唯「そん・・・な・・・ムギちゃんが、悪者だったの・・・?」
梓「それは分かりません。あくまでムギ先輩のお父さんの会社がやってるっていうだけで、ムギ先輩自身は何も知らないのかもしれません」
唯「そう・・・だよね・・・ムギちゃんが澪ちゃんをさらうなんて・・・あり得ないよね・・・」
梓「・・・」
唯「あ・・・じゃあムギちゃんにこのことを話せば協力してくれるんじゃ・・・!」
梓「いえそれは危険です。ムギ先輩が本当に関係ないのかまだ分からないんです。下手に話して私たちも捕まったら・・・」
唯「あずにゃん・・・ムギちゃんのこと、信用してないの・・・?」
梓「はい・・・すみません」
唯「そんな!ムギちゃんが悪者なんてあるわけないじゃない!」
梓「私だってそうは思いたくないです!でも、可能性がある以上仕方ないんです!」
唯「そんなこと言ったらあずにゃんが今話したことが全部絶対に本当だって証拠はあるの?
実はあずにゃんが悪者だっていう可能性もあるよ!疑いだしたら誰も信用できないじゃない!」
梓「!!」
唯「ムギちゃんのこと悪く言って・・・私たちの仲を悪くさせて何がしたいの・・・?」
梓「唯先輩・・・私は・・・」
唯「でも・・・あずにゃんは・・・」
梓「え?」
唯「私の味方だって言ってくれたよね・・・絶対にどんな時もって・・・
だから私は・・・その絶対を信じるよ・・・」ギュッ
梓「唯先輩・・・」
唯「うう・・こんなにあったかいあずにゃんが私の敵なわけないよね・・・。
ぐすっ・・・ごめんね、ひどいこと言って・・・もうあずにゃんのことだけは疑わない・・・」
唯「うわあああああああん!」
唯「ごめんね、また思いっきり泣いちゃって・・・」
梓「いや、いいんです・・・こちらこそすみません」
唯「ところでさっき聞きそびれたんだけど、澪ちゃんが音楽室で倒れてた時、
りっちゃんやムギちゃんにはディソードなんてまるでないかのような反応をされたのはどうして?」
梓「それなんですけど・・・ディソードはギガロマニアックスにしか見えないんです」
唯「え、それって・・・つまり・・・」
梓「はい、唯先輩も―――ギガロマニアックスです」
唯「え・・・それじゃあ私も澪ちゃんと同じで・・・その・・・ディソード、出せるっていうの・・・?」
梓「はい・・・といっても、唯先輩はギガロマニアックスとして覚醒してるわけではないので今はまだ無理ですけど・・・」
唯「じゃあ、覚醒しちゃったら私もさらわれてそのなんとかサンプル取られちゃうの?」
梓「そうなる可能性は高いと思います」
唯「そんな・・・」
梓「ですから、澪先輩を助けには私一人で行きます。唯先輩が捕まったら取り返しがつきませんから」
唯「そんな!あずにゃん一人なんて危ないよ!」
梓「仕方ないんです・・・唯先輩は捕まったら危ない、だからって律先輩みたいな普通の人を巻き込むわけにもいかない・・・
こんなとんでもない事件に警察なんてあてにできない・・・だから私一人で行くしか・・・」
唯「あずにゃん・・・」
梓「大丈夫ですよ。そんなに心配しないでください。
澪先輩を助けて、その装置を破壊してくるだけです」
唯「どうしてそんな簡単そうに・・・」
梓「本当は何も言わずに行ってきて颯爽と澪先輩を救って帰ってくるつもりだったんですよ?
まったく、唯先輩が余計なこと言ったせいで台無しですよ・・・あはは・・・」
唯「あずにゃん・・・強がらないで・・・あずにゃんだって怖いんでしょ・・・?」
梓「そんな・・・ことは・・・」
唯「私も一緒に行きたい・・・あずにゃんの助けになりたい・・・。
でも、行かないよ・・・あずにゃんが来るなって言うんだから・・・」
唯「その代わり、絶対帰ってきてね・・・。また一緒にケーキ食べてギター弾くんだから・・・」
梓「はい、もちろんです」
梓「それじゃあ、ちょっと行ってきます」
一週間後 放課後
律「はあー・・・澪に続いて梓も行方不明・・・どうなってんだよ・・・!」
紬「ほんとに・・・どうしちゃったのかしら・・・」
唯「あずにゃん・・・」
唯(あずにゃん・・・まだ戻ってこないっていうことは・・・あずにゃんも捕まって・・・)
唯(いや、ギガロマニアックスじゃなかったら捕まえる意味なんてないのか・・・。
じゃあもう死んで・・・?そんなのやだよ・・・)
唯(ギガロマニアックスじゃなかったら・・・?)
