澪「三浦さん!! 何か困った事があるならいつでも言ってね!!」

唯「うわぁ! ビックリした!」

澪「私…いくらでも協力するからっ!!」

律「なんかスイッチ入っちゃったな…」

茜「あ、ありがとうございます。でも…私は大丈夫ですから…」

茜「母も元気ですし、特に困ったこと…ありません…から」

澪「なんて健気な…」ウルウル

律「と、ところでさ~軽音部に興味あるってことは何か楽器を?」

茜「は、はい…今日は持ってきてませんけど、明日持ってきます」

律「そっか~。楽しみにしてるよん♪」

茜「憧れます…」

律「え?」

茜「その…おでこ…」

律「そ、そんなの初めて言われた……」


茜「私が以前住んでた国では、女の人がそこまでおでこ出すだなんて考えられなくて…」

茜「えっと…だから、私、憧れてるんです。おでこ出すの…」

律「へ、へ~…」

唯「じゃあ、あだ名はデビちゃんで決定だね!!」

梓「なんでですか!?」

唯「いつかデコビッチって言われるように、願いを込めてデビちゃん!!」

梓(無理やりだな~……)


唯「よろしくね、デビちゃん!」

茜「は、はい…よろしくお願いします」

梓「嫌だったら言った方がいいよ?」

茜「うれしい…///」

梓「そ、そう? それならいいんだけど…」

茜「ところで、日本は凄いですね」

茜「こんな濁った水も普通に飲めるなんて…しかもなんだか甘くておいしいし…」

茜「本当だったらこんな濁った水飲んだらお腹壊します…」

茜「でも、私の住んでた国ではそんな水でも飲まなきゃ死んでしまうので…」

紬「あ、あのね…これは紅茶っていって別に濁ってる訳じゃ…」

茜「!? ご、ごめんなさいっ! 私、すっごく無知で…。羞恥心……」

紬「い、いいのよ。そんなに謝らなくたって(羞恥心?)」

茜「それに…この甘くてふわふわした物も初めて食べました」

唯「ケーキって言うんだよ!」

茜「そうですか…お母さんにも食べさせてやりたい…」

澪「三浦さん、私のケーキあげるよ。持って帰ってお母さんに…」

茜「いいんですか!? 大事な食料じゃないんですか!? 餓死しませんか!?」

澪「だ、大丈夫だよ。家に帰ったらちゃんと食べ物あるから」

梓「よかったら私のも持って帰って」

茜「中野さん…!!」

梓「もう、梓でいいって言ったでしょ?」

律「しゃ~ない、私のもど~ぞ」

茜「おでこさん…」

律「田井中律ね……」

紬「私も、ケーキとドライアイス付きの箱を用意するわね」

唯「わ、私も……食べかけだけど……どうぞ…」

澪「おいおい…」

茜「みなさん…ありがとうございます」

茜「日本は社会が豊かなだけじゃなくて、人の心も豊かなんですね」

 プ~ン… チャポン

唯「あっ…デビちゃんの紅茶に虫が…」

紬「ちょっと待ってて、すぐ取り替えるから…」

茜 グビグビグビ……

澪「ああーーー!! 飲んじゃった…!?」

律「お、おい!すぐに吐き出せ!!」

梓「茜!? 大丈夫!?」

茜「えっ? 大丈夫…だけど…」

茜「むしろ、虫だって貴重なタンパク源だから…この機会を逃すかって勢いで飲んだけど…
  もしかしてダメだった…?」

律(さ、サバイバルな子だ…)

 ・ ・ ・ ・ ・

茜「あの…私、もうそろそろ…」

唯「なんで? まだ部活終了の時間じゃないよ?」

茜「購買のお昼の売れ残りが気になってて…
  もし破棄するんだったら早いうちに貰っておこうかなって…」

梓「そこまで!?」

茜「さすがに毎日草や虫だけだったらキツイかな…って」

澪「どんな生活を!?」

茜「だから…今日は失礼します!!」ダッ!!

紬「ああっ! 茜ちゃん!?」

律「行っちゃった……」

紬「す、すごい子ね…」

澪「そうだな…」


 ・ ・ ・ ・ ・

澪「よ~し、今日はこの辺にしとくか~」

唯「あっ!? デビちゃんカバン忘れてるよ!」

律「本当だ。でもケーキはしっかりと持って帰ってるな…」

梓「家まで届けてあげましょうか?」

律「でも、住所知らないぜ?」

紬「先生に聞いてみたらどうかしら?」

澪「そうだな、じゃあ職員室まで行くか」


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────────
────────────

律「なぁ?澪。本当にココで合ってんの?」

澪「先生に聞いた住所が間違ってなければココなんだけど…」

梓「でもココって……」

唯「公園…だよね…?」

紬「公園に住んでるだなんて素敵!!」

澪「もしかしたら、公園の敷地内に家を建てたとか…」

律「でも、そんなもの見当たらないけど」

唯「ねぇ、あの人に聞いてみようよ」

律「そうだな。すみませ~ん!!」

茜「……あ」

梓「あ、いた」

澪「本当にココなんだな…」

唯「ヤッホー、デビちゃん」

茜「こ、こんにちは。よくうちがわかりましたね」

澪「うん。先生に聞いたんだ」

紬「はい、これ。茜ちゃんのカバン」

茜「あっ…。すみませんわざわざ届けていただいて…」

茜「…さっきみたいな濁った水とかなくって…何もお構いできませんが…
  よかったら上がっていってください」

律「う、うん…おじゃまします(って言ったほうがいいのかな…?)」

梓(普通の公園だよね…まさかこの公園の持ち主とか!? 実は意外とお金持ち!?)

