梓「遅れましたー…って、あれ? 唯先輩だけですか?」
唯「ん、そだよ」
梓「他の皆さんは?」
唯「さぁ」
梓「…?」
梓「……」
唯「あ、そうそう」
梓「はい?」
唯「中野、ちょっと」
梓「……え?」
梓「…あ、あの! 今なんて言いました…?」
唯「んー? ああ、ちょっとこっち来てって言おうとしたの」
梓「そうじゃなくて…その…」
梓「わ、私のことを今なんて呼びました?」
唯「中野」
梓「!」
唯「それがどうかした?」
梓「どうかしたって…」
唯「いいから早くこっち来て?」
梓「……」
梓「はい…」
梓「…それで何か用ですか?」
唯「まぁ、そこに座って」
梓「はぁ」ス
唯「よし」
梓「それで何か…」
唯「うん。あのね」
唯「中野は私のことどう思う?」
梓「…ん?」
梓「あの…質問の意味が」
唯「どう思う?」
梓「いや、私の話を」
唯「どう思う?」
梓「……」
梓「…のんびりしてるところもあるけど、嫌いじゃないですよ」
唯「そうなんだ」
唯「私も中野のこと嫌いじゃないよ」
梓「あ、ありがとうございます…」
梓「……あの」
唯「ん?」
梓「な、なんで」
梓「なんで…その…」
唯「はっきり言いなよ」
梓「…なんで中野って」
唯「……」
唯「え? なんかおかしい?」
梓「お、おかしいですよっ」
唯「じゃあ何て言って欲しいかちゃんと言いなよぉ」ニヤ
梓「えっ、あ…いや…その///」
唯「どうしたのー? 中野ー?」ニヤニヤ
梓(…わ、わざと!?)
梓「だっ、だから…! その…」
唯「えー?」
梓「あ、あ、あ…あず…っ///」
ガチャリ
律「ごめん、遅れちったー!」
唯「やっと来た~。もぉー、あずにゃんと二人で待ってたんだよ!」
澪「やっぱり二人とももういたんだ」
紬「すぐにお茶の用意をするわね」
梓「あ……え…?」
紬「はい、梓ちゃん。レモンティー」ス
梓「……」
紬「梓ちゃん?」
梓「え!? あ、はい!」
紬「何か考え事?」
梓「い、いえ…何でもありません」
唯「どうして遅れたのー?」
律「さわちゃんから呼び出しくらったんだよ。二人は付き添い」
澪「大した用でもなかったけどね」
唯「ふーん」
…
律「でさぁ、聡のやつが…」
澪「ほんとあの歳でしっかりしてるよな。姉に比べて」
律「何をぉ!」
紬「ふふふ」
梓「は、はい!?」
唯「そのお菓子、もう食べないならいただけませんかねぇ?」
律「食い意地張ってるなぁ」
唯「いえいえ~」
梓(中野からいつもの呼び方に…どういうこと?)
唯「あ~ず~にゃ~ん。いいでしょー?」
梓「だ、だめですっ」
澪「唯、自分の分だけで我慢しなきゃ」
唯「もの足りない…」
紬「それじゃあ私のを分けてあげる」
唯「わはぁ~! ムギちゃん様ぁ~!」
梓(やっぱり…いつもの唯先輩…?)
唯「ふい~」
律「そろそろ帰るか」
澪「おい、練習!」
律「明日ね♪」
澪「昨日も同じこと言ったよな!?」
紬「まぁまぁ」
梓「あ、私ちょっとトイレに…」
唯「私も行くよ~! あずにゃん」
梓「え、あ…」
律「じゃあ昇降口で待ってるな~」
唯「ほいほーい! じゃあ、行こ? ゛あずにゃん゛」
梓「は、はい…」
…
ジャー
梓「…あの、唯先輩」
唯「じゃあ行こっか、中野」
梓「!?」
梓(…まただ)
梓「…あ、あのっ!」
唯「ん?」
梓「だ、だから…」
唯「なぁに? ちゃんと言って?」
梓(いったい何のつもり…?)
梓「…な、なんで皆さんの前だといつも通りに呼んでくれるのに…」
唯「くれるのに?」
梓「こうやって二人きりになると…呼び方が変わるんですか…?」
唯「……」シレー
梓(聞き流してる!?)
唯「あ、何だっけ?」
梓「ば、ばかにしてるんですか!?」
唯「そんなつもりないよ~」
梓「だって…」
唯「はっきり言ってくれなきゃ分かんないよ」
梓(言ったじゃん!?)
…
律「あ、きたきた」
唯「おまたせー」
梓「……」
紬「遅かったわね?」
唯「あずにゃんが大きい方だったんだぁ」
梓「ちょ!?」
澪「唯、デリカシーぐらい持とうよ?」
律「どうでもいいからさっさと帰ろうぜー」
梓「大きい方じゃないですからね!? 違いますからね!?」
律「はいはい」
紬「それじゃあ、私はここで」
澪「私たちもだな。律」
律「ん、それじゃあまた明日~!」
唯「ばいば~い」ブンブン
梓「あ…」
唯「さて」
唯「帰ろっか、中野」
梓「…はい」
唯「……」
梓「……」
唯「憂とは最近どう? 中野?」
梓「…ええ、まぁ…変わらずですよ…」
唯「そっか。憂と仲良くしてあげてね? 中野」
梓「…ええ」
唯「中野。なんか表情が硬いよ?」
梓「……」
梓「……あの」
唯「んー?」
梓「私が何か唯先輩に嫌なこと言っていたとしたら謝ります。ですからそろそろ…許してもらえませんか」
唯「許す? 何を?」
梓「ご、ごめんなさい! とにかくごめんなさいっ!」
唯「いきなり謝られても困っちゃうよ。中野ぉ」
梓「っ!」
梓「じゃあ一体何なんですか!? そろそろいいかげんにしてくださいよ!?」
唯「だから何のこと?」ニヤニヤ
唯「ちゃんと言ってくれなきゃ私も分からないよ。中野」
梓(っく……いじわる…)
唯「あ、もうこんなところまで来ちゃったね」
梓「……」
唯「じゃあね、中野。また明日!」
梓「はい…」
梓「……」
梓「…あずにゃん」
梓「って…呼んでよぉ…」
次の日!