唯(あずにゃんも、澪ちゃんの剣、見えてたみたいだったよね・・・?じゃああずにゃんも・・・)
唯(ギガロマニアックス!?)
唯(ギガロマニアックスの私が捕まったら危ないとか言ってたくせに、自分もギガロマニアックスで・・・
なのに私のために一人で行ったっていうの!?)
唯(そんな・・・そんなの・・・ひどいよ・・・)
唯(私だって、あずにゃんの力になりたいのに・・・)
唯(でも、ギガロマニアックスだっていうことは、まだ殺されてない・・・ってことだよね。
なんとかサンプル取らないといけないって言ってたもん)
唯(じゃあ、今のうちに助けられたら・・・!)
唯(でも、私一人でどうやって?あずにゃんも一人で行って無理だったのに?)
唯(今の私に頼れるのは・・・)
唯(ムギちゃんしかいないよね・・・)
唯(あずにゃんは信用できないって言ってたけど、そんなこと言ってたらあずにゃんも澪ちゃんも助けられない)
唯「ねえ、ムギちゃん。部活が終わったらちょっと話があるんだけど・・・」
紬「あら、何かしら」
律「なんの話だよ。だったらもう部活終わりにしようぜ。どうせ澪と梓がいないで部活なんてできないんだ」
唯「りっちゃん・・・」
律「それじゃ私はもう帰るから、音楽室の戸締りよろしくな。じゃあなー」ガチャ バタン
紬「それで、私に話って?」
唯「ムギちゃん、実は・・・」
紬「そんなことが・・・それ本当なの!?」
唯「うん・・・だからムギちゃんのお父さんの会社に行って、あずにゃんと澪ちゃんを探したいんだ」
紬「分かったわ。それじゃ一旦帰りましょう。後で唯ちゃんの家まで迎えに行くわ。」
唯「うん、ありがとう」
紬「いいのよ。私にとっても大事なお友達のことなんだから」
その後 唯の家
唯(今日私もムギちゃんちの会社に・・・怖いよ・・・)
ピッ ピッ プルルルルル プルルルル
律『もしもし?どうしたんだ唯』
唯「ちょっとりっちゃんの声が聞きたくなって」
律『はあ?何言ってるんだよ。さっきまで一緒にいたじゃないか』
唯「それでも今、聞きたくなったの」
律『よくわかんねーな・・・』
唯「あはは、ちょっとした気まぐれだよ」
唯「それより澪ちゃんとあずにゃん、心配だね・・・」
律『ああ・・・一体どこ行ってるっていうんだよ・・・』
唯「見つかったらどうする?」
律『そうだな・・・私たちを心配させた罰として向こう一ヶ月あいつらだけメイド服で部活だ』
唯「あはは、そんなことしたらまた澪ちゃん恥ずかしくて倒れちゃうよ」
律『ははは、そうかもしれないな』
律『なあ、唯。さっきムギに言ってた話って何だったんだ?』
唯「え?」
律『なんていうか、今の唯・・・声が震えてるというか・・・何か嫌なことでもあったのかって思ってさ。
さっきのムギへの話と関係あるのか?』
唯「りっちゃん・・・うう・・・グスッ」
律『おい唯!泣いてるのか!?どうしたんだよ!』
唯「何でもないの・・・りっちゃんにも今度絶対話すから・・・それまで待ってて・・・」
律『そうか・・・?唯がそう言うなら無理には聞けないけど・・・』
唯「ごめんね、私は大丈夫だから・・・」
律『何があったのか知らないけど、元気出せよ。何があっても私は唯の味方だからさ』
唯「うん、ありがとう。それじゃあもう切るね。また明日」
律『おう、また明日な!』
ピッ
唯(そろそろムギちゃんが迎えに来る頃か・・・)
ピンポーン
唯「はーい」
紬「お待たせ。それじゃあ行きましょう。車に乗って」
唯「うん」
唯(ずいぶん走ってるけど、ムギちゃんちの会社ってそんなに遠いの?
