翌日 放課後
澪「ご、ごめん。また今日もなんだ……」
唯「今日はどこ行くの?」
澪「カラオケに……」
律「おいおい……、昨日話したんじゃなかったのか?」
澪「言えなくってさ……」
律「ったく、ど~すんだよ軽音部!」
澪「今日こそはなんとか相談してみるよ」
律「そんな事言って、どうせまた明日も行っちゃうんだろ」
唯「り、りっちゃん」
律「だいたい、お前らのデート見てても澪全然楽しそうにしてね~じゃね~かよ」
律「何やるにも澪はただ男につていってるだけだし、いまだに手さえ握れてないしさ」
澪「……なんで知ってるんだ?」
律「あ、しまっ……!!」
澪「もしかして……、いつもついてきてたのか?」
紬「あ、あのね澪ちゃん」
澪「最ッ低……」
梓「澪先輩、これもみなさん先輩のことを心配に思って……」
澪「誰もそんなこと頼んでないっ!!」
唯「あ、あぅ……」
梓(澪先輩は今、激しく心を痛めている……)
梓(曽我部先輩、やはりあなたの考えは正しかった……)
梓(他人のデートを覗き見するなんて、やってはいけない行為です)
梓(もし、この軽音部に曽我部先輩のような澪先輩の幸せのみを願う精神があれば)
梓(きっとこんな事にはならなかったでしょう)
梓「……」
梓(醜態も色々と晒してくれましたが……)
梓(ファンクラブ規則第一条3項、間違いではなかったっ!!)
澪「人のデート覗いてさぞかし楽しかったでしょ~ね!」
唯「ご、ごめんね澪ちゃ────」
律「ああ!楽しかったね!! でも澪は男といたっていっつも俯いてばかりじゃね~か!!」
律「嫌だったら、無理して付き合うなよ!!」
紬「りっちゃん!?」
澪「誰も嫌だって言ってないだろ!!」
律「はっ!どうだか! じゃあ、あいつの好きなとこ言ってみろよ!!」
澪「男クンは私に優しくしてくれるんだ!!」
律「優しい男なんてもんがこの世で一番信用ならないんだよっ!!」
澪「付き合ったこともない恋愛初心者が意気がって、バッカみたい!!」
律「な、なんだと~!!」
澪「なによっ!!」
唯「ちょっと……、2人とも落ち着いて」
紬「お、美味しいケーキあるわよ。みんなで食べましょ?」
梓「ネコ耳……、ネコ耳はどこいったっけ……」オロオロ……
澪「ふんっ! どうせ律を差し置いて私が先に付き合うことになったからって
悔しくってヤキモチ焼いてるんでしょ?」
律「────ッ!!」
紬「澪ちゃん、それは酷いわっ!!」
唯「確かについていったのは謝るよ、興味本位だったことも認める」
唯「でも、澪ちゃんを心配していた気持ちも本当だよ!!」
唯「だから……、そんなこと言わないで」エッグ…エッグ…
澪「……」
律「もういいよ……、行けよ」
澪「言われなくたって……、行くわよ……」
ガチャ バタン
紬「りっちゃん! 本当にいいの?」
律「いいんだよ。好きにやらせとけ」
律(もう澪は私の月じゃなくなったんだから……)
唯「りっちゃん……」
梓(軽音部史上、最大のピンチではないでしょうか!?)
・ ・ ・ ・ ・
男「はぁ~~……、やっとカラオケ行くまで心を開いてくれたか」
男「ったく、手間かけさせんじゃね~っての」
ピリリリッ!!
