―――日曜日

律「なんだよ梓の奴、憂ちゃんを待たせたらダメだろ」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ、まだ集合時間になってないんだし」

澪「憂ちゃんは真面目だからな」

唯「澪ちゃんも来るなんて意外だね」

澪「わ、私は律が余計なことしないように見張りを……」

唯紬「へぇー」

澪「別に気になるからとかじゃないぞ」

律「澪、正直に気になるって言えよ、別に誰も何も言わないから」

澪「……気になったから来ました」

律「澪ちゃんのストーカー」

澪「この、バカ律」

律「いてっ!」

りっちゃんと澪ちゃんがいつもの夫婦漫才をしてる横で、私は今日憂とあずにゃんの関係が何か変わってしまうんだろうかとドキドキしていた

今日は告白はしないってことになってるから大丈夫だと思うけど

そう思っていると、昨日の憂の様子を思いだしてきた

―――昨日

憂「私、明日は梓ちゃんとお出掛けするから、留守番よろしくね、お姉ちゃん」

唯「えっと……その、私もりっちゃん達と出掛けるんだ」

憂「そうなんだ……じゃあ、途中まで一緒に行く?」

唯「ううん、私は自分の時間に出るから、戸締まりは心配しなくていいよ、私がするから」

憂「心配だな」

唯「憂、私がお姉ちゃんなんだよ」

憂「ごめん、ごめん」

―――

唯「憂、ご機嫌だね」

憂「うん、梓ちゃんとお出掛け久しぶりだから」

唯「そっかぁ、楽しくなるといいね」

憂「うん、お姉ちゃんもね」

憂が凄く楽しみにしてるのは親友の梓ちゃんとのお出掛けだからってわかっていた

でもそんな憂の笑顔を見てると複雑な気分になった

私って、先輩としてもお姉ちゃんとしてもだめだね

律「こら、唯、何ぼーっとしてるんだ、梓が来たぞ」

回想に耽っていた私はりっちゃんによって現実に引き戻された

紬「あら、梓ちゃん、気合い入ってるわね」

澪「本当だ、可愛いな」

律「これは尾行しがいがありそうだな」

唯「ワクワクしますね、りっちゃん隊員」

私にはみんなみたいなワクワク感はなかった

でもそういうフリはしないといけない

だってそれが普段の私だから、今の私の異変に気づかれたくないから

―――

梓「ごめーん、待った?」

憂「ううん、今来たとこ」

梓「そっか、よかった」

憂「梓ちゃん、服可愛い」

梓「そうかな、えへへ」

憂「うん、服だけじゃなくて梓ちゃんも可愛いけどね」

梓「えっ……そうかな」

憂「うん」

―――

律「うーん、さすがに何言ってるかまでは聞こえないな」

澪「あっ、梓の顔が真っ赤に」

紬「あら、本当ね」

律「憂ちゃんに可愛いって言われたんだなきっと」

紬「わかりやすいわね、梓ちゃん」

ムギちゃんの言葉に私はグサっときた

私も昨日憂に可愛いって言われて顔を真っ赤にしたんだ

みんなの前で憂に言われてたら……

律「おい、唯、何してんだ、梓達が動き出したぞ」

唯「あ、うん、待って、りっちゃん」

―――

憂「それで今日はどこに行くの?」

梓「遊園地に行こうよ、買い物して、どこかでおしゃべりじゃワンパターンだし」

憂「そうだね、そうしよっか」

梓「うん」


―――

律「お、梓は私のプラン通りに行動してるみたいだな」

澪「意外と律は面倒見がいいよな」

律「意外って何だよ、私は部長だぞ」

紬「それでりっちゃん、梓ちゃん達の行き先は?」

律「遊園地だよ、私が尾行に飽きたときに遊べるように」

澪「自分のためかよ」

唯「遊園地、りっちゃん隊員、私凄くワクワクしてきました」

律「だろ」

澪「あぁ……何がなんだか心配だ」

紬「うふふ」

そう、遊園地が楽しみ、これは紛れもなく私の本心だ

ただ尾行するだけだと余計なことを考えてしまう

こういう時は思いっきり遊んだ方がいい

そうしたら普段の私に戻れるかもしれない