唯「さっきから何してたの~?」

茜「草むしりです。勝手にこの公園で住まわせてもらってるので…
  せめて綺麗にしとこうかな…と」

梓「……」

唯「へ~。偉いね~」

茜「いえ…元々好きなんです…草むしり…」

澪「ああ…そうなんだ…」

茜「あの…草って意外と根っこが長かったりするんです
  地面から出てるのがコレっぽっちなのに、根っこがこんなに!? 
  ってことがしょっちゅうで、そのギャップに驚かされたり」

茜「なんとか根っこを千切らずに引っこ抜いたり
  逆に根っこだけ残すとまた生えてきたりするのが逞しいなって思ったり」

茜「だから、草むしり…すごく楽しいです…ずっと、一人でやってます…」

澪(なんだろう…すごく泣きたい…)

茜「す、すみません…こんなとこで話し込んじゃって」

茜「あのすべり台が私の部屋なので、どうぞ自由に寛いでください」

紬「まぁ! すべり台のお部屋なんて素敵!! 憧れるわ~!」

律(ムギが言うと皮肉にしか聞こえないよ…)

唯「ところで、デビちゃんなんで古代ローマ時代みたいな布1枚の格好なの?」

澪(唯…そこはあえてみんなツッコまなかったんだ…きっと…)


