ジャーン!

律「…すげぇ」

澪「あぁ…すごい…」

律「だろ!?誰だよライヴのDVDなんか見たくないとか言ってたのは!?」

澪「…私です」

律「恐れ入ったか!えっへん!」

澪「…でもこんなステージの上で歌えたら気持ちよさそうだな」

律「おやおや?恥ずかしがり屋の澪さんも言う様になりましたね~」ニヤニヤ

澪「う、うるさい!」

律「でもそれには私も同感だよ。私もこんなステージに立ちたいな~」

澪「無理だろ…プロにでもならない限り」

律「…!そうだよ…なればいいんだ」

澪「は…?」

律「だったらプロになればいいんだよ!な~んだ、簡単なことじゃないか!」

澪「…マジで言ってんの?」

律「マジだよ!」

澪「馬鹿だなぁ…なれる訳ないだろう」

律「はぁ…お前って夢がないなぁ」

澪「なんだと!?」

律「いいか?目を閉じてみろよ」

澪「?…こうか?」

律「想像してみろ!ここは武道館だ!」


―私達は何万もの観客の前に立っている。ここまでの道のりは決して楽なものではなかった。

 時には才能がないと言われたり…時にはまったく曲がヒットしなかったり…。ここまで来るのに本当に色々あったよ。

 でもわかる人にはわかる、見てくれている人は見てくれていたんだ。私達の音楽は徐々に大衆に受け入れられ始め、今じゃオリコンで1位をとるほどだ。

 そして私達は今ここに立っている!世間が私達を求めてくれているからだ!


 律「本当にここまで来るのに色々あったなぁ」

 澪「ああ、あとはこのライヴを成功させるだけだ」

 律「そうだな…よし!やってやろうぜ相棒!」

 澪「望むところだ!」

律「そして私達は黄色い声援をあび、観客の前に姿を現す…そこで!」

澪「え…?まだ続くの?この妄想…」

 『律ーーー!!!こっち向いてくれーーー!!!』

 『澪ー!!!俺だー!!結婚してくれーー!!!』

 澪「すごい人の数だな…緊張する…」ゴクリ…

 律「何言ってんだよ?後は演奏するだけだろ。ほら、みんなの声援にこたえてやろうぜ」

 律「みんなーーーー!!!今日は来てくれてありがとーーーーー!!!!」

 『うおおおおおおおおおおおおお!!!!!』

 『りっちゃあああああん!!!澪ーーーーーー!!!』


 律「早速だが聞いてくれ!!!」

 そして私達は華麗に演奏する。私達がドラムを叩く度に、澪が…えーっと、ベースでいいや。ベースの弦を弾く度に観客のテンションは上がっていくんだ。

 もちろん私達だって同じだ。会場全体がやがて一体となり、気分も最高潮になってきた頃、私達は観客に向かって一言叫ぶんだ。

 律「お前らーーー!!!!最高だぜーーーーー!!!!」

 澪「今夜は朝までぶっ飛ばすぞーーー!!!」

 『いえええええええええいえええええええい!!!!』


律「…てな訳だよ!どうだ!?興奮するだろ!?」


澪「…あっ終わった?」

律「…そうだよ。私がやりたいのはこれなんだ…」プルプル

律「これだよこれ!私がやりたかったのは!一緒にバンドやろうよー!」

澪「えー?本気で言ってんのか?」

律「もちろん!もしプロになったらギャラは七三ね!」

澪「…どっちが七だ?」

律「もちろん私だよん☆」

澪「………」びしっ!

律「あいたっ!」

澪「まぁ…バンドは組んでやってもいいよ」

律「本当か!?ありがと澪!大好き♪」ぎゅっ

澪「な…!離れろ馬鹿律!///」

律「え~?もう少しこのままがいい」

澪「……なら好きにしろ///」ドキドキ

律「……よし!そろそろ楽器でも買いに行くか!」バッ!