それにりっちゃん達と遊園地はそういうことを抜きにしても楽しそう


―――遊園地

梓「憂、何から乗る?」

憂「うーん、せっかく来たんだから全部乗ろうよ」

梓「それはちょっと無理じゃないかな」

憂「要領よく乗れば、大丈夫だよ、行こ」

梓「うん(憂、可愛いなぁ)」

―――

律「よーし、遊ぶぞー」

唯「おー、いぇい」

澪「ってはやっ、尾行は?」

律唯「遊びたーい」

澪「何しにきたんだよ!」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ」

澪「って言ってる間に見失ったじゃないか」

律「なら遊ぶしかないな」

―――夕方

澪「結局梓達は一回も見かけずに遊んでただけじゃないか」

律「澪も楽しんでたくせに」

澪「それは……」

紬「唯ちゃんは途中からちょっと元気なかったわね」

唯「そんなことないよ」

紬「そう、ならいいんだけど」

実際はムギちゃんの言う通りだった

みんなと楽しんでるときに、ふと憂もあずにゃんとこんな風に笑って楽しんでる……

そう思ったらちょっと気分が落ち込んでしまった


憂「梓ちゃん楽しかったね」

梓「うん(でもこのままじゃいつもと変わらない)」

梓「ねぇ、憂、手つないでもいい」

憂「え、……うん」

梓「ありがと(やった)」

憂「……」

梓「……」

梓「(ドキドキして何も喋れないよ)」

憂「梓ちゃんの手小さくて可愛いね」

梓「クスッ」

憂「えっ、どうしたの?」
梓「いや、憂が唯先輩と同じことを言ってるから」

憂「お姉ちゃんも同じことを…?」

梓「うん、性格は違うけど、やっぱり姉妹だね」

憂「私もお姉ちゃんも可愛いものが大好きだしね……」

梓「か、可愛い……?」

憂「うん、そういえば、梓ちゃんってお姉ちゃんのことあんまり好きじゃないの?」

梓「えっ、どうして?」

憂「だっていつもお姉ちゃんが真面目に練習してくれないとか言ってるから」

梓「まぁ、そこは確かに不満だけど……でも唯先輩のことは先輩として大好きだよ」

憂「そっか……よかった、二人には仲良しでいてほしいし」

梓「……憂は唯先輩のことどう思ってるの?」

憂「もちろん大好きだよ」

梓「それはお姉ちゃんとしてだよね…?」

憂「えっ……うーん……よくわかんないや」

梓「えっ!?」

憂「だって、そんな風に考えたことないし、お姉ちゃんそのものが大好きなんだもん」

梓「そうだよね……(憂ってもしかして唯先輩のことが……)」

梓「(そしたら私敵わないよ……こうなったら……)」

梓「ねぇ、憂?」

憂「何?」

梓「憂は私のことをどう思ってるの?」

憂「えっ……急にどうしたの?」

梓「いいから答えて」

憂「もちろん……大好きだよ」

梓「……ほ、本当に!?」

憂「うん、だって私達親友でしょ」

梓「えっ……」

憂「えっ、違うの?私だけの思い込み?」

(悲しそうな目で梓を見る憂)

梓「も、もちろんそうだよ」

憂「そっか、よかった……梓ちゃんもそう思ってくれてたんだ」

梓「当然でしょ(私の馬鹿……何期待してるんだろ)」

梓「(でも私は憂のことを親友としてじゃなくて、一人の女の子として……)」

梓「(律先輩の計画とは違うことになるけどやっぱりここは……)」

梓「憂、あのね、私は憂のことが……」

憂「待って、梓ちゃん」

梓「えっ!?」

憂「あそこにいるのお姉ちゃんと律さん達じゃない?」

梓「えっ、本当だ」

憂「お姉ちゃん達もここに遊びにきてたんだね」

梓「う、うん……(まさか律先輩達、私達の後をつけてきたんじゃ)」

―タタッ

梓「あ、憂、待って」

憂「お姉ちゃん!」

唯「あっ、ういー」

律澪紬「(しまった)」

憂「お姉ちゃん達もここに来てたんだね?」

唯「……うん」

憂「偶然って凄いね」

梓「……ジー」

(律達の方をじっと睨む梓)