茜「あの…ちゃんとした服って学校の制服しか持ってなくって」

茜「普段の生活で制服着てたらすぐに汚れちゃうので…」

茜「でも、布だったら私はなんでもいいんです」

唯「へ~っ、そうなんだ~」

茜「ごめんなさい」

唯「ううん。カッコイイよ!!」

茜「えっ…」

唯「私も部屋着はデビちゃんみたいにしようかな~」

律「やめとけ…」


 ・ ・ ・ ・ ・

律「そ~ら! 行くぞ~!!」スイ~ッ

澪「おい!押すな律! 危ないだろ!?」

紬「あはははは~♪」スイ~ッ

唯「あずにゃんは私と一緒にアベックすべり台に挑戦ね」

梓「なんですかそれ!?」

 ・ ・ ・ ・ ・

律「ふぃ~っ、すべり台ではしゃぐなんて何年ぶりかな~?」

澪「い、意外と盛り上がったな…」

紬「みんなで一緒にすべり台するの夢だったの♪」

梓「でもさすがにすべり台に住むっていうのは…」

唯「なんで~?楽しいじゃん!!」

梓「いや…楽しいとかっていう問題じゃ…」

澪「三浦さん、よかったらウチに泊まりにきてもいいよ」

茜「あ、あの…茜でいいです…」

澪「そ、そう?」

茜「はい…」

律「じゃあ、澪んちの次は私んちにおいでよ茜」

唯「あ! いいね~。かわりばんこにお泊り?」

茜「お気持ちはうれしいんですが、私、屋根や壁があるところってあまり落ち着かなくて…」

茜「昼間はまだいいんですけど、夜寝るときは爆撃で瓦礫に埋まると怖いので…」

茜「それに夜襲があってもすぐに逃げれるって利点もあるんです…野宿には…」

澪「いや…日本は平和だから大丈夫だよ」

茜「はい…わかってはいるんですけど、どうしても無理なんです」

澪「そ、そっか…まぁ、無理強いはよくないからな…」

唯「毎日がキャンプなんだね!」

紬「すごいわ!」

律「お前ら、絶対その大変さをわかってないだろ…」


唯「あ! でもお風呂とかどうするの?」

茜「そこにあるドラム缶に水を汲んで…幸いそこの水道から水はタダで手に入るので」

梓「ま、まさか…!!」

茜「うん。薪をくべてお風呂を沸かすの…ダメ…かな?」

澪「そ、外でか!?」

茜「一応そこの入り口からは死角になる所で目立たないようにはしてるんですけど…」

茜「堂々としてれば意外と見られないものですよ」

律「確かに…裸で堂々としてたら逆に見ちゃいけないような気がするもんな」

梓「っていうか、きっと触れたくないんでしょうね。なにか面倒に巻き込まれない内に」

紬「よかったらウチのお風呂に『みんなで』入りに来てもらってもいいのよっ!!!」

唯「わ~い! ムギちゃんちのお風呂って広そ~」

澪「なんでそんなに必死なんだムギ?」

 ・ ・ ・ ・ ・

茜「あの…みなさん喉渇きませんか?」

律「う~ん…そういえば」

茜「私、水汲んできますね」

澪「ああ…別にいいよ。そんな気を使わなくても」

茜「でも…。じゃあ、せめて食べれる虫捕まえてきます!」

梓「茜! 私たちには少しハードルが高いかもっ!!」

律「せめて食べられる草にしといてくれ!!」

茜「ちょっと待っててください。探してきますから!」

澪「あ、あの…あんまりがんばらなくてもいいよ~…」

茜「きゃ~~~~~~っ!!!」

律「な、なんだ!? どうした!!」

紬「茜ちゃん!!」

梓「何があったの!?」

茜「ば、ばばば、……」

唯「ば?」

茜「バッタが出たーーーー!!!!」

紬「茜ちゃん、バッタが苦手なの?」

茜「ば、バッタが私たちの農作物を…悪魔の使い…」ガクブル

澪「ああ、蝗害か…」

唯「こうがい?」

澪「テレビなんかで見たこと無いか? 辺り一面にバッタが大量に飛び交って…」

澪「って…自分で言ってて気分悪くなってきた…」


梓「草も農作物も全部食べちゃうんですよね…」

茜「怖い…バッタ…怖い…」ガクブル

唯「デビちゃんをいじめる奴めっ!! シッシ!!」

バッタ ピョ~ン

唯「もう大丈夫だよ、デビちゃん」

律「しっかし、怖がり方が尋常じゃないな…」

紬「それほど辛い思いをしたのね…」

澪「茜。日本で蝗害が起こることなんてないから安心しろ」

茜「ほ、本当…ですか…?」

紬「ええ。大量発生する条件が整いにくいと言われているわ」

茜「そうですか…、すみません、取り乱して…」

紬「いいのよ茜ちゃん、誰にだって苦手なものがあるんだから」

 ・ ・ ・ ・ ・

茜「ごめんなさい……。結局、虫を捕まえることができませんでした…」

澪「き、気にするな!」

律「そうそう、むしろ良かったっていうか…」

茜「でも、学校で私はおよばれしたにもかかわらず。 恩知らずなヤツです…」

梓「茜……」

茜「せめてそこの蛇口からお水を飲んでいってください…」

澪「あ、ありがとう…」

唯「デビちゃん。購買で余り物貰えなかったの?」

茜「はい…今日は全部売り切れてたみたいで…」

紬「じゃあ、今日のご飯は…」

茜「いただいたケーキがあるのでカロリーには困らないと思います」

茜「生きるだけなら、一週間は水だけで余裕ですね」

澪「い、一週間……」

紬「でも、それじゃ…」

茜「母が食料を調達してくれてると思うので」

茜母「茜、今帰ったわよ」

茜「あ、お母さん」

茜母「あら? みなさんは?」

茜「学校の…お、お友達…」

茜母「あらそうなの? 初めまして茜の母です」

軽音部一同「こんにちは~」

茜「お母さん、こちらの琴吹先輩から…ケーキをいただいたの…」

茜母「まぁ! ケーキなんてもうずいぶんと食べてないわ」

茜母「よろしいの?」

紬「はい、どうぞお召し上がりください」

茜母「それじゃあ、お返しに今日は晩ご飯食べて行ってもらおうかしら?」

茜「今日は何捕ってきたの?」

茜母「今日はそこの河原の茂みから……ほら!」

茜「うわぁ! 美味しそうなヘビ!! ご馳走だね!! 早速火を起こすよ」

澪「へ、、、、ヘビッ!! う~~~ん……」バタンキュー

律「み、澪っ!?」

茜母「あら? そちらのお嬢さんはどうなさったの?」

梓「いえっ、その…うわっ…! こっちにヘビを向けないでください…!!」

紬「あの…私たちは今日はこの辺で…(さすがにヘビは食べられないわ…)」

唯「き、今日は憂がハンバーグ作るって言ってたからなぁ~…」

律「私も…澪を家に送ってやらないといけないし…」

茜母「カエルもあるけど?」

軽音部一同「し、失礼しますっ!!」ダーーーッ!!

茜母「残念ね~……」

 ・ ・ ・ ・ ・

茜「ごちそうさまでした」

茜母「明日は近くの小学校で鶏でも捕ってこようかしら…」

茜「鶏肉ってカエルの肉に似てるんでしょ?」

茜母「ええ、そうね…お母さんも日本にいた頃はよく食べたものよ」

茜「私カエル大好きだから、きっと鶏もおいしいよね」

茜母「ところで茜。さっきの琴吹さんって…」

茜「うん…今回のターゲットになってる人」

茜母「どう?大丈夫そう?」

茜「大丈夫よ、お母さん」

茜母「そう…あなたなら大丈夫だとは思うけど…」

茜「失敗はしないわ…」

茜母「そうよね…やっとあの人の仇を討つことができるんですもの…」

茜「うん…お父さんの…無念を晴らす……!!」

茜「この…お父さんのユーフォニアムでっ……!!」


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最終更新:2010年03月26日 00:44