みんながパニックになるのを何とか抑え、状況の把握を開始する。
 澪と唯はショックで疲れてしまい、ムギが付き添ってリビングに戻って行った。今は梓ちゃんの部屋に私と律がいる。
「どうして、突然……?」
 律が下を向きながら質問する。
「解らないわ。急な発作とかかもしれないし、自殺の可能性も……でも襲われたあとはないから、他殺ではないと思うんだけど」
 そう、梓ちゃんの死体に衣服の乱れや痣などはなく、襲われたあとは何もなかった。
 しかし表情はすごく苦しそうで、まるで地獄の業火に焼かれているような、お世辞にも安らかな顔とは言えなかった……。
「おい、これなんだ!?」
 梓ちゃんの口元を指差して律が驚いている。
「何かあったの?」
 律が指を差している先を見てみる。良く解らないものが梓ちゃんの口元に付着していた。
 どこかで見たことがあるような、全く見たことがないようなもの、固体ではあった。
「もしかして……毒か何かなんじゃないか!?」
「毒!? まさか!?」
 そう否定したものの断定はできない。梓ちゃんの苦しそうな表情を見ているとそう思えなくもない。
「もし、それが毒なら自殺って……こと?」
 恐る恐る聞いてみる。
「梓が自殺なんてするかよ! でも……もし、そうならいったい……」
 律がそう言ったあと、どちらも言葉発することはなかった……。


 今回のことをちょっと整理してみる。
  • 梓ちゃんの部屋に梓ちゃんの死体
  • 死体に襲われたあとはない
  • 死体の口元に毒? のようなものがあった
  • 梓ちゃんが部屋に行ってからは全員がリビングにいて、誰も部屋から出なかったので全員にアリバイがある


CACE2 END




 CACE3

「そろそろ練習行くぞ」
「ええぇ、肝試しやろうぜ」
「いーやーだ!」
 そんな澪と律のやりとりがあり、スタジオへ行くことになった。

「あずにゃん、部屋に行ってからなかなか帰ってこないね」
「練習に行くって言ってあるし、すぐに来るだろ」
 唯の疑問に澪が答える。
 食事をしてからリビングでくつろいでいる時に、用事があると言って梓ちゃんが自分の部屋へ行ってから少し時間がたっていた。

 スタジオのドアを開けて中に入ろうとした瞬間、
「きゃあああああああああああああっ!」
 澪の絶叫がこだまする!
「どうしたの澪!?」
 少し離れたところにいた私は澪に駆け寄りスタジオの中を見る。
 昨日唯達が演奏した場所に梓ちゃんがいた。内臓がぶちまけられ、床に倒れている梓ちゃんが……。


 みんながパニックになるのを何とか抑え、状況の把握を開始する。
 調べるまでもなく梓ちゃんは死んでいた。スタジオのドアに鍵は掛かっていない。
「不審者がこの別荘の中に忍び込んでいるんじゃないか?」
「ひいいいいいいいいいっ!」
 律の発言に澪が怯える。
 明らかな殺人で、私達全員にアリバイがある以上、外部犯を疑うのは当然だろう。
 全員にアリバイというのは、梓ちゃんがリビングを出て行ってから、誰もリビングから出て行っていないからだ。

「みんな、これを見て」
 ムギがカメラを指差しながら言った。
「どうしたの?」
 ムギの方に向かう。
「昨日、練習風景を撮影したじゃない? その時録画機能を切り忘れたみたいで、ずっと録画し続けてたみたいなの……」
 ムギは悪いことをしたように言った。
「じゃあ、もしかして梓ちゃんが殺される場面が写ってたりするんじゃ……」
 そう言うとみんなが黙り込み、場を静寂が支配した。


「見て……見るか?」
 静寂を律が破った。そしてその問いかけに全員がうなずく。
 ムギがカメラの映像をゆっくり巻き戻していく。妙なことが起きた。いくら巻き戻してもずっと同じ映像なのだ。梓ちゃんの死体
が映っている映像から動かない……。1時間ぶん巻き戻すが動かない……。
 ただ、何もかもが同じというわけではない、部屋の中にある掛け時計が映像に映っているのだけど、その時間表示だけは巻き戻す
につれ変わっていった。
「おかしいって、なんでだよ! 梓がリビングから出て行ったのって30分ぐらいまえだろ! なんで1時間前に死体がここにある
んだよ!」
 律の言う事はもっともだ。明らかにおかしい!
 どんどん巻き戻して行くが変わらない……。ずっと梓ちゃんの死体が映っている……。
 そして映像がついに動き出したのは深夜3時頃の場面だ。梓ちゃんの死体カメラに映る範囲に投げられた所が再生された。
 犯人は映っておらず、謎だけが残った。みんなが驚愕して、言葉を出せない中、律が叫んだ!
「深夜3時には梓は死んでたってことかよ! 一緒に海で遊んだ梓は!? 一緒に料理を作って食べた梓はいったい誰なんだよ!?」 その疑問に誰も答えられるわけもなく、私達はただ黙っていることしかできなかった……。


