだわ。簡単
にドアなんて開けないんじゃない?」
震える澪の肩を抱きながら反論する。
「じゃあ、どうなってんだよ! 壁をすり抜ける幽霊や化け物でもいるってのか、この島には! それとも私達の中に犯人がいるっ
て言いたいのかよ!」
律が興奮し声を荒げる!
「律、どうしたの? だいじょうぶ?」
「怖いんだよ……。いきなり梓が死んじゃって密室殺人だなんだって……怖い、怖いんだよ。ヒック、ヒック」
「律……」
泣き始める律を抱きしめて頭をなでる。それでも律の涙は止まらなかった……。
しかし、内部犯説がないわけではない。梓ちゃんと別れた後それぞれ一人で遊ぶということになり、みんな思い思いに遊んでいた
からだ。実際私も一人で遊んでしたし、あの時間誰がどこにいたか完全把握はしていない。
今回のことをちょっと整理してみる。
- キッチンに梓ちゃんの死体
- 内蔵がぶちまけられ、他殺以外ありえない
- 全てのドアと窓が施錠されていて完全な密室
- 別荘の鍵はムギの持っている2本だけ
- 梓ちゃんに貸し出した鍵は梓ちゃんの部屋にあった
- みんなにアリバイがない
CASE1 END
CACE2
食事をしたあと、リビングでくつろぐ。
「ごはん美味しかったね、あずにゃん」
「そうですね。みんなで料理できて良かったです」
唯と梓ちゃんがソファーに座って話している。
「澪、いつまで落ち込んでんだよ」
「だって、だって……」
「そうよ澪ちゃん、落ち込まないで」
澪が料理で失敗してしまい、律とムギがそれを慰めている。
「そうですよ澪先輩。料理すごく美味しかったですから」
梓ちゃんも続いて声を掛ける。
「本当?」
おどおどしながら澪が顔を上げた。
「澪、みんな気にしてないから」
私もみんなに乗じて話しかける。
「うん……ごめんね、みんなありがと」
そう言って澪はいじけるのをやめた。
「あのぉ、ちょっと部屋に言ってきますね」
「忘れ物か? もう少ししたら練習だから早く戻ってこいよ」
「はい、ちょっと……すぐに戻ってきます」
梓ちゃんは澪にそう告げるとリビングから出て行った。
「遅いなぁ梓のやつ……」
澪がそうつぶやいたのは梓ちゃんが部屋を出て行ってから30分ほどたったあたりだ。
「そうね、いくらなんでも遅いわ……」
私も澪に同調し心配する。
「和、ちょっと梓の部屋に行ってみるか?」
「ええ、そうね」
私と澪はソファから立ち上がる。
「みんな、梓が心配だからようすを見てくるよ」
澪がそう告げてから部屋を一緒に出てた。
梓ちゃんの部屋の前に立ち、澪がドアをノックをする。
「おぉい梓、大丈夫か?」
しかし、返事はない。
「おぉい返事しろぉ! 梓?」
やっぱり返事はない。
「どうする和? 入ってみるか?」
「そうよね、やっぱり心配だし……」
澪は私に確認を取り、ドアを開けた……。
部屋の中に入って目に飛び込んできたのは、床に倒れている梓ちゃんだった!
「梓! 梓あぁああああああああああ!?」
澪はそう叫ぶと足が崩れ、その場で膝をついた。
「梓ちゃん!?」
私は梓ちゃんに向かって走った!
「大丈夫!? 返事して! 梓ちゃん!?」
しかし返事は帰ってこない。私は梓ちゃんの体を調べる……。
「死んでる……」
「ひいいいいいいいいいいいいっ!」
梓ちゃんは息をしておらず、完全に絶命していた。
澪がさらに叫ぶと階段のあたりが騒がしくなる。
「澪! 和! 何かあったのか? 叫び声が聴こえたけど!?」
律がそう言いながらこちらに向かってくる。唯とムギも律に続いてやってきた。
最終更新:2011年10月12日 02:28