「どうして!?唯にあげたんじゃなかったのか!??」
かわいい黄色のぬいぐるみ。唯にあげたものと全く同じだった。
「澪、私が唯にぬいぐるみあげちゃったから嫉妬してんだろ~」
「なっ嫉妬なんかしてないもん!!」
「本当か~?焦ってるところが怪しいぞ♪」
まったく、へんなところでするどいんだから。
何だかさっきまで泣いてた自分が馬鹿らしくなってくる。
「せっかく喫茶店に来たけど、帰るか」
「え?何で?」
私が尋ねると律は自らの鞄から鏡をとりだし私の顔を映した。
「……」
「な?ひどい顔だろ。
目が真っ赤になってうさぎみたいだぞ」
うう…忘れてた。そういえばそうだったんだ
「んでさー。澪が喫茶店来る前にゲーセン行って同じのとってきたんだ」
私が喋らないぶん今日の律は妙によく喋る。
このままじゃずっと律のペースだ。良し、私だって!
「今度は勝手にどっか行くなよ?」
「……」
「おーい、どうした?」
「…ならさ、律。私がどこえも行かないように手、繋いでよ//」
律は顔を真っ赤にしている。
たぶん私はそれ以上に赤くなっていることだろう。
「……おう///」
「なあ律。小さいころはよく手をつないで帰ったよな」
「あぁそうだったな。澪が『りっちゃん、怖いから手、つないでいい?』
とかよく言ってたよな」
確かにそうだった…。律は昔から私を引っ張ってくれたんだよな。私、律に頼りっぱなしだ。
「なあ澪。」
「んー?」
「晩飯、何がいい?」
「律の作ったものなら何でもいいよ」
私は正直に答えた。律は少し驚いた顔をしていたが、私の方を見て優しく微笑んだ。
「今日の澪はなんか変。妙に子供っぽかったり
かと思えば急に大人びたり」
どうしたんだ?と律に聞かれたけど自分でもよくわからない。
律に優しく見つめられて急に気恥ずかしくなった私は
律の右手をギュっと強めに握る。
「おー?やったな~このヤロー!」ギュ
「あはは、痛い痛い!ちょっと強すぎるよ」
そうこうしているうちに、我が家に到着した。
「じゃあ澪、放すぞ」
「あ…うん」
「そんな寂しそうな顔するなよ~。今日も澪んち泊まるんだからさ」
そりぁそれだけでも十分楽しいけどさ…。
「あ、今日はゲームで対戦でもしようぜ!」
さっきまでの律はどこにいったんだか。もういつも通りじゃないか。
「だめだ!ちゃんと勉強しないと欠点とるぞ?」
「大丈夫だって♪私欠点とったことないし!」
もう、そこまでして勉強したくないのか。
「じゃあこの小テストで満点とったら考えてやらんこともないぞ」ピラッ
取り出したのは律の苦手な古典の小テスト。まあ、絶対に無理だろうけど。
「うげっ…私の苦手な古典じゃん…。澪、5分時間ちょうだい」
パラパラカリカリ
…律、あんなに真剣に勉強してる。そこまでしてゲームがしたいのか?
あ、律今日分け目ちょっと違う。旋毛が2個見える。あとでからかってみようかな。
「よしっ覚えた!澪、テストちょうだい!!」
「……律、すごい。満点だ」
正直驚いた。5分であれだけ暗記出来るものなのだろうか。
「へっへー!私にかかればこんなもの朝飯前だよん♪」
「お?なら他の小テストもやってみるか?」
「えっ!?」
「ふふ、冗談だよ。」
まあそのうちすることになるんだけどね。
「おっもうこんな時間。私晩飯作ってくるよ」
時刻はもう6:00をまわっている。
私はリビングでテレビを、律はキッチンで晩飯を作っている。
何もしないでいるのも悪いだろうと思って手伝おうしたが
「怪我人は休んでろ!」
と朝みたく怒られた。
キッチンから美味しそうな匂いが漂ってくる。
この匂いは肉じゃがだろうか。
「澪ー!出来たぞー!!」
私の予想通り肉じゃががリビングに運びこまれた。
律…実はお前万能なんじゃないのか?
付け合わせのほうれん草のおひたし、
ついでに味噌汁まで出てきた。
「律、お前本当にすごいな」
すると律は満更でもなさそうに得意げな顔になった。
「じゃあいただきます」
私は嬉々としてこの美味しそうなおかずを
食べようとした。が、
「あれ?律、箸がでてないぞ?」
周囲を見渡したが見付からない。
疑問に思って律に尋ねてみると、律はこれでもかと
いうほどニヤニヤしていた。
……何だか嫌な予感がする。
「澪左手切っちゃて箸持てないだろ~?私が食べさせてやるよ!」
「なっ…!!」
何いってるんだこいつは。だいたい朝食だって普通に食べていたじゃないか!