男「誰だ? なんだDQN夫か」
ピッ
DQN夫『もしもし?』
男「なんだよ?」
DQN夫『お前まだアイツ落とせないのか?』
男「うるせ~よ、今日やっとカラオケに連れ込める手はずだよ」
DQN夫『おおっ! やっとか。お前にしちゃ~長かったな~』
男「あいつ相当奥手でよ~。いまだに手ぇ握るのも嫌がってるんだぜ?」
DQN夫『いいじゃん、そんな子をいただいちゃうのがおいしいんじゃね~かwww』
男「まぁ、だから狙ってたんだけどな。カラオケさえも
『私、男の人と個室に入るのは……』って今まで拒みやがったんだぜ?」
DQN夫『かぁ~~っ、いいねいいねwww逆に最高じゃね~か』
男「ホントに骨が折れたわ。ヤリたい気持ちを押し殺すのに苦労した」
DQN夫『あのおっぱいでお預け喰らっちゃたまんね~なwww』
男「おかげで素でも本当に優等生になっちまうんじゃね~かと思ったし」
DQN夫『ありえね~よwwwお前中卒じゃんwwww』
男「バッカ、今俺は明日の日本を背負って立つ超名門大学の生徒なんだよ」
DQN夫『お前の才能もっと違うところで活かせよwwww』
男「充分活かせてるじゃね~かよ。善人のふりして最後はやっちまって
それを撮ってたんまりと稼いでるんだからよ」
DQN夫『それもそうかwww』
男「まぁ、待ってろよ。いつものように俺の後でよけりゃお前にもヤラせてやるからさ」
DQN夫『あざーっスwwww』
カラオケ店
恵「いらっしゃいませ~。機種のご指定はありますか?」
恵「では、105号室になります。ごゆっくりどうぞ~」
恵「ふぅ~っ……」
恵「やっぱり働くっていいものね。なんといっても国民の義務なんですもの!」
女店員「曽我部さんも慣れてきたわね。入ってきた当時はこれ以上無いくらい暗い人だって思ってたけど」
恵「ええ、実は私気になってた人がいたんだけど、その人が別の人と付き合いだして自暴自棄になってたの」
女店員「わかるわ、その気持……」
恵「でも、後輩にバイトでもして気を紛らわしたらってアドバイス貰ってね」
恵「それでこのカラオケ店で働き出したの」
女店員「そうだったの……、辛かったわね」
恵「もう吹っ切れちゃったけどね」
女店員「そうだ! 曽我部さんこのあと暇? そろそろバイト上がるでしょ?」
恵「うん、意外と大学生って暇なのよね
今日だって午前で講義終わって昼前からバイトに入ってたし」
女店員「私もなんだ。だからこの後女同士で熱く語り合わない?」
恵「いいわね~」
女店員「じゃあ決まりね♪」
prrrrrrrrr……
女店員「あっ、注文かな? ちょっとカウンターお願いね」
恵「うん」
女店員「もしもし、ドリンクのご注文ですか? はい、はい────」
恵(大丈夫、秋山さん無しでも充分やっていけてる)
恵(辛かったけど、やっと良い思い出になってくれたのかな)
恵(さようなら……、秋山さん……)
澪「────え~っ、そんなに上手くないって」
恵「いらっしゃいま……!?」
恵(あ、秋山さん!? やだ! やっぱり私まだ幻を!?)
恵「……」
恵(ちょっと待って……、このカラオケ店は私も高校時代よく利用していた)
恵(だから秋山さんが来たって不思議じゃないわ……)
恵(ああっ!! なんでこんな簡単なことさえ気づかなかったのかしらっ!!)
恵(最初っから、秋山さんが来そうな所でバイトしてれば会えたのよ!!)
恵(秋山さんに会いたいからバイトするんじゃなくて
たまたま私がバイトしているところに秋山さんが訪ねてくるんだもの)
恵(これだったら何も後ろめたいことなんてないわっ!!)
恵(そうと決まれば、この辺りの喫茶店や楽器店でもバイトを始めないと)
澪「だから、そんなに上手くないってば」
恵(ああ……、秋山さんが私に近づいてくる……。
これは普段秋山さんを愛する努力を惜しまなかった私に神様が与えてくださったプレゼントだわ……
ありがとう神様)
男「でも、澪ちゃんってボーカルでしょ? 絶対上手いって」
恵「神は死んだっ!!」
澪「ビクッ!?」
澪「そ、曽我部……先輩?」
恵(!? 秋山さん、私の名前、覚えていてくれてたの!?)
