澪「はぁ?」

唯「りっちゃん面白~い」

紬「あらあら」

梓「またなんかの冗談ですか?」

律「本当なんだよ!私は男なんだ!」

唯「だってりっちゃん小さいけどおっぱいあるしアレないじゃん」

律「それは……仕方ない。お前等には全て話すよ」

律「私は小さい頃本当に男だったんだ。澪は記憶を消されていて覚えてないだろうけど……昔2人で遊んでいた時、私達は変なじじいに話しかけられた」

澪「……」

唯「わくわく」

律「純粋だった私達は面白いものがあるからおいで、と言うじじいについて行った。澪は最初嫌がったけどな」

澪「全く記憶にない」

律「言ったろ?記憶を消されたって」

澪「……」

律「そのじじいは自分の事を魔法使いだと言った。お嬢ちゃん達には特別に魔法を見せてやると」

律「私はじじいに本当に魔法使いなら私を別の姿に変えてみてって頼んだんだ」

律「じじいは頷いて私に魔法をかけた。それからおびえている澪には可哀想だから記憶を消してやる魔法を」

律「魔法をかけた瞬間じじいは目の前から消えていたよ。澪は魔法の通りじじいのことを全く覚えていなかった」

澪「律は……?」

律「私の姿は全く変わっていなかった。動物の姿を期待していたのに、どこも変わっていなかった。その時はそう思ってがっかりしたんだ」

律「澪と別れて家に帰ると、夕飯前に母親に風呂に入るように言われた」

律「私は風呂の鏡に映る自分の姿に愕然としたよ」

律「アレが……なかったんだ」

律「すぐに泣きながら全裸のまま母親に訴えた。アレがなくなっている!と」

唯「くふっ……あ、ごめん」


律「……でも母親は大笑いしてこう言った」

律「『あんたは女の子なんだからついてなくていいのよ』と」

律は唇を噛み締めながら体を震わせた。

律「私はっ……今はこんな姿でもっ…本当は男なんだよ……っ」

律の目からはぽろぽろと涙が零れ落ちてくる。
先ほどまで笑いをこらえていた唯は律のその様子に、真面目な顔に変わってしまった。

澪「……律、本当、なのか…?」

記憶が消されているらしいとはいえ、言われてみれば澪自身そんな出来事があったような気がする。

律「澪だけは覚えていてくれると信じてたのに、次の日に会った澪は、私が男だったということを覚えていなかった…」

澪「……」

律「だから私は今、元に戻るためそのじじいを探している」

紬「でもいきなり……どうして?」

律「それは……この頃になって思い出したんだが」

律「魔法使いのじじいが言っていたんだ。『かくれんぼしよう』と」

澪「?どういう意味だ?」

律「『君が成人を迎えるまでにおじさんを見つけられなかったら、魔法はとけない』そう言っていた」

唯「じゃああと……」

梓「3年ですか……」

律「だからみんなにも助けてほしい……信じてもらえたら、だけど」

唯「信じるよ!りっちゃんの涙は本物だもの!」

律「唯……」

紬「私も信じるわ」

律「むぎ……」

梓「にわかに信じられませんが……信じます」

律「梓……」

澪「……」

律「……澪」

澪「律が男か……」

律「……」

澪「信じる……よ」

律「ありがとう澪!」

律は歓喜のあまり澪を抱きしめる。
まるで男のものとは思えない甘い香りが、澪の鼻を掠める。

澪「ひっ!やっやぁ!」ドンッ

思い切り押し返され、律は大きく倒れる。

律「痛っ……澪?」

澪「あ……ご、ごめ……ごめんっ!」ダッ

澪の顔は真っ赤だった。
今にも泣き出しそうな顔で逃げるように部室から出て行った。
呆然と床に座り込んだまま、律はドアを見つめていた。
紬が大丈夫?と律を支える。

紬「きっとりっちゃんが男だって意識しちゃったのね」

律「そんな……」

律「あ…あのさ、今日は私帰るわ……いきなりごめんな。みんな」

唯「ううん……明日からみんなで部活後に探そ?そのおじいさん」

律「あ、ありがとう。じゃあ」パタン


……

律「……」

律(おいおいおいおい!何でみんな信じてんだよ!?おかしいだろ!こっちが驚きだよ!)

