唯「はー、やっと授業終わったよ~。
音楽室いこーっと」
ガチャ
唯「ちょりーっす」
梓「遅かったですね、
もう下校時刻ですよ」
唯「え?」
唯「いやいや、さっき授業終わったばっかりだよ」
梓「何言ってるんですか、
時計見てくださいよ」
唯「……あれ、5時?
さっきまでは3時だったのに」
澪「何を寝ぼけてるんだ」
律「明日は遅刻するなよ」
唯「???」
紬「じゃあ今日はもう帰ろうか」
梓「はい」
澪「ほら唯、いくぞー」
唯「おかしーな……」
翌日。
唯「ふー、授業終わったー」
律「唯、部活行こうぜ」
紬「あら、唯ちゃんは今週いっぱいは掃除当番でしょう」
律「あ、そうだっけ」
紬「今日は遅刻しないできてね」
唯「あ、うん。大丈夫だよ」
律「じゃー掃除頑張れよ」
唯「はーい……」
クラスメイト「あ、平沢さん」
唯「さーて、掃除しよう掃除」
ク「何言ってるの、掃除なんてもうとっくに終わったよ?」
唯「え?」
ク「掃除サボってどこ行ってたのよ」
唯「ど、どこって……ずっとここにいたけど」
ク「嘘つかないでよ、
2時間もずっと気づかれずにここにいたっていうの?」
唯「に、2時間? まだ授業終わったとこじゃ……」
ク「はあ? 時計見てみなさいよ」
唯「ご……ご……5時……!?」
ク「はあ……嘘つくのもいい加減にしてよね」
唯「そ、そんな……」
律「あ、唯!」
澪「唯ー、部活サボるのもいいかげんにしろよ」
唯「え、ちが……」
梓「やる気あるんですか?」
紬「唯ちゃん……」
唯「いやその……」
ク「平沢さん、掃除だけじゃなく部活までサボったの?」
唯「ち、違うの! 授業が終わって、
気づいたら5時になってたんだよ……」
澪「そんな下らない嘘ついてないで素直に謝れ」
唯「で、でもお……」
澪「おい、唯」
梓「唯先輩!」
唯「う……」
ク「平沢さん、子供みたいなこと言ってちゃダメよ」
律「そうだぞ、掃除や部活をサボったんだから
素直にサボってゴメンナサイとだな……」
唯「サボってない! サボりたくてサボったわけじゃないよ!
もういいよっ!」だだっ
澪「唯!」
紬「行っちゃった……」
平沢家。
憂「おかえり、お姉ちゃん」
唯「ういいいいい……」
憂「ど、どうしたのお姉ちゃん!」
唯「みんながあ……」
憂「みんなにイジメられたの!?」
唯「私の話を聞いてくれなくて……」
憂「みんなに無視されたの!?」
唯「放課後がなくなってすぐ下校時刻……」
憂「下校時刻まで居残りさせられたの!?」
唯「誰も信じてくれない……」
憂「私は信じるよお姉ちゃん!」
唯「ううう……ういいい……」
憂「で、何を信じてもらえないの?」
唯「あのね、6時間目の授業が終わってね、
放課後になったらね」
憂「うん」
唯「すぐ下校時刻になっちゃうの」
憂「は?」
唯「放課後になったと思ったら、
一瞬で下校時刻になっちゃうの!」
憂「……」
唯「あー、信じてない!
憂も信じてくれないんだ!」
憂「そ、そんなことないよ……
ただ話が突飛すぎて」
唯「でもほんとなんだよ、
このせいで掃除当番も部活もできなくって」
憂「そ、そうなんだ」
唯「それでみんなに怒られちゃって」
憂「大変だったね」
唯「明日もこんななのかな……
どうすればいいんだろ」
憂「うーん……放課後が一瞬で終わっちゃうのは、
お姉ちゃんだけなんでしょ?」
唯「うん、みんなは普通に放課後を過ごしてる」
憂「じゃあ、誰かと一緒にいてみたらどうかな。
他の人と一緒なら、時間間隔も共有できるでしょ」
唯「そっか、さすが憂は頭がいいね」
憂「えへへ」
翌日。
唯「ふー、授業終わった」
律「唯、今日こそ部活来いよ」
ク「今日こそ掃除当番やってよ」
唯「あ、2人とも……
私と一緒にいてくれない?」
律「はあ?」
唯「一人でいたら、また放課後が一瞬で終わっちゃうから」
律「まだそんなこと言ってんのか」
唯「お願い……」
ク「分かったわよ、見張りも兼ねて一緒にいてあげる。
どうせ私も掃除当番だし」
律「じゃあ私も、掃除終わった唯を部室まで
連れて行くためにいてやるよ」
唯「ありがとう……」
ク「じゃあ、さっさと掃除するわよ」
唯「うん……あ」
ク「何?」
唯「手つないでもらってていい?」
ク「はあ?」
唯「な、なんか不安で……」
ク「私ら二人で手つないだら掃除しにくいでしょうが」
律「じゃあ私がつないでてやるよ、
ほれ」
唯「ありがと、りっちゃん」ぎゅっ
律「今日は逃がさないからな」
唯「うん」
律と手をつないだことによって安心した唯。
これでもう放課後が一瞬で終わったりしない、
もし終わったとしても律と時間感覚を共有できる……そう確信した。
しかし、唯が無意識のうちにまばたきをして、
まぶたをひらいたその時。
律「うおっ!」
唯「え?」
澪「ゆ、唯?」
梓「いつのまに……」
唯「え? え?