恵「お、おひおひ、お久しぶりね。秋山しゃん」
恵(お、落ち着け私っ!!)
男「知り合い?」
澪「うん。桜高の卒業生で生徒会長さんだったからお世話になってたの」
恵(私も、秋山さんには色々とお世話になっているわ……。色々と、ね)
男「そうなんだ。初めまして、秋山さんとお付き合いさせて頂いてる男です」
恵「ギロッ!!」
男(な、なんだこの女。おっかね~な……)
澪「ここでバイトなさってるんですね」
恵「え、ええ。そうなのよ」
澪「がんばってくださいね」ニコッ
恵「もう死んでもいいっ!!」
澪「ビクッ!!」
男「230号室、空いてますか?」
恵「……はいはい」
男(こいつ、なんでこんなに適当なんだよ……)
恵「ごゆっくり~……」
男「じゃあ、行こうか」
澪「うん。曽我部先輩、それじゃあ……」
恵「は、はひっ」
恵(ああっ!! 行かないで、秋山さんっ!! 男と2人で個室に入るなんてっ!!)
恵(こ、こうなったらいかなる手段を用いてでもあらゆる妨害を!!)
恵「……」
恵(……いえ、秋山さんの幸せを願うって心に誓ったじゃない)
恵(私の感情と秋山さんの気持ち。優先すべきはどっちかなんて明白だわ……)
恵(2人に……、幸あれ……)ホロリ…
・ ・ ・ ・ ・
男「ねぇ? 澪ちゃんのバンドの歌、聴きたいな~」
澪「えっ!? そんな……、カラオケに入ってる訳ないし……」
男「それもそっか」
澪「も、もう……」
男「じゃあ何歌うの?」ピトッ
澪「ね、ねぇ。ちょっとくっつき過ぎじゃないかな?」
男「そう?」
澪「う、うん」
コンコン ガチャ
恵「ご注文のドリンクお届けにまいりま……!?」
澪「!?」
恵(あ、あ、あ、あんなにくっついて……!?)
男「どうも~、その辺に置いといて」
恵「し、失礼しましたっ!!」
澪「カァ~ッ////」
男「あ、やっぱり他人に見られたら恥ずかしいよね。ごめん……」サッ
澪「あっ……」
澪(傷つけちゃったかな……。これくらい……付き合ってたら普通だよね……)
男「じゃあ歌おっか! 父さんGReeeeN入れちゃうぞ!!」
澪「わ、わ~聴きた~い」
澪(あんな振る舞いしたのに……、逆に気を遣ってくれてるのかな)
澪(律はああ言ってたけど、やっぱり優しいと安心できる)
澪「……」
澪(律、怒ってるかな……。当たり前だよね、私酷いこと言っちゃったし)
澪(今日こそは、ちゃんと男クンに言おう。部活の時間も考えてって)
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────────────
澪「だけどそれが一番難しいのよ♪ 話のきっかけとかど~しよ♪」
男「いいぞ~澪ちゃ~ん♪」
男(おいおいなんだよこれwwww バンドの曲アカペラで歌ってくれって頼んだけど
まさかここまで破壊力があるとはwwwwww ダメだwwまだ笑うな俺wwwww)
澪「あ~も~いいや、寝ちゃお~寝ちゃお~寝ちゃお~!!」
男(ワロスwwwwwwww ってか本当に寝ちゃうんだけどな、もうすぐwwww)
澪「ふぅ~~っ……。どう、だった?」
男「へっ? あ、ああ。個性的な歌詞でとっても良かったと思うよ」
澪「あ、ありがとう////」
男(ねーよwwwwwwww)
男「ほらほら、喉渇いたでしょ? また新しいの頼んどいたから。コレ飲んで」
澪「う、うん」ゴクッゴクッ……
男「……」ニヤッ
澪(普段は一緒にいるときもなに喋っていいかわからなくなってアップアップになるけど)