澪「あ……うん、そうだね…」ショボン

律「ん?どうしたの澪?」

澪「…別に」


―楽器屋

律「…楽器って高いなぁ…」

澪「ああ…ベースってこんなにするんだ…」

律「…よし!お母さんに小遣い前借してみる!」

澪「そうだな。私も頼んでみるよ」


―田井中家

律「お願いします!お小遣い前借りさせて下さい!」

律母「何かほしいものでもあるの?」

律「ドラム!」

律母「はぁ!?あんたドラムなんて叩けたっけ?」

律「…全くできません」

律母「…。いくらほしいの?」

律「…とりあえず五万円」

律母「五万!?」

律母「あんたねぇ…もう少し考えてみなさい。そんな高いもの買って飽きたらどうするの?勿体ないでしょ」

律「考えたよ!それに私はプロになるんだ!だから絶対に飽きない!」

律母「………」

律「だから…お願いします!お小遣い前借りさせて下さい!」

律母「…これ、とりあえず三万。残りは来月まで待ってなさい」

律「お母さん…!」

律母「それと…これから毎日家のお手伝いをすること!いいわね?」

律「はい!心得ております!やったー!」

律母「まったく、調子がいいんだから…。この子も澪ちゃんみたいにお淑やかになってくれれば…」


―そして一ヶ月後

律「やったー!やっとドラム買えたぞ!」

澪「私もベース買えたよ!」

律「これから毎日練習しような!」

澪「ああ!そしてがんばってプロになろう!」

律「でも、まずはその前にバンドを組まないとなー」

澪「…確かに。…律、約束しよう。高校にいったら必ず私とバンド組むって」

律「…分かった。約束だ!必ずバンドを組もうぜ!澪!」




和「…そんなことがあったのね。なら律が軽音部に入ったのは…」

澪「…あぁ。夢を忘れられないから」

唯「…でも澪ちゃんと一緒じゃなくちゃ意味ないじゃん」

澪「あいつは私よりも夢が大事なんだ。でも、私はそんな律のことを嫌いだとは思わない」

紬「どうして…?私なら夢より自分のことを覚えていてほしい…」

澪「…私の夢は、律の夢だから。たとえ同じステージに立てなくたって、私の夢は律と一緒に生き続けてるから」

和「…強いのね」

澪「そんなことないよ。私はあの日から何も変わっちゃいない…」

澪「あの日から何も…」



―秋山家

律「澪ー!ここわかんないよー」

澪「どれどれ…ここさっきも教えただろ?」

律「忘れた」

澪「おい。はぁ…お前がそんな調子じゃ私と同じ高校は無理だな」

律「だからがんばって勉強してるんじゃん!」

澪「でもこの調子じゃなぁ…これじゃバンドは組めないな」

律「なにぃ!?…澪!あの日の約束は嘘だったのか!?」

澪「…嘘じゃないよ。だからこうやって勉強教えてやってんだろ?頑張ってプロになるんだもんな」

律「そうだよ!」ニカッ

律「………」カリカリ

澪「………」カリカリ

律「………」カリカリ

澪「………」カリカリ

律「…みーお。何書いてんだー?」ヒョィ

澪「ちょ、ちょっと律!勝手にみるな!」

律「いいじゃん減るもんじゃないし!どれどれ…。…ふわふわ時間?…何これ?歌詞?」

澪「…そうだよ。悪いか」

澪「今から曲の一つでも作っておいて方がいいかなと思って…」

律「へ~、どれどれ…」

―キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI  揺れる思いはマシュマロみたいにふわ☆ふわ

  いつもがんばるキミの横顔 ずっと見てても気づかないよね

  夢の中なら二人の距離縮められるのにな

  あぁカミ

律「もう限界!なんだよこの歌詞…?」

澪「…頑張って書いたんだけど…変かな?」ウル…

律「うっ…。まあ曲を聞いてみないと何とも言えないな…」

澪「実は作曲はもうしてあるんだ…」

律「なに…?」

澪「まぁとりあえず歌ってみるから…聞いててね?」

律「…わかったよ(あの歌詞がどう化けるんだ…?もっとひどいことになったりして…)」

澪「こほん…それじゃ…」


~~~~♪


澪「ふわふわ時間!……どうかな?やっぱり変?」

律「………」

澪「律…?」

律「…驚いたよ。すげーじゃん澪!」

澪「え?…そうかな?///」

律「ああ!歌詞はともかく曲はいいと思うぜ!よーし!これを初めてのライヴで絶対に歌うぞ!おー!」

澪「おー!…あれ?何か府に落ちないけどまぁいいか!」

律「…よし、そろそろ帰るかな」

澪「そうだな…もう結構遅いし気をつけて帰れよ」

律「大丈夫だって!家なんてすぐ近くなんだし」

澪「…まぁ、それもそうだな」

律「それじゃまた。…澪」

澪「ん?」

律「今日勉強教えてくれてありがとう!私頑張って澪と同じ高校に行くから!」

律「…だから、必ず一緒にバンドやろうな!」

澪「あぁ。当然だ」

律「えへへ…それだけ!じゃぁまた!」


がちゃ ばたん

ビュオオオオオオ…!

律「さびぃ…結構吹雪いてるな。早く家に変えろっと!」

澪「…ちなみにこの年はあの吹雪があった年だ」

和「異常気象って言われた、あの?」

澪「そう。…思えば、あの吹雪は律をそうさせる為に起きたのかもしれない…」

唯「考えすぎだよ…」

紬「そうよ。異常気象なんだもの…仕方がないわ」

澪「…そうだよな。私の考えすぎか…」

和「…それでその後律は?」

澪「…あぁ。律は…」

律「…寒いな。吹雪なんて異常だぞ…早く家につかないかな」

ざくっ ざくっ

律「…しかし澪が作詞作曲するなんてびっくりしたな」

ざくっ ざくっ

律「へへっ、やる気なのは私だけじゃないんだよな。澪と同じ夢を追いかけられるのは…すごく嬉しい」

ざくっ ざくっ

律「それにあのふわふわ時間って歌も中々いい歌だな。澪って才能あるのかな?」

ざくっ ざくっ

律「…ふわふわ時間♪」

ビュオオオオオオ…!

律「うわっ…前が見えな…」


……

ピーポーピーポー

澪「…?外が騒がしいな。事故かな?」

澪「まさか律になにか…いや、それは無いだろう」

ピーポーピーポー

澪「家だって近いんだ。気いっと今頃家でごろごろしてるんだろうな」

ピーポーピーポー

澪「…さて、私もそろそろ寝るかな」

澪「…お休み律」


―次の日

澪「律ー!!!」

律母「澪ちゃん…」

澪「おばさん…律は…?律はどうなったの!?」

律母「………」

澪「おばさん!!!」

聡「…姉ちゃんさ…車にはねられたんだって…」

澪「そんな…どうして…」

聡「…昨日の吹雪のせいだよ。あのせいで前が見えなくなって…それで……」

聡「…車が姉ちゃんに突っ込んできたんだよ」

澪「…それで…律は助かるの?」

聡「………」

澪「聡君!!!」

聡「…俺だって知らないよ!!!……姉ちゃん…ねえちゃあん」ぽろぽろ

澪「……嘘だこんなの…」




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最終更新:2010年01月22日 17:00