律(澪に至ってはもう意識だと!?免疫なさすぎるにも程があるわ!)

律(あ~~明日からどうするかなぁ~今更嘘でした☆なんて言えねぇよぉお!)

律(もうこうなったら嘘を突き通すしかないか!?)

律(やめときゃ良かった……でもみんな信じるなんて思わないだろう!?)

律(あ~~もう仕方ない……今日のところは帰って寝よう!)


次の日の放課後

唯「遅刻の罰で掃除があるの…」

律「ふーん。じゃあ手伝うよ」

唯「流石りっちゃん!男だね!」

ざわっ…

律「ばっ馬鹿唯!」

唯「あっごめん!」

紬「ふふふ、私も手伝うわ」

澪「何?掃除で部活に遅れる?じゃあ私も今ジャージだし……手伝ってやるか」

唯「持つべきものは友達だね!」

澪「今度から気をつけろよー」


部室

律「早く終わって良かったなぁ」

唯「ふー。みんなありがとう!早く制服着替えちゃおう」

律「ああ」ぬぎっ

唯「~♪」ぬぎっ

澪「ちょっちょっと待て唯!」

唯「ふへ?」

澪「律は男だぞ!?男の前でそんな…はっ裸っ…」

律(忘れてた……)

律「まぁ……嫌なら部室の外で待つけどさ、小さい頃から自分の裸見慣れてるから今更女の子の裸見たところで何ともないよ」

律(それに唯達の裸だっていつも体育の前後の着替えで見慣れてるし)

唯「駄目だよりっちゃん!」

律「うわっ!」ビク!

唯「男の子に戻ったときそんなんじゃ女の子と色々できないじゃん!」

律「い、色々って……」

唯「今から女の子にムラムラするようにならなきゃ駄目だよ!」ぬぎっ

律「ちょっ……唯!?」

唯「ほら!どう?」

唯は下着だけの姿で律の前に立った。
紬はその様子を見て楽しそうに笑っている。
梓の来る様子はない。

律「どうって言われても……か、可愛い下着ですね?」

唯「ありがとう!しまむらで買ったの!」

律「しま……」

律(つーか私女だしもうヤダこの状況)

澪「……唯ば…いで…」

律「え?何、澪」

澪「唯ばっか見ないで私も見ろ律の馬鹿ぁああ!」ばーん

律(えっええええええ!?いつの間に裸になってんのぉ!?)

律「馬鹿はお前だ澪!お前自分が何してるか分かってんのか!?」

澪「産まれたばかりの姿を律に晒してるんだ!」
律「よくお分かりですね!」

唯「私も負けてられないね!」ぬぎっ

律「ちょっ……むぎ!むぎ止めてぇ!」

紬「あらあらうふふ」

梓「遅れてすいません!」ガチャッ

律「あっ梓…」

梓「……失礼しました」パタン

律「梓助けてええええ!」

梓「全く何やってるんですか先輩方は!律先輩すっかりおびえて気絶してるじゃないですか!」

唯「ご、ごめんねりっちゃん!」

澪(私は何を私は何を私は何を)

律「うーんうーん」

梓「男の人に戻る前に女性恐怖症になっちゃいますよ!もう!」

律「うーんおっぱいとあわびが襲ってくるよーうーん」

律「はっ……」

唯「りっちゃん!目覚めたの?」

律「うわぁああよるなあわび!」

唯「あわび!?」

律「あ……いや、唯か……」

律「わ、悪いけど、私今日も帰るわ……」

唯「あ、うん……」

律「助けてくれてありがとな、梓」

梓「い、いえ」ドキッ

律「それじゃまた明日……」パタン


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最終更新:2010年01月06日 01:25