ばたん

唯「………」

和「…律は?」

唯「泣き疲れて眠っちゃったよ…」

紬「…そう」

唯「…りっちゃん、一体どうしたのかな?」

和「分からないわ…明日律に聞いてみましょう」

唯「うん…」


―次の日

律「おはようみんな!」

唯「りっちゃん…」

紬「もう大丈夫なの?落ち着いた…」

律「えっ?何が?」

和「なにがって…昨日澪の名前を呼んで泣き叫んでたじゃない」

律「澪…?……ああ!秋山さんか!…でも私そんな記憶ないぞ?」

和「…え?」

唯「何言ってるのりっちゃん…?」

紬「からかわないでよ…!」

律「からかうもなにも…本当に知らないし…」

和「…これはどういうこと?」

唯「分からないよ…」

紬「これは澪さんにあって聞いた方がいいわね…」


―次の日

紬「……というわけなの…」

澪「………」

和「なにか律のことについて知らないかしら…?」

澪「………」

唯「…黙ってないでなんとか言ってよ!」

澪「…みんな、私からのお願いです。…軽音部を辞めてくれませんか?」

和「えっ?」

紬「なにいって…」

唯「…そんなこと出来る訳ないじゃん!」

澪「お願いします。これが…律の為なんです」

唯「なにそれ…意味わかんないよ…」

澪「…今に解りますよ」

和「…律のことについてもっと教えてくれないかしら?」

澪「………」

紬「澪さん!お願いです…教えてください!」

澪「…私からは何も話せません。すみませんが今日はもう帰ってください」

唯「そんな…教えてよ…!」

澪「いいから帰ってください!」

和「…わかりました。今日はこれで失礼します」

唯「和ちゃん!このままでいいの…!?」

和「いいから唯は黙ってて…」

唯「でも…!」

紬「唯ちゃん。ここは和ちゃんの言うことを聞きましょう?」

唯「…なんで?みんなりっちゃんが心配じゃないの…?」ぽろぽろ

和「…心配に決まってるじゃない。ここにいるみんながそう思ってるわよ」

澪「………」

紬「…それじゃ、そろそろ私達は帰りますね。…お邪魔しました」


がちゃっ  ばたん…

澪「………」

澪「律…りつぅ…」ぽろぽろ



―別の日

律「よーし!そろそろ学祭に向けて特訓だ!」

唯「………」

紬「………」

和「………」

律「…どうしたんだよお前ら。最近元気ないなぁ」

唯「…そんなことないよ!さぁ、練習しよう!」

律「…・?お、おお!」

和「そういえば学祭では何を演奏するの?」

律「あ…そういえば考えてなかった…」

和「まったく…何かないかしら?」

紬「一応、私作詞作曲出来るんですけど…」

唯「へぇ!すごいねぇ♪なら学祭はムギちゃんが作った歌で…」

律「だめだ!」

唯「えっ?…どうして?」

律「どうしてって…あれ?私何言ってんだろう…ごめんムギ!ムギの歌がダメとかじゃなくて…」

紬「大丈夫よ。気にしてないわ♪」

律「ありがとう…私さ、学祭で演奏したい曲が一つだけあったんだ」

和「へぇ、なんて曲?」

律「えーっと…確か…なんだっけなぁ…」

唯「忘れちゃったの?りっちゃんらしいなぁ」

律「…そうだ!思い出した!確か曲名は…」

律「ふわふわ時間!」

和「ふわふわ時間?聞いたことないわね…」

紬「どんな曲なの?」

律「えーっと、確か…」

律「キミを見てると、いつもハートどきどき…揺れる思いはマショマロみたいにふわふわ…
  いつも頑張る…キミの…キミの………なんだっけ?」

唯「…何その歌。私知らないよ」

紬「…私も」

和「…同じく」

律「えー、みんなも知らないのー?なら演奏のしようがないじゃん」

唯「…やっぱりここはムギちゃんにお願いしようよ」

律「う…頼む!絶対思い出すからみんなでこれをやろう!」

唯「…どうするみんな?」

和「まぁ2、3日待ってあげましょう」

律「サンキューみんな!絶対思い出すから待っててくれ!」 


―田井中家

律「うーん…見付かんねえなぁ」カチッ

聡「ねえちゃん!いつまでパソコン使ってんだよ!?」

律「あーごめんごめん!えーっと…聡!」

聡「……姉ちゃん。もしかしてまた…」

律「んー?何か言ったー?」カチッ カチッ

聡「…なんでもねぇよ。さっきから何調べてんの?」

律「曲を探してるんだけど…見付からない…」カチッ

聡「…仕方ないなぁ。俺も手伝ってやるよ」

律「おぉ!ありがとう愛しの弟!」

聡「わかったから…それで?なんて曲?」


―次の日

律「…結局曲のことわからなかったなぁ。……あれは?おーい!秋山さーん!」

澪「あ…田井中さん…」

律「おはよう秋山さん!…このあたりを歩いてるってことは、もしかして家近所?」

澪「…そうだよ」

律「やっぱり!私、全然知らなかったよ」

澪「そうなんだ…私は知ってたよ…」

律「あ…そうなんだ。…なんかごめん」

澪「…いいよ。気にしないで」

律「うん…そうだ!一緒に学校行こうよ!」

澪「…うん。いいよ」

律「………」

澪「………」

律「……(気まずい。何か話をふらないと…そうだ!)…ねえ秋山さん」

澪「ん?」

澪「ふわふわ時間って曲知ってる?」

澪「…!」

律「確か…キミを見てると、いつもハートどきどき…揺れる思いはマショマロみたいにふわふわ…いつも頑張る…キミの…キミの………」

澪「…横顔。ずっと見てても気付かないよね」 

律「え…?」

澪「夢の中なら二人の距離縮められるのにな」

律「…あぁカミサマお願い二人だけの…」

律(…この先は知っている)