ここどこ?」
澪「どこって……昇降口だけど」
梓「今から帰るとこですよ」
律「唯?」
唯「一応聞くけど、今何時?」
紬「5時よ」
唯「……」
梓「また部活サボって……
今までどこにいたんです?」
唯「……ねえりっちゃん、掃除中に……
手つないでたよね」
律「え? ああ……
掃除をし終えるまではな」
唯「え?」
律「そんで唯がロッカーにホウキを片付けるとき……
ちょっと目を離したら、唯がいなくなってて」
唯「……」
律「ホントに一瞬だけ目を離してたんだ、
でもそんな一瞬のうちに
気づかれず逃げるなんて……」
澪「な、なんだよ……
どういうことなんだ?」
唯「だから、放課後が一瞬で終わっちゃうんだよ」
梓「そんなことあるわけないでしょう。
バカなこと言わないでくださいよ」
紬「そうよ、唯ちゃん。
逃げたなら逃げた、サボったならサボったと
正直に言って。
別に怒ってるわけじゃないから、ね」
唯「だ、だって……
りっちゃんは信じてくれるよね……?」
律「うーん……
何か普通じゃないって感じはするけど……
よし、じゃあこうしよう。
明日の放課後、すぐに私達のクラスに集まって、
唯を監視していよう」
澪「か、監視って……」
唯「監視でもなんでもいいよ、
誰でもいいから放課後は私と一緒にいてよ……
もうこんなの怖いよ……」
翌日。
唯「はあ、授業終わった」
律「よし唯、私たちが見ててやるからな、
逃げるスキもないくらいに」
唯「助かるよりっちゃん」
紬「私も一応……」
律「すぐ澪と梓も来るからな」
唯「うん」
ガラッ
澪「おーい、律」
律「お、早速来たな」
梓「上級生の教室って緊張しますね」
律「よし、唯を監視するぞ」
澪「じーっ……」
梓「じーっ……」
紬「じーっ……」
唯「あはは……」
ク「平沢さん、今日の掃除……って何やってんの」
唯「逃げないように監視してもらってるの」
ク「はあ……まあ、監視はいいけど
掃除はちゃんとやってもらうからね」
唯「そりゃもちろん」
律「気をつけろよ、一瞬でも目を話すといなくなるから」
澪「じーっ……」
梓「じーっ……」
紬「じーっ……」
ク「……なんかこうも監視されてると
すごくやりづらいわ」
唯「ご、ごめん……」
ク「まー別にいいわよ、
逃げられるよりはマシだから」
唯「私も逃げたくないんだけどね」
律「じーっ……」
澪「じーっ……」
梓「じーっ……」
紬「じーっ……」
ク「……あれ?」
唯「どうしたの?」
ク「外が暗いような……」
唯「え……え?
まさか……」
ク「あれ? もう5時?」
律「え?」
澪「あ、ほんとだ……もう5時だ。
……って」
梓「え? さっきまで確かに3時でしたよね」
紬「嘘、こんなことって……」
唯「ほらね、一瞬で放課後終わっちゃったでしょ!
私の言うことは正しかったんだよ!」
ク「そうね、疑ってごめん……
ってそういう問題じゃないわよ」
律「ああ、確かに唯の言うことは本当だった……
本当だったけど」
唯「けど?」
澪「なんか取り返しの付かないことに
なってしまったような気がする」
唯「うーん……
憂は誰かと一緒にいれば、
時間感覚を共有できるって言ってたんだけど」
紬「みんなが唯ちゃんの時間感覚に合わさっちゃったわね」
ク「なんだか気味が悪いわね」
律「ああ……」
澪「と、とりあえず今日はもう帰ろう……」
梓「そうですね……」
唯「いやー、みんなに信じてもらえて良かったよ」
澪「私はなんだかイヤな気分だ」
翌日。
唯「はひー、授業終わったあー」
律「私部活いくわ」
紬「私も」
唯「え? 一緒にいてくんないの?」
律「だって……なあ」
紬「昨日みたいなことになるから……」
唯「そんなあ……
私一人だけ時の流れから取り残されろっていうの?」
律「そういうわけじゃないけど……」
唯「ひどいよ、2人とも……」
ク「平沢さーん、掃除~」
唯「はーい……」
律「…………あれ?」
紬「どうしたの、りっちゃん」
律「外がいきなり薄暗くなったような」
紬「ま、まさか……」
律「……5時……だと……!?」
唯「へ?」
ク「あっ、ほんと……5時……!」
ガラッ
澪「おい、唯、律、ムギ!」
梓「い、今、なにがなんだか……」
律「もしかしてお前らも……」
梓「はい、気づいたら5時になってて」
律「……」
最終更新:2010年04月13日 14:34