それはある日の放課後の事でした。

唯「ムギちゃん、今日のお菓子って何?」

紬「今日はチョコケーキよ」

唯「チョコケーキ!?私、大好物だよ!!」

唯「うっれしいな~~♪」

律「唯、階段でふざけると危ないぞ」

唯「だって嬉しいんだも~ん♪」タンッ、タンッ

律「まったく……」

紬「あらあら」

その時でした。


―――グキッ!!!

唯「えっ?」

ズダダダダッ!!!!

ダァァァン!!!!

唯「あいたたた~~!!」

律「唯ッッッ!!!」

紬「唯ちゃん!!!」

どうやら私は階段から落ちてしまったみたいです。

律ちゃんとムギちゃんが慌てて私に駆けよってきました。

律「おい、唯!!!大丈夫か!!!」

紬「きゅ、救急車!!救急車呼ばなくちゃ!!!」

唯「大丈夫だよムギちゃん。ちょっと頭打っただけだし」

唯「って、あれ……?」


唯「なんで、私の足元に私が寝てるんだろう……?」

なんとも不思議な光景でした。私の足元に私が倒れています。

律ちゃんとムギちゃんは倒れている私に向かって呼びかけていました。

律「おい、唯!!しっかりしろ!!」ユサユサ

紬「律ちゃん、動かしちゃダメよ!!」

紬「私は先生を呼んでくるから律ちゃんは救急車を呼んで!!」

律「わ、分かった!!」

律「え、え、ええと……」

律「ム、ムギ、119番って何番だっけ!?」アタフタ

紬「119番は119番よ!!落ち着いて!!じゃあ私は先生を呼んでくるから!!!」

唯「あはは~、律ちゃんベタだね~」



唯「というか、私が二人……?」

唯「ねぇ、律ちゃん、これってどういうことなのかな?」

律「ええ、はい、階段から落ちて……!!」

唯「お~い、律ちゃ~ん」パタパタ

電話をしている律ちゃんの目の前で手を降ってみましたが、律ちゃんは私に全然気づきません。

唯「もしかして、私のこと見えてないのかな……?」

唯「あれ……?手が透けてる……?」

ふわ~~~~

唯「わっ、体が浮き始めた!!!」

唯「あわわわわ!!!!!」




天国!

唯「ここどこなんだろう……?」

梓「どうもこんにちは。私は天使の竹達と申します」

唯「あれ?あずにゃん?」

梓「平沢唯さんですよね?よろしくお願いします」ニコッ

唯「あずにゃん、こんなところで何してるの?というかここってどこなの?」

梓「あずにゃん……?私の名前は竹達です!」

梓「ここは天国ですよ。平沢さんは死んで天国に来たんです」

唯「天国?またまた~。あずにゃん、冗談がうまいね~~」

唯「それより、その天使のコスプレ可愛いね!羽とか輪っかとか本物の天使みたいだよ!」

唯「あずにゃん、可愛い~~!!」ダキッ

梓「だっ、抱きつかないで下さい!!」

梓「それに私は本物の天使です!!」

唯「そんなこと言っちゃうあずにゃんも可愛いね~~♪」

梓「は、離して下さい!!」バッ!

梓「と、とにかく、自分の名前が呼ばれるまであそこの待合室で待ってて下さい!!」

唯「う~ん、何だかよく分からないけどあそこで待ってればいいんだよね?」

梓「そうです!それじゃあちゃんと待ってて下さいね」スタスタ

唯「行っちゃった……」

アナウンス「平沢さ~ん、平沢唯さ~ん。三番窓口までお越しくださ~い」

唯「あっ、私の名前だ」

唯「えっと、三番窓口は……、あそこだね」


窓口!

紬「平沢唯さんですね?」

唯「ムギちゃん!!こんなところで何してるの?」

紬「ムギちゃん……?私の名前は寿ですけど」

唯「(あれ?さっきのあずにゃんの時と一緒だなぁ。それにムギちゃんも天使の恰好してるし)」

紬「えっと、平沢唯さん……死因は事故で、行き先は地獄ですね」

唯「えっ?地獄?」

紬「はい、地獄です」ニコッ

唯「なっ、なんで!?私何も悪いことしてないよ!?」

紬「そう言われましても……。書類には地獄行きとありますので……」


唯「私、地獄なんて嫌だよ……!!ムギちゃん、何とか出来ない……?」

紬「申し訳ありませんが、私にそういった権限は無いので……」

唯「そんな~~~」

紬「それでは、この書類をお持ちになってあちらの地獄行きのエレベーターにお乗り下さい」

紬「直通になっておりますので」

唯「は~い……」シブシブ



地獄!