純「梓~、どったの?」
梓「え?」
純「暗い顔してるよ」
梓「そ、そう?」
純「悩み事なら聞いたげるから遠慮しないで」
梓「あ、いやぁ…気持ちだけ受け取っておくよ…」
梓(こんな事言えるわけがない…)
憂「おはよー。梓ちゃん、純ちゃん!」
純「おいっす~」
梓(憂なら…もしかして何か知ってるかな?)
梓「憂。唯先輩って最近何かあった?」
憂「え? お姉ちゃん?」
憂「ううん。特に…どうかしたの?」
梓「な、なんでもないよ。ありがとうっ」
梓(もう…なんなの)
昼休み!
梓「……!」
梓(唯先輩が…前方から)
唯「おっす! 中野!」
梓「…いいかげんにしてくださいよ」
唯「……」ニヤニヤ
梓「私を苛めて楽しいですか!?」
唯「苛める? とんでもないっ」
唯「私が中野のことを苛めるわけないってば!」
梓「じゃあ昨日から何なんですかっ! 人のことを中野、中野、中野…」
梓「確かに私は中野ですけど! 違うでしょ!?」
唯「別に違わなくない?」
梓「っく…!」
梓「……ひどいよぉ」
唯「……」クスッ
唯「……」ス
梓「え…」
唯「昨日から私言ってるでしょ? 何て言ってほしいかちゃんと言ってって」ボソボソ
梓「…っぁ///」
梓(み、耳元で…/// ぞくぞくする…っ)
ス
梓「あ…」
唯「じゃあまた、放課後ね。゛中野゛」
梓「……」
梓「唯…先輩…」
放課後!
ガチャリ
梓「……」
唯「あ、来たね」
梓「また皆さんは…」
唯「いないね。また用事があるんじゃないかなぁ」
唯「早くこっちにおいでよ。中野」
梓「はい…」
梓「失礼します…」ス
唯「あはっ、そんなにかしこまらなくたっていいじゃん」
梓「唯先輩」
唯「何、中野?」
梓「……」
梓「…やめてください」
唯「うん?」ニヤ
唯「何を、やめればいいのかなぁ?」
梓「中野って呼ばないで…」
梓「私を…中野だなんて呼ばないで…」
梓「そんな呼ばれ方されたら…さみしい…」
唯「中野」
梓「…いや……やめて」
唯「…ふーん」
唯「じゃあ…あなたを何て呼んであげたらいいのかな?」
唯「ねぇ?」ス
梓「っ…///」
唯「ほら、早く言っちゃいなよ」ボソ
梓「あず…あ、あ、あず…」
唯「んー?」
梓「…あず…にゃん…って……///」
唯「聞こえないなぁ」
梓「…あ、あずにゃんって呼んでくださいっ」
唯「……」
唯「あはっ」
梓「っあ…っ…///」
唯「ふふっ、゛あーずにゃん゛」ギュッ
梓「ああ……ああっ…」
梓「もっと…もっと呼んでください…」
唯「何て? 何て呼んでほしいの?」
梓「…あずにゃんと…呼んでください」
唯「あずにゃん」
梓「っああ…唯先輩…」
コソコソ
紬「スゴイわぁ…スゴイわぁ…」
律「唯の奴…マジで梓を調教しやがった」
澪「…///」
…
唯「え、あずにゃんを?」
律「そう! 面白そうでしょ」
紬「すっごく面白そうよね!?」
澪「やっぱりまずいだろ…」
律「澪、お前がこんな本を持っていたのが悪い!」
唯「゛好きな人を手玉に取る百の方法゛?」
澪「い、いや…その…///」
律「いいのかなぁ? 澪がこの本を持っていたことクラスのみんなにバラしちゃっても」
澪「…勘弁して」
唯「でも何で私?」
律「そこはまぁ…唯が一番適任かなって」
唯「…そう?」
紬「間違いないわ」
唯「ムギちゃん目が怖い…」
澪「私はもう何も言わない…」
唯「んー、まぁ…面白そうだし。いいよぉ」
律「それでこそ唯!」
澪(…軽音部全員に試そうと思ってたのに……)
…
梓「もう…唯先輩なしじゃ生きていけません…」
唯「そっか」
梓「私はいつまでもあなたのあずにゃんであり続けます…」
唯「中野」
梓「い、いじわるぅ…」
コソコソ
紬「はぁはぁ…」
律「なんかヒートアップしてきてるな…」
澪「律ぅ、あとでちょっと用があるんだけど」ウルウル
おわり
最終更新:2010年04月06日 00:55