律「♪ドリ~ム~タイムく~だ~さい☆お~気に~いり~のうさ~ちゃん抱いて~

澪律「今夜~も、お~や~すみ♪」

律「…思いだした。っていうか秋山さんがこの歌を知ってるなんて…」

澪「…知ってるよ。私の好きな歌の一つだもん」

律「そうなんだ…」

澪「うん」

律「…もう一つ教えてほしいんだけど、これって、誰の曲?」

澪「…もう忘れちゃった。…ただ」

律「ただ…?」

澪「この曲は大好きな人のことを歌った曲なんだ。いつもがむしゃらで…夢は叶うって信じ続けていて…彼女のことは忘れても、夢だけは絶対に忘れられない…そんな人のことを歌った曲なんだよ。それだけは覚えてる」

律「…なんか悲しい曲だな」

澪「…どうしてそう思うの?」

律「だって、これは彼女視点の曲なんだろ?秋山さんの話が本当なら彼女は忘れられちゃうんだろ。そんなの…悲しいよ」

澪「…そんなことないよ」

律「え…?」

澪「彼女は忘れられたってその人のことが好きなんだから。ずっと思い出すって信じて待ち続けているんだから…」

澪「だから、彼女は悲しくなんかないよ」

律「…そっか」

澪「うん」

律「…私、秋山さんのことさ、澪って…」


『みーお。何書いてんだー?』

『ちょ、ちょっと律!勝手にみるな!』

『いいじゃん減るもんじゃないし!どれどれ…。…ふわふわ時』


澪「律!しっかりしろ!」

律「…はっ!?」

律「澪…?」

澪「大丈夫?急にぼーっとしちゃって…」

律「う、うん。大丈夫だよ」

澪「そう…良かった。早く学校に行こう。田井中さん」

律「そ、そうだね秋山さん…」

律(気のせいかな?さっき私のことを律って…それに私も澪って…)

澪「………」


……

律「みんな!曲を思い出したぞ!」

和「へぇ。どんな曲なの?」

律「ふふん♪最初から最後までよーく聞いてろよ!それじゃ、歌います!」

唯「りっちゃんが歌うんだ…」

律「しょうがないだろ調べても見付からなかったんだから!それじゃ…」


~~~~♪

律「ふわふわ時間!…どうだった?私の歌声と曲は」

和「…両方とも微妙ね」

紬「そう?私はいいと思うなぁ」

律「だろ!?唯はどうだ!?」

唯「…歌声はともかく曲はすごくいいよ!学祭はこれでいこう!」

律「よし!決まりだな!…あれ?何か腑に落ちないけどまぁいいや!」

和「そういえばこの曲、調べても見付からなかったのよね?ならこれは誰の曲なのかしら?」

紬「そう言われてみれば確かに…」

唯「?言ってる意味が良く分からないよ」

和「だから、普通はどんなマイナーな曲でもネットで調べればすぐ見つかる筈でしょ?だから誰が作ったのかなって…」

唯「あーなるほど。ならすごくマイナーだから見付からなかったとか…」

律「…いや、秋山さんの口ぶりだとそんな感じじゃなかったぞ」

和「えっ?澪もこの曲知ってたの?」

律「澪って…。お前いつからそんなに親しくなったんだよ」

和「まぁ色々あってね。そうか…澪が…」


澪「…それで私の所まで来たんだ」

和「えぇ、この曲のことで知りたくてね」

紬「澪ちゃんは何でこの曲を知ってるの?」

唯「また隠したりしないでね」

澪「…分かったよ。ちゃんと話す…その前に2つ約束してくれないか?」

和「何かしら?」

澪「この話を律に話さないこと。それと…笑わないこと」

和「…わかったわ。約束する」

唯「笑わないことって…もしかして笑い話なの?」

澪「いや…まぁ、まずは聞いてくれ。実はこのふわふわ時間っていう曲を作ったのは…」

澪「…私なんだ」

一同「な、なんだってー!?」

和「あなたがこんな寒い…じゃなかった。いい曲を作ったの?」

澪「…そうだよ。どうせ寒い曲だよ」

紬「私はそんなこと思いません!とても素晴らしい曲だと思います…」ウットリ

唯「すごいね澪ちゃん!まさかこんな才能があるなんて!」

澪「そ…そうかな…///」

和(…私の感覚っておかしいのかしら)

澪「…そうだ!話を本題に戻そう」

和「…ようやくね」

澪「みんなにも知っておいて貰った方がいいかもしれない…律のことを」

唯「話してくれるんだ?」

澪「ああ、みんなはこんなにも律を心配してくれてるだろう。だから知っておいてほしいんだ」

唯「この前だってすごく心配してたんだけどなぁ…」

澪「…あの時はごめん。まだみんなを信じられないでいた」

紬「気にしないで♪」

澪「ありがとう…」

和「…それで律は?一体何があったの?」

澪「…あぁ、今から話そう。これは私達が中学生の頃の話だ…」


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最終更新:2010年01月22日 16:55