唯「ここが、地獄か~~」

唯「なんか思ってたのと違う……」

唯「それにしても私、本当に死んじゃったのかな……?」

澪「平沢唯だな?」

唯「澪ちゃん!!なんでここにいるの!?」

澪「澪ちゃん……?私の名前は日笠だ!!」

澪「私は鬼なんだから地獄にいるのは当たり前だろう」

唯「へぇ~、鬼なんだ~」ジロジロ

澪「なっ、何!?あんまりジロジロ見るなよ!!」

唯「うん……、ごめんね……」

澪「なんだよ!!言いたい事があるならはっきり言ったらどうなんだ!?」

唯「じゃあ、言うけど……」

唯「その鬼のコスプレ、恥ずかしくないの?」

澪「………!!」カァァァ

澪「だ、だってしょうがないだろ!!閻魔さまが鬼の衣装はこうでなくちゃとか言って無理矢理着せたんだから!!!」

澪「私だって、こんな恥ずかしい衣装……!!」

唯「ふ~~ん」ニヤニヤ

澪「くっ……!!」

澪「とにかく、こっちへ来い!!」


唯「どこに行くの?」

澪「閻魔さまのところだ。その若さで地獄に来るってことはそうとう悪い奴なんだろう?」

澪「せいぜい、覚悟しておくんだな」

唯「私、悪いことなんてしてないよ~~」

そうして、私は澪ちゃんそっくりの鬼に閻魔さまのところまで連れていかれました。

澪「閻魔さま、罪人を連れてきました」

さわ子「ご苦労様、日笠さん」

唯「(さわちゃん先生そっくりだ……)」


さわ子「あら、可愛いわね~~。あなた、鬼になってみる気はない?」

さわ子「給料はずむわよ。鬼の恰好がとても似合いそうね」

澪「閻魔さま!!スカウトしてどうするんですか!?」

澪「今はこいつの罰を決めるために私に連れてこさせたんですよね!?」

さわ子「冗談よ、冗談。じゃあ、この子の罰は例のやつをお願いね」

澪「例のやつって……まさか、あれですか……!?」

さわ子「そう、あれよ。日笠さん、後は頼むわね」


澪「わ、分かりました!!お前、こっちに来い。あとこのアイマスクをつけろ」

そうして私はアイマスクをつけたまま手を引かれ、別の場所へ連れていかれました。

唯「ねぇ、澪ちゃん、例のやつってどんな罰なの?」

澪「ふっ……、この罰は鬼の私でも耐えきれないくらい辛いものなんだ」

澪「覚悟するんだな……!!」

唯「そんなぁ……」

唯「(もしかして、釜茹で地獄とか、針の山地獄とかなのかな……」

唯「(うぅ……、いやだよぉ……)」

澪「よし、ここでいいな」

澪「お前、これを持て」


唯「(なんだろうこれ……?重いなぁ……)」

唯「(でも前にも持った事あるような……)」

澪「それを肩にかけろ」

唯「(あれ……?これってもしかして……?)」

澪「アイマスクを外して」

唯「う、うん……」

私がアイマスクを外すと辺りは真っ暗でした。隣にいる澪ちゃんでさえまったく見えません。

澪「それじゃあ今から平沢唯の罰を始めます!!!」

澪「スタート!!!」

バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!

唯「まぶしいっ……!!」

澪ちゃんの合図の声とともに照明が着きました。


ウオオオオオオ!!!ウオオオオオオ!!!

ヒッラサワッ!!!ヒッラサワ!!!ヒッラサワ!!!

唯「こっ、ここは……!?」

澪「お前の罰は、この観客が満員の横浜アリーナで歌を一曲歌いきることだ!!!」

唯「………へ?」

私は満員の横浜アリーナにギターを持って立っていました。

澪「くくく、驚いて声も出せないだろう?」

澪「この観客が満員の横浜アリーナ!!そしてその観客の前で歌を歌う!!」

澪「私でさえ、耐えられなくて途中で恥ずかしさのあまり気絶したんだ!!」


ヒッラサワ!!!ヒッラサワ!!!ヒッラサワ!!!

澪「そしてこの平沢コール!!恥ずかしいだろう!?」

唯「はぁ………」

唯「とりあえず、私は歌を歌えばいいんだよね?」

澪「ああ、歌いきれなかったらもう一回最初からだからな!!」

澪「最後まで歌えるまで永遠に続けるからな!!」

澪「(こいつ、なんでこんなに余裕なんだ……?」

澪「(まぁいい。歌が始まったら恥ずかしさのあまり、立っていられなくなるだろ)」

澪「それじゃあミュージック、スタート!!!」

♪(ふわふわ時間のイントロ)

ウオオオオオオオオ!!ウオオオオオオ!!

澪「(この観客の前で歌を歌う……!!なんて恥ずかしいんだ……!!)」

澪「(しかもこの大歓声……!!閻魔さまも人間をいじめるのが好きだな~)」

唯「君をみてるといつもハートドキドキ~♪」

澪「(って……、えっ……?)」

唯「揺れる思いはマシュマロみたいにふ~わふわっ」

澪「普通に歌ってるーーーー!!!????」ガビーン


唯「あ~あ、か~みさ~まおねがい、一度だ~けの~」

澪「なっ、なっ、うっ、嘘……!?」アワアワ

澪「(サビまで何の躊躇もなく……!!)」

澪「(こいつ、本当に人間か……!?)」


澪「(横に立ってるだけで倒れそうなくらい恥ずかしいのに……!!)」


唯「ふわっふわった~いむ♪」

観客「ふわっふわった~いむ!!!!」

唯「ふわっふわった~いむ♪」

観客「ふわっふわった~いむ!!!!」

澪「」


ワアアアアアアアア!!!!

