澪「う~ん……。みんなもジャージで出るなら……」
唯「え~。さすがにジャージで舞台に上がるのはちょっと……」
紬「わ、私も……。ジャージじゃ余計に恥ずかしいかな」……
澪「だよな……。みんながそうなら私もこのままで」
律「も~、自分の意見が無いやつだな~」
澪「だって……」
和「軽音部そろそろ出番よ。準備はいい?」
律「ほら、行くぞ澪」
澪「う、うん」
梓(よかった……。ジャージでなんてことになったら曽我部名誉会長になんて言われるか……)
・ ・ ・ ・ ・
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~
律(なんだかんだ言いつつも演奏が始まれば澪も集中力を取り戻すんだよな)
律(もっと自分に自身をもったら社交的になれるのに……)
律(でも、完璧に見える澪にも弱点があるからこそまたそこがカワイイんだけどさ)
律「……」
律(できる事なら私がいつまでも守ってやりたいんだけど……)
律(いつかは私たちだって離れ離れになるときがきっとくる)
律「……」
律(でも今はこれでいいんだ。私は澪の親友として側にいてやれば)
律(なんたって澪は私のお月様なんだから♪)
澪ちゃんファンクラブ撮影班(澪たんハァハァハァハァ……)
・ ・ ・ ・ ・
梓「それでは、今日はお先に失礼します」
律「なんだ~? ライブ成功を祝して今から街に繰り出そうって時に」
梓「すみません。今日は色々とすることがあって……」
梓(早くあの素晴らしかったライブをファンクラブのみんなに伝えたいっ!!)
唯「え~っ! あずにゃんが来ないとつまんな~い」
梓「本当にすみません。それじゃ!」
紬「あっ……。行っちゃった……」
澪「仕方ない……。今日は帰るか」
紬「そうね。遊びはまた梓ちゃんと一緒の日で」
唯「うう~~。これだけを楽しみに練習も頑張ってきたのにぃ~」
律「いや、嘘でもライブのためって言っとけ」
・ ・ ・ ・ ・
唯「バイバ~イ」
紬「またね」
律「じゃ~な~」
澪「また明日~」
・ ・ ・ ・ ・
律「しっかし、澪もその恥ずかしがりなんとかしないとな」
律「そんなんじゃ、いつまでたっても私の側から離れられな……」
澪「……」ガタガタ
律「ん? どうした澪?」
澪「や、やっぱりだ。誰か……、ついてきてる」
律「えっ!?」
澪「ここ最近そんな気配がしてたんだけど、律気付かなかった?」
律「ぜ、全然気付かなかった……」
澪「いつも帰りについてきてるんだ。近所の人かと思ってたけど
確かめるのもなんだか恐いし……」
律「す、ストーカーか!?」
澪「恐いこと言うなよ!」
律「ご、ごめん」
律(でも、本当にストーカーだったら狙われているのは私の方じゃなくてきっと……!!)
澪「……!! なんだかだんだん近づいてきてる」
澪「今までは一定の距離を保っていた感じだったのに……!!」
律「大丈夫! いざとなったら私が守ってやるから」
澪「り、律っ」
男「あ、あのっ!!」
律「く、来るならこいっ!!」
男「秋山さん……、ですよね?」
澪「ひゃ、ひゃいっ!!」
男「僕、ずっと前からあなたのことが気になってて……」
澪「えっ……、ええ!?」
男「いつ声をかけようかと迷ってたんですけど
思い切って今日お声をかけさせていただきました!」
澪「は、はぁ……」
男「あっ、僕はK大に通ってる男って言います」
律「K大って言ったら超名門じゃん!?」
男「いままで生きてきてこんなに人を好きになったことはありませんっ!!」
男「お願いです。僕と付き合ってくださいっ!!」
澪「で、でも……」
男「清く正しい男女交際をっ!!」
澪「あの、私……」
律「おいやめろ!! 澪困ってるじゃないか!!」
澪「律……」
律「澪、迷惑だって言ってやれ」
男「別にあなたには聞いてません。僕は秋山さんに聞いてるんです」
律「いいや、私は澪の親友だ!! だから口出しだってさせてもらう」
男「なんて強情な……」
律「だいたい、澪は昔っから人見知りで、初対面のやつと付き合うなんてありえないの!!」
律「ほら見ろ! 顔だってあんなに青ざめて」
澪「ううっ……」
律「さぁ、帰った帰った。澪は私がいないとダメなんだから」
澪「……」
男「それでも……、振られるにしても秋山さんが口で伝えてもらえませんか?」
男「それだったら、諦めもつきます……」
律「だってさ、言ってやれ」
澪「……い、いいよ」