「箸持つくらい大丈夫だ!お前が絆創膏はってくれたから!!」
「まあまあ、一口ぐらいいいじゃん。あーん♪」
満面の笑みで私に口を開かせようとする律。
こいつ、爽やかに鬼だな。
「……あーもう///」
パクッ 美味しい。やっぱり律は料理が上手い。
……律はいいお嫁さんになるんだろうな。
なんてことを考えてると涙腺が緩んでくる。
「おーい?どうした澪?」私が黙って俯いているのを心配したのか律が顔をのぞきこんきた。
「な、何でもないっ!」
私は照れ隠しに律から箸を奪い、律に肉じゃがを
押し込んだ。
「むががっ!熱い!!熱いよ澪しゃん!!」
やばい、律は猫舌だったんだ!
「ごっごめん律!はい、水!」
「……ふー生き返った…。」
「ごめんね…律…」
ノリでやったとはいえこれは明らかに私がわるい。
律はまだ水で舌を冷している。
「あはは、気にすんなよ。熱かったけどうれしかったもん」
「?どういうこと?」
「え?だって食べさせてくれたじゃん」
「あ…」
確かに。でもあのときは無我夢中だったから…。
「よし!いっそのことこの箸だけでたべるか!」
「何でそうなるんだよ!?もう、早く食べるぞ」
「ちぇー…」
────────────
晩飯を食べ終わり私は再びリビングにいた。
律は食器をあらっている。あ、そういえば律、ゲームで対戦するとかいってたな。
何をするつもりなんだろう。
「さーて、ゲームを始めるか!」
「さっきから気になってたんだけどゲームって何をするんだ?」
律のことだからまともなゲームではないだろう。
「おおっと!その前にルール説明ね♪勝った方が負けた方に何でも1つ命令出来る!以上!!」
…なんという大雑把なルールなんだ。
「うーんとその対戦内容なんだけどな」
「うん」
何だろう?何だとしても絶対に負けられない。
これは律に想いを伝えるチャンスかもしれないのだから。
「まだ決めてないんだ」
「はい?」
いやいや、内容も決めてないのによくゲーム対戦
しようとかいいだしたな。
「澪ー、なんかないー?」
「そんな急にふられても…」
うーん、何かあったかな。トランプはどこかにしまったしオセロはもってないし。
駄目だ、思い付かない。
「律、何でもいいからきめてよ」
そんなこと言ってもなーと律は頭を抱えている。
「あっ!そうだっ!!」
いいアイデアが浮かんだらしい。律はうれしそうに私に言った。
「愛してるよゲームをしよう!!」
「はぁ?なんだそれ」
呆れているわたしをものともせず、律は説明しはじめた。
「このゲームのルールは超簡単!相手に『愛してるよ』と囁いて照れさせたら勝ち。
逆に囁かれて照れたら負け」
以上、簡単だろ?律は笑顔で私にそう告げた。
いや、確かに簡単なルールだがこれじゃあまりにも
私が不利だ。
好きな人に(嘘でも)愛してるよと言われて
照れない人なんていないだろう。
「律!それはやめたほうが!!」
「何でだよー楽しそうじゃないか」
「何でもいいっていったじゃんか~。じゃあもう1つのゲームは澪が決めていいよ」
あくまで愛してるよゲームをするをするつもりなんだな…。
よし、受けてたってやる。
「…じゃあやってやろう、早速やるか!」
「よし、じゃあ私からいくぞ!」
くっ来る…!!ここは違うことを考えて乗りきろう。
「澪、目を瞑るのは反則だぞ?」
自分でも気づかないうちに目を瞑っていたらしい。
目を開くとそこにはカチューシャをはずした律がいた。
ちょ…これだけでも結構ヤバイかも。
「澪…」
再度名前を呼ばれ、赤くなるのを必死で耐えていた
私は追い討ちをかけられた。
「澪…愛してるよ」
「~っ!!」カアアアア
ああ、結局負けてしまった。
というか最初から勝ち目がなかったよな。
あっさりと勝利を手にした律はどんな表情をしているのだろう。
「…澪、お前照れすぎ。顔真っ赤だぞ//」
敗北感たっぷりに律を見てみる。すると本来は照れさせる側の律の顔は真っ赤だった。
「なんでお前まで赤くなってるんだよ!!」
「うるせー、この勝負は引き分けだ!次、澪の番だぞ」
引き分けって…まあ私にとったらいいことか。
それにしても律って結構照れ屋なのか?
律は自ら外したカチューシャをつけ直している。
よし、ここは一気に勝負にでよう。
「……じゃあ律、いくよ?」
律はたぶん私が照れずに『愛してるよ』なんて
言えるわけないと思っているのだろう。
顔が明らかに油断している。
悔しい反面、これはチャンスだと思った。
「律…」
私は律の名前を呼ぶと同時に律の側に近付いた。
「おっおい?どうしたんだ澪?」
律は明らかに動揺している。
予想ざにしなかかったことに焦りを隠しきれていない。
私はもっと律の側に行くと、律のカチューシャをうばった。
「律…愛してるよ」
私は律の肩に両手をおき
とびっきりの甘い声
で囁いてやった。
「なっ///」
ふふ、律照れてる。律、かわいい。
…って、これってよく考えたら告ったも同然じゃないか?