律「ほんと、偶然っておそろしいよな、なぁ、澪」

澪「あぁ、そ、そうだな」

紬「そうねー」

憂「じゃあ、一緒に帰りましょうよ」

律「そ、そうだな」

憂「ね、お姉ちゃん」

唯「うん」

梓「(憂、唯先輩を見つけてからの方が楽しそうだな……悔しいはずなのに、なんか悔しくない気もする)」

梓「(でもやっぱりショックかな)」


―――

帰りあずにゃんの顔がしょぼんとしてたのを見て、あんまりうまくいかなかったってわかった

そのとき私はほっとした……最低な先輩だね

自分の気持ちに嘘はつけない……本当のことだね

やっぱり私は憂のことが一人の女の子として好きなんだ

でもどうするのが正解なの……

私には難しすぎるよ

―――その夜

――唯の家

唯「憂、今日は楽しかった?」

憂「うん、すっごく」

唯「そっかー、よかったね」

憂「お姉ちゃんは?」

唯「楽しかったよ」

憂「でもまさか同じ場所で遊んでたなんて運命感じるよね」

唯「……そうだね」

憂「やっぱり、私とお姉ちゃんは見えない何かで繋がってるのかも」

唯「そ、そうかもね……」

本当は憂達の後をつけてたなんてとても言えない

今憂が言ってることも嬉しいし

憂「そうだといいな、ねぇ、お姉ちゃん」

唯「うん」

そう言った憂の笑顔は何よりも可愛いかった

そのときはっきりわかった

私は憂のことが一人の女の子として好きで

誰にも渡したくないってことが……

―――翌日

――放課後

梓「律先輩、昨日私達のあとつけてきたんですよね」

律「いや、たまたまな……」

梓「嘘つかないでください、だってあの場所は律先輩がすすめてきた場所じゃないですか」

律「……ごめん、梓、ほんの出来心で」

梓「全く……最低です」

梓「どうして他の先輩方も止めなかったんですか?」

唯「ごめん、あずにゃん、私も気になっちゃって」

紬「私も……ごめんね、梓ちゃん」

梓「澪先輩はとめてくれんたんですよね?」

澪「えっと……その……もちろん、そうだぞ、でも律が言うこと聞かないから、私は律が余計なことしないように見張りに……」

律「嘘つけ、澪が一番ノリノリだったくせに」

梓「澪先輩……?」

澪「ち、違うぞ、梓」

律「証拠は写真に……」

澪「嘘つけ」

律「嘘じゃないもん、ほら、この通り」

(そこには熱心に憂と梓を観察している澪の姿が)

澪「やめろぉ、やめてくれー」

紬「うふふ」

唯「いつものパターンだねー」

梓「はぁ……なんか怒る気なくなっちゃいました」

―――

律「それじゃあこのことは水に流して、うん」

梓「反省はしてください……澪先輩も」

澪「……ごめん、梓」

律「それで、昨日はどうだったんだよ、ちゃんと憂ちゃんにアピールできたのか?」

梓「それは……」

(しょんぼりとした様子を見せる梓)

律「駄目だったのか?」

梓「駄目っていうわけじゃないんですけど、私はすごく楽しかったし、憂も楽しんでくれてたし……」

律「じゃあ、なんでそんなにしょんぼりなんだ?」

梓「それは……憂は私のことを友達……親友としか見てくれないってわかった気がするから」

律「なんだよ、それ」

梓「憂は私のこと親友として大好きだって……」

律「えっ!?もう告白したのかよ」

梓「いや、それはまだなんですけど……」

律「なんだよ、ならまだわからないだろ」

梓「でも、あの感じでわかるというか……」

律「なんだよ、びびってんのか?」

梓「そういうわけじゃなくてですね、なんというか……」

律「だから、告白してみないとわからないだろ、なぁ、唯?」

唯「えっ……あ、うん、そうだね……」

律「なんだ、その微妙な反応は?」

唯「ごめん、考え事してたから……」

律「考え事?唯らしくねぇー」

唯「ひどーい、私だって色々と考えたりするんだよ」

そうだ

最近の私は考え事をしてばかりだ

今はあずにゃんには憂に告白してほしくない

そんな最低なことを考えていた

律「唯が考え事ねぇ……どんなこと考えてたんだ?」

唯「ほぇっ、そ、それは……秘密だよ」

律「なんだよー、そんなに変なことを考えてたのか?」

唯「変なことなんて考えてないよー」

澪「まぁ、唯のことだから今日の夕飯のことでも考えてたんじゃないのか」

唯「そ、そうだよ、澪ちゃん、なんでわかったの」

澪「唯だからな」

紬「唯ちゃんらしいわね」

律「やっぱり唯は唯か」

唯「えへへ」

梓「……」

澪ちゃんのおかげでなんとかごまかせたかな

ありがとう、澪ちゃん

でもごまかしたままでいいのかな

こんな気持ちであずにゃんを応援なんてできないのに……


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最終更新:2010年01月06日 01:37