男「えっ?」
澪「つ、付き合っても……。いいよ……」
律「ちょ!? おい澪!!」
男「ほ、本当ですか!? やった!! じゃあメアドと携帯番号の交換を……」
男「それじゃあ、家に帰ったら電話しますね~」
律「み、澪……。お前、本当によかったのか?」
澪「私も……」
律「へっ?」
澪「私もいつまでも律の影に隠れてばかりじゃいけない、って思って」
律「で、でもいきなり付き合うってお前……」
澪「うん……。でも真面目そうな人だったし」
律「そりゃあ……、そうだったけど……」
澪「大丈夫だよ。律の言う通り、自分でもこの性格なんとかしなきゃって考えてたし」
澪「私、これを機会に変わるよ」
律「澪……」
律「わかった。澪がそこまで言うなら私も応援するよ」
澪「うん。ありがとう律」
律「澪がやっと私から巣立ってくれてなんだか安心したよ」
澪「な、なんだよそれ」
律「じゃあ、早く家に帰って彼からのあま~い電話を待ってろよ」
澪「ば、バカッ///」
律「へへん、じゃあな~」
澪「うん。また明日」
律「……」
律「お月様、無くなっちゃった……」
…
中野家 梓自室
梓「────と、いうわけで今回のライブも
澪ちゃんの魅力がたっぷり詰まったものになりました!」カタカタ……
梓「その模様を特別に少しだけこのブログにアップしちゃうぞ♪」
梓「ライブの模様が全編入ったDVDは次のファンの集いのときに配布予定なので
欲しい人はぜひ参加してください!」
梓「以上、澪ちゃんファンクラブ会員No.100 副会長
中野梓の報告でした」
梓「それじゃあミオミオ~♪」
梓「ふぅ……」
梓「相変わらず映像班の編集能力には驚かされるなぁ~……」
梓「こんな短時間でブログ用の動画ができちゃうんだもん」
梓「……」
梓「そろそろあの人から電話が来そうだ……」
ピリリリッ!!
梓「やっぱり!!」
梓「もしもし」
恵『もしもし? ついにこの世の春が来たわねっ!!』
梓「落ち着いて下さい」
恵『ああっ!! なんで私もあの場にいなかったのかしらっ!?』
梓「名誉会長は大学で講義を受けてる時間では?」
恵『なんで普通に返すのよ……』
梓「はぁ……、すみません」
恵『撮影班も映像班もよくやってくれたわ!
秋山さんを愛でる者でしか出すことのできない表現の域にまで達している』
恵『予告だけでもそのように感じる素晴らしい出来だったわよ!!』
梓「彼女たちもそれを聞いたら苦労も報われると思います」
恵『ええ、伝えておいてちょうだい。ああ、それにしてもつくづくあなたが羨ましいわ』
恵『できる事なら私だって秋山さんと一緒にお昼を食べたり、部活を通じて感動を分かち合いたかった
夕暮れの体育倉庫に二人っきりで閉じ込められてみたかった!!』
梓(また、始まった……)
恵『でも秋山さんは高校生で私はもう大学生……。そんな夢は儚く散っていく……』
梓「だ、大学はどんな感じなんですか?」
恵『ダメね。てんでレベルが低いわ』
梓「えっ!? でも名誉会長の通ってる大学って結構偏差値高いんじゃ……」
恵『秋山さんを超えるような逸材を見つけられないわ。もうダメダメよ』
梓「あっ、そっちのレベルですか……」
恵『最も、私だって秋山さんを超えるような人間はこの世に存在していないってわかってるけどね』
梓「そ、そうですね」
恵『でも、このままじゃ私どうなっちゃうか……』
梓「名誉会長は男性とお付き合いするとかは考えられないんですか?」
恵『そうね……。もし秋山さんが私に男とヤレって命令するんなら喜んでするわよ』
梓「いや……、そういうことじゃなくってですね」
梓「なんと言うか、別に名誉会長は……その……あの……」
恵『なによ?』
梓「れ、レズビアンって訳じゃないんですか?」
恵『まぁ、中学のときなんかは普通にクラスの男の子とか好きになってたし』
恵『あえて言うならミオビアンってとこかしらね。私は!!』
梓「へ、変な造語を作らないでください!!」
恵『とにかく! 今は秋山さん一択なのっ!! 他は有り得ないわ!!』
梓「そうですか……。あの、もし、もしですよ?」
梓「澪先輩に好きな人ができて付き合いだしたりなんかしたら、
その時はどうなさるおつもりですか?」
恵『それは男?女?』
梓「お、男です!」
恵『まぁ、どっちでもいいんだけどね
ちょっとファンクラブ規則第一条3項を読んでご覧なさい』
梓「えっと……。もし澪ちゃんが異性同性にかかわらず特定の人物との親密な交際(友人関係は除く)