今回のことをちょっと整理してみる。
  • スタジオに梓ちゃんの死体
  • 内蔵がぶちまけられ、他殺以外ありえない
  • スタジオに鍵はついていない
  • 30分ほどまえに梓ちゃんの生存を確認
  • カメラの映像で深夜3時に梓ちゃんの死体がスタジオにあったことを確認
  • 梓ちゃんが部屋に行ってからは全員がリビングにいて、誰も部屋から出なかったので全員にアリバイがある
  • 深夜3時頃のアリバイはみんなそれぞれ部屋にいたのでない


CASE3 END




CASE4

「今日もいい感じだったね、あずにゃん」
「めずらしく練習熱心でしたね、唯先輩」
 合宿最後の練習が終わり、各々感想を言い合う。
 私はその輪の中に入れないので少し羨ましい。
「おい、外すごいことになってるぞ!」
 律が窓越しに外を見ながら言った。
「ほ、本当ですね」
 梓ちゃんが驚く。
 私も窓から外を見た。そこは嵐になっていた。
 大雨洪水暴風警報と言ったところだろうか……。
「すごいわねぇ」
 そう言った瞬間、眩しい光が目に入ってくる。遅れて大きな音が鳴り響いた!
「きゃああああああ!」
 澪が耳を抑えてうずくまりながら叫ぶ。
「澪ちゃん大丈夫?」
 ムギが澪に寄り添う。
「澪は怖がりだなぁ」
 律はそう言ったが、自分も怖いようで少し震えている。
 外はこれから起こる事件を予見するかのように荒れに荒れていた。


 みんな一緒に寝よう。そう澪が言うと、みんなその案に賛成する。
 何だかんだと言って、みんなやっぱり怖いみたい。
 かく言う私も少し……。
「ちょっとせまいです」
 梓ちゃんがそう言うのももっともで、1人用の個室に6人もいるのだからすごくぎゅうぎゅう。
「あずにゃーん」
 唯がこりもせず梓ちゃんに抱きつく、そして当たりまえのように拒否される。
「唯先輩やめてください! ただでさえせまいんですから」
 この状態を作り出した張本人はというと、まだ震えていた。
「大丈夫? 澪ちゃん」
「う、うん……」
 さっきからムギは澪を付きっきりで介抱している。
「もう、本当に澪は怖がりだなぁ」
 律が私の隣でそうつぶやういた。
「仕方ないんじゃない? この嵐だもの」
「それでも限度ってものがあるぜ」
「ムギに澪を取られて悔しのね?」
「そ、そんなわけないだろ!」
 そう私がからかうと律は顔を真赤にした。


「ちょっとお手洗いに行ってきます」
 梓ちゃんがおしゃべりも尽きて、そろそろ寝ようとしたころにそう言って立ち上がった。
「あずにゃん怖くない? 私が付いて行ってあげようか?」
「だ、大丈夫です唯先輩! 子供じゃないんですから!」
 梓ちゃんは唯の申し出を断って部屋から出て行った……。

「あずにゃん帰ってこない! 捜しに行こう!」
 梓ちゃんが出て行ってから1時間ぐらいたった頃に唯がそう言った。
 実は数10分たった頃から言っていたのだが、トイレということでみんな少し遠慮していた。
 しかし、さすがに1時間ともなると、みんな唯に同意して捜しに行くことになった。
 澪と律、私と唯とムギの3組に別れて梓ちゃんを捜しに行く。
「あずにゃーん! どこぉ?」
「梓ちゃーん、いたら返事してぇ」
 トイレに行ってみたがそこには誰もおらず、スタジオの方を捜しにいると、
「きゃぁああああああああああああ!」
 叫び声が聴こえた! それが澪のもなのか、律のものなのか、はたまた梓ちゃんのものなのか分からないが、私達は悲鳴の方へ向かった。



「あの悲鳴ってどこからのもの?」
「たぶんダイニングの方じゃないかしら?」
 ムギからそう聞くと一目散にダイニングに走る!

 ダイニングにつくと、そこには座り込んでいる澪とそれを慰めている律がいた。
「どうしたの?」
 私がそう聞くと律がダイニングの中を指差す。
 中を見てみると、そこは嵐となっていた!
 何故かいくつもの窓が開いていて、部屋の中に雨が入り込み、風も舞っている。
 テーブルの上にあった花は、その風に飛ばされたようで床に落ちていた。
 そして、その風が吹く部屋の中央に梓ちゃんがいた。内臓がぶちまけられ、床に倒れている梓ちゃんが……。