唯「みんな、ありがと~~~!!!」

澪「(一曲……歌いきっただと……!?)」

澪「そんな、バカな……!!」

アンコール!!アンコール!!アンコール!!

唯「え?アンコール?」

唯「え~と、それじゃあもう一曲歌います!!」

澪「なん…だ…と…?」

唯「曲はギー太に首ったけ!!」

♪(ギー太に首ったけのイントロ)

ウオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオ!!!

澪「」


そして私はその後2曲を歌い、大歓声を受けながら横浜アリーナから退場しました。

澪「そんな、馬鹿な……。人間のくせに……」ブツブツ

唯「ねぇ、罰ってこれで終わり?」

澪「えっ……?いっ、いや、まだ終わりじゃない!!」

澪「(次だ……!!次で挽回しよう……!!)」

私はある古ぼけた洋館の前に連れていかれました。

澪「お前にはここに入ってもらう!!」

唯「ここって?」

澪「ここは地獄一怖いとされるデビルナイトメアマンションだ」

澪「ここは鬼の私でさえ怖すぎて途中でリタイアするほどの場所だからな!!」

澪「しかし、お前には途中で怖すぎてリタイアした場合でも、もう一回入り口から入ってもらう」

澪「出口にたどり着くまでエンドレスだ!!」


唯「はぁ……」

唯「とにかく、入り口から入って出口から出てくればいいんだよね?」

澪「ああ、出られるもんならな」

唯「じゃあ、行ってくるね」

澪「リタイアしたらもう一回だからな!!」

澪「(ふっ……、その館には人間を怖がらせるためのありとあらゆる仕掛けが用意されている)」

澪「(余裕でいられるのも今のうちだけだからな……!!)」


30分後!!

唯「う~~ん、楽しかった~~!!」

澪「な、な、何だと!?お前、本当に入ってきたのか!?」

唯「え?ちゃんと入ったよ?てゆうか私、今出口から出てきたじゃん」

澪「(そんな馬鹿な……!!私は最初の仕掛けでリタイアしたのに……!!)」チラッ

唯「?」

澪「(……そうか!!この館はもしかして、今は全然怖くないんじゃないのか?)」

澪「(そういえばこの前、私が怖すぎるって閻魔さまに言ったら

さわ子「そう?じゃあちょっと修正しておくわね」

って言ってたからな……)」

澪「ちょっと待て、平沢」

唯「なに?」

澪「私がこの館に入るからちょっとここで待ってろ」


唯「………?分かった、待ってるよ」

澪「あそこに屋台があるからそこのベンチで待っててくれ」

唯「うん」

澪「(そうだよ、あんな怖いもの、人間に耐えられるはずがないんだからな)」

澪「(絶対今は怖くなくなってるはず……!!)」

澪「(くっ、私とした事が……ちゃんと確認しておけばよかった)」

そうして澪ちゃんは館の中に入って行きました。


唯「(地獄にも屋台があるんだな~)」

唯「すいませ~ん」

憂「あ、いらっしゃいませ」

唯「憂!?なんでここにいるの?」

憂「憂……?お客さん、誰かと勘違いしてませんか?私の名前は米澤っていうんです」

唯「(あっ、そうか。憂が地獄にいるはずないもんね。それにしても似てるな~~)」

唯「すいません、知り合いによく似てて……」

憂「そうなんですか~。それよりもお客さん、何にしますか?」

唯「えーと、じゃあこのインフェルノポップコーンと閻魔の特製団子とダークネスドリンク下さい」

憂「はい、今用意しますね」



一時間後!

唯「澪ちゃん、遅いな~~」ポリポリ

唯「あっ、やっと出て来た!!でも、誰かと一緒にいる……?」

唯「あれは……、和ちゃん?」

澪ちゃんは和ちゃんに付き添われて館から出てきました。

澪「うっ、うっ……、怖かったよぉ……」

澪ちゃんは泣いていました。

和「よしよし、もう大丈夫だからね」

澪「なんでっ、ヒック、私が、ヒック、前に来た時より、ヒック、怖く、ヒック、なってるの……?」

和「閻魔さまが

さわ子「日笠さんが怖いってくらいじゃ他の人には全然大したことないわね……。もっと怖くしないと」

って言って館を改造したのよ」

澪「そっ、そんな、ウグッ、ひっ、ひどいよぉ、うぅ……」


唯「あの~」

澪「」ビクッ!!

澪「」ササッ

私が声をかけると澪ちゃんは和ちゃんの後ろに隠れてしまいました。


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最終更新:2010年04月13日 17:51