を始めたと確認された時には我が澪ちゃんファンクラブは解散するものとする……!!」
梓「えっ? ええっ!?」
恵『そういう事よ』
恵『あくまでこの澪ちゃんファンクラブは秋山さんのプライバシーを侵害しての活動なの』
梓「あっ、一応自覚はあったんですね」
恵『もしあなたがデートしてるところを見知らぬ誰かに見られてたらどう思う?』
梓「すごく、気持ち悪いです」
恵『でしょ? その辺の分別もあるのがこの澪ちゃんファンクラブのいいとこなのよ』エッヘン
梓(すでにプライバシーを侵害してる人が威張っても……)
恵『それにね、やっぱりなんだかんだ言って秋山さんには幸せになってほしいし……』
梓「あっ……」
恵『だからこのファンクラブを立ち上げた時も、もし秋山さんが付き合い始めたら
幸せを願いつつキッパリと解散しようって、創設メンバーと話し合って決めたの』
恵『ファンクラブ規則第二条はその都度の話し合いと多数決で変更が可能だけど』
恵『ファンクラブ規則の第一条は永久不変。1項は遠くから愛でるべし
2項は女のみで運営すべし。そして3項は交際が確認されたら解散すべし。これは絶対』
梓「はい、そうですね。私も澪先輩には幸せになってもらいたいです」
恵『それにね、ずっと一緒にいるあなたはわかってると思うけど
あの恥ずかしがり屋の秋山さんが誰かと特別なお付き合いすると思う?』
梓「そう言われれば……。今までそんな浮いた話は聞いたことありません」
恵『でしょ? まぁぶっちゃけそれを見越しての規則だったんだけどね』
梓「なんかズルイですね……」
恵『だって、そんな規則があった方が格好がつくでしょ?』
梓「はぁ、まぁ……」
恵『秋山さんが卒業すればあなたみたいなずっと張り付ける会員もいなくなっちゃうし』
恵『そうなれば、きっと自然と解散しちゃうでしょうね』
恵『だからファンクラブ規則第一条3項は発動する機会なんてないって』
梓「勢いで作ってしまった、と」
恵『だって、女子高にいる限りはあの秋山さんがそんな事有り得る訳ないわよ』
梓「ですよね~」
翌日 放課後
梓「ええっ!? 澪先輩告白されちゃったんですか!?」
澪「う、うん……///」
梓「で、でもまさかOKなんてしちゃわないですよね~」
澪「OK……しちゃった///」
梓「なんとっ!!!!」
唯「あずにゃん顔変だよ~。あははは~」
紬「確か、K大の人だって言ってたわよね」
梓(超名門有名大学……。まさか澪先輩もそこいらのビッチと変わらないなんて……)
梓「り、律先輩は知ってる人なんですか?」
律「知ってるも何も、私と一緒に帰ってる最中に告白してきたからな~」
梓「そ、そうなんですか」
唯「優しそうで~、結構イケメンだって~」
紬「それで、早速昨日の夜電話で話したのよね」
澪「うん。でも、緊張してあんまり話せなかったし内容も覚えてない……///」
梓「なんでまた……」
澪「なんでって、私が付き合っちゃ悪いのか?」
梓「いえ、そんな事はありませんが……」
紬「でも、ビックリしちゃった。あの引っ込み思案の澪ちゃんが
私たちの中でカップル成立1番乗りなんだもん」
唯「だよね~、むしろ高校卒業するまで私たちそんな事とは一切無関係だって思ってたよ」
澪「わ、私だってやるときはやるんだ」
唯「子供は何人欲しいの?」
澪「ま、まだ早い!!///」
紬「結婚式はぜひ琴吹ブライダルのチャペルでね」
澪「もう!!」
唯「あはははは~」
紬「うふふふふ~」
律「……」
梓「どうしたんですか? 律先輩」
律「……」
律(なんだか心にポッカリ穴が空いたみたいだ……)
律(私だってみんなみたいに澪を祝福したり茶化してみたい)
律(でも、もう澪は私の手から離れて今自由に飛び回ろうとしているんだ)
律(今までずっと、澪の方が私を必要としてくれているもんだと思っていた)
律(勉強だって、なんだっていつも難なくこなす澪が私を頼りにしてくれてる)
律(きっとそれに優越感を抱いていたんだな)
律(結局、私が澪を必要としていたのか……)
律(澪は私無しでもやって行くって新しい扉を開こうとしている)
律(きっとこれは喜ばしいことなんだ)
律(それに月が無い日は夜空に星がたくさん見えるじゃないか)
律「……」
律(……でも、名前も知らない星なんかよりもやっぱり私は────)
梓「律先輩!!」
律「!?」
最終更新:2010年04月09日 00:46