「あずにゃんが死んでる!」
 唯はそう叫ぶと震え始めた。
 当然だ、死体を見れば誰でもそうなる。
 澪と唯は震えてるし、どうすればいいの? そう思っていると、突然何かが割れる音がした。
「きゃっ!?」
 いったい今度は何!?
「どこかの窓が割れたのかしら? ちょっと行ってくるわ」
 そう言ってムギが行こうとする。
「待ってムギ、私も行くわ」
 さすがにムギを1人で行かせるわけには行かない。
「私も行く……」
「私達も行くぞ」
 みんながそう言い出すと、
「じゃあ、みんなで行きましょう」
 ムギは落ち着いてそう言った。
「急ごう」
 私達はその場を離れ、音が鳴った方に向かった。


 音の正体は、窓ガラスにこの嵐で飛んできた木材が突っ込んだ物だった。
「何よこれ?」
 玄関にあった窓ガラスが割れて中に飛び散っており、雨も外から入り込んでいる。
「こんな小さいものでも嵐の中だと凶器になるのね……」
 木材は比較的小さなものだったけど、嵐で加速が付いた木材は窓ガラスを割るのにじゅうぶんなようだ。
「掃除するわ」
 ムギが玄関にあった箒とちり取りを持ってくる。
 散乱している割れた窓ガラスを掃除し、外からの雨を防ぐのに応急処置を施す。
 私とムギがそれをして、震えている唯と澪を律が介抱するという感じだ。
「あ、いけないわ」
 掃除と応急処置が終わろうとしている時にムギが言い出した。
「どうしたの?」
「ダイニングの窓閉めて来なきゃ。さすがに掃除は無理だけど、それぐらいはしておかないと……」
「そうね私も行くわ」
 死体がある部屋に行くのはいやだけど、このままにしておく訳には行かなし、なによりムギを1人にはできない。
「律、私とムギが行ってくるから、2人を部屋に連れて行ってあげて」
「分かった、任せといて」
 そう言って律が2人を連れて行こうとする。
「私達も行きましょう」
「うん」


「……嘘?」
 さっきダイニングに来たときは有ってはいけないものが有った。
 今度は無くなってはならないものが無い!
「梓ちゃんの死体がない!」
 私達が目を離した隙に忽然と梓ちゃんの死体が部屋から消えた。
「そんな……」
 さすがのムギもそれには恐怖している。

 呆然としている私達を尻目に部屋の中も外も嵐が舞っていた……。

 今回のことをちょっと整理してみる。
  • ダイニングに梓ちゃんの死体
  • 内蔵がぶちまけられ、他殺以外ありえない
  • ダイニングに鍵はついていない
  • 消えた梓ちゃんの死体


CASE4 END




CASE5

 重たいまぶたを開けてベットから出る。
 メガネを掛けて窓から外を見てみると、そこは青い空が広がっていた。
「いい天気」
 今日は合宿最終日、と言っても食事をして帰るだけなんだけど。
 着替えて個室を出ると、その瞬間!
「きゃああああああああああああ!」
 すぐ近くから誰かの悲鳴が聴こえた!
「澪! どうしたの!?」
 澪はすぐ近くにいて、部屋の中を指差している。
「梓ちゃんの部屋?」
 澪の近くに行き、部屋の中を見た。
 そこは赤い空が広がっていた……。
「うっ」
 気持ち悪い、吐きそう!
 口を押さえ何とか我慢する。
「おい、何があった!」
 律と唯とムギがやってきた。
「あずにゃんが死んでる!」
 部屋の惨状を見た唯がそう叫んだ。


 みんながパニックになるのを何とか抑え、状況の把握を開始する。
 澪と唯はムギがリビングに連れて行って介抱している。
「なんて、ひどいの」
 私と律は部屋の中に入って何かないかを調べている。

 部屋は血だらけで、ベットや床には血がべっとり。
 梓ちゃんの首は裂かれ、体も何かに刺されたあとがある。
 凶器は見当たらない。
「刃物による刺殺ってところかしら」
 メガネをくいっとあげて探偵らしくしてみる。
「おい、これなんだ?」
 律が何かを発見したようで壁を指差している。
 そこには、

 ファ6ド1

 と壁に血で書かれていた。


「ダイイングメッセージ!」
 梓ちゃんが残した最後のメッセージ……。
「ファ6ド1って意味が分からないんだが?」
「簡単に意味が分かったらダイイングメッセージにならないでしょ」
「そ、そうだな、ううんファ6ド1……和、分かるか?」
「待って、今考えてるから……あっ!」
「どうした?」
「ちょっと部屋に戻るから!」
 梓ちゃんの部屋を出て自分の部屋に戻る!
 律が何か言っていた気がしたけど、無視する。
 紙を取り出しいろいろと書く、自分の考えがあっているか確認するために!
「やっぱり……」
 自信が確信に変わった。

 今回のことをちょっと整理してみる。
  • 梓ちゃんの個室に梓ちゃんの死体
  • 刃物による刺殺で他殺以外ありえない
  • 個室に鍵はついていない
  • ダイイングメッセージ「ファ6ド1」


CASE5 END 



最終更新:2010年03月23日 02:16