うわー私律に告白しちゃったー!?
我にかえった私はさっきの姿勢のまま固まってしまった。
「おーい、澪ー?」
律が名前を呼んでいるが声を出すことが出来ない。
今の私は律にすがり付くようにして固まっている。
あともう少しで勝てたのに最後の最後でやらかしてしまった。
「ったく~。そこまでマジになんなくても」
いつまでも固まっている私を心配してか、
背中をトントンさすってくれた。
「ま、結局2人とも照れちゃったし引き分けだな」
引き分け…まあ明らかに私のほうが負けていた
気がするけど。
「いやーまさか澪があんな一面をもっていたとはなー」
「あ、あのときは勝ちたくて一生懸命だったんだ!」
良かった。律はさっきのをあくまでゲームとして解釈している。
「よーし、んじゃ次ので勝負だ!澪、次のゲーム決まったか?」
そうだった。次は私がゲームを考える番である。
あー何も思い浮かばないな。
何か平和なもの…。でもさりげなく律に好意を示せるもの…。
「じゃあお互いの良いところを順番に言っていって
先に言えなくなったほうが負けってゲームにしないか?」
「なんか複雑だな…。とりあえず澪の良いところを言えばいいんだな?」
これは我ながらいいことを思い付いた。
律の私の好きな(良いところ)を知れるし
私がいかに律が好きかをアピール出来る。
「じゃあ発案者の私から。」
「おう、いいぞ!」
どうしよう、沢山ありすぎてどれから言っていいか…
じゃあまずは…
「誰よりも優しいところ!」
「お、おう…そうか//」
あ、律照れてる?やった!!作戦成功♪
「じゃあ次私の番だな。」来た!良く聴いておかないと。
「澪のいいところは、誰よりもかわいいところだな!!」
「///」カアアア
うわっ律直球だ。しかも誉めすぎだろ。
負けてられない!
数分後
「私なんかぁ澪の心のふるさとだぞ!」
「私なんか律の桃源郷だぞ!!」
ハアハア
「駄目だ、きりがないな」「これも引き分けか…」
結局勝負はつかなかったな。律、どうするつもりだろう。
「律、勝敗ついてないけどまだ続けるか?」
「当たり前だろ?次こそは決着つけるぞ!!」
律もかなり本気だな。次は何にするんだろう。
「よし、決めた!先に寝たほうが負けってことにしよう」
なんか律にしてはまともだな。
でもこれなら負ける気がしない。
「あ、でもその前に風呂はいんないと」
「律先に入ってきていいよ」
「えー…澪も一緒に入ろうよ!」
大の女子高生が一緒に風呂なんか入ったら絶対狭いし。
何より私の自主規制がなくなりそうで怖い。
「ほら、早く入ってこいよ」
「澪と一緒じゃないと入らないぞー!!」
何を言い出すんだよこのバカは。
「お前…大丈夫か?どっかで頭打ったんじゃ…?」
「何だよそれ、そんなに澪は私と入るのが嫌なのかよ?」
む、そんなわけないじゃん。
私だって律と入りたいもん。
「まあいいや、じゃあ入って来るぞ~」
「待って!」
グイッ
私は思わず律の服の袖を引っ張っていた。
「一緒に…入りたい」
ああ、今日の私はどうしちゃったんだろう。
「うー、やっぱり狭いな」
「だから嫌だって言ったのに」
なんとか入れたのはいいが流石に湯船に2人は厳しいいようだ
「澪ー背中流してやるからでてこいよ」
……やばい。今になってすごい恥ずかしくなってきた。
「いいって!自分で洗えるから!」
「まあまあ、一緒に風呂なんて滅多にないしさ」
いやいや、こんな姿で律に触られでもしたら
それこそどうかなってしまう。
「あーもう!!ほーら上がれ」
律の裸を直に見てしまい、目線を下ろす。
ああ、本当にやばいかもしれない。
……やっぱり相手の気持ちも確めないで手を
だすのは駄目だよな…。
「澪ー?どうしたんだ?」
「んーん、何でもない。それより私が律の髪、洗ってあげるよ」
これなら大丈夫だろう。
私は律の色素の薄い髪をワシャワシャと洗ってやった。
「んー澪髪洗うのうまいなぁ」
律は気持ち良さそうに目を瞑っている。
一方私はというと先ほどの邪気持ちはほとんど
薄れ、素直に律との入浴を楽しんでいた。
「ふふ、律は犬みたいだよな」
「なにー!?それじゃあ澪はうさぎだな」
「何でうさぎなんだ?」
すると律はパッと後ろを振り返ってきた。
何事かと思えば突然私の髪を両手でつかみ、
ツインテールにする。
「いきなり何すんだ!!」
「ほーらうさぎにそっくりじゃないか」
うさぎは寂しいとしんじゃうからな~
なんて言いながら私の髪から手を放した。
寂しがり屋なのはお互い様だろう。
そう思ったが口には出さなかった。
「でもそれだったら私も人のこと言えないか」
「…?」
最終更新:2010年01月06日 03:01