ていうかこの辺りにそんな大会社のビルなんてないんだけど・・・)
紬「着いたわ」
唯(え、ここ?なんだか古いビルで・・・ほんとに大会社・・・?)
紬「さあ、行きましょう」
ビルの中
唯「中に誰も人がないないけど・・・ここってほんとにムギちゃんちの会社なの?」
紬「いいえ?違うわよ?」
唯「えっ・・・どういうこと!?」
紬「だって唯ちゃんは、うちの会社になんて用はないでしょ?澪ちゃんと梓ちゃんを助けに来たんだから」
唯「何言ってるの?だからムギちゃんちの会社に・・・」
紬「だから、澪ちゃんも梓ちゃんもここに居るって言ってるの」
唯「どういうこと?」
紬「どういうこともこういうこともないわ」
ガチャ
唯「何この部屋・・・部屋の真ん中にあるおっきな装置・・・」
紬「それが、ノアⅡよ」
唯「のあつー?」
紬「私が中心になって琴吹グループの研究チームで行っているプロジェクト・ノアの成果よ。」
唯「???」
唯「ムギちゃん・・・一体?」
紬「唯ちゃん、梓ちゃんに忠告されなかった?私を信用しない方がいいって。
どうして私に声をかけてきたのかしら」
紬「私としては苦労せずに唯ちゃんをここに連れてこられてラッキーだったけどね」
唯「そんなムギちゃん・・・やっぱり・・・」
紬「そうそう、澪ちゃんと梓ちゃんを助けに来たんだったわね。澪ちゃんはお返しするわ」スッ
唯(ムギちゃんが指差した方向・・・人が倒れてる?)
唯「澪ちゃん!」
唯(よかった、息してる・・・身体にもとりあえず目立ったケガはないみたい)
唯「ムギちゃん、あずにゃんはどこ?あずにゃんも返して!」
紬「それはできないわ。だってあんな化け物は殺してしまわなきゃ」
唯「殺すって・・・どうして・・・」
紬「全てはあなたを覚醒させるためよ、唯ちゃん」
唯「どういうこと?」
紬「あのね、唯ちゃんにはとても大きいギガロマニアックスとしての力があるの。
ノアⅡのために是非そのCODEサンプルが欲しいんだけど・・・」
紬「困ったことに、唯ちゃんったらいくらちょっかいかけても覚醒しようとしないんだもの。
ニュージェネなんて連続殺人事件起こして恐怖を与えようとしたのに、まさか事件そのものを知らなかったなんて」
唯「え、にゅーじぇねって・・・ムギちゃんがやってたの・・・?」
紬「私が直接やってたわけじゃないわ。でもうちの研究員が、唯ちゃんに恐怖を与えるためだけに起こした事件なのは確かよ」
唯「そんなことのために・・・人を何人も?」
紬「そんなことなんてひどいわ。ノアⅡは人類の夢なのに。 ・・・まあいいわ。
でもさすがに、事件を知ったその日にわざわざ澪ちゃんが書いてきた歌詞に似せた殺し方をしたら反応してくれたわね」
唯「あ、じゃあヴァンパイ屋も・・・」
紬「そうよ。たまたまりっちゃんが口走った言葉を利用させてもらったわ」
唯「そんな・・・じゃあ最初から澪ちゃんもりっちゃんも事件には関係なくて・・・」
紬「そうよ。唯ちゃんが勝手に恐れてただけ」
唯「そんな・・・」
紬「でも、それでもまだ足りないみたいだったから・・・今度は梓ちゃんを目の前で殺してあげる。
そうすればさすがに覚醒してくれるわよね?」
唯「そんな!あずにゃんにひどいことしないで!」
紬「いいじゃないあんな化け物どうなったって」
唯「なんなのさっきからあずにゃんのこと化け物化け物って!
そんなこと平気で言えるムギちゃんの方がよっぽど化け物じみてるよ!」
紬「あら、ひどいこと言うのね。私はちゃんと人間だけど、梓ちゃんは本当に化け物なのよ?」
唯「だから!どういうことなの!」
紬「梓ちゃんはね」
最終更新:2010年04月05日 01:38