お泊り事件があってから一週間ほどが経った
一時は絶交宣言されかけたものの二人の距離は前より縮まっていた
梓「先輩、一緒に帰りましょう」キュッ
唯「うんっ、一緒にかえろー」ギュ
唯(最近あずにゃんから誘ってくれて嬉しいなぁ…手も繋いでくれるし)
梓「そういえば唯先輩」
唯「んー?」
梓「もうすぐ私達の恋人期間も終わりですね」
唯「ええっそんなぁ!!」ガーン
梓「ていうか今日までなんですけど」
唯「うそぉ!聞いてないよぉぉぉ」ガガーン
唯「短すぎるよぅぅ」
梓(最初からそういう決まりだったような)
唯「あずにゃん…あずにゃんは寂しくない?」
梓「ん…そうですね、何ていうか…」
唯「………」ジーッ
梓「………」チラッ
唯「つ…つづきは?」
梓「…今はノーコメントです」
唯「なななんとぉぉ…」フルフル
梓「………」クスッ
梓(一緒に帰ったりするの楽しいし、スキンシップも前より慣れちゃった)
梓(前より唯先輩が身近になった気がするな…)
分かれ道まで来て二人は少し見つめあったあとそっと手を離す
唯「じゃ、また明日ね」
梓「あ、はい!」
梓「……」
梓「あの、行かないんですか」
唯「あずにゃんこそ」
梓(なんか行き辛いな…)
唯「あのさあずにゃん」
梓「?」
唯「私、待ってるね」
――タッタッタッ
梓(あ……)
一言だけ言って唯は走って帰っていった
梓は声をかける暇もなく遠ざかっていくその背中を見つめる
梓「唯先輩…」
梓(…私、今ちょっと寂しいと思った…)
ちょっと俯いて、梓も反対方向へ歩き出す
すると不意に鞄の中で携帯の着信音が鳴った
梓「あ、メールだ」
梓(………澪先輩から?)
中を開くと「来週からよろしくな」と短くメッセージが入っていた
梓「・・・来週からは……澪先輩と…」
紬の家
紬「ふふ…唯ちゃんと梓ちゃんはなかなか良い雰囲気になったみたいね」ニコニコ
紬(梓ちゃんもまんざらじゃないみたいだったし、良い傾向だわ)
紬(次は澪ちゃんの番だけど……どうなるかしらぁ)テカテカ
紬「さぁ、この期間で集まった秘蔵写真を整理する作業に戻りましょう」
紬「うふふふふ……」
休日明けの朝
今日からは澪が梓との恋人期間に入る
澪(つ、つ、ついにこの日がきたな…)ゴクリ…
澪(今日から梓とここっ、こいこいこいこ、恋人同士になるんだよな)
澪(きっ緊張してきたぞ……)
澪(でも今日は気合いれていつも以上に身だしなみチェックしたし、バッチリだ)
澪「よし、行ってきます!」
登校中
澪「………」テクテク
キョロキョロ
澪(会えるかもって思ってたけどいないみたいだな…梓)
澪「まぁ仕方ない、か」テクテク…
澪(はぁ……)
梓「澪せんぱーい!」
澪「ハッ(この声は梓!)」クルッ
梓「せんぱーい、おはようございますぅ」
澪「………」
梓「………」
澪「………」
澪「……りつ」
律「てへっ」キラリン
澪「声真似してんなっ」バシーン
律「おぶ!」
澪「一瞬ほんとに梓かと思っちゃったじゃないか、馬鹿律っ」
律「あひゃー」
律「悪い悪い、深刻な顔して歩いてたからちょっとからかってやろーと思ってさぁ」
澪「ったく……こっちは真剣だってのに…」ブツブツ
梓「おはよう御座います先輩っ」
澪「だから、もう声真似はいいってば!ばか」ツーン
梓「こ、声真似…ですか…?」キョトン
澪(えっ)クル
梓「あ、あの何かごめんなさい…」
澪(うわあああ本物だったよぉー!)
澪「いやっ、違うんだ!今のは律に…」
梓「えっ律先輩って…えと…どこに?」キョロ
澪「あ、あれ?いない!!」ガーンッ
梓「?」
澪(逃げられたぁ…いやそれより)
澪「ごめんな梓やっぱ何でもない。おはよう」
梓「おはよう御座います」
澪「うん……」
梓「…」
澪「…」
澪・梓『あのっ』
澪「えっ」
梓「えっ」
澪「な、何だ梓」
梓「あ、いえ先輩からどうぞ!」
澪「そっそうか…いや、あのさ…」
梓「はい」
澪「その…今日からよろしく頼むな///」
梓「は、はい。こちらこそよろしくお願いしますっ」ペコ
澪「あ、いやいやこちらこそだっ」ペコ
梓(私もそう言おうと思ってたけど…少し照れるなぁ)
澪(恥ずかしい)
澪(これからどういう感じでいけばいいんだろ…)
物陰から
二人の様子をこっそり眺めている律
律「ははっ。なーにやってんだかあの二人…」
律(がんばれよーみおー)ポソ
律(………)
律(心に隙間風が…)
紬「あらら…まだあの二人はギクシャクしちゃうみたいねぇ」
律「だな。澪のやつ舞い上がっちまってるみてーだし」
律「…ん?」
紬「え?」
律「ってオイ!いつの間に隣にいるんだよむぎっ!」ズササ
紬「まぁりっちゃん、騒ぐと気付かれちゃうわ」コソッ
律「いやいやいや」
紬「でも…初日だし緊張しちゃうのは仕方無いわよね」
律「……ま、そーかもな」
紬「………寂しい?」
律(!!)
律「別にぃぜんぜんっ」プゥ
紬「うふふ」
紬「一緒に学校行こっか」
律「……うん」
再び澪と梓
隣同士並んで歩きながら学校へ向かっている
澪「それで、くさかったんだよなー」
梓「あははっ面白いです」
テクテク
テクテクテクテクテク
澪(あれ、話題が途切れちゃったぞ)
澪(ていうか、普通に喋ってるだけじゃ意味ないよね)
澪(はっ……そうだ手だ。手を繋ごうここは)
澪「なぁ梓」
梓「はい」
澪(こういうのはさらっと言っちゃえば平気なんだ)
澪「あのさ、てっ」
梓(て?)
澪「て……てー、てー、……」
澪「てやっ」ピシッ
梓「いたっ」
澪「あれっ?」
梓「澪先輩…何故いきなりチョップを…」サスサス
澪(うわあああ馬鹿かああ私はぁぁぁ)
澪「ご、ごめんごめん。冗談だ」ナデナデ
梓「ん……」
梓(撫でられるのは…好きかも)
澪「はっはっはっ」
ナデナデ
澪(……)
澪(これはこれで…いいな)
最終更新:2010年07月03日 04:49