澪(カラオケって歌ってればいいから楽かも)
男「じゃあ、次なに歌おうか?」ピトッ
澪「あ、あの……。さすがに腰に手回すのは止めてくれないかな……?」
男「誰も見てないよ」
澪「でも、カラオケって部屋に監視カメラ付いてるんじゃ……」
男「ああ~、心配いらないよ。特別にこの部屋だけ付いてないんだ」
澪「え?」
男「ここで働いてるやつと俺友達でさ~。この部屋だけ映らないようにしてもらってるの」
澪「な、なんで?」
男「なんでって? そりゃあ楽しいことするためでしょ?」
澪「た、楽しいことって……?」
男「こんなことかな~」ガバッ
澪「!?」
澪「嫌っ!! 離して!!」
男「ああ、ダメダメ。ここはカラオケなんだから大声出したって外に聞こえやしないよ」
男「でも、大人しくしてくれたらそんなに乱暴なことはしないから」
男「撮影はしちゃうけどwwwww」
澪「そ、そんなことバレたら大学退学になっちゃうよ!!」
男「ご心配なく。だって俺大学行ってないも~ん」
澪「え!? だってK大って……!!」
男「そう言えば大概の女ってついてくんだよね~、ほんとバカだよ」
男「しかも俺って結構イケメンでしょ? 落とした女は数知れず」
澪「け、警察に……!!」
男「そんなことしちゃったら俺と澪ちゃんのいかがわしい行為がネットを通じて全世界に広まっちゃうよ」
男「もっとも澪ちゃんしか映ってないだろうけどね~wwww」
澪「!?」
男「それに、黙ってくれたら少しぐらいは分け前あげるよ
今までの女もこれで結構OKしてくれるやつ多かったんだよね~。殆ど脅しだけどwww」
男「だから、何も澪ちゃん一人が悲劇のヒロインって訳じゃないから安心してね」
男「せめて目線くらいは入れてやっからさwww アソコにモザイクはかけないけどwwww」
澪「た、助けて……」ポロポロ……
男「あらあら、泣いちゃった。ところでそろそろ眠たくなってこない?」
男「さっき澪ちゃんが飲んだ飲み物の中に薬入れたんだけど」
澪「!?」
男「俺の仲間で澪ちゃんとヤリたいってやつが何人かいてね
とりあえず俺らのたまり場まで連れて行くのに大人しくしてもらうためにさ」
男「でも、俺はもう我慢できないんだよね。声聞いた方が興奮するタイプだし」
男「だから、眠たくなっちゃう前にまずは俺としようね♪」
澪「嫌……、やめて……」
男「ああ~……。そんな潤んだ目で哀願されたら余計に興奮しちゃうよwwww」
澪(助けて……。助けて律っ!!)
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ヴ~ッ…ヴ~ッ…
律「ん? メール……。澪からだ……」
唯「き、きっとさっきはごめんってメールだよ」
紬「そ、そうね。だったらりっちゃんも仲直りのメール返さなきゃ」
梓「そうです! 喧嘩両成敗ですよ!!」
律「ったく、仕方ないな。許してやっか♪」
唯(なんだかんだ言ってりっちゃんも待ってたんだろうな)
紬(やっぱり幼馴染はこうでなきゃ)
律「って……なんだこれ? 数字ばっかし」
唯「どれどれ? 1万6千816? お金? 謝罪と賠償ニダッ!!って事かな?」
紬「二行目はもっと桁が大きくなってるわ。735353199216892198」
梓「これだけ払えって事ですかね? 天文学的数字ですね」
律「ふ、ふ、ふ、ふざけんなっ!!」
最終更新:2010年04月09日 00:49